1.「秘法一本針伝書」下肢外側の病の鍼(環跳)
1)取穴法
患側を上にした側腹位で、なるべく腹壁に大腿をつけるようにする。上前腸骨棘の外下方で曲がり目に太い筋がある。この筋の後側にゴリゴリするところがある。ここを指で押さえると大腿の外側に響く処がある。これを環跳穴とする。
2)用鍼
3寸の2番ないし5番の銀鍼、あるいは2番ないし3番の鉄鍼をもちいる。
3)患者の姿勢
前記した体位にせしめて取穴。患側の膝頭を両手で抱き、腹壁につけるようにすればなおよい。
4)刺針方向
皮膚に対して直刺。
5)技法
刺入した鍼を静かに状芸に進退動揺させながら刺入する。
6)注意
全身に力を入れ息を吸いこみ、そのまま止めて息を腹に貯えるようにする。かつ口を閉じ、鍼の響きがあれば直ちに抜く。下肢後側が痛み場合と同じ。
補助法として、丘墟穴、外丘穴、中涜穴に刺針する。
2.現代鍼灸からの解説
ブログ「大腿外側痛の針灸治療」参照。本ブログと内容が一部重複している。
https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/03c8b1fc1f9c88bc3814afbb3daad2a8
環跳の位置は現代でも2通りある。素霊の下肢外側の病の鍼の「環跳」は下記①の方法による。
①側臥位で股関節と膝関節を屈曲。その時できる鼠径部横紋の外側、大転子の前上陥凹部にとる(学校協会テキスト)、
②側臥位、大転子最高点と仙骨裂孔を結ぶ線を三等分し大転子から1/3の陥凹部にとる(韓国の標準テキスト)。
素霊の環跳刺針では、では中殿筋が伸張されて筋トーヌスが高まっている状態で中殿筋中に刺針できるので、針響が生じやすくなる。
中殿筋は、基本的に股関節外転筋で、大腿骨頭を骨盤に引きつけて歩行を安定させる作用がある。
本筋の緊張では腸骨稜に沿う痛み他に大腿外側に放散痛を生じる。
また中殿筋の深部には小殿筋がある。その機能は中殿筋に準ずるが、小殿筋放散痛は大腿後側にとどまらず、膝関節を越えて下腿後側や外側まで生じるという特徴がある。
つまり症状が大腿外側までならば中殿筋を、膝を越えて下腿にまで及べば、さらに深刺して中殿筋の奥の小殿筋にまで刺入するとよい。