脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

秘密兵器ミネイロ、3分で味スタを席巻

2008年09月29日 | 脚で語るガンバ大阪
 アディショナルタイムに入り、ロニーに代わって登場したのはDFミネイロ。G大阪史上希に見るマイペースなこのブラジル人は、その投入直後に左サイドをドリブルで疾走、豪快なシュートを見舞った。放送を観る限りでは、得点シーンを除いて味スタが最も響めいたのはこの瞬間ではなかっただろうか。その1分後にはまたもエリア内に突進。東京Vの土屋と福田に包囲されながらも強引にシュートまで放ってしまった。その際にシュートを振り抜いた左足は東京V福田の股間を直撃。とんだ巻き添えを食らう形になった福田はピッチでは立てず、担架で運ばれていく。スカパー実況の八塚浩氏と解説の川勝氏は揃って「この人は面白いですね。存在が。」とのコメント。直後にはハーフライン付近で守備に参戦しようと相手ボールホルダーを追いかけるやいなやいきなり一人でこけてしまい、終了直前には佐々木のサイドチェンジから欲張りにももう1本シュートを打とうと試み、空振りする。試合終了のホイッスルまでミネイロは味スタを、いや、テレビ観戦のG大阪ファンを確実に釘付けにさせてくれた。

 
 ゴールシタイ・・・ゴールシタイヨウ・・・

 屈託の無いその笑顔は何とも憎めない。思い起こせば今年の4月14日。東城陽で行われたサテライトリーグの京都戦では、開始早々14分に豪快なケンカキックで一発退場。その瞬間、ミネイロはG大阪の“秘密兵器”になった。試合後は自分が退場したことはすっかり忘れたかのようにご機嫌な振る舞いを見せていた彼。当時まだG大阪に在籍していた水本の苦悩続きの表情とは明らかに対照的なその笑顔とテンションはチームの空気もお構いなしだ。そう言えば、ACLグループリーグ第2節の全南戦の帰り、釜山の空港では出場機会が無かったおかげで疲労を蓄えた他の選手とは違ってすこぶる元気にバレーとルーカスに絡んでいた彼の姿もあった。

 
 ミンナ、ミネイロ、ミネイロッテイウテクレルケド・・・ 

 ブラジルの名門インテルナシオナルから入団し、ハワイで行われたパンパシでは“上がりっぱなし”というサイドバックにあるまじきプレースタイルで我々の前にそのベールを脱いでくれたミネイロ。あの大会以降、スタメンに名を連ねることがほとんど無かった(ACLグループリーグ1節チョンブリ戦にてスタメン出場)が、かつてブラジルでは鬼のようにレンタル移籍を繰り返し、そのチーム遍歴を見ても果たしてG大阪でフィットできるのかとシーズン前には不安になった。

 不安はほぼ的中した。ある意味裏切られた。キャラクターも含めて。そして今節のこのタイミングでの登場もそうだ。アディショナルタイムの3分間でシュートを欲張りにも3本も打ってしまおうと思った切り札ストライカー的な規格外の発想。そして本人はあながち“決まるんじゃないか”と思っていた伏すらあった。彼にはアディショナルタイムなど関係ない。常に考えもサッカーも前しか向いていない。おそらく来季の契約についてすら何も考えていないかもしれない。そんな愛すべき超ポジティブブラジリアン。そして空気の読めないブラジリアン。秘密兵器ミネイロはG大阪がかつてのストロングなパスサッカーを見せた時にピッチにほんの少しだけピッチに現れてくれるのだ。

 
 ホンマノナマエハ“ヘネス・マルセロ・モレス”ッテイイマンネン

 肝心のチーム自体は持ち前のポゼッションサッカーがほぼ完全復活。播戸とロニーの連携は課題が残るも、ロニー自身は明神のゴールをお膳立てするなど順調にフィットしてきている。遠藤が高い位置であれほど攻撃に顔を出せると効果覿面、佐々木の初ゴールが飛び出すなど今後に繋がる内容だった。ディエゴにゴールを奪われる直前で中澤は福西のパスに対応の拙さを見せ、仰転していたのは頂けなかったが、ああいった局面をしっかり締められたらもっと内容は良くなるだろう。5点は奪えたであろう攻撃陣は復調しているだけに、ミッドウィークも含め今後連戦が続くが、楽しみにしたい。ミネイロの登場には過度の期待を抱けないが。