あれは何年前のことだったかしら。
「僕たちは第一バイオリンと第二バイオリンとビオラとチェロ
メイさんの指揮棒だからこんなにいい音が出る。」
なんて嬉しいことを言ってくれていた若い同僚夫妻と
こじゃれた居酒屋で杯を傾けていた時に
どんな経緯からだったでしょうか
バルテュスの話になりました。
私よりずっと若いとはいえ
本にも、音楽にも、美術にも造詣深く
自宅の庭に石釜を作って
ピザまで焼いてしまう凝り性夫婦です。
わたくし
恥ずかしながら「バルテュス」を知らなかったら
優しくあきれられて
次に会った時に「バルテュスの優雅な生活」という
絵や写真がたくさん載った本をプレゼントしてくれました。
表紙は、少女が鏡の中の自分を見つめる「美しい日々」
バルテュス38歳の時の作品です。
開いてみれば最初に飛び込んでくるのは若き日のバルテュスの
憂いを含んだ端正な横顔。
ここでもうクラッと来ました。
ページを繰れば
今度は皺と染みを92年の生涯の証とした
孤高の画家の両手のクローズアップです。
ここでまたクラクラと来ました。
そして次の目次のページには
射すくめるような眼光でこちらを見る
壮年期のバルテュスです。
これでもう完全にノックダウンされました。
というわけで
少々不純な動機で興味を惹かれたバルテュスという作家でしたが
その後、その作品を知り
その生活ぶりを知るほどに
深く、さらに深く惹かれていきました。
その頃にはまさか
「バルテュス展 賞賛と誤解だらけの、20世紀最後の巨匠」
などという大展覧会が日本で開かれるなんて思ってもみずに
クラクラ仲間同士で語り合うぐらいだったのです。
それにしてもたいした告知です。
JRの駅にも大きなポスター
新聞にも、3月、4月二回にわたって全面記事。
昨日、開催初日を迎えた「バルテュス展」に早速行きました。
初日、土曜日、いい天気と三拍子そろっていましたから
さぞや混雑しているだろうと覚悟の上でしたが
人が少なく、ゆったりと見ることができたのは拍子抜けでした。
作品に加えて
バルテュスの最期の住処となった
スイス ロシニエールの仕事場の再現も
ふとそこに、あの射るような眼差しの作家が
立っているように感じさせるものでした。
500円で借りられるイヤホンの解説には
最後の25年を共に過ごした節子夫人へのインタビューも入っています。
「バルテュス展」
賞賛と誤解だらけの、20世紀最後の巨匠。
2014年4月19日~6月22日
東京都美術館 1600円(一般)
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