脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

J1からJFLまで真っ逆さまも夢ではない

2008年06月24日 | 脚で語るJリーグ
 “Jリーグは24日の理事会で、将来的に2部(J2)のクラブ数を最大で22とする案を承認した。7月10日の日本サッカー協会理事会で正式に決まる。

 J2のクラブ数は段階的に増やされる方針で、18以上になったシーズンからは、1部(J1)J2入れ替え戦を廃止し、J1下位3チームとJ2上位3チームを自動的に入れ替える。22クラブとなったシーズンからは、J2にも初めて降格制度を導入。Jリーグ加盟条件を満たす日本フットボールリーグ(JFL)3位までのチームとJ2下位チームを自動的に入れ替える。

 1999年に10クラブで発足したJ2は今季で15クラブにまで拡大。J2入りの成績面の条件は、準加盟クラブがJFL4位以内に入ることとなっており、早ければ2010年にも22クラブとなる可能性がある。” (6月24日 スポーツ報知より)

 ということで、いよいよ下位カテゴリーにも群雄割拠の時代が訪れる。J2のチームが増えることも、降格制度が取り入れられることも、良い意味での“競争”をもたらしてくれるだろう。そしてここで注目したいのは、何よりJ1の自動降格ではないか。
 
 これまで毎シーズンJ1で活躍していたクラブが不振を極め、わずか2年でJFLまで真っ逆さま。なんてことも最悪起こるかもしれない。これまでシーズン末期の入れ替え戦は数々のドラマを生んできたが、これで更にリーグ戦自体がより一層盛り上がることになるはず。一瞬の油断すら許されない戦いが毎年のように下位チームにはのしかかってくるのだ。

 J1から最短でわずか2年でJFLまで降格の可能性が出てくる容赦ないこの制度は、プロクラブとしての収入面を考えれば確実に死活問題。現時点でほとんどJFLの放映というのは行われていないため(チームによっては地域ごとの取り組みはある)、現行制度で進めば放映権はゼロになってしまうと考えて良い。注目度は一気に下がり、体たらくな降格続きのクラブからはスタジアムに駆けつけるファンは姿を消す。そして実力選手の移籍は、各チーム間でこれまで以上に活発に行われることになるだろう。「ここまで痛い目を見ることはない」などと今から高を括っていると、非常に危険だ。そしてこれは現在の大抵のJクラブに言えるのではないだろうか。

 ここでおそらく大事になってくるのが、全てのクラブの目標が「J1への昇格、J1での優勝」でなくとも良いという時代をいよいよ迎えるということだろう。これまで背伸びしながら経営を切り盛りしていたクラブは一気に淘汰され、クラブとして真の競争力を纏ったクラブだけがJ1の上位争いを切磋琢磨する時代になりそうだ。中小クラブとビッグクラブの格差はこれまで以上に如実に現れてくる。つまり今まで以上に“身の丈経営”、“身の丈目標”が重要になり、特に資本集めに苦難を極めている地域クラブはその最たる例となるだろう。「うちのクラブはJ2中位定着、そして育成した選手をJ1クラブに高額で売却する」といったイタリアのプロビンチャ感覚のクラブ方針がベターになってくるクラブも生まれるはずだ。

 本当に面白い時代になってくる。これでまだ産声を上げたばかりの多くの地域クラブが、JFLを現実的な目標にして、条件面を満たしさえすれば、Jリーグという高みが一気に現実味を帯びてくるのだ。この上位下位カテゴリーの入れ替えが盛んになればなるほど、地域にJ基準を満たしたクラブが増えるということになる。その反面、これまで以上にクラブの現実を受け止めた経営方針と目標が大事になってくるし、失敗は許されない。

 これまでJFLチームに適用されてきた「Jリーグ準会員制度」を今後、この制度の導入の中でどうしていくかが個人的には注目している。
 それにしても、これでようやくクラブ間の競争力が豊かで、今まで以上に熱のこもったレベルの高い試合が各カテゴリーで見られる時代になりそうだ。勝ち点団子状態から、運を手繰り寄せたクラブにポロッと棚ぼた的優勝が転がり込む時代に“おさらば”できそうである。