脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

スルガ銀行スペシャルにアルセナルFCを想う

2008年04月17日 | 脚で語るJリーグ
 
「スルガ銀行チャンピオンシップ2008OSAKA」という大会名で、G大阪がアルゼンチンのプリメーラ・デビィシオンのアルセナルFCと戦うタイトルマッチの概要が決まった。G大阪は昨年のナビスコカップ王者、そして対するアルセナルFCはコパ・ニッサン・スダメリカーナ王者ということである。この話が出た時にスポンサーの関係上、会場は日産スタジアムかなと個人的には思ったが、大阪という発表の後、まさか万博は無いだろうとは思っていたが、やはり長居スタジアムに落ち着いた。

 長居スタジアムを本拠地とするC大阪からは決して聞き心地の良くないトピックスだろうと思うが、主催はCONMEBOL(南米サッカー連盟)と日本サッカー協会、そしてJリーグ。主管は大阪府サッカー協会ということで、天皇杯の会場として長居を使う感覚と何ら個人的には変わりないかなと思っている。確かにC大阪側からすれば、自分たちの本拠地でライバルでもある同じ大阪のクラブが“タイトル”を懸けた一発勝負をする訳で、ここでタイトルを獲られたらと考えれば、決して気分は良くないだろう。しかし、残念ながらこのゲームがアルセナルFCの知名度の低さにも助けられて、大した観客動員を見込めないのは目に見えている。明らかに長居という器がオーバーキャパだという実情が何とも泣ける。

 アルセナルFCは、2007年のコパ・ニッサン・スダメリカーナに優勝したが、アルゼンチンの中でも決して人気クラブとは言えない。コパ・ニッサン・スダメリカーナが初めて開催された2002年から辿っても、昨年クラブワールドカップでも来日していたボカ・ジュニアーズ(アルゼンチン)とCFパチューカ(メキシコ)がそれまで3年間の覇者。初年度はブエノスアイレスを代表するサン・ロレンソが、そしてその翌年は現在日本人プレイヤーの澤昌克が注目を浴びているペルーの強豪シエンシアーノだ。突出してアルセナルFCの知名度は低い。もちろんこれが彼らの初タイトルとなった。
 おそらく、このアルセナルのトピックスとしては、かつてアルゼンチン代表でもプレーしたホルヘ・ブルチャガのキャリアスタートのクラブといったところか。そうあのアルゼンチン代表の7番といえば彼だ。86年と90年のワールドカップに出場。印象的なのは、86年大会の決勝西ドイツ戦での決勝ゴールだ。アルセナルでキャリアをスタートしたブルチャガは、同じアルゼンチンはアベジャネダを本拠地とする国内屈指の名門インデペンディエンテでもプレー。84年コパ・リベルタドーレス杯では大会得点王にも輝いている。ワールドカップでの活躍もあり、フランスのナントにそのプレーの場を移すが、70年代にフランスリーグで栄華を極めたかつての名門クラブではタイトルと縁が無かった。同じくフランスリーグのヴァランシエンヌ在籍時には八百長疑惑でまるまる2年間も出場停止を食らったこともあり、欧州より国内の方がその知名度は高い。現在は、自身の黄金時代のハイライトとなったインデペンディエンテで指揮を執るブルチャガだが、その彼が監督業をスタートさせたのもこのアルセナルFCであった。

 ここでも書いたように同じアベジャネダという都市に、インデペンディエンテとラシン・クラブという2つの人気クラブがあるがゆえ、国内でもこのアルセナルの人気は影に隠れ、ピリッとしない。ホームスタジアムのエスタディオ・グロンドーナもわずか16,300人ほどの収容力しか持っていない。それだけにクラブとして今回初のアジアのクラブとの対外試合に意気込んでくれていることを願うばかりである。ユニフォームは水色に赤いタスキをかけたようなデザインなのだが、個人的には南米テイスト溢れるこの決してメジャーでないクラブとの対戦は楽しみにしている。

 日本のスポンサー利権の絡みや、観客動員などの問題もあるが、是非こういったクラブとはそのクラブの本拠地までお邪魔してタイトルマッチをさせてもらっても面白いとは思うのだが。おそらく遙かに観衆は集まるし、同じアベジャネダのエル・シリンドロ(ラシン・クラブの本拠地で、ペロン大統領に由縁の名前は有名。64,000人収容)あたりでラシンファンも巻き込んで試合を見せる。完全アウェイで本場の南米の雰囲気を味わえるのも絶対に貴重な体験となろう。そういう意味では、今年から4年連続でこのタイトルマッチの日本での開催が決まってしまったようなのだが、日本も巧くCONMEBOLを巻き込んでの小遣い稼ぎが上手いなと感じてしまうのである。
 なぜに「スルガ銀行」がプレゼンティングスポンサーなのかはっきり分からないが、そういう意味では、日本でやることに関してはどうもイモ臭さが否めないタイトルマッチになってしまった。日本主導の一方的なタイトルマッチ構想に、日本との経済格差が顕著なアルセナルのHinchasたちのことを考えるとかわいそうな気もする。