雲は完璧な姿だと思う。。

いつの日か、愛する誰かが「アイツはこんな事考えて生きていたのか、、」と見つけてもらえたら。そんな思いで書き記してます。

広げた手のひら

2012-11-04 00:16:03 | 素敵
どうもKさんはフラレタようです。



その時僕はハタチぐらい。
Kさんは二つ年上の男性の先輩だから......
22才ぐらいだったでしょうか。
身長は180センチ以上で肩幅もあってガタイも良い。
足も標準的な日本人より長め。
10代を数年間アメリカで過ごしていたせいか、
価値観もファッションも完全にアメリカン!なスタイル。
それも、芯から。
映画「タクシードライバー」のデニーロに似てる感じ!?で。
無精な口髭と顎髭をはやし、
肩ぐらいまで伸ばしている黒い長髪は、
いつも少し前髪を垂らしつつ、
後ろは後頭部の辺りでヘアバンドでまとめられていて。
野生的というか、
野武士的というか。
いつもKAWASAKIの400ccのバイクに乗っていて。
ティアドロップ形のレイバンのサングラスをかけていて。
そのグラスを取った顔も......濃いめ!(@。@)
そんなKさんと一緒にアルバイトとして働いていたカフェバーで、
2人してビールを飲んでいた時の話しです。
名物の長いカウンターの隅っこに2人並んで坐っていました......



Kさんはその店のキッチンのコックさんで、
僕はフロアーでカウンターを預かるメインのバーテンダー。
いつもコンビのように働いていて。
実家を離れて暮らしている僕達二人にとっては、
そのお店はまるで家のような場所、存在でもありました。
仕事が無い休日に街を遊び歩いた後にも、
そんな家の様なお店の様子を覗いてみようと、
家族の様なスタッフの顔を見てみようと、
ノコノコとビールを飲みに来ていました。

その頃のKさんには一人、
Kさんよりもう二つぐらい年上の「憧れの女性」がいました。
彼女は美大で画家を目指している凛とした美しさを持ったとても神秘的な人。
色々な家庭の事情もあって、
若い時から自分で稼いだお金で学費も生活費も全て賄って、
ひたすら大好きな「絵」の勉強に打ち込んでいたような人。
Kさんはそんな彼女を、ずーーーーっと、数年間、
片思いちっくに想い続けていました。

Kさんから聞く彼女の生活というのは見方によっては壮絶で。
二十歳そこそこの美しい女性が古い安アパートに一人で住んで、
キャベツ一個で一週間を過ごすようなこともあったようです。
ある時、彼女が部屋の冷蔵庫を開けると、
白いハズの冷蔵庫の中が真っ黒になっていたようなこともあったそうで、
それは、
電気代も払えないのでコンセントを抜いて食料入れの様に使っていたら、
古くてゴムパッキンもヨレヨレになっていたドアから沢山の蟻が入り込み、
内側の壁一面にビッチリと張り付いていたから......だったそうです。
それでも彼女は稼いだお金の多くを
大好きな絵を書くための道具に注ぎ込んでいたようでした。
そんな女性です。



僕達はカウンターのハジっこに座り、
Kさんはすこーし酔っぱらいながら、
そんな彼女に言われたことをブツブツと僕に話し出しました。
ある時、彼女はKさんに、
目の前の空間いっぱいに手のひらを広げながら、
こんな話しをしたそうです。



「......あのね、Kちゃん。
私が好きな男性っていうのはね、、こう、
手をイッパイに広げるでしょ......
ジャンケンのパーみたいに。
男の人って、大体こんなかんじ。たぶん、みんな。
手のひらから出ている指の様にトゲトゲ、
ギザギザしているような所があってね、
それでね、ほとんどの男の人っていうのはね、
社会に出て、大人になっていくに連れて、
その広げた手の指一本一本を、こう、、削って、削って、、
削っていって、折っていって、
ジャンケンのグーみたいになっていって、、
そうして、丸くなっていくの。

それでね、私の好きな人っていうのはね、
その最初に広げた手の指を絶対に折らないの。
削らないの。

でもね、世の中は大変だから、
やっぱりちゃんと丸くなっていかなくちゃいけなくて。
どう丸くなるかっていうと、
その広げた指の間に色々なものを付け足していって、
指の間を厚く埋めていって、
そうやって丸くなっていくの。
私はそうやってマルくなっていった人が好き。
私はそういう人が好きなの。

そうやって丸くなった人の丸さってね、
何も削ってないから、ね、とても大きな丸なの。
グーよりも全然大きい。包めるくらい。
野球のグローブみたいな丸。
私はそういう人が好き。
私の彼氏ってね、、、そういう人なの......」



......Kさんはどうやらフラレタようです( ̄+ー ̄)



Kさんにそんな話しをした暫く後、
Kさんの憧れの彼女は素晴らしい「個展」を
全国各地で開けるまでに成功しました。
画家としたらそうそう出来るような事ではないのだそうです。
それをKさんも嬉しそうに、誇らしげに話していました。

最初の個展を開く時は当然スポンサーなどいなくて、
資金なども相当額必要だったと思いますが、
なんでも、彼女の彼氏というのが鳶職の方だったようで。
仕事が入っている時とそうでない時の収入の差がとても激しく、
その中で多くのお金が入って来た時には

「絵のために使ってくれ......」

と、まだ結婚もしていなかった彼女に
いつも渡していってくれたのだそうです。
彼女は数年間、
そのお金だけは一円も使わずに全てを貯金していて。
記念すべき一番最初の個展というのは、
その貯金していたお金で「彼と二人で」開いたのだそうです。
Kさんはその時、
それを我がことのように嬉しそうに話していました。

その個展はKさんもしっかり見に行ったようで。
一人、400ccのKAWASAKIのバイクに乗って、
東京から遠く、九州の地まで。

そんな話の最後にKさんは、自虐的に、
カウンターに置かれたハイネケンの生をジッ......と見つめながら、
こう言いました。



「そんな彼氏じゃさ、、、
今の俺じゃかなうわけないよな。。」



Kさんはフラレタ?ようです。。( T_T)\(^-^ )



今でも時々ご飯を食べたり、
何かと会う戦友のような大切な先輩Kさんは、
今では二児のパパでもあり、
素敵な家庭を素敵な奥さんと築いています。
奥さんは僕もよく知っている僕らに共通の先輩。
当時からKさんを何かといつも優しく支えていた姿を覚えています。
僕からすると、その画家になった彼女と全く同じ印象の、
素敵に大人びた、モデルの様にスタイルの良い美しい女性でした。
そしてKさんは、
今会うと「大きなグローブ」のような人です。



この頃暇さえあれば行っていた湘南、江ノ島(江の島)。
また近くビールでも持ってでかけようかな。(^^)


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