最近中国共産党当局がネット規制の一環として書き込みやショートメッセージに使う単語829語を使用不可にしたという。人権やデモなど政治関連が8割を占めている。国民の些細な不穏な動きにも敏感に反応する中国当局の危機感は相当なもののようだ。中国国内では年間60万件ともいわれる民衆の抗議やデモが群発しているため、国の公安費が軍事費を大幅に上待っているという。
ネットを監視するサイバーポリスといわれる人員が4万人にも及ぶようだ。しかし、敵も去るもので、そんな当局の監視もどこへやら、規制の網を潜り抜けて相変わらず当局に対する辛辣な批判を加えている。その勢いは決して衰えそうにもない。
それに関連して、中国当局が長年推進してきた反日教育もここへきてほころびさえ見せている。評論家の石平氏の連載記事では反日教育が中国国民には思いのほか不信を買い胡散臭く思われていることを伝えている。
中国のテレビ局が日本で中学生たちを現地取材し、日中戦争や南京大虐殺のことを尋ねた。しかし、中学生たちが全然知らないと答えているのを捉えて番組では日本の歴史教育の不毛をさかんに強調していた。しかし、視聴者からは人民日報社の専用ミニブログに意外な反応が多く書き込まれたようだ。
「中国人民は皆知っている。よく嘘をつくメディアは人民日報、よく捏造(ねつぞう)する教科書は中国の教科書だ。お前らこそ、毎日のように中国人民をだましているのではないか」
「文革以来、一体誰が多くの中国人民を惨殺してきたのか。日本人ではないぞ」
「自国の歴史さえ正視できないこの国が他国に正しい歴史認識を求めることができるのか。嘘ばかりをつくこの政府は、他人に真実を語れと要求できるのか」
現政権の正当性を揺るがしかねない核心を突いた挑戦的ともいえる内容だ。石平氏は中国の反日教育が「完全に裏目に出ていることがわかる」と認識しているようだ。反日宣伝をやった分、それはすべて、政府自身に返ってくるのである、とも断じている。
また中国の民間サイトで「日本の歴史教科書と中国の歴史教科書、どちらの方が嘘をついているのか」というネット討論を開始し、一般ユーザーに意見を求めた。すると、8949対2730で中国の教科書の方がが嘘つきでだという結果だったという。
石平氏は、インターネットが発達する情報化の時代、市場経済の中で多くの人々が自立的な生活基盤を得て自由な思考を始めた「啓蒙(けいもう)の時代」、共産党政権が国民大半の頭と心をコントロール下におくことはもはやできなくなっている、と結論づけている。
どうも日本のテレビが伝える中国人の対日意識とは大分かけ離れている。テレビでは、尖閣諸島問題で日本の対応を激しく批判したり、靖国参拝問題でも厳しい意見を述べる中国人が圧倒的に多い。しかし、日常会話では決して同様ではなく、それ以上に現政権の方に不満や不平が強いようだ。その不信感も相当だが、日本に対してはこちらが考えるほどではないのかもしれない。
逆にいえば、国内に充満している国民の不満を対日に振り向けよう当局が腐心しているようにさえ思えてくる。しかし、そうした誘導策や隠蔽策を講じても裏目になるほど、今中国国内は深刻な状況に陥っているのではないか。石平氏は今後の「見どころ」として中国の動向を注目している。日本の評論家の中にはもう中国は崩壊が始まっていると断言している人もいる。おそらく、当局がネットを規制しようとも中国世論さらに辛辣になってネット上を拡散していくことだろう。
見ようによっては、同じ反日国といってもネットに関しては中国の方が韓国よりもずっと自由かもしれない。韓国では対日で少しでも日本を擁護したり、自国を批判したりすると投稿者が調べられ糾弾を受けるという話を聞く。そして売国奴扱いにさえなりかねない。むしろ政治家や司法がそうした国民の異常な反日意識に左右されているともいえる。その点では中国より韓国の方が日本にとっては厄介千万の対象かもしれない。