脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

BLUESが奏でる甘美な旋律

2008年09月17日 | 脚で語る欧州・海外
 今季のUEFAチャンピオンズリーググループステージの戦いが始まった。ホームのスタンフォードブリッジでフランスのボルドーを迎えたチェルシーは格の違いを見せつける4点差で勝利。これ以上ないスタートを切ることができた。

 14分、ランパードから自陣でサイドチェンジのボールを受けたカルバーリョが引いて来たデコにパスを出すと、デコはワンタッチで反転してPA前に走り込んだJ.コールへ。J.コールからダイレクトで叩かれたパスを右SBのボシングワがダイレクトでクロスを送り込む。落ちるようにそして十分なスピードを有したそのクロスは吸い寄せられるようにゴール前に顔を出したランパードの頭にピッタリと合った。先制点は実に鮮やかな流れで、今季のチェルシーのコンビネーションを具現化した。

 31分には、マルダが高い位置よりクロスを試みたことで得た左CKからJ.コールが自分よりに遙かに上背のあるDFを出し抜いて技巧なバックヘッドで追加点を奪う。先日のクロアチア戦で負傷した頭部の傷をものともせず小さなアタッカーは今季も健在ぶりをアピールした。74分に交代を告げられた際に「なんでオレが?」といった素振りを見せたが、それは本音だっただろう。何しろ、昨年の今頃はローゼンボリにホームで0-0と引き分け、モウリーニョ監督解任という事態に陥った。それを考えれば、昨季あと一歩で逃したビッグイヤー獲得へ向けて、今季はブルーズの誰もが楽しんでサッカーをこなしている。

 名将スコラーリ監督の就任もさることながら、何よりも監督の指示を厭わない従順な2ピースが今季のチェルシーの大きな鍵になっている。それはDFボシングワとMFデコだ。

 ボシングワは昨季まで不安定だったチェルシーの右SB事情を払拭してくれた。その鋭い攻め上がりと的確なクロスは左サイドへの極端な負担をかき消し、攻撃のバランスをもたらした。さっきまで高い位置でプレーしていたかと思えば、数秒後には自陣でシビアな守備を厭わないその運動量も大きな武器になっている。そして、そのライトサイダーを中央から糸引きコントロールしているのがデコだ。開幕から2戦連続でゴールを奪い、即座にチームはおろかプレミアリーグの水にも慣れた。ランパードと比較すると、プレーエリアが広く、DFラインの前まで下がって、しっかりと相手にプレスをかける姿も見受けられる。自身のシュートの技術やフィニッシュのアシスト役としては申し分なし。バルセロナ時代とは打って変わった“新生デコ”が今季のブルーズの心臓をランパードと分け合っているのは大きい。エッシェンが負傷で離脱し、マケレレも出てしまった今季は、若いミケルがワンボランチの先発を務めることも多くなるだけにこのデコの存在は非常に大きい。

 このソリッドな右サイドの進化は、左サイドのA.コールとマルダのコンビにも非常に良い影響がもたらされている。ボルドー戦では、躍起に再三ゴール前へ仕掛けるマルダの姿があった。フィニッシュへのプロセスはどうであれ、2点目のきっかけにもなり、82分にはそのマルダがお役ご免の1発を奪っている。カルーとの定位置争いは熾烈を極めるだけにこのような好循環がもたらされるのは今のチェルシーには良いことだ。

 ほとんど何もできなかったボルドー。それだけチェルシーの強固さは光った。しかし、これがプレミアも含めたメガクラブであれば、また違った展開にはなっただろう。早く今季のチェルシーがガチンコで戦う試合が見てみたいものだ。その意味では、20日のマンチェスター・U戦(日本時間21日の22時)がまず最初の試金石になる。彼らの旋律がどこまで赤い悪魔を苦しめるのか、非常に楽しみでしょうがない。