脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

雨中で見せた至極の激戦 ~7節 VS鹿島~

2008年04月20日 | 脚で語るガンバ大阪

 4月中旬とは思えない冷たい風と雨が強く吹きつけるカシマスタジアム。観ている者には劣悪なコンディションとなったが、それと対照的に、ACLに参戦する両チームが火花を散らした90分は非常にハイレベルで、濃密な攻守の応酬を繰り広げた。

 鹿島は前節浦和に0-2で今季初黒星を喫したものの、それまでACLも含めた公式戦8連勝と非常に良い滑り出しで今シーズンのスタートを切っている。いかなる時も浮き足立たない。開始後の立ち上がり、安定した試合の入り方にその貫禄を充分窺わせる。鹿島は新井場と内田を欠く両サイドにそれぞれ石神と伊野波を起用。やはり中央に陣取る小笠原と青木、そして前線のマルキーニョスとそこに効果的に顔を出す本山のカルテットは脅威的だ。小笠原は1本のパスで局面を変え、絶妙のポジショニングを見せるマルキーニョスは見事にそのパスに呼応する。本山は得意のドリブルから守備陣を切り裂き、青木も守備面において的確なポジショニングで相手の攻撃の起点を潰しにかかる。前半は間違いなくこの4人を軸に鹿島がペースを握った。
 対するG大阪はここ数試合不動の布陣ではあったが、この鹿島に対して優位的に攻撃を展開できるとすればサイド攻撃だった。中央に鎮座する大岩、岩政の統制の取れたCBコンビとその前の青木を中央突破で崩すのは難しい。本来の駒を欠き、比較的対応が手薄になるサイドを鋭いドリブルの安田理とポジショニングで優れる橋本の動きが鍵となった。二川とルーカスが自在にポジションチェンジでボールに絡み、アタッキングサードからサイドへ。鹿島の攻撃を凌ぎながら、時間が進むにつれてG大阪は攻撃の形を作る。

 ターニングポイントは、32分のGK藤ヶ谷の負傷退場だったのかもしれない。CK時に岩政と競り合った藤ヶ谷が肩を痛めて、急遽松代と交代することに。しかしこれを機にG大阪にプレッシングの鋭さが増した。思わぬハプニングでの守護神の負傷に選手たちの胸には何か火のつくものがあったのかもしれない。その直後の36分には素早いリスタートから橋本⇒山崎⇒バレー、41分には橋本の突破からルーカス、前半ロスタイムには安田理のクロスにバレーと決定的なシーンを再三作った。しかし、この前半ロスタイムのバレーのチャンスは確実に決めておかなければならない。スコアレスドローに終わったことを考えれば非常に悔やまれるイージーなシュート逸になってしまった。

 後半開始直後にはマルキーニョスのシュートを松代が神がかったファインセーブで凌ぐ。相変わらず後半の立ち上がりに難を見せたG大阪であったが、前半以上に山口と中澤を中心に最終ラインを高く保ち続け、ポジショニングで優位に立ち続けた。間延びしてくる中盤と前線のスペースに徐々に苛立つマルキーニョス。彼に代表されるように鹿島は落ちていく運動量と前半見えたパスワークが消えていく。しかし相変わらずの守備の厚さにG大阪もゴールを割れずに時間は過ぎていった。スリッピーなピッチも手伝ってか、シュートが決まらない。焦る両チームのFWが簡単にオフサイドラインに引っかかる局面も散見された。
 G大阪は山崎とバレーがあとは決めるだけという状況。特に衛星的に高い位置でこぼれ球を拾える山崎は1点さえ取れれば勢いに乗れそうなだけに何とも歯痒い。播戸が戻ってくる前に是非ともアピールしておきたいところだ。その山崎に代わって69分に出場した佐々木もそのまま前線に入ったが、少し慣れないポジションにミスも目立った。ゲーム中、西野監督から「サイドに張れ」と指摘を受けていたが、やはり彼を中盤に配置してルーカスを上げた方が機能したかもしれない。“反逆のカリスマ”らしい西野監督の賭けが見られたが、結果的には機能しなかった。

 ヒヤッとする松代への2度のキーパーチャージを経て(特に1度目の田代との交錯は頭を打っていただけに脳震盪を起こしていた可能性も)、終了間際の鹿島の猛攻を遮ったG大阪。攻守にハイレベルでスリリングなゲームはスコアレスドローに終わり、共に勝ち点1を分け合う結果に。水曜にはすぐにACLメルボルン戦が迫る。息をつかせる暇の無い連戦はまだまだ続く。まさに“切り替え”が必要だ。中澤が90分間大声でチームを叱咤し続けたように、今こそ全員が叱咤し合い、ボール逸の際のリトリートの意識を再認識すべきだろう。

 最後に終了間際のルーカスへの警告は実に吉田主審が先走った。右足は確実にボールを捕えており、左足がスパイクの裏を向けていたように見えていたが、警告には厳しい。目視では非常に難しいだけに出てしまったものは致し方がないか。京都が8人で戦わざるを得なくなっていたことを考えればまだマシなのかもしれない。

 試合後、カシマスタジアム名物「もつ煮」にたっぷりの七味唐辛子をかけて胃袋に流し込むも、この季節外れの寒さは、選手たちが繰り広げたタフな試合と対照的に容赦なく我々の体に突き刺さるのであった。相変わらず悪天候、恐るべき鹿島・・・