脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

チームは生き物 ~県リーグ11節 VSディアブロッサ高田FCガロットス~

2008年09月15日 | 脚で語る奈良クラブ
奈良県リーグ第11節
13:30キックオフ @吉野総合運動公園グラウンド

○奈良クラブ 3-2 ディアブロッサ高田FCガロットス●

得点
10分石田
45分松野正
56分石田

<メンバー>
GK31松石
DF21中村、5杉田、20上林、11松野智
MF3上西、24東、18和阪、13金城(HT=10松野正)
FW9嶋(24分=19土井)(70分=4秋本)、7石田

 

 タイムアップの笛が鳴る頃には土のピッチは泥田と化していた。戦いを終えたイレブンたちの顔にほとんど笑顔はない。誰もが今日の戦いぶりに納得していないようだ。それもそのはず、3点リードしていた試合は、雨が勢いよく降り出したラスト10分には1点差にまで詰められ、どうひっくり返ってもおかしくない試合だった。

 この日もサブに7人の余裕を残すメンバー編成で、スタメンは右SBに中村、CBを杉田と上林のコンビが務め、左には松野智、中盤は東と和阪のダブルボランチにサイドハーフで右に上西、左に金城、2トップは嶋と石田というコンビだった。負傷中の矢部を除き、松野正が前節の警告をもらったチーム内ペナルティとして先発外となった以外はほぼ現状のベスト布陣に近いメンバーだったのだが。

 

 チームは“生き物”だとはよく言ったもので、どうも立ち上がりからパスが繋がらずピリッとしない。全体的に元気が無いと言うべきかいつもの活気が消え失せていたような気がした。前半10分に石田が東のCKからヘディングシュートを決めて早々に先制点を奪うが、ボールは支配するも中盤と前線の連動性を欠き、相手に易々とボールを奪われる場面が目立つ。
 前半24分には嶋が負傷気味の脚に違和感を感じたのか途中交代。代わって土井がピッチに送り込まれる。フィニッシュに持ち込めたとしてもシュートに浮つきが見られる中で追加点は異常に遠く感じられた。MF上西がサイドを何度も攻め上がり、中央に顔を出しては惜しいシュートを放つなどチャンスはゼロではなかったのだが、どうも全社関西大会以降見られていた良いリズムが失われていた。

 
 スピードを生かして裏のスペースを狙った嶋だったが無念の途中交代

 
 今日はシュートで持ち味を見せたDF上西 残念ながらゴールは奪えず

 後半、頭から松野正が投入されると、早々の5分にゴール前での折り返しを豪快に決めてチームを盛り上げる。“ゴールを奪うのはオレだ”と言わんばかりのその場面は今思えばこの試合のハイライトだった。後半11分にはPA内でパスの出しどころが無く、中盤に下がった石田が拾うと絶妙の浮き球シュートで3点目となるゴールを奪う。3-0となって、あとは引き続き点を貪欲に奪いに行くかクロージングに入るのかという展開だった。

 
 2得点と活躍FW石田 心底彼の存在を刻みつけた試合だったと言える

 
 DF杉田のヘディングシュートは惜しくも決まらず

 しかし、依然ピリッとしない奈良クラブは3点目を奪った直後に相手FWに空いたスペースに走り込まれ1失点。セカンドボールを相手に奪われる場面は未だに目立ち、あわや失点というシュートを何本か打たれるほど。GK松石の怒号にも近い「動けよ!」という声が響き渡る。65分に前節の勝利の立役者FW澤畑が投入されるとキープ力を活かして前線の起点になったが、雨が勢いよく降り出した後半の終盤は71分にさらに失点を喫するなど守備陣を中心に精彩を欠いた。

 
 いつもと違う緊張感漂ったハーフタイムのミーティング

 守りきったと言うよりも相手のミスに助けられて勝利を掴んだと言っても過言ではないだろう。それだけ今日の試合では、動き出しの遅さ、ゴールへボールを効率よく運ぶプロセスといった点で課題が見えた。連携ミスも目立ち、出しどころが無いためにDFラインで不用意なパス回しなどもかなり多く見られた。

 
 前ここでやった時はGKでした・・・土井がFWで出場 経験を積んだ

 とにかく勝利は勝利。結果最優先で考えれば無敗を守りきって、プレーオフに少しでも良い条件で臨むためには前進したとポジティブに考えたい。そして光明は2得点の石田のポリバレント性。前半のFWと違って、後半は中盤で周囲を生かすことに専念した違うプレーを見せてくれた。3点目のゴールなどはJリーグで活躍した彼の感性が滲み出た1発。豪快に2点目を叩き込んだ松野正と共に今後のチームの得点力には欠かせない選手だ。
 これから県リーグのプレーオフ、そして全社と厳しい戦いは続く。しかし今日の戦いも教訓にし、12月の府県リーグ決勝大会で万全の戦いができるための壁ならば、奈良クラブなら容易く越えてくれるはずだ。