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アートネタなど日々のあれこれ

刺繍少年フォーエバー

2024-07-23 00:00:55 | 美術
目黒区美術館で「青山悟 刺繍少年フォーエバー」を見てきました。

とはいえ、見に行ってからけっこうな日にちが経ってしまいました…が、自分の心覚えのために…。不肖わたくし、青山氏のことはよく知らなかったのですが、メインビジュアルになっていた「東京の朝」に惹かれて行ってまいりました。

目黒区在住の青山氏は刺繍で作品を制作されています…が、これ本当に刺繍?と絶句するほどの超絶技巧です。不肖わたくし、並縫いさえままならない不器用な女ですゆえ、もはや同じ人間とは思えない…と、畏怖の念すら覚えます。そして、その作品は単にリアルなだけではなく、独特のエモさもあり…「東京の朝」の前では思わず動けなくなくなってしまいました…。「About painting」のシリーズは名画を刺繍にし、さらに横軸をsocial-personal、縦軸をradical-conservativeとしたマトリクスの中に配置しています。セザンヌ、ゴッホ、マティス、クレー、マネ、モネ、フェルメール、フリーダ・カーロ…などの有名な作品が驚きの精度で再現されていますが、添えられているコメントがまたいちいち面白いのですよね…。かと思えば、氏の祖父である画家の青山龍水氏の作品と自身の作品を並べたコーナーも。青山氏がアーティストを志したのにはこの祖父の影響があるものの、反発を覚えた時期もあったそうです。作風は違うものの、独特のエモさが受け継がれているような気も…。一方で、労働問題など社会問題をテーマにした作品も制作しています。ウィリアム・モリスやロバート・オーウェンの言葉を刺繍にした作品も。また、刺繍をジェンダーの視点からとらえた作品もありました。19世紀の女性に21世紀のセレブの衣装を重ねた「ユートピア便り」にはビョークやテイラー・スウィフトも登場。「名もなき刺繍家たちに捧ぐ」シリーズには青森のこぎん刺しをテーマにした作品も。また、コロナ禍では「Everyday art market」というプロジェクトを展開、刺繍をしたマスクなどを販売したりしています。最近では目黒区内の小学校でアウトリーチ授業を行い、5年生の児童たちと「常識モンスターをやっつけろ!」というタペストリーを制作するなど、さらに活動の幅を広げています。そして、今回の展覧会のサブタイトルにもなっている「永遠なんてあるのでしょうか」のシリーズではなんとこの展覧会のチラシやアンケートを刺繍で制作しています。やはり驚きの再現度。アンケートには目黒区美術館の存続に関するコメントが刺繍で書かれていました。「永遠なんてあるのでしょうか」とは青山氏が近年取り組んでいるテーマであり、時代とともに社会から姿を消そうとしている「消えゆくもの」への問いかけのメッセージだそうです。姿は消えても思いは思念として残るのかもしれず…。活動が多岐にわたっていることもあり、刺繍でありながら刺繍を超えた何かを見たような展覧会でした。

さて、例によってアートといえば甘いもの…ということで、この日は美術館の近くの「gentille」でパンとバスクチーズケーキを買って帰りました。どちらも美味。とりわけチーズケーキは甘味と酸味、ほのかな焦げのバランスが絶妙で美味しゅうございました…。
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