ロシアの長編小説風にいえば、「安全は皆同じようにみえるが、危険はそれぞれの危険の形がある」ということだろうか。最近の脱原発の動きをみると、そんな印象を受ける。先週29日に異常な盛上りをみせていた脱原発デモはここへきて、内部抗争が勃発している。
脱原発デモの主催者たち(緩やかな連合体のようだ)の一部団体の1人がツイッターで反原発の筆頭である早川由起夫氏や木下黄太氏を批判したのが発端である。木下氏はこれまで一連のデモにも参加し拡散の参加を呼びかていた。しかしこの誹謗するツイッターを問題視し今後デモには参加しないことをブログで宣言している。問題のツイートはこうだ。
まあそれならそれでしょうがないですけど、これから幅広いクラスタに属する反原発派が、「早川的なもの」(木下黄太的なものとかも)から距離を置いていくことになるだろうし、そうならないといけないと思うので、今はまだ過渡期ということで暖かい目で見れたらいいな。と。
木下氏がこのツイートを見て激怒し、今後のデモ不参加を表明したというわけだ。デモ主催する連合体でも特に中核になるグループが、当初から木下氏の放射能被害への過剰反応やがれき広域処理への過激な対応を快く思っていなかった。それを木下氏はどこからか聞いていたようだ。これまでそれを知りつつ我慢してデモにも参加していたが、今回のツイートで堪忍袋の緒が切れたということだ。ツイートをした人間と同じグループの別の人物から木下氏へ弁明のメールがあり「メンバーにも見解の違う人がいる」としているが、不信感は逆に高まったようだ。
主催側がこうしたずさんな対応を続け、僕への中傷をしていることは間違いありませんし、その後の対応も、ごまかしの域を超えません。これから、デモが多数になり、物理的な危険も想定される中で、こうした主催者のデモに、僕が参加するように呼びかけることは、これ以上、できないと判断いたしました。
木下氏のブログを見ると、こうした大規模なデモは主催各団体が会議で集まって作戦を討議するようなきちんとした集まりではない。主にメールでやり取りする関係で直接顔を合わせるわけでもなく、共闘する相手はどういう性格なのかもわからない。まさに緩い連合体そのものだ。
これまで大飯原発再稼働反対という共通の問題意識でひとつにまとまっていた。しかし再稼働が現実なものとなってしまった現在、デモを主催する各グループの思惑の違いが表面化するのは必然的な流れであろう。
「早川由起夫的」T木下黄太的」がある一方で「反早川的・木下的」なグループがある。あるいはその「中間派」もいるだろう。もはや原発再稼働反対のような共通の目標がない以上、今後これら脱原発の運動は離合集散を繰り返しつつ沈静化していくだろう。
たとえれば「脱原発デモ」など、ネットの呼びかけで自然発生的に膨張した風船のようなものではないか。しかしその熱気もあっという間にさめて萎んでしまう。内部抗争をし、一部はさらに先鋭化する危険性もある。今後はそうした過激な活動には注意が必要だが、一時の脱原発という熱病から冷めて本来の「エネルギー論議」に移っていくことだろう。またそうなることを期待したい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます