東京さまよい記

東京をあちこち彷徨う日々を、読書によるこころの彷徨いとともにつづります

廣田稔明「東京の自然水124」

2010年03月11日 | 読書

東京の『自然水』のガイド本である。紹介の自然水は前回の「東京湧水せせらぎ散歩」の湧水と共通するが、この「東京の自然水124」(けやき出版)の方が多い。

紹介されている多くの都内の湧水のうち、特に印象に残ったのが小日向の今宮神社付近の石垣と元麻布のがま池である。

今宮神社付近の石垣の湧水は道そばであるが、以前はかなり水量があったという。今宮神社を訪れたとき気がつかなかった。そういえば、鷺坂を下り右折し神社に向かった通りの右側が石垣であったが、そこかもしれない。

元麻布のがま池は意外なところにある。涸れないから湧水があるのであろう。

左は1月に撮ったがま池の写真である。

がま池は本村町の高台の窪地で江戸時代五千石の旗本山崎主税助治正の屋敷があったところである(小沢信男、冨田均「東京の池」)。goo地図の江戸切絵図を見ると、池は示されていないが、山崎主税助の屋敷がある。

復刻版「戦前昭和東京散歩」(人文社)では、かなり大きく示されており、現在よりも相当広かったと思われる。この戦前の地図を見ると、蟇(がま)池には橋があり、周囲には道が一周し、階段も見え、散歩に適していたようにも思えるがどうだったのであろうか。また、近くの麻布中學との間に小さな池がある。この一帯には他にも湧水があったのであろう。

がま池は中沢新一「アースダイバー」で知った。「その都心部に涌き出してくる温泉や湧水池などは、そういう大地が空中に向かって吐息を吐く、大事な呼吸口なのだ。」と中沢はいう。確かに呼吸口は大切である。

麻布山善福寺に至る道の途中にある柳の井戸も紹介されている。

左は1月に撮った写真である。水が溜まっているのでわずかにでも湧き出るのであろう。

正面の説明板には、大正12年(1923)の関東大震災や昭和20年(1945)の空襲による大火災のとき、この良質な水が多くの人の困苦を救ったとある。

本書は飲み水の基本は自然水であるとし、自然水を新鮮な順から並べると、雨水、湧水、地下水、地上水(河川水)、池水(湖沼水)。自然水の選び方は、流れている水、空中水とするが、要するに、流れ落ちる水である。

水汲みの人気スポットであるところはその旨紹介されているが、いずれも郊外である。いつか出かけて、子供の頃ごくりと飲んだ冷たい清水でのどを潤してみたい。

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