脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

巡る想いと“リスタート”のG大阪 ~11節 VS京都~

2008年06月25日 | 脚で語るガンバ大阪
 G大阪がACL出場のために延期開催となっていた11節京都戦が万博で行われた。これが再開初戦となる両チーム。試合は遠藤のゴールでG大阪が1-0と何とか勝利を収めた。

 G大阪は、浦和戦の一件を受けてこれまでゴール裏をリードしてきたBBが解散、水本がこの日対戦する京都へ電撃移籍するなど、選手、サポーター共に様々な想いが巡り巡る再開初戦となった。
 この日からコールリードは、BNAとガンビーノの主導によって行われることに。サポーターミーティングでは若干のコール変更の旨が伝えられたが、試合が始まれば特にいつもと変わりはない。そして試合前には金森社長が浦和戦の一件を顧みて、これからのスタジアム運営の決意表明を約5分間に渡って話すなど、クラブにとってはまさに成績と今後の運営面においても“リスタート”と呼べる雰囲気であった。

 

 肝心の試合は、“バレーの決定力不足にここまで足を引っ張られるのはもうごめんだ”というのが率直な感想。90分を通じて7本もの決定機をフイにしたバレーに対して、決勝点を正確にゴール右隅に決めた遠藤はこのシュート1本しか打っていない。しかも殊勲の7番は、この中断期間、W杯3次予選のためにほとんどチームに合流していないのだ。テクニックの差が出たというべきか。とにかくピッチの中で頭を抱えるバレー以上に頭を抱えているのはサポーターだ。
 バレーだけでなくルーカスにもツキが無かったが、22分のバレーのチャンスを始め、京都はGK水谷が当たっていたし、守備陣が良く奮闘していた。特にバレー対策として大久保、増嶋だけでなく、右SBの角田までもが中央のフォローに入る徹底ぶり。それにフォアリベロのシジクレイが最終ラインに溶け込むように助太刀するのだから、この壁は強固だ。おそらくバレーが前線でほぼ1トップの形で張り、ルーカスを中盤でプレーさせたのは、ここを打開するためのポゼッション確保を考えてのことだっただろう。
 案の定、中盤のポゼッションはG大阪に傾いた。京都は攻守の切り替え時にほとんどロングボールを蹴り込んできたが、前線の田原、柳沢、徳重にはほとんど脅威を感じることはなかった。だからこそ余計にバレーがことごとく決定機を外し続けたことは悔やまれる。随所で京都の最終ラインの裏を突破もできていた。本当ならばもっと点差は開いていたはずだ。あと少し抑えてシュートを打てば、威力は申し分ないのだが。

 

 しかし、悲観的なことばかりではない。全体的に先週末の練習でも叩き込まれていた攻守の切り替え時の早さは及第点と言えるし、特に橋本、明神、二川の3人によって、高い位置で狭いプレーエリアをダイレクトパスで崩すようなシーンも見られ、前線への好配球を見せた橋本の攻撃意識は心強いものがあった。京都右SBの角田が中央でバレーをケアするシーンが多かったため、左SBで先発した下平も生き生きとプレー。39分には角田とのマッチアップを制してバレーへ絶好のクロス、40分には二川とのコンビネーションからルーカスへドンピシャのクロスを配球するなど、持ち味をいかんなく発揮した。
 先制点の場面も、その1つ前のプレーで橋本がルーカスに相手ライン裏へのロングボールを供給している。これで見事に大久保、増嶋、角田が釣られてできたスペースにフリーで二川が入ることができた。橋本のロングボールを水谷がクリア、これを遠藤がフリー、繋いだ二川もフリーでは京都も為す術がない。京都MF佐藤のアプローチが届かなかったが、結局、その後ボールを受けたルーカスは飄々とターンしながら左から走り込む遠藤に。彼の左足から放たれたコントロールショットが勝利を呼び込む貴重な得点となった。

 最小得点差ではあったが、明暗を分けた53分の得点シーンのように、中盤の構成力と個人能力の差が出たのが勝負の分かれ目で、双方ともに極力高い位置で攻撃を作ろうとはしていた。粘り強く、そして組織的な京都の守備は特筆すべきものがあったと個人的には思う。今季のシジクレイの起用法などはその最たる例だが、これで中盤がもっと良くなれば前線も良い選手が揃っているので、成績に反映されると思うのだが。

 とにもかくにも、これで5位に浮上。首位浦和との勝ち点差は「4」。中断前の不振を振り払う“リスタート”としては悪くない。