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憧れのソウル・大学路に行ってきました~文化の移植・ソウル大学路と上海人民広場

2024年05月12日 | エンタメの日記
先日約4年ぶりにソウルに行きました。今回初めて韓国ミュージカル(Kミュージカル)の聖地・大学路(テハンノ)に行ってみました。
上海ではここ数年ミュージカルが急成長しており、Kミュージカルを中国語化したものが多数上演されています。上海でこれだけミュージカルの公演が増えたのは、Kミュージカルのフォーマットを取り入れたからだともいえます。

韓国ミュージカルは作品のバリエーションが豊富で、ソウルの大学路に集中する小劇場では少人数(3名~6名)のキャストで演じる休憩なしの約2時間の演目がよく上演されています。その中でも、男性俳優メインで構成される作品は若手俳優が豊富な中国に適しており、多くの作品が中国語化されています。
上海では人民広場近辺に劇場が集中しており、ソウル・大学路のミュージカル文化が移植されたような状態です。もちろん移植されただけではなく、現地の土壌に見合った成長を続けています。

大学路は地下鉄4号線恵化駅の周辺エリアを指し、ソウル大学のキャンパスがあったことが名前の由来だそうです。韓国ミュージカルの聖地と言われていますが、ブロードウェイというよりは下北沢のようなところでした。
細い道路の両側に飲食店やバー、カフェが入った低層ビルが立ち並び、ビルの合間にミュージカルを上演する小中規模の劇場が点在しています。

今回はYES24 Stage(Hall1)で『狂炎ソナタ』というミュージカルを観ました。
本当は自分が中国語版を観たことがあるKミュージカルを観たかったのですが、タイミング的にそんなに上手くいきませんでした。『狂炎ソナタ』は7月に上海で上演される予定です。
  

韓国ミュージカルのチケットはYes24やinterparkのウェブサイトで事前に購入できます。すごく便利です。
中国のチケットを海外から購入しようとする場合、中国の携帯番号がないと購入が難しいです(Wechat、アリペイ(支付宝)内のミニプログラム機能でチケットプラットフォーム(大麦、猫眼、票星球など)を呼び出すことで、中国の携帯番号がなくても購入できるものもあるようです)。

韓国ミュージカルの客層は中国ととてもよく似ていると思いました。
観客の95%以上が女性で、20代、30代がメインです。一人で観にきているけれど、劇場に行けば顔見知りに出くわす・・・というかんじでしょうか。
開演前に英語での火災時避難の案内があり、その後に劇場スタッフが韓国語で注意事項をアナウンスしましたが、「スペシャルカーテンコール」という単語しか聞き取れませんでした。
私が観たのは平日の夜公演で、客入りは9割くらいでした。
お芝居が終わった後、観客が一斉に立ち上り拍手を送りました。いきなり最初からスタンディングオベーションです。このフェーズが恐らく「カーテンコール」で、カーテンコールでは観客は撮影をせずに拍手を送ることに集中します。だから敢えて全員立ち上がっているのかもしれません。
ひととおり拍手を送り、俳優さんが舞台から去ると観客が再び着席し、「スペシャルカーテンコール」が始まります。ここからは観客による撮影が可能になります。スペシャルカーテンコールが始まる前にスタッフがステージに散らばった小道具などをざっと片付けます。中国ではこのような片付けを挟むことはありません。
スペシャルカーテンコールのときの雰囲気は中国とまったく同じでした。立派な一眼レフカメラを構えている観客が多く、自動シャッターを切る音、ピント合わせのピピ、ピピピという電子音が劇場に鳴り響きます。


上海のミュージカル公演では、お芝居が終わり俳優さんが舞台上でお辞儀をしている段階から撮影可能です。そのため、撮影を優先して拍手をしない観客が一定数います。カーテンコールで観客が一斉に立ち上がって拍手を送るという大学路の鑑賞マナーは、上海には移植されていないようです。

『狂炎ソナタ』は3人の俳優で構成される作品で、日本でも上演されています。
ミュージカル『狂炎ソナタ』日本語サイト:https://mu-sonata-2024.com/
物語の大筋は辛うじて把握していましたが、韓国語が分からないのでセリフの内容は全然分かりませんでした。
初めて大学路のミュージカルを観て一番印象的だったのは、役柄に合うバリトンの人がキャスティングされていたことです。
中国のミュージカルは声質よりもルックスのバランスを重視するせいか、バリトンの人材がほとんどいないです。

韓国ミュージカルの俳優さんは顔とスタイルが良く、衣装の着こなしがおしゃれで、歌や演技も上手く、そして緊迫感のある舞台でした。
舞台表現の熟練度という点では、韓国の方が上海よりも上かもしれません。ただ、ルックスレべル、基礎的な歌唱力という点では、それほど差はないように思います。だからこそ、多くのKミュージカルを中国語化して上演できているといえます
韓国俳優は雰囲気があり、韓国俳優ならではのかっこよさがあります。中国俳優はスタイルそのものがきれいで、美形のバリエーションが豊富です。

大学路の観客のマナーはよく、公演中にスマホでメッセージを打つ人や、スマホをぼとりと床に落とす人はいませんでした。ただ、上海と同じく咳をしている観客が多く、感染症流行の影響を感じました。

大学路は想像していたよりもずっとコンパクトでちょっと拍子抜けしました。ソウル大学は医学部(大学病院)を残して移転してしまいましたが、成功館大学のキャンパスが近く、他にも学校があるので学生街の雰囲気があります。






上海のミュージカル劇場は人民広場周辺に集中しておりロケーションがよいです。
劇場自体は小さくても建物自体は大きく、昔から続く繁華街にあるので「これから劇を観に行くぞ」と気分が上がりやすいです。中国は建築物のサイズがすべて大きく、凹凸がダイナミックなので写真映えします。

上海人民広場近辺の九江路。人民大舞台、亜州大厦の正面入口付近です。


ソウルはとても機能的で常にバージョンアップされている都市ですが、写真でその良さを表すのが難しいです。
しばらく行かないうちにインチョン空港第1ターミナルは改装されており、一瞬第2ターミナルにいるのかと思ったほどです。
インチョンT1の外国人向けの入国審査窓口は全部で20個ありますが、そのうちの18個が稼働しており、20分程度で入国審査を通過できました。
インチョン空港は機能性が高くキャパシティの大きい空港ですが、その分あらゆるポイントで歩く距離が長いのが難点です。

ミュージカル鑑賞以外に観光もしました。

景福宮(キョンボックン)
ソウル版の浅草雷門のようなところです。平日だったこともあり外国人観光客ばかりでした。あらゆる国の人々がレンタルの韓服(ハンボク)を身に纏って景福宮を目指します。景福宮は韓服を着ていると入場料が無料になります。景福宮の入場料は3,000ウォン(約340円)なのでレンタル料の方がもちろん高いのですが、欧米、東南アジア、アフリカ系、あらゆる国の人々が韓服を着ていました。


文化遺産名所としてすごく面白いかと言われると微妙なところですが、建築物の復元工事を懸命に進めており、韓国のやる気を感じさせられる場所です。

青瓦台(チョンワデ、せいかだい) 
2022年に現職尹錫悦大統領の方針により「市民の懐にもどってきた」元大統領府・青瓦台。
メインの建物「本館」の内部は見学できますが、それ以外は広大な敷地の庭園を楽しむというものになります。本館はクラシックな独特の内装・デザインですが完成は1991年と意外と新しいです。
庭園はとてもきれいに整備されています。青瓦台の中で文化財として価値があるとされているのは最近国宝に指定された「石佛坐像」です。「石佛坐像」があるところまで登ると、見晴らしがよく、天気に恵まれれば南山ソウルタワーも見えます。


2024年汝矣島桜祭り
今年はソウルでも桜の開花が予想より少し遅れたようです。汝矣島桜祭りの開催期間は3月29日〜4月2日でしたが、満開は4月4日頃でした。
食べ物の屋台が集まるヨイナル駅がスタート地点として案内されていますが、ここから桜並木に入り国会議事堂を回って最後まで歩くと相当の距離になります。汝矣島の先端をU字型に歩くようなコースになるので、疲れても途中で離脱して交通機関に逃げるポイントがありません。そのかわり、路上に仮設トイレが沢山設置されており便利です。


汝矣島の漢江沿いのエリアは市民の憩いの場として整備されています。
夜中でも安全で追い出されることはないそうです。芝生のキャンプエリアに夜中まで人が大勢集っており、マラソンサークルのような若者のグループも多かったです。漢江の周辺は自然に恵まれた環境です。なぜソウルでは漢江周辺の不動産が高いのか分かるような気がします。


2016年頃まで韓国の観光業は中国人観光客にすごく依存していましたが、現在では済州島(チェジュド)を除くと、中国人観光客の比率は高くありません。欧米、東南アジア、インド、日本など、世界各地からまんべんなく観光客が訪れています。
かつては中国語と日本語の表記もよく見かけましたが、いまは外国語は英語に一本化しているように思います。その代わり、英語表記がある場所が増えて、外国人にとってはより便利になったかもしれません。


韓国も物価が上がっていると言われていますが、旅行する分にはそこまで高いと思いませんでした。円安の影響を除外すると、上海と比べてソウルがすごく割高だとは思いません。
ミュージカルのチケットの価格も、演目によって異なりますがソウルと上海で大きな違いはないように思います。

街中を普通に歩いている分には、あまりKPOPやKドラマの影響力を感じませんでした。
かつてのイ・ビョンホンやイ・ミンホのように特定の俳優がものすごく売れていて広告がそこら中にあるという時代ではなくなったのでしょうか。
4月5日からNetflixで韓国ドラマ『寄生獣』の配信がスタートするので、『寄生獣』を宣伝する地下鉄のモニター、路線バスのラッピングを何度も見かけました。

地下鉄や街中では日本のキャラクター商品を身につけている人が以前よりも目につきました。
ちいかわのストラップ、サンリオやクレヨンしんちゃんのスマホケース、そして書店では日本の漫画の単行本が沢山売られています。
JUMP系を中心とするメジャー漫画の単行本は1冊約6,000ウォン(約680円)で販売されており、韓国の物価からするとそれほど高いものではないと思います。コーヒー1杯より少し高いくらいの値段です。
一方、韓国の漫画は元々デジタル媒体で発表されているので、そこから紙媒体化すると単価が高くなる傾向があるようです。そのため、韓国の漫画より『呪術廻戦』など日本の漫画の韓国語版の方が定価が安く、不思議な感じがします。

AK PLAZA 弘大店の中にあるアニメイト 漫画・書籍の品揃えが豊富。


AK PLAZAは日本関連のテナントが多いです。アニメイトがある5階は他のグッズショップも入っており、欧米人も多く来店していました。



BLは韓国コンテンツが強いですが、少年漫画は日本の漫画が売上ランキングの上位を占めていました。呪術廻戦、フリーレン、ブルーロックなど日本と同じようなタイトルが売れています。あと『極楽街』が人気かもしれません。

コロナの3年を経て、韓国では日本コンテンツ(主にアニメ)に対する受容度が上がったように感じます。
大統領交代による政治的な影響もあるかもしれませんが、それよりも、ビジネスとしての旨味が浸透したからなのではと思います。
日本でKPOPが流行っていますが、「KPOPビジネス」によって利益を得るのは韓国側だけではありません。KPOPビジネスに関わる日本企業にも当然利益を得るチャンスがあります。
むしろ、いちから新しい何かを自分で創り出すよりも、あらかじめ商品として完成しているKPOPを売る方が早く稼げる可能性があります。

日本のアニメや漫画、周辺グッズは競争力のある商品です。
売れると分かっているのだから、排斥せずにビジネスにすれば韓国側にもメリットがあります。経済的にも、いまの韓国は日本の商品価格を受け入れる力が十分あります。
クリエイティブな仕事は不確定性が高いです。天才はいつ現れるのか分かりません。いちから何かを創り上げるのは大変なことです。
中国でも日本のアニメグッズがよく売れていますが、「中国独自のアニメを盛り上げよう」という志にこだわらずに、すでに出来上がっている日本の商品を販売して消費する方が遥かにラクで、ビジネスとしてもリスクが小さいです。
感情的な抵抗がなくなってしまえば、文化はどんどん吸収されます。日本と韓国はシンクロする市場の範囲がさらに広がっていくと思います。

スマホゲームは韓国でもmiHoYoの原神やスターレイルが人気です。miHoYoは「日本風のゲームを作る中国のゲーム会社」です。


ソウルで行われる高畑勲展の地下鉄駅構内の広告

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2 コメント

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こんにちは (はるみとまこ)
2024-05-13 12:50:52
阿姐さん!
ソウルに行かれてたのですね
海外は2018年の台湾が最後で、ソウルには何年行ってないのか?
ミュージカルは見に行きたいのですが、高いだろうなと。
円安の日本に居ると、海外に行くのは勇気が要りますね
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はるみとまこさん (上海阿姐)
2024-05-13 23:55:45
こんにちは!小劇場はそんなに高くないですが、大学上のゴージャスな作品は高いですね・・・。韓国でベルばらやりますね!何編をやるんでしょうね。宝塚じゃないから普通に原作どおりにやるのでしょうか。3時間に全部収めるとなると駆け足になりそうですね。
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