aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

アザー・ミュージック

2022-09-19 22:24:55 | 映画
シアター・イメージフォーラムで「アザー・ミュージック」を見てきました。

2016年に閉店したNYの伝説的レコードショップ「アザー・ミュージック」の波乱万丈の21年間の歴史を追ったドキュメンタリーです。「アザー・ミュージック」とは、「その他の音楽」のこと。大手レコードチェーンのタワーレコーズの斜向かいにあるこのレコードショップは、メインストリームの音楽とは異なる音楽を紹介していました。店はいつしか音楽好きの人々が集うコミュニティーとなり…(以下、ネタバレします)。

パワフルなジョシュ・マデルとシャイなクリス・バンダルー。ともに音楽好きながら対照的な性格の二人が1995年にアザー・ミュージックを創業しました。当時のNYにはインディペンデントな音楽を扱うショップがあまりなく、そういう音楽を若い人々に紹介したい、というのが動機だったようです。「音楽の見方を変えたい」ということも言っていましたね…。このショップは品揃えも分類の仕方も独特でした。海外の音楽、古い音楽なども扱い、普通のショップなようなジャンルごとの分類はせず、「In」「Out」「Then」といった分類の仕方をしていました。ちなみにInはインディーズ、Outは実験的な音楽、Thenは古い音楽のことでした。もっとユニークなのは店員たち。変人っぽいものの、驚きの音楽知識と音楽愛を持つ彼らの接客に押しつけがましさは微塵もなく、実にフレンドリーにおすすめの音楽を紹介しています。

アザー・ミュージックは、2000年頃にはインディーシーンの拠点の一つとなってシーンに影響を与えるようになります。当時はインストアライブも行われ、リスナーとの交流の場にもなっていました。バンドのメンバーが店員だったことも。しかし、2001年の同時多発テロを経て街の雰囲気が変わり始め、さらにネットの普及がレコードの売上にも影響を与えるようになります。そして、タワレコが倒産。これがアザー・ミュージックの客足にも響きました。一時、オンラインショップにも手を出しましたが、あまりうまくいかず…(やめる時はルー・リードから困るんですけど、というメッセージがあったそうですが)。元々、フィジカルメディアを好むタイプの客が多かったのです。店が苦境に陥ると、経営者の二人は店員たちに給料を払うため、自分たちは無給で働き、妻たちの稼ぎでしのいでいました。しかし、ついに閉店を決断…。閉店の時に、アザー・ミュージックのトップセラーのリストが書き出されていました。1位はベル&セバスチャン。Boads of Canadaとかもランクインしてましたね…。フェアエル・コンサートにはオノ・ヨーコさんも登場。相変わらず元気にシャウトしてましたね…。

お金を払わずに音楽を聴くのが当たり前の時代になったことが、アザー・ミュージックの息の根を止めることになったかと思うと切ないですが…。自分も無償で聴ける音楽の恩恵を多々受けていますが、一方で、レコード屋で運命の出会いをはたしたミュージシャンもいるのです…。これからは創り手と聴き手がダイレクトにつながることが増えてきそうですが、それでも、形は変われど音楽と人とをつなぐ仕事は続いていくのだろうし、そのありがたみを忘れずにいたいものです…。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アメリカン・エピック | トップ | バグダッド・カフェ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画」カテゴリの最新記事