脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

Da cosa nasce cosa. 思わぬ展開に

2008年09月10日 | 脚で語る欧州・海外
 あと1週間もすれば、ヨーロッパ・クラブコンペティションの最高峰であるUEFAチャンピオンズリーグのグループステージが開幕する。毎年のようにその放映権は高騰の一途を辿り、戦術のメインストリームがこの大会から全世界を席巻する。今季の決勝の地はローマはオリンピコ。2009年の5月27日、そこで対峙する2チームを今から予想するのは至難を極める。欧州中のメガクラブが自身の威信と誇りを懸けて戦う9ヶ月の道のりが始まる。

 グループステージの組み合わせを見ると、圧倒的にノックアウトステージまで盤石の戦い方が保証されたも同然のインテル。本選出場は初となるキプロスのアノルソシスをはじめ、ギリシャのパナシナイコス、ドイツのブレーメンとグループBを共にするが、実質のライバルはいない。64-65シーズン以来のビッグイヤー獲得が名将モウリーニョに課せられた最大のノルマだ。
 今やインテリスタだけでなく、イタリアのメディアの格好のネタになっているモウリーニョ旋風。イタリア・スーパーカップを「PK戦でしか勝てなかった」ということから一部で大きな敵意が上がっているようだが(WSD9/18号より)、この世界的名将の手腕を最も具体的に評価できるのはこのCLしかないと思う。個人的にはカンピオナートでは実質的ライバルはいないほどの充実した陣容を揃えるインテルがどれだけ“マジ”になってこのCLを勝ち進むか非常に注目だ。

 昨季のCLを見ていても、ベスト4にプレミア勢が3チーム残ったことからも分かるように、今や完全にメガクラブの資本がモノを言う時代。そんな時代でこそ、伏兵の活躍に期待してしまう自分がいる。個人的に大穴と思っているのはセルティック、フィオレンティーナ、スポルディング、フェネルバフチェの4チームだ。

 セルティックはまたもやグループステージでマンチェスター・Uと対峙する羽目になったが、中村のFKという飛び道具はもちろん、フェネゴールと2年目のマクドナルドの2トップにも期待が持てる。特に昨季の1stノックアウトラウンドのバルセロナ戦で見せた戦いぶりは、あと一歩で2年連続ベスト16という悔しい状況を抜け出せるだけの可能性を感じさせてくれた。第2戦で見せた3年目のハートリーと2年目のS・ブラウンを中盤の底に据える4-2-3-1は今季さらに成熟した連携を見せてくれるだろう。この場合トップ下は中村だ。スコティッシュプレミアだけでは物足りない。やはり欧州のメガクラブと張り合ってこそセルティック・パークでのこのチームの神々しさは映えるのだ。

 フィオレンティーナもジラルディーノがフィットしており、モントリーボ、クズマノビッチの若き主力に加え、中盤のアンカーに据えるべきフェリペ・メロと「超10代」と評価させるヨベティッチがブレイクすれば期待は大きい。個人的にはこのモンテネグロ代表のヨベティッチがどこまで縁の下の力持ちになれるかが今季のフィオレンティーナの肝となる気がする。あとは賠償金問題で揺れるムトゥがどれだけ平常心でプレーできるかだ。

 スーパーカップでポルトを下した昨季のポルトガルカップの王者スポルディングも、そろそろCLでのブレイクを狙いたい。パナシナイコスからポスチガを獲得し、モウチーニョは残留。DFカネイラのバレンシアから2シーズンぶりに復帰した。陣容だけ見ると他国のメガクラブには及ばないが、覇権奪回を掲げるリーガ・サグレスの消化次第ではその波をCLに持ち込める可能性は十分ある。幸いにもグループステージはバルセロナ以外は、シャフタール、バーゼルと組み合わせに恵まれた。

 EUROでスペインを優勝に導いたアラゴネスを新監督に招聘したフェネルバフチェはダークホースの最有力候補だ。マジョルカよりリーガ得点王のグイサの加入、エムレ・ベロゾグルがイングランドより帰還。厚い選手層と昨季から受け継ぐパスサッカーは更に発展の一途を辿るだろう。今季のシュクリュ・サラジョウルは昨季以上の歓喜と熱狂に包まれるはずだ。ジーコが見せた奇跡のベスト8の壁を越えられれば本物だ。

 9月16日、A~Dまでのグループステージの火蓋が一斉に切られる。戦いはいつも思わぬ展開に進むと考える方が面白い。