aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

祈り

2023-01-28 16:23:18 | 美術
世田谷美術館で「祈り・藤原新也」を見てきました。

藤原新也氏の50年以上にわたる表現活動の軌跡を辿る展覧会です。意外なことに、氏の個展が公立の美術館で開催されるのは今回が初めてなのだそうです…この展覧会では「祈り」という言葉をキーワードに、藤原氏が自ら編集を手がけています。

会場に入ると2020年4月の渋谷の写真が…人の気配がないモノクロームの光景。光り輝く「かみさま」。美しい蓮の花の写真には「世界のはじまりは、こんなにも美しいのかと息を飲む」という言葉が添えられています。「死を想え(メメント・モリ)」のシリーズはインドの聖地バラナシの光景。両手指で陰陽合体の印を結んで逝った僧、ガンジスの川辺の火葬、水葬された死者を食らう野犬の群れ。人間の死とはこういうもの…という事実を突きつけられて、なぜか不思議な解放感を覚えます。「生を想え(メメント・ヴィータ)」のシリーズはインドで生きる人々のパワフルでカラフルな写真。メメント・モリという言葉に触れる機会は何度かありましたが、メメント・ヴィータという言葉を見たのは初めて…メメント・モリはメメント・ヴィータの裏返しだったということに、今さらながら気づきました。「チベット」のシリーズも。突き抜けるような天空の青。仏の姿を内包する人間の姿。「逍遥遊記」はアジア漢字文化圏の旅。日本と似ているけれどどこか違う、独特な湿度を感じる風景。「日本巡礼」はひっそりと美しい日本の風景。そして「東日本大震災」。祖母への手紙、音のない世界、満開の桜、観音の月光…。「バリ島」はまさにサンクチュアリの光景。まゆげ犬もいましたよ…。藝大時代の絵画も展示されていました。何ともファンタスティック。そういえば、藤原氏の写真にはどこか絵画の趣があるような。「藤原新也の私的世界」では人生を写真と共に振り返ります。門司、津波敷、柳井、鉄輪…。幼い頃から藤原氏の旅は、「あの世とこの世を行き交うがごとく」だったとか。そして、最後は父の臨終を撮った「最後の微笑」。臨終を告げられた父、最期に笑顔が欲しい…そこで「はい!チーズ!」と声をかけると、何と大きく口を開いて笑ったのです…。

この日はコレクション展「それぞれのふたり 萩原朔美と榎本了壱」も見てきました。お二人は寺山修司の天井桟敷で出会い、雑誌「ビックリハウス」を創刊しました。萩原氏の作品は映像、版画、写真、アーティスト・ブックなど多岐にわたります。同じ場所やシチュエーションを時間差で撮った「定点観測」の膨大な写真群、アーティスト・ブックはアイデアが楽しい。榎本氏の作品は澁澤龍彦『高丘親王航海記』を全文筆写して挿絵を添えたものですが、壁一面を覆いつくす文字と画に茫然…。

さて、アートといえば甘いもの…ということで、この日は美術館と用賀駅の間にある「LEPO COFFEE STAND」に寄ってきました。季節限定のハニージンジャーラテとカヌレを頂きました。ラテのアートも綺麗だったし、カヌレはもちもちの食感で美味しゅうございました…。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2022年ベスト | トップ | モリコーネ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

美術」カテゴリの最新記事