東京都渋谷公園通りギャラリーで「線のしぐさ」を見てきました(この展覧会は既に終了しています)。
この展覧会はアメリカの障害のある人々の創作活動を牽引してきたクリエイティブ・グロウス・アート・センターの作家と、日本の作家をともに紹介しています。このセンターでは1,100平米余りのアトリエに100人以上の障害のある人が通い、制作を行っているのだそうです…。私が今回、一番惹かれたのは坂上チユキさんの作品でした。水色や青色の線で描かれた繊細なドローイングには「父は鳥、母は魚(故郷はパプアニューギニア)といった不思議なタイトルがつけられています。太古の海を想起させる作品を見つめていると、心がしんと静かになっていくような…。坂上さんの自叙伝には「5億9千万年前プレカンブリア紀の海に生を受けた」とあるのだそうです。トニー・ぺデモンテの作品は木材や廃品を組み合わせた骨組みを糸や毛糸で包みこんでいます。張りつめられた糸の織り成す色の諧調も美しい。スーザン・ジャノウはグリッドをクロスハッチングで埋めるドローイングを制作しています。モンドリアンを思わせるような作品も。東恩納侑さんの作品は針金のゆがみを利用しながら3次元的にかたちを捉えるというもの。針金で作られた機関車はどこか素朴でユーモラスな趣…。齋藤裕一さんの作品は好きなテレビ番組名などを書き連ねるドローイング。どんな字が隠れているのかを探すのも楽しい。ダン・ミラーも関心のあるものに伴う形、アルファベット、数字を重ねる作品を制作しています。意味から解き放たれた記号たち…。ドワイト・マッキントッシュは自身の経験に由来するモチーフを線で捉えます。奔放かつ強い線は感情の高まりにより描かれているのだとか。西村一成さんは大胆で伸びやかなドローイング作品を制作、「線は僕の肉体の延長」と。松浦繁さんの作品は木に彩色をしたものですが、独特のフォルムが面白い。ジュディス・スコットは毛糸などを丹念に巻き付けた、繭のような立体作品を制作。毛糸の絡まり合う毛糸に包まれた作品は謎の生物のようにも見えてきます…。
一本の線を引く、というのはとてもシンプルな行為です。でも、その線がある方向に延びたり、あるいは重なり合ったりすることによって無数の新たな世界が生まれる…ということを目の当たりにしました。世界は線でできているのかも…。
鑑賞後はちょっと一息…ということで、近くのTAILORD CAFÉに寄ってきました。アイスラテを頼みましたが、エスプレッソがベースの濃厚なお味で、美味しゅうございました…。
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