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●飯塚事件は《足利事件に続いて「DNA冤罪=DNA型鑑定を悪用した冤罪」が発覚するのを恐れた検察による口封じ殺人ではなかったか……》

2021年12月06日 00時00分20秒 | Weblog

―――――― 《2次再審請求で問い直される「T供述」の信用性 岩田弁護士は「Kさんが目撃したのが犯人であれば急転直下、真犯人の存在とともに久間さんの無実もはっきりする」と述べ、再審請求でK証言の果たす役割を解説した》



 (2021年09月26日[日])
山口正紀さんによる、レイバーネットの記事【検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪〜「飯塚事件」を問う】(http://www.labornetjp.org/news/2021/0911yama)。

 《「飯塚事件」をご存知だろうか。1992年、福岡県飯塚市で起きた2女児殺害事件で逮捕され、無実を訴えていた久間三千年(くま・みちとし)さんが死刑判決を受け、2008年に死刑が執行された(当時70歳)。その第2次再審請求の支援を訴える「飯塚事件の再審を求める東京集会」が9月4日、オンラインで開かれた。この事件で有罪判決の根拠とされたのが科警研(警察庁科学警察研究所)によるDNA型鑑定だった。一方、同じ時期・同じ手法で科警研が行なった「足利事件」のDNA型鑑定が誤りだったことが明らかになり、再審無罪となった。実は、この足利事件で「DNA型再鑑定へ」と報道されたのが08年10月上旬その10日余り後、突然再審準備中の久間さんの死刑が執行された。それを知った時、私は恐ろしい疑惑に駆られた。この死刑執行は、足利事件に続いて「DNA冤罪=DNA型鑑定を悪用した冤罪が発覚するのを恐れた検察による口封じ殺人ではなかったか……。(山口正紀)》

 《検察による口封じ殺人》《国家による殺人》…。布川事件冤罪被害者桜井昌司さん《無惨に殺された人の無念を晴らす殺したのは誰か検察庁です》と。当時の首相は麻生太郎氏、飯塚を含む福岡8区の出身。その麻生太郎内閣の法務大臣は森英介氏。2008年10月16日、足利事件のDNA再鑑定で、直ぐに、久間さんの死刑執行は停止されるべきだった ――― しかし、わずか10日ほど後の10月28日、死刑は執行された…。首相や法相、検察・警察の関係者、あまりに冷酷だ…。関わった裁判官も。《各裁判所は、弁護側が指摘したさまざまな疑問・矛盾を無視。結局、科警研の「MCT118型鑑定」によるDNA型鑑定をほぼ唯一の根拠とした死刑判決が確定した》。

   『●贖罪:足利事件再鑑定から12日後の2008年10月28日朝、
                飯塚事件久間三千年元死刑囚の死刑が執行』 
 
    「2008年10月16日 足利事件 再鑑定へ
     2008年10月28日 飯塚事件 死刑執行
     2009年 4月20日 足利事件 再鑑定で一致せず
     ……そう、足利事件で誤鑑定であることが分かった時には、既に、
     久間さんの死刑が執行されていた。2008年10月16日
     DNA型鑑定に疑問が生じた時点で、死刑執行は停止されておくべき
     だったのに…。なぜ、急いで死刑執行したのか?、大変に大きな疑問である」

   『●NNNドキュメント’13: 
      『死刑執行は正しかったのか 飯塚事件 “切りとられた証拠”』
   『●①飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 
         廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン
   『●②飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 
         廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン
   『●飯塚事件冤罪者を国家が死刑執行、「この重すぎる現実」:
                    無惨…「死刑執行で冤罪を隠蔽」
    「リテラの伊勢崎馨さんによる記事【飯塚事件、なぜ再審を行わない?
     DNA鑑定の捏造、警察による見込み捜査の疑いも浮上…やっぱり冤罪だ!】」
    《冤罪が強く疑われながら死刑が執行されてしまったのが、1992年に
     福岡県で起こった「飯塚事件」である。そして、この飯塚事件にスポットをあて、
     冤罪疑惑に切り込んだドキュメンタリー番組が放送され、ネット上で話題を
     呼んだ。3日深夜に日本テレビで放送された
     『死刑執行は正しかったのかⅡ 飯塚事件 冤罪を訴える妻』だ》

   『●飯塚事件の闇…2008年10月16日足利事件の再鑑定で
           死刑停止されるべきが、10月28日に死刑執行
   『●飯塚事件…《しかしもっと恐ろしいのは、そんな誤りを認めず、
     国家による殺人を無かった事にする国家の強引さだろう》(清水潔さん)

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http://www.labornetjp.org/news/2021/0911yama

検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪―「飯塚事件の再審を求める東京集会」(オンライン)から(上)

●山口正紀の「言いたいことは山ほどある」第14回(2021/9/11 不定期コラム)
検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪――「飯塚事件の再審を求める東京集会」(オンライン)から(上)

     (*2017年NNNドキュメントより)

 「飯塚事件」をご存知だろうか。1992年、福岡県飯塚市で起きた2女児殺害事件で逮捕され、無実を訴えていた久間三千年(くま・みちとし)さんが死刑判決を受け、2008年に死刑が執行された(当時70歳)。その第2次再審請求の支援を訴える「飯塚事件の再審を求める東京集会」が9月4日、オンラインで開かれた。この事件で有罪判決の根拠とされたのが科警研(警察庁科学警察研究所)によるDNA型鑑定だった。一方、同じ時期・同じ手法で科警研が行なった「足利事件のDNA型鑑定が誤りだったことが明らかになり、再審無罪となった。実は、この足利事件で「DNA型再鑑定へ」と報道されたのが08年10月上旬その10日余り後、突然再審準備中の久間さんの死刑が執行された。それを知った時、私は恐ろしい疑惑に駆られた。この死刑執行は、足利事件に続いて「DNA冤罪=DNA型鑑定を悪用した冤罪が発覚するのを恐れた検察による口封じ殺人ではなかったか……。(以下、事件・裁判の経過とオンライン集会の模様を3回にわたって報告する)


●疑惑の死刑執行1年後、妻が再審請求

 死刑執行からちょうど1年後の09年10月28日、久間さんの妻が新たなDNA型鑑定などを新証拠(再審を開始すべき理由)として、福岡地裁に再審請求を申し立てた。

 しかし、福岡地裁は14年、科警研が行なったDNA型鑑定を「(久間さんの)犯人性を基礎づける事実とすることはできない」と認めたものの、「DNA型鑑定以外の状況証拠による確定判決は揺るがない」として、再審請求を棄却した。

 再審弁護団は即時抗告したが、福岡高裁は18年、即時抗告を棄却。弁護団は特別抗告したが、最高裁第1小法廷は今年4月21日、特別抗告も棄却した。

 このため、久間さんの妻と再審弁護団は7月9日、確定判決の根拠とされた目撃証言を否定する新たな目撃証言などを理由に、2度目の再審請求を福岡地裁に申し立てた。

 オンライン集会は、この第2次再審請求の意義・内容を報告し、支援の輪を広げていこうと企画され、飯塚事件再審の実現に向けて尽力してきた九州大学の大出良知・名誉教授、再審法改正をめざす市民の会の木谷明代表(元裁判官)、布川事件の冤罪被害者・桜井昌司さんら幅広い支援者たちの呼びかけで開催された。

 集会では、弁護団から第1次再審請求を棄却した最高裁決定と第1次請求の総括、第2次再審請求の経過と内容が詳しく報告され、再審請求人である久間さんの妻のメッセージが読み上げられた。また、8月に国家賠償請求訴訟(国賠)の控訴審で勝訴したばかりの桜井さんが再審実現に向けて連帯のアピールを行い、「死刑執行は口封じ何というひどい国だろう。久間さんの無念は必ず晴らせると確信しています」と訴えた。

 集会について報告する前に、第1次請求に対する最高裁決定、第2次再審請求書、弁護団が編集したブックレット『死刑執行された冤罪・飯塚事件』(2017年・現代人文社)などをもとに、まず事件と裁判、再審請求審の経過を紹介しておこう。


●福岡県警は事件直後から久間さんを犯人視し、「見込み捜査」

 92年2月20日、飯塚市内で登校途中の小学校1年生女児2人が行方不明になり、翌日、約20キロ離れた福岡県甘木市(現・朝倉市)の山中で遺体が発見された。死因は扼殺、2人の膣内などから微量の血液が検出された。

 福岡県警は、かつて近くで起きた同種の事件で捜査対象にしたことのある久間さんを事件直後からマークし、その動静を監視(見込み捜査)。3月には遺留品発見現場付近で「ダブルタイヤのワンボックスカーを目撃した」とのT証人の調書を作成した。久間さんは、この「目撃証言」に合致する車を持っていた。

 続いて県警は久間さんに毛髪を任意提出させ、遺体周辺から採取された血液とともに科警研に鑑定を依頼。科警研は6月、〈血液型は、犯人のものとみられる血液、久間ともにB型。DNA型は「MCT118型鑑定」の結果、犯人のものとみられる型と久間が提出した毛髪から採取した型が一致した〉との鑑定書を出した。

 県警は7月、その「追試」として帝京大学の石山昱夫(いくお)教授にDNA型鑑定を依頼した。石山教授は「ミトコンドリア法」という当時、最も鋭敏な検査とされた方法で検査。約1年半後の94年1月に出された石山教授の鑑定書は、「久間さんのDNA型は検出されず被害者以外の第三者(犯人と思われる)の型が検出された」と結論した。

 それでも県警は94年9月23日、久間さんを死体遺棄容疑で逮捕した。
 翌日の『朝日新聞』夕刊(東京本社版)は、社会面トップ見開きで《56歳無職男性を逮捕/小1女児2人殺害事件/遺体運び捨てた容疑/DNAと繊維鑑定が決め手》と大々的に報道、久間さんの経歴や一問一答を掲載した。『読売新聞』も、社会面4段で《無職の56歳男性逮捕/遺棄容疑/殺人容疑でも追及》と大きく報じた。

 『朝日』はその後も、続報で《ワゴン車入念に清掃/容疑者、売却直前に》《容疑者に似た男目撃/遺留品の現場、車で去る》などと犯人視の報道を続けた。

 久間さんは66日間に及んだ取調べに一貫して否認した。県警は10月14日、久間さんを死体遺棄罪で起訴し、殺人容疑で再逮捕した。だが、その後も「自白」は一切なかった

 95年2月20日、福岡地裁で初公判が開かれ、久間さんは起訴内容を全面否認。その後も一貫して無実を訴え続けた。しかし99年9月29日、福岡地裁は久間さんに死刑判決を言い渡した。判決は「被告人の犯行との結びつきを証明する直接証拠がなく、個々の状況事実の単独では被告人を犯人と断定することが出来ない」としながら、概略次のような「状況事実」を列挙し、有罪と認定した。

 ①被告人の車のシートから検出された血痕と被害者の1人の血液型が一致する ②遺体から検出された血液型、DNA型が被告人と一致する ③現場付近で目撃された車と被告人の車種が一致する ④被害者の着衣に付着した繊維と車のシートの繊維が同一 ⑤被告人には土地鑑があり、アリバイも不明。

 私が参加する「人権と報道・連絡会」では2010年1月の定例会で、弁護団の徳田靖之弁護士から事件と裁判の経過について詳細な報告を受けた。その中で徳田弁護士は、一審判決が有罪の根拠とした「状況事実」について、次のように問題点を指摘した。

 「①車のシートの血液型が被害者と一致したというが、血液型だけでそれを被害者の血痕と断定することはできない。③④は車種が同じというだけの話。⑤は全くの間接証拠に過ぎない。③の目撃者が目撃した人物は『年齢30~40歳。髪は長めで七・三分け』ということだったが、久間さんは当時55歳、髪はオールバックだった」

 結局、一審判決は「②科警研によるDNA型鑑定に依拠して有罪と認定したことになる。だが、そのDNA型鑑定をめぐっても重大な矛盾があった。実は、科警研は「MCT118型鑑定」のほかに、独自に「HLADQα型」検査も行っていたが、この検査では被害者の血液から久間さんの型は検出されなかった。そして、石山教授の「ミトコンドリア法」による鑑定も不一致だった。つまり、県警は複数のDNA型鑑定を行ったものの、「MCT118型鑑定」以外はすべて「久間=犯人説を否定していたことになる。

 久間さんはこの一審判決に対して直ちに控訴したが、2001年10月10日、福岡高裁は控訴を棄却。さらに06年9月8日、最高裁は上告を棄却した。各裁判所は、弁護側が指摘したさまざまな疑問・矛盾を無視。結局、科警研の「MCT118型鑑定」によるDNA型鑑定をほぼ唯一の根拠とした死刑判決が確定した。


●「足利事件のDNA型再鑑定へ」報道の直後に死刑執行

 その2年後、状況が大きく動いた。同じ科警研鑑定(「MCT118型鑑定」)を証拠に有罪とされた足利事件について、08年10月、東京高裁が再鑑定する方針を決めた

 足利事件とは、1990年5月、栃木県足利市のパチンコ店で4歳女児が行方不明になり、渡良瀬川河川敷で遺体が発見された事件だ。栃木県警は91年12月、科警研のDNA型鑑定を証拠として保育園の送迎バス運転手だった菅家利和さんを逮捕。菅家さんは起訴され、裁判途中から無実を訴えたが、無期懲役の有罪判決が確定、服役させられていた。

 この東京高裁の再鑑定方針について、新聞各紙は、《高裁、DNA再鑑定へ》(10月17日付『朝日』)、《DNAを再鑑定へ》(18日付『毎日新聞』)と、全国版で大きく報じた。

 これは当時、再審請求を準備していた久間さんに大きな希望の光となったはずだ。ところが、この報道から10日後の10月28日、法務省は突然、久間さんの死刑を執行した。

 死刑執行を命じた法務省が、足利事件の再鑑定報道を知らなかったはずはない。森英介法相は「慎重かつ適正な検討を加えた」と述べた。いったいどんな「検討」をしたのか

 それから約半年後の09年5月、足利事件のDNA型鑑定結果が出た。弁護側・検察側が推薦した鑑定人2人が、いずれも「STR法」による鑑定で「犯人と菅家さんのDNA型は一致しない」と結論した。

 弁護側推薦の本田克也・筑波大教授は、「MCT118型」による追試鑑定も行った。結果は、菅家さんが「18―29型」、犯人は「18―24型」。どちらも「16―26型」としていた科警研の鑑定結果は、精度の低い「MCT118法」においても完全な誤りだった

 飯塚事件弁護団は、この本田教授に飯塚事件の再鑑定を依頼した。ところが、飯塚事件では捜査段階で採取された鑑定試料を科警研が全量消費していた」という。このため、本田教授は科警研鑑定のデータ・写真を解析し、再鑑定した。

 その結果は、「科警研鑑定はDNA型も血液型も誤りという衝撃的な内容だった。血液型は、犯人がAB型、久間さんはB型。「MCT118型」によるDNA型は、犯人が「16―25型」、久間さんは「18―30型」だった。科警研鑑定は、犯人・久間さんとも「16―26型」としていたが、それはすべて間違っていた、と本田鑑定は指摘した。

 遺族と弁護団は死刑執行1年後の10月28日、本田鑑定を新証拠に再審を請求した。だがメディアの反応は鈍く、全国紙各紙が社会面3~4段で伝えただけだった。その背景には、逮捕時にメディアが繰り広げた犯人視報道がある。徳田弁護士は「人権と報道・連絡会」で、「九州では東京以上にひどい犯人視報道が行われ、みんな久間さんを殺人鬼と信じ込まされました」と話した。メディアも〈無実の死刑〉に加担していた。(続く)

Last modified on 2021-09-11 22:51:36
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http://www.labornetjp.org/news/2021/0913yama

●山口正紀の「言いたいことは山ほどある」(2021/9/13不定期コラム)
検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪――「飯塚事件の再審を求める東京集会」(オンライン)から(中)

 久間三千年(くま・みちとし)さんの死刑執行は、「DNA冤罪」が露顕するのを恐れた検察の「口封じ殺人」ではなかったか――こんな恐るべき疑惑をはらんだ「飯塚事件」。その再審を目指して開かれたオンライン集会(9月4日)では、最高裁「特別抗告棄却」決定(4月21日)の問題点、久間さんの妻と再審弁護団が福岡地裁に申し立てた第2次再審請求(7月9日)の内容が詳しく報告された。一連の報告は、①科警研DNA型鑑定のデータ改ざん有罪判決の根拠とされたT目撃証言の不自然さ――など、死刑判決の「証拠」が福岡県警によって改ざん・捏造されたものであることを明らかにした。

     (*写真=徳田靖之弁護士(NNNドキュメントより))


●「もっと早く再審請求していれば」……

 集会ではまず、刑事裁判から弁護活動に取り組んできた徳田靖之弁護士が、第1次再審請求の経過と請求棄却決定の問題点を報告、最初に飯塚事件の3つの特徴を挙げた。

 第1は、死刑が執行されてしまった事件であること。執行は08年10月28日だったが、徳田弁護士は少し前に久間さんに面会し、再審請求について話し合っていた。「あの時もう少し早く再審請求していれば、執行はなかったのではないか。弁護士の怠慢で執行を許してしまった。その過ちを背負いながら再審に取り組んできました」と徳田弁護士は悔やむ。

 一方、死刑執行された事件であることは、裁判官にはハードルの高さになり、慎重な審理を求められる。もし再審無罪になれば、国家による過った殺人を認めることになる。「それが、裁判所が再審開始を拒み続ける理由にもなります」と徳田弁護士。

 第2は、真犯人を特定できる証拠の血痕がありながら、捜査段階で全量消費されてしまったこと。被害者の膣内などから採取された血痕・体液は「100回鑑定ができるぐらい十分な量があった」(石山昱夫・帝京大学教授)のに、科警研の技官たちは3回の鑑定で全部使い切ってしまった」という。しかも、「使い切った」理由も明らかにされていない。徳田弁護士は「これが、無実を証明するうえで大きなハンデになっています」と述べた。

 だが、試料の血痕はほんとうに「全量消費」されたのか、そんな疑問もある。

 第3は、任意取調べを受けた段階から死刑執行の日まで、久間さんが終始一貫無実を訴え、完全否認を貫いた事件であること。わが国ではこれまで、免田事件など再審で死刑囚が無罪になった事件はあるが、その多くは何らかの形で「自白」が取られており、その任意性、信用性が否定されて再審開始の道が開かれてきた。

 本件では、こうした自白が全く存在せず、直接的証拠もない。確定判決も、「間接事実の総合評価によって犯人性を判断するしかない」とした。それだけに、裁判では有罪認定の中核となった「状況証拠」の証拠能力、信用性が徹底的に吟味されなければならない。弁護団は再審請求で、確定判決の証拠構造の中核が、①科警研のDNA型鑑定②遺留品発見現場でのT目撃証言であるとし、この2つに証拠価値がないことを立証した。


●DNA型鑑定、目撃証言のでたらめさを立証した新証拠

 福岡地裁に申し立てた第1次再審請求(09年10月)で、弁護団は2つの新証拠を提出した。1つは、本田克也・筑波大教授によるDNA型鑑定・血液型鑑定に関する法医学鑑定書。2つ目は、厳島行雄・日本大学教授によるT目撃証言に関する心理学鑑定書だ。本田鑑定は、科警研による「MCT118型」鑑定の証拠能力を全面的に否定した。鑑定書によると、「MCT118型」によるDNA型について、科警研鑑定は犯人・久間さんとも「16―26型」としていたが、久間さんのDNA型は「18-30型」であり、明らかに誤っていた。血液型についても「被害者はO型とA型であり、犯人はAB型。B型の久間さんは犯人ではありえない」と結論した。久間さんの無実を物語る衝撃的な鑑定だ

 再審請求審では、科警研がDNA型鑑定の際に撮影したネガフィルムが証拠開示され、本田教授が解析した結果、科警研鑑定書に添付された写真が改ざんされていたことも明るみに出た。ネガフィルムには確定判決で証拠採用された写真より広い範囲が写っていた。そのネガの写真に焼き付けられていない部分に、「久間さんでも被害者のものでもないDNA型」が確認された。これは真犯人のもの以外に考えられない。

 科警研はそれを隠すため、意図的に写真を切断して焼き付けたと考えるほかない。徳田弁護士は「ネガフィルムは科警研による証拠改ざんの痕跡を示す証拠」と指摘した。

 厳島鑑定は、T目撃証言が警察官に誘導されたものであると断定した。T目撃証言とは、女児2人が行方不明になって数時間後、〈遺留品発見現場の近くの山道で久間さんの車と特徴が同じ紺色のワンボックスカーを見た〉という内容だ。厳島教授は現場で再現実験を行い、このT証言の不自然さを指摘した。

 事件発生(92年2月20日)から2週間余、3月9日に作られた供述調書は、T証人が「目撃した」という不審車と不審人物について、極めて詳細に供述している。

 T供述は不審車の特徴として、①ナンバーは不明②標準タイプのワゴン車③メーカーはトヨタやニッサンではない④やや古い型⑤車体は紺色⑥車体にはラインがなかった⑦後部タイヤはダブルタイヤ⑧後輪のホイルキャップの中に黒いラインがあった⑨窓ガラスは黒く車内は見えなかった――という9項目を挙げた。

 不審人物の特徴としては、①頭の前の方が禿げていた②髪は長めで分けていた③上衣は毛糸で④胸はボタン式⑤薄茶色の⑥チョッキで⑦チョッキの下は白いカッターの長そでシャツを着ていた⑧年齢は30~40歳だった――という8項目を挙げた。

 しかし、T証人がこの不審車を目撃したという現場の「八丁峠」はカーブが続く山道。T証人は坂道の下りカーブを時速20~30キロで運転中、左カーブで対向車線に停まっていた「不審なワゴン車」を見た、としている。

 はたして、山道の下りカーブを運転中に、前記のような詳細な「目撃」が可能なのか。車がすれ違うのに要するのはほんの数秒。しかも、「後輪がダブルタイヤだった」というのは、下りカーブで後ろを振り返って見る危険を冒さなければ知り得ない情報だ。

 厳島教授は、現場での走行再現実験の結果に基づき、「目撃はごく短時間であり、対象物の詳しい形状まで記憶することは不可能T目撃証言は作られた供述」と断言した。

 さらに、再審請求審で証拠開示された捜査報告書により、T証言が捜査員の誘導によるものであることを示す事実が明らかになった。実は供述調書が取られる2日前の3月7日、捜査員が久間さん宅を下見して車を調べ、「車体にはボディラインなし」などと報告していた。この捜査員が2日後、T証人の聴取を担当し、調書を作成していたのだ。

 当時、久間さんが乗っていたのは、マツダの「ウエストコースト」というワゴン車。この車種には本来、車体に特徴的なラインが付けられていたが、久間さんはラインを消して乗っていた。そのことを知らなければ、わざわざ「トヨタやニッサンではない」「ラインがなかったなどと供述するわけがない。詳細なT証言は、捜査員による完全な誘導だった


●再審申し立てに判断を回避した最高裁

 確定死刑判決が有罪認定の根拠とした2つの柱=DNA型鑑定とT目撃証言は、弁護団が提出した2つの新証拠と再審請求審で開示された証拠により、完全に破綻した。

 ところが、2014年3月31日付で福岡地裁が出した決定は「請求棄却」だった。

 地裁決定は、科警研のDNA型鑑定については「証明力の評価に変化が生じた」として事実上、証明力を否定した。しかし、T目撃証言については、「厳島鑑定は供述の信用性を揺るがすものではない」「新証拠によって旧証拠の証明力や信用性が減殺されることはない」などとして、証拠能力を認めた。

 山道の下り坂カーブを走行中、わずか数秒間すれ違っただけで、運転者の髪形や詳しい服装から、「車体にはラインがなく、後輪はダブルタイヤだった」などという車の特徴までつかみ記憶していた、などという荒唐無稽な「証言」を、裁判官たちは「信用できる」と言うのだ。そんな裁判官たちの判断を私たちは「信用できる」だろうか。

 そのうえで地裁決定は、「DNA型鑑定以外の状況証拠を総合すれば、事件本人(注;久間さん)が犯人であることについて、合理的な疑いを超えた高度の立証がされていることに変わりはなく、新証拠はいずれも確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせるものではない」と結論付け、再審請求を棄却した。

 さらに福岡高裁は18年2月6日、弁護団の即時抗告を棄却、最高裁も今年4月21日、「記録を精査しても、原決定(再審請求棄却決定)を取り消すべき事由は見当たらない」として、特別抗告を棄却する決定を行なった。

 弁護団は特別抗告で、2つの新証拠をめぐる論点だけでなく、高裁決定の憲法違反も指摘していた。福岡高裁の再審請求審では、裁判官3人のうち1人が、刑事裁判で死刑判決を出した一審・福岡地裁の審理に主任裁判官として参加していた。

 かつて自分が加わり死刑判決を出した裁判の再審請求に対して、ニュートラルな状態で審理に臨むことができるのか。裁判官は、もし再審請求を認めれば、自分が「無実の人に対する死刑」を命じた事実に直面することになる

 弁護団は特別抗告で、「これは憲法37条が定める〈公平な裁判を受ける権利〉に反する」と指摘し、憲法違反を主張したが、最高裁決定はこれについて判断を示さなかった

 この決定について、徳田弁護士は「決定文はわずか6ページ。ほとんど何も書いていないに等しく、これでは分析のしようもない。特別抗告から3年も経っており、最高裁は特別抗告を正面から受けとめて真摯に検討していると思っていたのに、弁護団の申立てに対してほとんど判断を回避した」と憤りをこめて批判した。

 それでも徳田弁護士は、第1次再審請求の到達点として、次の2点を挙げた。

 第1に、DNA型鑑定で久間さんの型が全く検出されなかったことが明らかになり、有罪判決の証拠の主たる柱の1つが破綻したこと。第2に、T目撃証言が捜査員に誘導されたものであることが明らかになり、その信用性が徹底的に揺らいだこと。

 それに、第2次再審請求では、警察が握りつぶしてきた真犯人につながる新たな目撃証言が加わる。この強力な新証拠を前に、裁判所は、司法が犯した「冤罪死刑」という取り返しのつかない過ちに目を逸らし続けることができるだろうか。(続く)

Last modified on 2021-09-15 11:03:30
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http://www.labornetjp.org/news/2021/0915yama

●山口正紀の「言いたいことは山ほどある」(2021/9/15不定期コラム)
検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪――「飯塚事件の再審を求める東京集会」(オンライン)から(下)

 久間三千年(くま・みちとし)さんの死刑執行は、「口封じのための国家殺人」ではなかったか――「飯塚事件」の再審実現を目指して開かれたオンライン集会(9月4日)で、この事件の捜査をめぐり、「真犯人の目撃証言無視という新たな疑惑が指摘された。弁護団は7月に申し立てた第2次再審請求で「事件当日、被害少女2人と真犯人と思われる人物を目撃した」というKさんの証言を新証拠として提出した。驚くべきことにKさんは事件直後、犯人に直結するこの目撃を警察に通報したのに、福岡県警はこの決定的証言を調書も取らずに握りつぶしていた。事件発生から29年ぶりに浮上した真犯人の影。久間さんに対する見込み捜査に突っ走っていた警察は、「冤罪による死刑」だけでなく、みすみす「真犯人を逃がす」というもう一つの重大な罪も犯していた疑いが濃厚になった。


●「今にも泣きだしそうだった少女の顔」――鮮烈な29年前の記憶

 集会では、徳田靖之弁護士に続き、再審弁護団主任弁護人の岩田務弁護士が第2次再審請求の新証拠と第2次再審請求の課題について報告した。

 新証拠は、福岡県内に住む男性Kさん(72歳)が、「事件当日の1992年2月20日午前11時ごろ、飯塚市内の八木山バイパスを走行中、後部座席に小学生の女児2人を載せたワンボックスタイプの軽自動車を目撃した」という証言だ。

 その現場は、女児2人が行方不明になった場所に近接した場所。Kさんが弁護士に行なった陳述によると、問題の軽自動車は制限を下回る時速40キロ以下でノロノロ運転していた。その後ろについてイライラしていたKさんは、登坂車線で軽自動車を追い越す際、「こんな迷惑な運転をするのはどんな奴か」と思って運転席を見た。すると、「自分より少し若いくらい(30~40歳)の色白で坊主頭、細身の男性」が運転しており、後部座席には「オカッパ頭でランドセルを背負った女の子」が乗っていた。また、後部座席には「もう1人、女の子が横になっていて、その横にもランドセルがあった」――。

 しかし、Kさんはなぜ、そのような30年近くも前の古い記憶をはっきり覚えていたのか。そしてなぜ、今ごろになって「証言」することにしたのか。当然、検察側は突っ込んでくる。これについて岩田弁護士は、①記銘②保持③想起――の3点から説明した。

①〈記銘〉=なぜ記憶に残ったか。理由は、非常に強い印象を受けた出来事であったこと。後部座席に乗っていた女の子は「うらめしそうな」「うらさびしそうな」「今にも泣きだしそうな」表情をしていた。その異常な表情とともに、平日昼前の時間帯にランドセルを背負った子どもが車に乗っているのを不審に感じ、「誘拐ではないか」という思いを抱いた。さらにその夜、「飯塚市内で少女2人が行方不明」というニュースが流れ、「自分が見たのは行方不明の少女たちではないか」と思い、翌朝110番通報して目撃内容を伝えた

②〈保持〉=なぜ記憶を保ち続けたか。110番通報の1週間後、刑事が来て事情聴取を受け、目撃内容を詳細に説明した。ところが、刑事はメモをしただけで供述調書は取らず、その後何の連絡もしてこなかった。しかし、自分が目撃したのは被害少女と真犯人だと確信し、3年後の第1回公判を傍聴して直接確認した。すると、被告人は自分が目撃したのと全くの別人で驚いた。ただ、「DNA型鑑定が一致した」という検察官の冒頭陳述を聞き、自分が目撃した車は事件に関係がなかったのか、と思い直した。

③〈想起〉=なぜ今回、その目撃を思い出したのか。その後も事件について関心を持ち続けていた。2019年、『西日本新聞』が飯塚事件に関する特集記事を連載した。その中に、「DNA型鑑定が崩れた」という記事があり、「それなら、やはり自分が見たのは犯人だったに違いない」と思い、『西日本新聞』に連絡した。それが記事になり、徳田弁護から連絡があって、新証拠となる詳細な陳述書が作成された。その中で、弁護士にこう訴えた――「あの女の子の恨めしそうな表情が28年間、私を離してくれなかった」。


●第2次再審請求で問い直される「T供述」の信用性

 岩田弁護士は「Kさんが目撃したのが犯人であれば急転直下、真犯人の存在とともに久間さんの無実もはっきりする」と述べ、再審請求でK証言の果たす役割を解説した。

 K証言は、第1次再審請求の地裁決定がほぼ唯一の「証拠」とした「T供述」と真っ向から対立する。事件の2週間余り後、「不審なワゴン車を見た」と供述したT証言と、事件翌朝、「少女2人が乗った軽自動車を見た」と通報したK証言。2つの証言の信用性は表裏一体であり、K証言の信用性が強まれば、T供述の信用性は弱まる。

 しかも、T供述は犯行(被害少女)を直接目撃したものではなく、間接証拠に過ぎない。しかし、K証言は「被害少女2人を目撃した」というもので、直接証拠となる。

 この重要な手掛かりとなる目撃通報を受けた福岡県警は、直ちに捜査員を出して供述調書を取るべきなのに、1週間後に刑事が来てメモしただけで放置した。

 その一方、警察は久間さんに対する見込み捜査に走り、「久間=犯人」に合致する証拠集めに躍起になった。そうして作られたのが、「ワゴン車の詳しすぎる特徴」をはじめ、捜査員に誘導された痕跡が顕著なT供述だった。

 岩田弁護士は「第2次再審請求では、T供述の信用性が攻防の中心になる。全部目撃するのは不可能なほど膨大な情報を『目撃した』とするT供述を、裁判官は『誘導はなく、信用できる」と評価した。これをKさんの目撃証言を中心に、いろんな方向から崩していく。それが第2次再審請求の課題です」と報告を締めくくった。


●「久間三千年は無実です」――妻の悲痛なメッセージ

 岩田弁護士の報告に続き、再審請求人である久間さんの妻が集会に寄せた次のようなメッセージが紹介された。

 「久間三千年は無実です。私たち家族の幸せは、平凡な生活の中にあり、夫の優しさ思いやりは、日々の生活の中に満ちあふれていました。夫は一方的に犯人扱いされ逮捕、起訴され裁判にかけられました夫は終始一貫して無実を訴え続けてきました
 私たち家族は、夫を疑ったこともなく、理不尽な仕打ちを受けながらも夫が生かされていることだけを、心のよりどころとして、耐え続けてきました。突然の死刑執行に目の前が真っ暗になり何も考えられなく、途方に暮れました。
 無実を訴え続ける夫に殺人の汚名を着せて、命まで奪う国の法律があるとは、思ってもみませんでした。
 無実を訴え続け命まで奪われた夫の無念を晴らし名誉を回復するために再審請求をしましたが、最高裁での特別抗告も棄却されました。
 令和3年7月9日に、第2次再審請求をしました。
 どうしてなのでしょうか。終始一貫して無実を訴えている者の再審の審理は、無理なのでしょうか。すぐにでも裁判を受ける権利は平等にあるべきです。
 無茶なことを言っているのではなく、裁判が間違っているからやり直して欲しいと願っているだけです。公平な権利さえも与えられないのでしょうか。
 裁判所において、刑事裁判の目的は、「無罪の発見である」、被告人の人権保障にある。
 「百人の真犯人を逃がしても一人の無辜(むこ)を罰してはならない」とする考え方。
 刑事裁判は、憲法に保障されている人権を守るためにあると、ある書籍に書いてありました。このことを原点として裁判に臨んでいる裁判官もいらっしゃいます。
 検察官の職務についても「公益の代表者」と義務づけ、真相究明と同時に被告人の後見的役割を担う、とあり、法的用語や条文など解りにくいところは多いのですが、再審を願っているだけなのです。
 どうか、皆様方のお力添えを宜しくお願い致します。いつ、どんな時でも一人の人間が公平公正な裁きを受けられることを心から望んでいます。
 令和3年9月4日」


●「久間さんの無念を晴らす」――桜井昌司さんの連帯アピール

 続いて、布川事件冤罪被害者桜井昌司さんが連帯のアピールを行なった 「話を聞くたび、ひどい事件だと思います。東の足利、西の飯塚と言われ、DNA型鑑定で有罪にされた。しかし、久間さんは死刑が執行された何という国家だろうと思う。警察はなぜK証人にきちんと聴取しなかったのか。別の事件で警察は久間さんを疑っていたそうで、警察はひたすら有罪証拠をかき集めた。布川でも同じことがありました。

 T供述を検証した八丁峠の映像を見て思いました。現場は九十九折の山道で、道路の左側には溝があり、脱輪するかもしれない。そんな場所で、対向車がダブルタイヤだったなんてわかりっこない。こんなことを優秀な裁判官がなぜわからないのか

 日本の警察はこれまでも証拠を捏造してきました。そうして、どれだけの人が刑務所に入れられ、殺されてきたか。すべてが無責任です。冤罪事件で国家賠償しても、だれも懐が痛まない。そのお金も税金です。足利事件、布川事件、ゴビンダさんの事件東電事件)、東住吉事件だれもその責任を追及しない

 再審法を改正しないといけない。税金で集めた証拠を法廷に出すのは当たり前じゃないですか。久間さんの無念は必ず果たせると確信しています。必ず勝ちます。一緒にがんばりましょう。無惨に殺された人の無念を晴らす殺したのは誰か検察庁です

 桜井さんは1967年に起きた布川事件で杉山卓男さん(故人)とともに無期懲役刑が確定したが、2011年に再審無罪をかちとった。8月27日、この冤罪の責任を問う国家賠償訴訟の控訴審で勝利し、国・県は上告できず9月10日、勝訴が確定した。桜井さんは13日に会見し、「54年間ずっと背負っていた冤罪の重荷を下ろすことができた」と話した。

 だが、桜井さんの闘いは終わらない。国賠訴訟の一審勝訴後、直腸がんが見つかり、食事療法でがんと闘っている。そうして、冤罪と闘う全国の「獄友」の雪冤のために東奔西走する久間さんの無念を晴らす。それも、桜井さんの大きな目標の1つだ。(了)

Last modified on 2021-09-15 11:00:47
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●再審無罪が確定した西山さんの国家賠償請求訴訟で、冤罪を生んだ滋賀県警が《今になって西山さんを犯人視する書面を作成、裁判所に》…

2021年12月01日 00時00分37秒 | Weblog

(2021年09月26日[日])
東京新聞の社説【<社説>再審無罪を否定 西山さんを苦しめるな】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/132379?rct=editorial

 《再審無罪判決を否定するという荒唐無稽な書面だ。滋賀県の病院で、患者の死亡を巡り殺人罪などで服役後、再審無罪が確定した元看護助手西山美香さんによる国家賠償請求訴訟で、被告の県は、西山さんを犯人視する表現をした準備書面を大津地裁に提出した。県警が作成したもので、県側は承知していなかったとして、三日月大造知事は謝罪し、書面修正の意思を表明した。なぜこんなことが起きたのか、県と県警に徹底調査を求めたい》。

   『●《裁判長は「取り調べや証拠開示などが一つでも適切に行われていれば、
       逮捕・起訴はなかったかもしれません」》と仰ってたのですがね?
    《だが、県は、15日に地裁へ提出した準備書面で「取り調べ担当官に
     好意と信頼を寄せて虚偽の殺害を自白することなど、
     根本的にあり得ない」とし、捜査の違法性を否定。「被害者を
     心肺停止状態にさせたのは、原告である」と主張した。
     再審の無罪判決で、裁判長は「取り調べや証拠開示などが一つでも
     適切に行われていれば、逮捕・起訴はなかったかもしれません
     と説諭したが、「滋賀県警としては、承服し難い」とも反論した》

 再審無罪が確定した元看護助手西山美香さんによる国家賠償請求訴訟で、冤罪を生んだ滋賀県警が《今になって西山さんを犯人視する書面を作成、裁判所に》提出? 醜悪過ぎる滋賀県警、いっさい反省なし、冤罪に何の痛痒も感じていない…《警察官のうそと検察官の証拠独占が冤罪を生む》。

   『●湖東記念病院人工呼吸器事件…冤罪服役13年、
     【元看護助手、再審で無罪が確定的に 滋賀の病院患者死亡】
   『●湖東記念病院人工呼吸器事件で冤罪服役…《刑事司法の
      よどみや曇り》の解明を、《冤罪が生まれる構造に光》を!
   『●警察・検察・裁判所は何も責任をとらないつもり? それなくして、
       《西山さんが待ち続けた「名誉回復」》が叶ったといえるのか?
   『●《判決後、大西直樹裁判長は、捜査の問題点と刑事司法の改善の必要性
      を説き、「西山さんの15年を無駄にしてはならない」と話している》
    《無実でも有罪判決が確定すると、それを晴らす道は極めて狭い
     再審関係の条文は古いままで、手続きも事実上、裁判官のさじ加減
     次第である。無辜(むこ)を救う究極の人権救済の法整備は急ぐべきだ

 西山美香さんは冤罪で服役し、《青春時代の十数年間を監獄で過ごさねばならなかった》。《再審開始決定までの七つの裁判所判断は、この矛盾に言及しなかった》。《無理な捜査、虚偽自白、証拠開示の遅れ》…弁護士も立ち会わず、長期拘留して密室で自白を迫る。警察や検察により、被疑者に有利な証拠は隠蔽される。同じことの繰り返しだ。
 大西直樹《裁判長は「取り調べや証拠開示などが一つでも適切に行われていれば、逮捕・起訴はなかったかもしれません」》《「西山さんの15年を無駄にしてはならない」》と仰ってたのですがね? 醜悪過ぎる滋賀県警。

   『●《日本の刑事司法はおそろしいほどに後進的…代用監獄…
          人質司法》…さらに、司法取引まで投げ渡す大愚
   『●検察による恣意的・意図的な証拠の不開示、証拠の隠蔽や
             喪失、逆に、証拠の捏造…デタラメな行政
   『●《良心に従い職権を行使する独立した存在》ではない
     大久保正道裁判長である限り、アベ様忖度な「行政判断」が続く
   『●《「自白の強要をされたという認識に変わりはない」と反論…
            いまだにこんな水掛け論になるのかと嘆かわしい》
    「《日本の刑事司法はおそろしいほどに後進的代用監獄人質司法
     …《日本の刑事司法制度は国際的水準に達していない》。
     「人質司法」は未だに《国際的にも悪評が高い》。
     《弁護士の立ち会い…多くの国・地域で認めている制度》である
     にもかかわらず、ニッポンでは認められていない。
     《録音・録画(可視化)》もほとんど進まず、
     《事後検証が不可能に近い》。《弁護士の立ち会いが任意段階から
     認められていれば、誤認逮捕という人権侵害もなかったはずだ》」

   『●木谷明さん《冤罪を回避するために法曹三者…
      無実の者を処罰しないという強い意志、意欲をもって仕事にあたること》
   『●山口正紀さん《冤罪…だれより責任の重いのが、無実の訴えに
            耳を貸さず、でっち上げを追認した裁判官だろう》
    《四十年間も潔白を訴えていた大崎事件(鹿児島)の原口アヤ子さんに
     再審の扉は開かなかった。最高裁が無実を示す新証拠の価値を
     一蹴したからだ。救済の道を閉ざした前代未聞の決定に驚く。
     「やっちょらん」-。原口さんは、そう一貫して訴えていた。
     殺人罪での服役。模範囚で、仮釈放の話はあったが、
     「罪を認めたことになる」と断った。十年間、服役しての
     再審請求だった…「疑わしきは被告人の利益に再審請求にも
     当てはまる。その原則があるのも、裁判所は「無辜(むこ)の救済」
     の役目をも負っているからだ。再審のハードルを決して高めては
     ならない》
    「再審するかどうかを延々と議論し、《三度にわたり再審開始決定
     出ながら》、最後に、ちゃぶ台返し。最「低」裁は何を怖れている
     のか? 誤りを潔く認めるべきだ。山口正紀さん、《冤罪は警察・
     検察だけで作られるものではない。…マスメディアにも責任…。
     だが、だれより責任の重いのが、無実の訴えに耳を貸さず、
     でっち上げを追認した裁判官だろう》。」

   『●《「証拠は再審請求の段階でも捜査側に偏在している」…検察は掌中の
         証拠をあまねくオープン》にするよう裁判所は訴訟指揮すべきだ

 布川事件桜井昌司さんは《冤罪で服役29年》《事件発生から54年の長い時間》…検察や警察の捜査の違法性を認め、国と茨城県の損害賠償が確定しました。54年の苦難にとても報いることはできませんが、その一部に少しでも報いられたとしたら、この判決を歓迎すべきかと思いました。検察や警察は《判決の結果を真摯に受け止め》、二度とこのような冤罪被害者が出ないよう、改善を約束すべきです。そのために何をすべきかを明らかにすべき。
 湖東記念病院人工呼吸器事件も同様だと思うのですが…。

   『●布川冤罪事件…《合計二〇人の裁判官が揃いも揃って、冤罪を見過ごし、
         検察の嘘を素通りさせた。彼らこそ裁かれるべきかもしれない》
   『●桜井昌司さん《冤罪で服役29年》《事件発生から54年の長い時間》
      …検察や警察の捜査の違法性を認め、国と茨城県の損害賠償が確定
   『●布川冤罪事件で《潔白を勝ち取った男…冤罪被害者を支援し、
     濡れ衣を着せた司法の闇を世に引きずり出そうとしている》桜井昌司さん

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/132379?rct=editorial

<社説>再審無罪を否定 西山さんを苦しめるな
2021年9月22日 07時50分

 再審無罪判決を否定するという荒唐無稽な書面だ。

 滋賀県の病院で、患者の死亡を巡り殺人罪などで服役後、再審無罪が確定した元看護助手西山美香さんによる国家賠償請求訴訟で、被告の県は、西山さんを犯人視する表現をした準備書面を大津地裁に提出した。県警が作成したもので、県側は承知していなかったとして、三日月大造知事は謝罪し、書面修正の意思を表明した。なぜこんなことが起きたのか、県と県警に徹底調査を求めたい。

 訴訟は、西山さんが捜査の違法性を解明することなどを目的に、昨年提訴した。県側は、違法性はなかったと主張する今月十五日付書面の中で「患者を心肺停止状態に陥らせたのは、原告(西山さん)であると、西山さんを殺害の実行者と決め付けた

 西山さん側からの強い抗議で、知事は臨時の記者会見を開き「西山さんの心情を傷つけた深くおわびする」と述べ、修正の意向も示した。事前に書面の内容や提出の事実を知らなかったという。

 書面は県警が作成。県警は「慣例に従った」と釈明しているが、県の規定では、県警本部長の決裁後、県総務課長が決裁することになっている。しかし今回、書面は県側に回付されていなかった

 再審無罪が確定した昨年三月の大津地裁判決は「『呼吸器を外した』との捜査段階の自白には、信用性と任意性に疑いがある」と認定。さらに「取調官は西山さんの自分への恋愛感情に乗じて供述をコントロールしようとした」と、自白調書を証拠から削除し、患者は「他の原因で死亡した可能性がある」と結論づけた

 これに対し、問題の準備書面は「取調官に好意を寄せて虚偽の自白をするなどあり得ない」と反論。無罪判決も否定した。

 だが、ちょっと待ってほしい。再審公判で、検察側は「新たな有罪立証は行わない。裁判所に適切な判断を求める」と論告し、求刑もしなかった。有罪立証を放棄したに等しいのに、捜査をした県警が今になって西山さんを犯人視する書面を作成、裁判所に出すのは不可解と言うほかない

 県警には、なぜ「犯人視」の書面が提出され、どんな意図があったのかきちんと調査、説明する責任がある。文書修正だけで済む話ではない西山さん本人にも直接謝罪すべきだろう
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●布川冤罪事件で《潔白を勝ち取った男…冤罪被害者を支援し、濡れ衣を着せた司法の闇を世に引きずり出そうとしている》桜井昌司さん

2021年11月08日 00時00分45秒 | Weblog

―――――― (里見繁氏) 布川冤罪事件…《合計二〇人の裁判官が揃いも揃って、冤罪を見過ごし、検察の嘘を素通りさせた。彼らこそ裁かれるべきかもしれない》



(2021年09月21日[火])
東京新聞の社説【布川事件の教訓 冤罪防ぐさらなる改革を】(https://www.nishinippon.co.jp/item/n/800693/)。

 《冤罪(えんざい)無実の人の一生を台なしにしてしまいかねない。その防止に向け、貴重な教訓に満ちた司法判断が確定した。1967年に茨城県で起こった布川事件で強盗殺人罪に問われ、再審無罪となった桜井昌司さん(74)が国と県に損害賠償を求めた訴訟である。警察と検察の捜査の違法性を認め、被告側に計約7400万円の支払いを命じた東京高裁判決に対し、国と県は上告を断念した》。

   『●アベ様が《新政権も警察権力も私物化する暗黒時代が始まる》、《官邸の
       忠犬…政権の爪牙…山口敬之氏の逮捕を潰した最重要キーマン》が…
   『●山添拓議員の《送検》、八代英輝弁護士の《野党共闘に対する意図的な
      攻撃》とそれに群がるお維議員たち、中村格氏の警察庁長官へ昇格…

 検察による恣意的・意図的な証拠の不開示、証拠の隠蔽や喪失、遺棄、逆に証拠の捏造…デタラメな行政。布川冤罪事件の桜井昌司さん、《警察官のうそと検察官の証拠独占が冤罪を生む》と。強大な権力には政治判断=忖度を乱発し、一方、弱者には厳格・冷酷な司法判断…最「低」裁を頂点とする司法の堕落。
 《検察は常に間違わない。そんな「無謬(むびゅう)が独り歩きし、自ら描いたストーリーに沿うように供述調書を作成する-。過去に冤罪を生んだ落とし穴の一つであり、布川事件はその典型だったと言えるだろう。東京高裁の審理で、もう一つ重要な点が明らかになった。検察は当初、取り調べの録音テープや第三者の毛髪など有罪立証に不利とみられる証拠の存在を認めなかった。国は「当時の刑事訴訟法に証拠開示の規定はなかった」と主張した。これこそが冤罪を防げない法制度の欠陥そのものではないか》。
 《桜井さんは20歳で逮捕され、再審無罪となるまで44年を費やした。「裁判官なら真実を見極めてくれると信じたが裏切られた」という言葉が重く響く》

 (雨宮処凛さん)《桜井昌司さんの名前を知る人はどれくらいいるだろう。彼は無実の罪を着せられ、29年間を獄中で過ごしたという「冤罪」の人だ。20歳から、29年。20代、30代のすべてを、殺人の濡れ衣を着せられて刑務所で過ごさざるを得なかったのである。そうして事件から実に44年後の2011年、無罪が確定。すべての始まりは、1967年に起きた布川事件だった》。
 そして、いま、…(NNNドキュメント ‛21)《検察は都合の良い証拠だけを使い無期懲役判決が下る。29年間投獄された男は、仮釈放から14年後にようやく無罪となった。この「布川事件」で潔白を勝ち取った男だったが、今度はがんにより余命一年の宣告を受けた。今、残された時間で冤罪被害者を支援し、濡れ衣を着せた司法の闇を世に引きずり出そうとしている桜井昌司さん。

   『●『冤罪File(No.10)』読了
   『●冤罪デモ
   『●『自然と人間2010年2月号』読了
   『●『冤罪ファイル(2010年10月号)』読了
    「里見繁氏、「布川事件再審公判傍聴記――確定判決から30年余り
     時を経て、今ようやく再審の幕が開いた――」。「この事件を一言で
     言えば「検察の証拠隠し」である。最新請求の審理の過程で百件を
     超える隠蔽証拠が開示された。…。一審から最高裁、再審請求の
     地裁から最高裁、合計二〇人の裁判官が揃いも揃って、冤罪を
     見過ごし、検察の嘘を素通りさせた。彼らこそ裁かれるべき
     かもしれない」。「ところが警察と検察は、桜井さん、杉山さんの
     二人に結びつかない証拠はすべて隠した」。
     桜井昌司さんと杉山卓男さん」

   『●布川事件の記録映画、……そして、………………
    《布川事件、再審無罪 発生から44年 水戸地裁土浦支部
    《映画「ジョージとタカオ」を観て 刑事司法の病理を体現する
     ふたりの中年男》
    《水戸地裁土浦支部は05年、「鑑定書が確定審の審理中に提出されて
     いれば有罪認定に合理的疑いが生じた」と述べ、再審開始の決定をした。
     検察側は即時抗告したが、東京高裁は08年、11カ所の中断が
     みられる桜井さんの自白の録音テープについて「取調官の誘導があった
     ことをうかがわせる」と指摘。検察側が新たに開示した「現場宅で見た
     のは杉山さんらではない」とする目撃証言も考慮し「確定判決の判断を
     維持できない」と認定した。最高裁も09年に再審開始を認めた》
    《弁護側は、検察側が2人に有利な証拠を再審請求審まで明らかにして
     いなかったことを「証拠隠し」と非難。裁判所の責任についても
     「冤罪(えんざい)の根絶のため、有罪になった構造を解明すべきだ」
     と求めてきた》

   『●強大な氷山の一角としての冤罪発覚
   『●東電OL殺人事件元被告マイナリさん、
       冤罪15年間への償いはできるのか?
    《▼「新証拠なんかじゃない。検察が隠し持っていたんですよ」。
     決定後の記者会見で昨年、再審無罪になった布川事件の桜井昌司さんが
     憤っていた。血痕が付着したコートなどの不利な証拠を出し渋り、
     DNA鑑定にも二の足を踏んだ検察の姿勢が冤罪(えんざい)
     生んだのは明白だ》

   『●冤罪(その2/2): せめて補償を
   『●またしても裁判所は機能せず、闘いは高知高裁へ:
       高知白バイ「冤罪」事件、地裁が再審請求を棄却
   『●「戦後70年 統一地方選/その無関心が戦争を招く」
      『週刊金曜日』(2015年4月3日、1034号)
   『●「検察・警察も冤罪防止のために“前向き”」?
     …刑事訴訟法の「改正案が成立すれば、新たな冤罪を生む」
   『●検察による恣意的・意図的な証拠の不開示、
     証拠の隠蔽や喪失、逆に、証拠の捏造…デタラメな行政
    《布川事件で再審無罪が確定した桜井昌司さん(72)の訴えを認めた
     二十七日の東京地裁判決は、警察官の違法な取り調べや検察官の
     証拠開示拒否などがなければ、「遅くとも控訴審判決(一九七三年)で
     無罪判決が言い渡され、釈放された可能性が高い」と捜査機関に猛省を
     促した。弁護団からは「画期的だ」との声が上がり、
     桜井さんは捜査機関の在り方を批判した》
    《桜井さんと同じ冤罪被害者も訴訟を支援した。大阪市の女児死亡火災で
     再審無罪となり、自身も国賠訴訟中の青木恵子さんは「桜井さんから
     希望をもらった」と喜んだ。いまだ再審の扉が開かれない袴田事件
     大崎事件に触れ、「順番に勝っていってもらいたい」と望んだ》

   『●飯塚事件…《しかしもっと恐ろしいのは、そんな誤りを認めず、
     国家による殺人を無かった事にする国家の強引さだろう》(清水潔さん)
    「ついでと言っては何ですが…桜井昌司さんについて…
     《清水潔… 【放送告知】強盗殺人容疑で有罪判決を受け、
     罪を償わされてから冤罪が明らかになった男性をカメラが追いました。
     裁判の間違いを裁判所が認めるまでに38年。ようやく潔白を手に
     入れて今度は10年で末期がん宣告です。壮絶な人生を描く
     ヒューマンドキュメンタリー。》」

   『●布川冤罪事件…《合計二〇人の裁判官が揃いも揃って、冤罪を見過ごし、
         検察の嘘を素通りさせた。彼らこそ裁かれるべきかもしれない》
   『●桜井昌司さん《冤罪で服役29年》《事件発生から54年の長い時間》
      …検察や警察の捜査の違法性を認め、国と茨城県の損害賠償が確定

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https://www.nishinippon.co.jp/item/n/800693/

社説
布川事件の教訓 冤罪防ぐさらなる改革を
2021/9/15 6:00

 冤罪(えんざい)は無実の人の一生を台なしにしてしまいかねない。その防止に向け、貴重な教訓に満ちた司法判断が確定した

 1967年に茨城県で起こった布川事件で強盗殺人罪に問われ、再審無罪となった桜井昌司さん(74)が国と県に損害賠償を求めた訴訟である。警察と検察の捜査の違法性を認め、被告側に計約7400万円の支払いを命じた東京高裁判決に対し、国と県は上告を断念した

 この事件は独り暮らしの男性が他殺体で見つかり、桜井さんら2人が別の容疑で逮捕、起訴された(桜井さん以外の1人は既に死去)。証拠は自白と現場の目撃証言しかなかった。

 高裁判決は、一審東京地裁判決が認めた警察官の取り調べに加え、捜査段階の検察官の取り調べも違法と断じた。検察官は桜井さんが無実の主張を信じてもらえず絶望的になったのを利用し「自分の意図するままに供述調書を作った言い切っている有罪をでっち上げたと非難しているに等しいものだ。

 古い事件ではあるが、とりわけ検察には猛省を求めたい。

 国内で起訴された事件の有罪率は99%超だ。検察が警察の捜査をチェックしている結果であるとともに、検察の力を過信させる面のある数字である。

 検察は常に間違わない。そんな「無謬(むびゅう)が独り歩きし、自ら描いたストーリーに沿うように供述調書を作成する-。過去に冤罪を生んだ落とし穴の一つであり、布川事件はその典型だったと言えるだろう。

 東京高裁の審理で、もう一つ重要な点が明らかになった。

 検察は当初、取り調べの録音テープや第三者の毛髪など有罪立証に不利とみられる証拠の存在を認めなかった。国は「当時の刑事訴訟法に証拠開示の規定はなかった」と主張した。これこそが冤罪を防げない法制度の欠陥そのものではないか

 桜井さんの有罪が一度確定した最高裁判決(78年)は、自白強要の証拠は「記録上発見することができない」とした。隠されていたのだから当然である。

 近年の刑事司法改革で、取り調べの可視化(録音・録画)が一部義務化され、証拠リストの開示が認められた。それでも十分とは言えない。私たちは社説で、捜査で集めた証拠の全面的開示や裁判をやり直す再審の開始規定緩和など、法改正を国に強く求めてきた。

 桜井さんは20歳で逮捕され、再審無罪となるまで44年を費やした。「裁判官なら真実を見極めてくれると信じたが裏切られた」という言葉が重く響く。

 布川事件は「過去の問題」ではない。国や司法関係者はさらなる制度改革を急ぐべきだ。
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●《裁判長は「取り調べや証拠開示などが一つでも適切に行われていれば、逮捕・起訴はなかったかもしれません」》と仰ってたのですがね?

2021年10月31日 00時00分38秒 | Weblog

(2021年09月18日[土])
安藤仙一朗記者による、アサヒコムの記事【元看護助手の無罪、滋賀県が判決否定 「心肺停止状態にさせたのは原告」】(https://digital.asahi.com/articles/DA3S15046227.html)。

 《だが、県は、15日に地裁へ提出した準備書面で「取り調べ担当官に好意と信頼を寄せて虚偽の殺害を自白することなど、根本的にあり得ない」とし、捜査の違法性を否定。「被害者を心肺停止状態にさせたのは、原告である」と主張した。再審の無罪判決で、裁判長は「取り調べや証拠開示などが一つでも適切に行われていれば、逮捕・起訴はなかったかもしれません」と説諭したが、「滋賀県警としては、承服し難い」とも反論した》。

   『●湖東記念病院人工呼吸器事件…冤罪服役13年、
     【元看護助手、再審で無罪が確定的に 滋賀の病院患者死亡】
   『●湖東記念病院人工呼吸器事件で冤罪服役…《刑事司法の
      よどみや曇り》の解明を、《冤罪が生まれる構造に光》を!
   『●警察・検察・裁判所は何も責任をとらないつもり? それなくして、
       《西山さんが待ち続けた「名誉回復」》が叶ったといえるのか?
   『●《判決後、大西直樹裁判長は、捜査の問題点と刑事司法の改善の必要性
      を説き、「西山さんの15年を無駄にしてはならない」と話している》
    《無実でも有罪判決が確定すると、それを晴らす道は極めて狭い
     再審関係の条文は古いままで、手続きも事実上、裁判官のさじ加減次第
     である。無辜(むこ)を救う究極の人権救済の法整備は急ぐべきだ

 西山美香さんは冤罪で服役し、《青春時代の十数年間を監獄で過ごさねばならなかった》。《再審開始決定までの七つの裁判所判断は、この矛盾に言及しなかった》。《無理な捜査、虚偽自白、証拠開示の遅れ》…弁護士も立ち会わず、長期拘留して密室で自白を迫る。警察や検察により、被疑者に有利な証拠は隠蔽される。同じことの繰り返しだ。
 大西直樹《裁判長は「取り調べや証拠開示などが一つでも適切に行われていれば、逮捕・起訴はなかったかもしれません」》《「西山さんの15年を無駄にしてはならない」》と仰ってたのですがね?
 醜悪過ぎる滋賀県警、いっさい反省なし、冤罪に何の痛痒も感じていない…《警察官のうそと検察官の証拠独占が冤罪を生む》。

   『●《日本の刑事司法はおそろしいほどに後進的…代用監獄…
          人質司法》…さらに、司法取引まで投げ渡す大愚
   『●検察による恣意的・意図的な証拠の不開示、証拠の隠蔽や
             喪失、逆に、証拠の捏造…デタラメな行政
   『●《良心に従い職権を行使する独立した存在》ではない
     大久保正道裁判長である限り、アベ様忖度な「行政判断」が続く
   『●《「自白の強要をされたという認識に変わりはない」と反論…
            いまだにこんな水掛け論になるのかと嘆かわしい》
    「《日本の刑事司法はおそろしいほどに後進的代用監獄人質司法
     …《日本の刑事司法制度は国際的水準に達していない》。
     「人質司法」は未だに《国際的にも悪評が高い》。
     《弁護士の立ち会い…多くの国・地域で認めている制度》である
     にもかかわらず、ニッポンでは認められていない。
     《録音・録画(可視化)》もほとんど進まず、
     《事後検証が不可能に近い》。《弁護士の立ち会いが任意段階から
     認められていれば、誤認逮捕という人権侵害もなかったはずだ》」

   『●木谷明さん《冤罪を回避するために法曹三者…
      無実の者を処罰しないという強い意志、意欲をもって仕事にあたること》
   『●山口正紀さん《冤罪…だれより責任の重いのが、無実の訴えに
            耳を貸さず、でっち上げを追認した裁判官だろう》
    《四十年間も潔白を訴えていた大崎事件(鹿児島)の原口アヤ子さんに
     再審の扉は開かなかった。最高裁が無実を示す新証拠の価値を
     一蹴したからだ。救済の道を閉ざした前代未聞の決定に驚く。
     「やっちょらん」-。原口さんは、そう一貫して訴えていた。
     殺人罪での服役。模範囚で、仮釈放の話はあったが、
     「罪を認めたことになる」と断った。十年間、服役しての
     再審請求だった…「疑わしきは被告人の利益には再審請求にも
     当てはまる。その原則があるのも、裁判所は「無辜(むこ)の救済」
     の役目をも負っているからだ。再審のハードルを決して高めては
     ならない》
    「再審するかどうかを延々と議論し、《三度にわたり再審開始決定
     出ながら》、最後に、ちゃぶ台返し。最「低」裁は何を怖れている
     のか? 誤りを潔く認めるべきだ。山口正紀さん、《冤罪は警察・
     検察だけで作られるものではない。…マスメディアにも責任…。
     だが、だれより責任の重いのが、無実の訴えに耳を貸さず、
     でっち上げを追認した裁判官だろう》。」

   『●《「証拠は再審請求の段階でも捜査側に偏在している」…検察は掌中の
         証拠をあまねくオープン》にするよう裁判所は訴訟指揮すべきだ

 布川事件桜井昌司さんは《冤罪で服役29年》《事件発生から54年の長い時間》…検察や警察の捜査の違法性を認め、国と茨城県の損害賠償が確定しました。54年の苦難にとても報いることはできませんが、その一部に少しでも報いられたとしたら、この判決を歓迎すべきかと思いました。検察や警察は《判決の結果を真摯に受け止め》、二度とこのような冤罪被害者が出ないよう、改善を約束すべきです。そのために何をすべきかを明らかにすべき。

   『●桜井昌司さん《冤罪で服役29年》《事件発生から54年の長い時間》
      …検察や警察の捜査の違法性を認め、国と茨城県の損害賠償が確定

 一方…こんなことが許されていいのか! ―――――《官邸の忠犬政権の爪牙山口敬之氏の逮捕を潰した最重要キーマン》中村格氏が警察庁長官に…。前川喜平さん《中村の警察庁長官就任は、安倍・菅政権の腐敗を象徴する人事だ》。金子勝さん《権力に近ければ、罪を犯しても逮捕されない…公安警察・検察が安倍政権を支配していることに事の本質がある》。青木理さんは《…本来は一定の距離を保つべき政権と警察・検察が近づき過ぎるのは非常に危うい民主主義国家として極めて不健全な状態と言わざるを得ません》。

   『●アベ様が《新政権も警察権力も私物化する暗黒時代が始まる》、《官邸の
       忠犬…政権の爪牙…山口敬之氏の逮捕を潰した最重要キーマン》が…

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https://digital.asahi.com/articles/DA3S15046227.html?unlock=1#continuehere

元看護助手の無罪、滋賀県が判決否定 「心肺停止状態にさせたのは原告」
2021年9月17日 5時00分

     (記者会見する西山美香さん(左)と井戸謙一弁護士=大津市)

 滋賀県の湖東記念病院で2003年に死亡した男性患者への殺人罪で服役後、再審無罪が確定した元看護助手の西山美香さん(41)が国と県に計約4300万円の国家賠償を求めた訴訟で、県が無罪判決を否定する内容の主張をしていることが分かった。16日に大津地裁であった非公開の手続き後、原告側が会見で明らかにした。

 昨年3月の再審の無罪判決は、西山さんの捜査段階の自白について、取り調べた県警の男性刑事が西山さんの恋愛感情などを利用して誘導したと認定。被害者が致死性不整脈で死亡した可能性があり「殺害されたという事件性が証明されていないと結論づけた。無罪判決は翌月に確定した。

 だが、県は、15日に地裁へ提出した準備書面で「取り調べ担当官に好意と信頼を寄せて虚偽の殺害を自白することなど、根本的にあり得ない」とし、捜査の違法性を否定。「被害者を心肺停止状態にさせたのは、原告である」と主張した。

 再審の無罪判決で、裁判長は「取り調べや証拠開示などが一つでも適切に行われていれば、逮捕・起訴はなかったかもしれません」と説諭したが、「滋賀県警としては、承服し難い」とも反論した。

 西山さんは昨年12月、捜査の違法性を明らかにするとして、国賠訴訟を起こした。国は6月、「検事が有罪と認められる嫌疑があると判断したことには十分な理由があり、起訴の判断が合理性を欠くとはいえない」とし、検事の捜査に違法性はなかったとする書面を地裁に提出している。

 16日の会見で、西山さんは「県の書面の内容はうそで、怒り心頭だ」と語った。代理人の井戸謙一弁護士は「予想外で大変不当」と強調。県の準備書面について「無罪とした刑事確定判決の判断正面から否定するもの」「美香さんを再び馬鹿にし、その名誉を甚だしく毀損(きそん)するもの」などとし、県の代理人に撤回を求めたという。

 無罪判決をめぐっては、県議会で昨年6月、滝沢依子・県警本部長が代表質問に対し「結果として(西山さんに)大きなご負担をおかけし、大変申し訳ないと謝罪していた。県警監察官室は取材に対し、準備書面について「個別の案件についてはコメントを差し控える」とした。(安藤仙一朗)


■誤り認め検証を

元刑事裁判官の水野智幸・法政大法科大学院教授の話 民事裁判は、刑事裁判から独立して認定できるので、国や滋賀県がどのような主張をするかは法的に自由だ。ただ、無罪判決が再審で確定し、違法な捜査があったと認めている。無罪判決を否定するような主張をするのは、「私たちは納得していない」というポーズであり、間違いを認めない姿勢の表れだ。裁判が長引くと無罪になった人の負担が増え、救済も遅れる捜査機関側は素直に誤りを認めて謝罪し、事件を検証するべきだ
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●桜井昌司さん《冤罪で服役29年》《事件発生から54年の長い時間》…検察や警察の捜査の違法性を認め、国と茨城県の損害賠償が確定

2021年10月10日 00時00分17秒 | Weblog

(20210914[])
中村真理記者による、アサヒコムの記事【「今が春」 冤罪で服役29年、末期がん…それでも開けた視界の先は】(https://www.asahi.com/articles/ASP9B656LP91OIPE01F.html?iref=pc_ss_date_article)。

 《「あれ、俺死ぬの怖くない」 がんで余命1年の宣告をうけたとき、桜井昌司さん(74)は気づいた。戦後7件目の冤罪(えんざい)布川事件で、強盗殺人罪で29年服役。獄中で父も母も亡くした。それでも「今が春」と笑う》。

 《冤罪で服役29年》《事件発生から54年の長い時間》…検察や警察の捜査の違法性を認め、国と茨城県の損害賠償が確定しました。54年の苦難にとても報いることはできませんが、その一部に少しでも報いられたとしたら、この判決を歓迎すべきかと思いました。検察や警察は《判決の結果を真摯に受け止め》、二度とこのような冤罪被害者が出ないよう、改善を約束すべきです。そのために何をすべきかを明らかにすべき。

   『●『冤罪File(No.10)』読了
   『●冤罪デモ
   『●『自然と人間2010年2月号』読了
   『●『冤罪ファイル(2010年10月号)』読了
    「里見繁氏、「布川事件再審公判傍聴記――確定判決から30年余り
     時を経て、今ようやく再審の幕が開いた――」。「この事件を一言で
     言えば「検察の証拠隠し」である。最新請求の審理の過程で百件を
     超える隠蔽証拠が開示された。…。一審から最高裁、再審請求の
     地裁から最高裁、合計二〇人の裁判官が揃いも揃って、冤罪を
     見過ごし、検察の嘘を素通りさせた。彼らこそ裁かれるべき
     かもしれない」。「ところが警察と検察は、桜井さん、杉山さんの
     二人に結びつかない証拠はすべて隠した」。
     桜井昌司さんと杉山卓男さん」

   『●布川事件の記録映画、……そして、………………
    《布川事件、再審無罪 発生から44年 水戸地裁土浦支部
    《映画「ジョージとタカオ」を観て 刑事司法の病理を体現する
     ふたりの中年男》
    《水戸地裁土浦支部は05年、「鑑定書が確定審の審理中に提出されて
     いれば有罪認定に合理的疑いが生じた」と述べ、再審開始の決定をした。
     検察側は即時抗告したが、東京高裁は08年、11カ所の中断が
     みられる桜井さんの自白の録音テープについて「取調官の誘導があった
     ことをうかがわせる」と指摘。検察側が新たに開示した「現場宅で見た
     のは杉山さんらではない」とする目撃証言も考慮し「確定判決の判断を
     維持できない」と認定した。最高裁も09年に再審開始を認めた》
    《弁護側は、検察側が2人に有利な証拠を再審請求審まで明らかにして
     いなかったことを「証拠隠し」と非難。裁判所の責任についても
     「冤罪(えんざい)の根絶のため、有罪になった構造を解明すべきだ」
     と求めてきた》

   『●強大な氷山の一角としての冤罪発覚
   『●東電OL殺人事件元被告マイナリさん、
       冤罪15年間への償いはできるのか?
    《▼「新証拠なんかじゃない。検察が隠し持っていたんですよ」。
     決定後の記者会見で昨年、再審無罪になった布川事件の桜井昌司さんが
     憤っていた。血痕が付着したコートなどの不利な証拠を出し渋り、
     DNA鑑定にも二の足を踏んだ検察の姿勢が冤罪(えんざい)
     生んだのは明白だ》

   『●冤罪(その2/2): せめて補償を
   『●またしても裁判所は機能せず、闘いは高知高裁へ:
       高知白バイ「冤罪」事件、地裁が再審請求を棄却
   『●「戦後70年 統一地方選/その無関心が戦争を招く」
      『週刊金曜日』(2015年4月3日、1034号)
   『●「検察・警察も冤罪防止のために“前向き”」?
     …刑事訴訟法の「改正案が成立すれば、新たな冤罪を生む」
   『●検察による恣意的・意図的な証拠の不開示、
     証拠の隠蔽や喪失、逆に、証拠の捏造…デタラメな行政
    《布川事件で再審無罪が確定した桜井昌司さん(72)の訴えを認めた
     二十七日の東京地裁判決は、警察官の違法な取り調べや検察官の
     証拠開示拒否などがなければ、「遅くとも控訴審判決(一九七三年)で
     無罪判決が言い渡され、釈放された可能性が高い」と捜査機関に猛省を
     促した。弁護団からは「画期的だ」との声が上がり、
     桜井さんは捜査機関の在り方を批判した》
    《桜井さんと同じ冤罪被害者も訴訟を支援した。大阪市の女児死亡火災で
     再審無罪となり、自身も国賠訴訟中の青木恵子さんは「桜井さんから
     希望をもらった」と喜んだ。いまだ再審の扉が開かれない袴田事件
     大崎事件に触れ、「順番に勝っていってもらいたい」と望んだ》

   『●飯塚事件…《しかしもっと恐ろしいのは、そんな誤りを認めず、
     国家による殺人を無かった事にする国家の強引さだろう》(清水潔さん)
    「ついでと言っては何ですが…桜井昌司さんについて…
     《清水潔… 【放送告知】強盗殺人容疑で有罪判決を受け、
     罪を償わされてから冤罪が明らかになった男性をカメラが追いました。
     裁判の間違いを裁判所が認めるまでに38年。ようやく潔白を手に
     入れて今度は10年で末期がん宣告です。壮絶な人生を描く
     ヒューマンドキュメンタリー。》」

   『●布川冤罪事件…《合計二〇人の裁判官が揃いも揃って、冤罪を見過ごし、
         検察の嘘を素通りさせた。彼らこそ裁かれるべきかもしれない》

 《合計二〇人の裁判官が揃いも揃って、冤罪を見過ごし、検察の嘘を素通りさせた彼らこそ裁かれるべきかもしれない》。
 東京新聞の記事【布川事件訴訟、国と茨城県が敗訴 桜井さん「やっと解放」】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/130627)によると、《1967年に茨城県で起きた「布川事件」で強盗殺人罪に問われ、2011年に再審無罪となった桜井昌司さん(74)が、国と県に損害賠償を求めた訴訟で、検察や警察の捜査の違法性を認め、計約7400万円の支払いを命じた東京高裁判決が13日までに確定した。国と県が上告しなかった。桜井さんは同日、東京都内で記者会見し「事件発生から54年の長い時間を思うと、やっと解放され、ほっとしている」と語った。茨城県警は「判決の結果を真摯に受け止め、今後も引き続き、緻密かつ適正な捜査を推進していく」とコメントした》。

 《警察官のうそと検察官の証拠独占が冤罪を生む》――― 検察による恣意的・意図的な証拠の不開示、証拠の隠蔽や喪失、逆に証拠の捏造…デタラメな行政。布川冤罪事件の桜井昌司さん、《警察官のうそと検察官の証拠独占が冤罪を生む》と。強大な権力には政治判断=忖度を乱発し、一方、弱者には厳格・冷酷な司法判断…最「低」裁を頂点とする司法の堕落。

 こういうことに恐怖を感じる。こんなことが許されるの!? ―――《官邸の忠犬…政権の爪牙…山口敬之氏の逮捕を潰した最重要キーマン》中村格氏が警察庁長官?
 日刊ゲンダイ【安倍政権時代の「官邸ポリス」が“論功行賞”で警察組織2トップに昇格の不気味】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/294620)によると、《警視庁の斉藤実警視総監は、庁内で「警備警察のエキスパート」と呼ばれてきた人物。早ければ9月中に退任するとみられ、後任には警察庁の大石吉彦警備局長が就任する予定だ。…さらには、警察庁も年末にトップが交代して、安倍氏と親密な元官邸ポリス」が長官に就きそうなのだ。一貫して警備畑を歩んできた警察庁の松本光弘長官の後任には、警察庁ナンバー2の中村格次長が昇格する》。
 アベ様がやりたい放題だ。

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https://www.asahi.com/articles/ASP9B656LP91OIPE01F.html?iref=pc_ss_date_article

「今が春」 冤罪で服役29年、末期がん…それでも開けた視界の先は
中村真理 2021年9月12日 9時30分

     (「布川事件」で再審無罪となった桜井昌司さん
      =2021年6月15日午後、名古屋市中区、岩下毅撮影)

 「あれ、俺死ぬの怖くない

 がんで余命1年の宣告をうけたとき、桜井昌司さん(74)は気づいた。戦後7件目の冤罪(えんざい)布川事件で、強盗殺人罪で29年服役獄中で父も母も亡くした。それでも「今が春」と笑う。

 今年4月、獄中で書きためた詩と人生をつづった本を出版した。作詞作曲から手がけたCDも発売した。各地でコンサートを開き、プロの歌手からも誘いがかかる。歌うのが大好きで、「夢は『紅白』と『徹子の部屋』に出ること」だ。

 2019年にトイレで出血し、直腸がんが判明。転移も見つかった。医師に「手術はできない」と言われ、翌年には余命1年と宣告された。

 「死ぬのか」。がんとわかり、真剣に考えてみた。獄中も含めた72年の人生について、死ぬことについて。「俺の人生、楽しかったな。ドラマチックで、他の人に生きられる人生じゃなかったよな」

 昔から特に死ぬことが恐怖だった。小学4年生の夏、テレビアニメで人が死ぬシーンを見ると、庭に飛び出してトマト苗の下に逃げ込んだ。刺すような太陽の明るさに「生きている」と感じてようやく安心した。

 「とにかく自分が消えることが震えるほど怖かった」


恐怖だった「死」、獄中で見つけた生き方とは

 20歳で逮捕されたときも、取り調べで死刑をちらつかされ、うその自白へ追い込まれていった

 「死ぬの怖くない」に至るまでの変化には、無実の罪に翻弄(ほんろう)され続けた桜井さんが見いだしてきた生き方がある。

 最初の転機は、無期懲役刑が確定した31歳だった。20歳で逮捕され、うその自白で有罪、しかも死刑に次ぐ最高刑が確定してしまった。無実を信じた母は前年に死亡。手を握ることもかなわないままだった。

 外の世界へ出ることを思い描いていたが、どうあがいたってもう出られない。「俺の人生は終わった」。暗闇に落ちたようだった。

 もがく中、ふと考えが切り替………
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●原口アヤ子さん・大崎冤罪事件…《被害者は自転車事故による出血性ショックで死亡した可能性があり「殺人なき死体遺棄事件」だった》?

2021年08月28日 00時00分31秒 | Weblog

(20210718[])
西日本新聞の2月のシリーズ記事【検証「大崎事件」 アナザーストーリーを追う】(https://www.nishinippon.co.jp/serialization/the_osaki_case/)。

 《「殺人犯」は存在しない? 解決したはずの殺人事件にショッキングな疑惑が浮かんだ。40年前に鹿児島県で起きた「大崎事件」を、調査報道で追う》。

   『●知らなかった冤罪事件: 鹿児島大崎事件
   『●飯塚事件の闇…2008年10月16日足利事件の
       再鑑定で死刑停止されるべきが、10月28日に死刑執行
   『●NNNドキュメント’13: 
      『死刑執行は正しかったのか 飯塚事件 “切りとられた証拠”』
   『●「飯塚事件」「福岡事件」「大崎事件」
       ……に係わる弁護士たちで『九州再審弁護連絡会』発足

   『●「あたいはやっちょらん」の叫び!…
      「だれより責任の重いのが…でっち上げを追認した裁判官」
   『●39年間「あたいはやっちょらん」、
     一貫して無実を訴えてきた90歳の原口アヤ子さんに早く無罪判決を

   『●冷酷な司法…【NNNドキュメント’18/
      あたいはやっちょらん 大崎事件 再審制度は誰のもの?】
   『●大崎事件…再審するかどうかを延々と議論し、
      三度にわたる再審開始決定を最「低」裁がちゃぶ台返し
   『●《家族への脅迫状…「苦しみ抜いて一人で罪をかぶろう 
         としているのに許せない。もともと無実なのだから」》
    「大崎事件について、《元裁判官の木谷明弁護士…
     「無実の人を救済するために裁判所はあるのではないのか」》と。
     【報道特集】…によると、《”伝説”の元裁判官~冤罪救済に挑む…
     無罪判決を30も出し、全てを確定させた元裁判官。
     退官後、81歳となった今、冤罪救済を目指す弁護士として裁判所に
     挑んでいる。そこで直面した裁判所の現状とは》。『イチケイのカラス』…
     のモデルの一部になっているらしい」

   『●山口正紀さん《冤罪…だれより責任の重いのが、無実の訴えに
            耳を貸さず、でっち上げを追認した裁判官だろう》
    《四十年間も潔白を訴えていた大崎事件(鹿児島)の原口アヤ子さんに
     再審の扉は開かなかった。最高裁が無実を示す新証拠の価値を
     一蹴したからだ。救済の道を閉ざした前代未聞の決定に驚く。
     「やっちょらん」-。原口さんは、そう一貫して訴えていた。
     殺人罪での服役。模範囚で、仮釈放の話はあったが、
     「罪を認めたことになる」と断った。十年間、服役しての
     再審請求だった…「疑わしきは被告人の利益に再審請求にも
     当てはまる。その原則があるのも、裁判所は「無辜(むこ)の救済」
     の役目をも負っているからだ。再審のハードルを決して高めては
     ならない》
    「再審するかどうかを延々と議論し、《三度にわたり再審開始決定
     出ながら》、最後に、ちゃぶ台返し。最「低」裁は何を怖れている
     のか? 誤りを潔く認めるべきだ。山口正紀さん、《冤罪は警察・
     検察だけで作られるものではない。…マスメディアにも責任…。
     だが、だれより責任の重いのが、無実の訴えに耳を貸さず、
     でっち上げを追認した裁判官だろう》。」

   『●《周防正行さんが「あたいはやっちょらん。大崎事件第4次再審請求
     ・糾せ日本の司法」と銘打ち、インターネット上に立ち上げた…CF》
   『●憲法《37条1項が保障する『公平な裁判所による裁判を受ける権利』が
       侵害され》ている…飯塚事件、大崎事件の裁判に「公正らしさ」は?

 《殺人などの罪で懲役10年が確定、服役した原口アヤ子さん(92)が一貫して無実を訴え、再審を求めてきた大崎事件は発生から40年が過ぎた。3度目の請求で地裁、高裁が再審開始を認め、開くかに見えた「再審の扉」は昨年6月、最高裁で閉ざされるという異例の経過をたどっている》。最「低」裁だけが、こだわる〝殺人〟…《被害者は自転車事故による出血性ショックで死亡した可能性があり「殺人なき死体遺棄事件」だったのではないか、と》。

 以前の引用から。中島邦之記者による、西日本新聞のコラム【風向計/裁判の公正らしさとは】(https://www.nishinippon.co.jp/item/n/620476/)によると、《同様の事例は飯塚事件大崎事件でも起きた。飯塚では、一審の死刑判決に関わった判事が再審請求後の即時抗告審に関与した。大崎では、第2次再審請求の特別抗告審を担った最高裁判事が、第3次請求も担当し、地裁と高裁が認めた請求を退けた…加えて、同一事件の審理を同じ裁判官が繰り返し担うことを、再審請求審でも禁じると規定するべきではないか》
 「ちゃぶ台返し」が起こる訳だ。《飯塚では、一審の死刑判決に関わった判事が再審請求後の即時抗告審に関与した。大崎では、第2次再審請求の特別抗告審を担った最高裁判事が、第3次請求も担当し、地裁と高裁が認めた請求を退けた》。裁判の制度がこれじゃぁ、デタラメな判決が出るはずだ。
 山口正紀さん、《冤罪は警察・検察だけで作られるものではない。…マスメディアにも責任…。だが、だれより責任の重いのが、無実の訴えに耳を貸さず、でっち上げを追認した裁判官だろう》。おまけに、《裁判の公正らしさ》もないのでは…。

   『●飯塚事件…《しかしもっと恐ろしいのは、そんな誤りを認めず、
     国家による殺人を無かった事にする国家の強引さだろう》(清水潔さん)
   『●布川冤罪事件…《合計二〇人の裁判官が揃いも揃って、冤罪を
     見過ごし、検察の嘘を素通りさせた。彼らこそ裁かれるべきかもしれない》

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https://www.nishinippon.co.jp/serialization/the_osaki_case/

検証「大崎事件」 アナザーストーリーを追う

 「殺人犯」は存在しない? 解決したはずの殺人事件にショッキングな疑惑が浮かんだ。40年前に鹿児島県で起きた「大崎事件」を、調査報道で追う。


連載目次

 1 殺人なき遺体遺棄事件? 揺らぐ死因 #鑑定①
   2020/2/17 6:00

 2 驚きの展開 鑑定は訂正されていた #鑑定②
   2020/2/18 6:00

 3 不可解な「空白の30分」 #被害者①
   2020/2/19 6:00

 4 「空白」をつなぐ目撃者に会う #被害者②
   2020/2/20 6:00

 5 「虚像」? 泥酔は本当か #被害者③
   2020/2/21 6:00


https://www.nishinippon.co.jp/item/n/584658/

殺人なき遺体遺棄事件? 揺らぐ死因 #鑑定①
2020/2/17 6:00 (2021/5/17 21:55 更新)

 殺人などの罪で懲役10年が確定、服役した原口アヤ子さん(92)が一貫して無実を訴え、再審を求めてきた大崎事件は発生から40年が過ぎた。3度目の請求で地裁、高裁が再審開始を認め、開くかに見えた「再審の扉」は昨年6月、最高裁で閉ざされるという異例の経過をたどっている。3月末に予定される第4次請求を前に、現場を訪ねた。
 事件は1979年10月12日に起きた。鹿児島県大崎町で、被害者の四郎さん=当時(42)=が酒に酔い自転車ごと側溝に転落。路上に倒れている姿で発見される。被害者宅の近くに住む男性2人が迎えに行き、1・1キロ離れた自宅へ軽トラックで連れ帰った。

     (現場地図)

 横たわる被害者を最初に見つけた西崎良一さん(61)に話を聞くことができた。当時21歳。「車で徐行しながら見て父親の知人だと気付き、すぐに父親に知らせた。けがや出血はない様子でした」と振り返る。
 自宅まで運んだ2人は、当時47歳のIさんと37歳のTさん。被害者は側溝に落ちたためか、びっしょりぬれていた。40年前に軽トラが通った道を、車で走った。農地が広がる風景は、東九州自動車道の建設工事が進んだ以外は当時とあまり変わっていないという。

     (「この辺りに倒れていました」と語る西崎良一さん。
      右側が、被害者が自転車ごと転落したとみられる側溝
      =1月、鹿児島県大崎町)

 わずか1キロ余り。被害者宅があった所まで数分。被害者の長兄でアヤ子さんの夫だった一郎さん=当時(52)、次兄の二郎さん=同(50)=の自宅も同じ敷地内にあった。転落事故の3日後、被害者宅の牛小屋から遺体が発見される。その後、アヤ子さん、一郎さん、二郎さん、その息子の太郎さん=同(25)=が相次いで逮捕された。

     (大崎事件相関図)

 車を止めて100メートルほど歩くと、竹と雑木に囲まれた空間に出た。一角に朽ちた小屋。「アヤ子さん宅の物置でした」。彼女の支援者、武田佐俊さん(76)が教えてくれた。左手に被害者方と牛小屋があったというが、やぶに覆われて前に進めない。住人がいなくなった一帯は、人を寄せ付けない雰囲気だった。
 被害者は倒れていた地点から車で自宅へ運ばれた-。ここまでは事件当日の出来事として、アヤ子さんら4人を有罪とした確定判決と、冤罪(えんざい)の可能性を認め再審開始決定を出した福岡高裁宮崎支部決定(2018年)は一致する。
 その後の犯行ストーリーは異なる。確定判決は、自宅土間に放置された被害者がアヤ子さんら3人にタオルで絞殺され、太郎さんを加えた4人によって堆肥に埋められた、と認定した。
 一方、高裁は新証拠を基に「アナザーストーリー」に踏み込む。被害者は自転車事故による出血性ショックで死亡した可能性があり「殺人なき死体遺棄事件」だったのではないか、と。
 筋書きを分けた「自宅到着後」。一体、何があったのか。
 大崎事件は1980年の一審判決で「親族間で起きた殺人・死体遺棄事件」と認定され、確定した。
 原口アヤ子さん(92)の当時の夫で長兄の一郎さん、次兄の二郎さん、被害者の四郎さんの3兄弟はいずれも農家で、自宅も隣接していた。酒飲みだった被害者はトラブルを起こすこともあり、兄たちとの仲は良くなかったという。
 事件発生の79年10月12日。確定判決によると、酔いつぶれた被害者が自転車ごと側溝に転落、連絡を受けた隣人のIさんとTさんが午後9時ごろ車で連れ帰る。2人は被害者を土間に運び、帰宅する。
 連絡を受けたアヤ子さんはIさん宅に謝罪に行き、被害者宅へ。「泥酔して土間に座り込む姿を見て日頃の恨みが募り、殺害を決意」「一郎さんと二郎さんに持ち掛けて午後11時ごろにタオルで首を絞めて殺害し、翌13日未明、二郎さんの息子の太郎さんにも頼んで遺体を牛小屋に運び、堆肥に埋めた」-これが確定判決による犯行の流れだ。
 警察の調べに対し一郎さんと二郎さんは、タオルで首を絞めたと「自白」。(1)死因は「首の圧迫による窒息死」とした鹿児島大教授による法医学鑑定(2)「共謀の場面を見た」とする二郎さんの妻の目撃供述-で裏付けられたとされた。

     (被害者宅があった辺りを指さす武田佐俊さん。
      右手はアヤ子さん方の朽ちた物置小屋
      =1月、鹿児島県大崎町)

   ◇    ◇

 3度目の再審請求で弁護団は東京医科大の吉田謙一教授による新鑑定を提出した。遺体の解剖所見や写真、死亡前の行動を分析し、死因は「窒息死ではなく、自転車ごと側溝に転落した事故による出血性ショック死の可能性が高い」。「タオルによる絞殺」という自白の信用性を揺るがす新証拠だった。
 2018年の福岡高裁宮崎支部決定は吉田鑑定を基に「被害者は自転車転落事故により、自宅に運ばれた際には出血性ショックで死亡するか、瀕死(ひんし)状態だった可能性が相当程度ある」と指摘した。Iさん、Tさんは「被害者を土間に置いた」と供述していたが、その時、そもそも被害者は生きていたのか-。確定審で信用性が問題になることはなかった「第三者」の2人の供述内容に、吉田鑑定が疑問を差し挟む形になった。
 吉田鑑定を認めれば「土間で座り込む被害者に(アヤ子さんが)殺意を抱く」場面から始まる確定判決の筋書きは成り立たない。高裁は「既に死亡していた被害者が『何者か』によって堆肥に埋められた」というアナザーストーリーに踏み込み、再審開始の結論を導いた。

     (確定判決と高裁の犯行ストーリーの違い (1979年10月12日午後))

   ◇    ◇

 これに対し最高裁は、高裁の推認通りであれば「堆肥に埋めたのは最後に被害者に接触したIさん、Tさん以外に想定し難いことになるが、それは証拠上、全く想定できない」と一蹴。Iさん、Tさんの供述内容や共犯者の自白、親族の目撃供述について「相互に支え合っており、供述の変遷に問題があることを考慮しても、信用性は相応に強固だ」として確定判決を「支持」した。
 再審に詳しい元東京高裁裁判長の門野博氏は「搬送した被害者の死亡に驚いて、予想外の行動に出てしまう可能性は全く考えられないだろうか。最高裁は致命的な誤りを犯していないか」と疑問を投げ掛ける。 (親族、関係者は全て仮名。いずれも故人)

   ■    ■

 大崎事件は地裁で2回、高裁で1回の計3回、再審開始決定が出た。「これを取り消さなければ著しく正義に反する」とまで言い切った最高裁決定(小池裕裁判長)は正しかったのか。25年に及ぶ再審請求の歳月で積み上げられた証拠を基に検証する。



https://www.nishinippon.co.jp/item/n/584965/

驚きの展開 鑑定は訂正されていた #鑑定②
2020/2/18 6:00 (2021/5/30 16:43 更新)

     (城哲男氏が証人尋問で事故死の可能性に言及したことを
      1面で報じた1997年7月10日付の南日本新聞)

 変死体が発見された場合、その状況と併せて「死因」が事実を知る鍵を握る。殺人事件なのか、殺害方法はどうだったのかを、遺体から探る。大崎事件も例外ではなかった。
 確定審では、被害者の遺体を解剖した鹿児島大の城哲男教授(当時)による「城旧鑑定」がその役割を担った。(1)死因は窒息死を推定(2)頸部(けいぶ)内部の組織間出血は頸部への外力作用を推測させ、他殺と想像する-との内容。原口アヤ子さん(92)の元夫らが自白した「タオルによる絞殺」を裏付ける証拠とされた。
 一方、2015年の第3次再審請求で弁護団は東京医科大の吉田謙一教授による法医学鑑定書を新証拠として提出。吉田鑑定は「自転車転落事故による出血性ショックの可能性が高い」とした。これが正しければ「タオルによる絞殺」と認めた確定判決は誤りになる。司法判断は分かれた。
 福岡高裁宮崎支部は18年、吉田鑑定の信用性を認めて再審開始を決定。最高裁は昨年6月、この決定を取り消し、吉田鑑定を否定して「自白の信用性は強固」と結論付けた。ならば、被害者の死因は城旧鑑定の指摘通り「窒息死」でなければならない。
 実は第1次再審請求の段階で驚く展開があった。城氏が再度鑑定し、自らの鑑定を「訂正」していた
 1997年7月。当時82歳の城氏の体調を考慮して宮崎地裁都城支部であった出張尋問で語っている。

「旧鑑定では(堆肥に埋まっていた遺体の)状況で他殺であろうと一部先入観を持たされていたから、新鑑定では先入観をよけた。自転車で側溝に転落すれば、頸椎(けいつい)損傷で死亡することもありえる

 その上で、こう認めた。「今の時点では、他殺か、事故死かは分からないというのが正しいですね」。旧鑑定当時は自転車転落事故のことを警察から聞いていなかったと、新鑑定書に明記していた。
 4カ月後、城氏はがん性腹膜症のため死去した。なぜ弁護団の求める新鑑定を行い、証人尋問にも応じたのか。九州大法医学教室出身の城氏の後輩で、本人をよく知る九州大の池田典昭教授は「法医学者として、確定判決への疑問があったのだと思う」と語る。
 この城旧鑑定について最高裁決定は「被害者の遺体は、頸部圧迫の他に著しい所見を認めないので窒息死を推定するほかない、というものにすぎず、死因を断定するものではなかった」としている。
 もともと弱い証拠だから、それが崩れても影響は小さいという論理-。だが、最高裁が「信用性は強固」と言い切る自白が、法医学の裏付けを欠いていることは確かだろう。
 客観的裏付けを失った以上、最高裁は自白自体に疑わしい点がないか精査すべきだったのではないか。決定文14ページのうち、6ページの「当裁判所の判断」に、その痕跡は見当たらない。


https://www.nishinippon.co.jp/item/n/585283/

不可解な「空白の30分」 #被害者①
2020/2/19 6:00 (2021/6/5 12:28 更新)

     (事件当日の被害者の足取り(1979年10月12日午後))
     (被害者が自転車ごと転落したとされる側溝付近=1月、鹿児島県大崎町)

 殺人事件ではなく、自転車ごと側溝に転落したことによる事故死だったのではないか-。仮にそうなら、大崎事件は冤罪(えんざい)ということになる。裁判記録を基に、事件当日の被害者の「足取り」を追ってみた。
 1979年10月12日。被害者は朝から酒を飲み、午後から外出。午後6時ごろ、自宅から1キロ余り離れた路上に倒れているのが見つかり(❺)、近所のIさんとTさんが午後9時ごろ自宅に連れ帰ったとされる。外出後、雑貨店を訪ねたり(❶❹)、自転車を押したり(❸)する姿が目撃されている。
 午後3時半ごろには、自宅前で酒気を帯びて車を運転し(❷)、警察官から注意されたことも確認できた。
 不可解なことがあった。午後5時半ごろ、雑貨店で店主と会話をしていた被害者(❹)が、わずか30分後、店から約300メートルしか離れていない路上で倒れ、寝ていた(❺)という点だ。
 確定判決によると、被害者はその後「酔いつぶれて前後不覚のまま」自宅に運ばれ、殺害時刻とされる午後11時ごろの段階でも「自宅の土間に座り込み泥酔のため前後不覚だった」と認定されている。泥酔状態が午後6時から11時まで、実に5時間も続いた計算になる。いつ、どこでそんなに飲酒したのか。
 「泥酔」の一番の根拠は被害者を連れ帰ったIさんらの供述だった。路上に倒れていたときの様子を「物事を言える状態ではなく、1人で立つこともできない泥酔状態でした」と説明していた。
 当時の目撃者の裁判記録も調べた。目撃情報のない「空白の30分」を挟む前後の様子はこうだ。
 午後5時半ごろ、被害者が雑貨店に立ち寄る(❹)。焼酎の2合瓶2本、タマネギ1袋を「ツケで売ってほしい」と頼み、断られるが「そげん言わんで」と言って持ち帰った。「話しぶりからは、そう酔っている様子はなかった」(雑貨店主の記録)
 午後6時ごろ、同店から約300メートルの場所で、車で通行中の当時21歳の男性に発見される(❺)。「被害者が自転車もろとも倒れ、寝ていたらしい」。これは男性本人の記録ではなく、男性から話を聞いた父親の話として記録に残る。息子の説明に「泥酔」はない。
 どうだろうか。「そう酔っている様子はなかった」被害者が、わずか30分後、路上に倒れていた。雑貨店で買った焼酎のせいか。転落現場に転がっていた2合瓶2本のうち「1本は封を切っておらず、1本は半分ほど残っていた」とIさんは警察に供述している。
 被害者が道路に横たわっていたのは、泥酔ではなく転落事故の影響だったのではないのか。既に紹介したように、2人の法医学者も「事故死の可能性」を指摘している。当時を知る目撃者2人を訪ねた。



https://www.nishinippon.co.jp/item/n/585580/

「空白」をつなぐ目撃者に会う #被害者②
2020/2/20 6:00 (2021/6/17 21:18 更新)

     (事件当日に被害者が通ったとみられる付近=鹿児島県大崎町)

 元気だった被害者がわずか30分後、300メートルしか離れていない路上で倒れていたのはなぜか-。被害者の当時の様子を聞くため「空白の30分」をつなぐ目撃者2人を訪ねた。
 被害者が最後に元気な姿を見せた雑貨店は、当時と同じ場所にあった。幸運にも、40年前に接客した店主(76)に会えた。「焼酎好きでね、よく来られてましたよ」。事件当時を驚くほど覚えていた。
 当時の供述記録には、こうある。

<「銭を持ってきておらん。焼酎をツケで売ってくれ」と言うので断ると、「そげん言わんで」と持参の袋に無断で入れた。私が盗むのをやめるように言うと、「今までツケを払わなかったことがあるか。貸してくれよ」と申された>

 このやりとりを店主に聞いてみた。「盗むということではないですよ。ツケにしてください、という話でした」と振り返った。供述記録とは微妙にニュアンスが異なる。
 供述記録はこう続く。

<店の品を盗むような人ではなかったので酔いすぎかなと思ったが、話しぶりや態度から、そう酔っている様子ではなかった

 深酒状態ということか。

「いや、そうじゃないですよ。ちょびちょび飲まれている状況だから。うん、飲んでらっしゃるという感じがするわけです」「いつもここで飲んで、ちょっといい気分になって帰るという感じでしたね」

 事件発生は1979年10月12日。来店した午後5時半段階では、確定判決が認定する「泥酔」の印象はない。30分後、突然路上に倒れていた理由は、やはり自転車事故の影響ではないのか。そうであるならば、共犯者が自白した「タオルによる絞殺」と矛盾する可能性が高まる。

     (事件当日に被害者が通ったとみられる付近=鹿児島県大崎町)

 もう1人のキーマンは、午後6時ごろ、自宅そばの路上に横たわる被害者を最初に発見した西崎良一さん(61)。当時の自宅で今も暮らす。玄関払いも覚悟していたが、来意を告げると居間に通された。

「路上に寝転んでいた記憶はありますよ。車で走っていて50メートルほど手前から見えた。顔も分かった。牛の世話の関係で、うちのおやじの知り合いでした。そのまま通り過ぎ、おやじに知らせた。体がぬれている印象で、酔っぱらって小便して寝ていると思った」

 出血やけがはなかったのか。

「なかったですね。なぜすぐに救護しなかったのか? 酒癖が悪い人だと聞いてましたから、絡まれたくなくて通り過ぎました。でも出血していたら、さすがに助けますよ」

 こんな話もした。「当時刑事さんがここに来て、おやじと一緒に調書を取られました」。そこには何が書かれているのか。



https://www.nishinippon.co.jp/item/n/585867/

「虚像」? 泥酔は本当か #被害者③
2020/2/21 6:00 (2021/7/11 12:38 更新)

     (事件当日に被害者が買った銘柄の焼酎。当時購入した
      「大金の露」の2合瓶は現在なく、写真は1合瓶)

 路上に倒れた被害者を最初に発見した西崎良一さん(61)は、再審請求審の重要証人といえた。倒れていた理由は、確定判決の認定通り「泥酔」だったのか、それとも側溝への自転車転落事故で瀕死(ひんし)状態だったのか。もし事故の影響による死亡なら、原口アヤ子さん(92)の元夫らの自白(タオルによる絞殺)も、それを証拠にした確定判決も成り立たなくなる。
 第1次再審請求の2001年、弁護側の求めにより、鹿児島地裁で西崎さんの証人尋問が行われた。
 「倒れている被害者を車を止めて見たのか、通りすがりに見たのか」。弁護人に問われ「止めて見たと思う」と答えたが、「降車して近寄って見たのか」と詰められると「はい、いや…だと思います」。発言が揺れていた。尋問当時で事件から22年。記憶に曖昧な部分があるのは無理もない。
 倒れていた被害者の様子については「酔っていた記憶がある」と説明。その理由を聞かれ「焼酎の瓶か何か知らんけど、開けたものが断片的に記憶に残っているんです」と答えた。

   ◇    ◇

 今回の取材で、西崎さんには2回会った。1月22日の初訪問の際は、うかつにも大切な点を聞き忘れており、翌々日に再訪した。
 なぜ被害者が酔っていると分かったのか。証人尋問でも弁護人が入念に尋ねていた点だ。「あの時、私は車から降りていません。徐行しながらのぞきこんだ。酒癖が悪いという話を聞いてたから、その先入観が入っていたと思いますよ」。「泥酔」を確かめていたわけではなかったのか。
 当時西崎さんから連絡を受けた父親も約1時間後、同じ場所で被害者を目撃。だが、確認できた父親の供述記録は、アヤ子さんの元夫らの逮捕から6日後のものだった。泥酔については「被害者が泥酔して道路に寝込み、自宅に連れ帰られたことは聞いて知っているのです」と、出所が定かでない記述があるだけだ。
 「人間の記憶は意外なほどもろい」。目撃供述に詳しい今村核弁護士(東京)に別の事件の取材で教わった注意点だ。目撃後、さまざまな暗示の影響で記憶が上書きされ、本人もそれに気付いていないことが珍しくない。西崎さんの話も、19年前の証人尋問よりも今回の方が記憶が鮮明な点は気になった。
 ただ、もう一人の目撃者である雑貨店主の話からも、酔いつぶれて道路に寝ていた-という被害者像が「虚像」であった疑いは拭えなかった。
 「当時刑事さんが自宅に来られ、調書を取られた」と西崎さんは言った。この説明は19年前と同じ。存在が確かな供述調書に何が書かれているのか。16年の裁判所の開示勧告に対し、検察側は「廃棄されたと思われる」と回答した。

   ■    ■

 「泥酔して自宅土間に放置された被害者をアヤ子さんが目撃した」という場面から始まる確定判決の犯行ストーリーは、被害者を運び込んだ「IさんとTさん」の供述が土台になった。次は2人の供述を詳しくみていく。
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●布川冤罪事件…《合計二〇人の裁判官が揃いも揃って、冤罪を見過ごし、検察の嘘を素通りさせた。彼らこそ裁かれるべきかもしれない》

2021年07月08日 00時00分11秒 | Weblog

(20210627[])
マガジン9のコラム【雨宮処凛がゆく! 第558回:コロナ禍、不自由な日々の中で突き刺さる「無実の罪で獄中29年」、桜井昌司氏の言葉。の巻】(https://maga9.jp/210519-1/)。

 《不満を燻らせていたところ、ガツンと頭を殴られるような一冊に出会った。それは4月に出版された桜井昌司さんの『俺の上には空がある広い空が』(マガジンハウス)。桜井昌司さんの名前を知る人はどれくらいいるだろう。彼は無実の罪を着せられ、29年間を獄中で過ごしたという「冤罪」の人だ。20歳から、29。20代、30代のすべてを、殺人の濡れ衣を着せられて刑務所で過ごさざるを得なかったのである。そうして事件から実に44年後の2011年、無罪が確定。すべての始まりは、1967年に起きた布川事件だった》。

   『●『冤罪File(No.10)』読了
   『●冤罪デモ
   『●『自然と人間2010年2月号』読了
   『●『冤罪ファイル(2010年10月号)』読了
    「里見繁氏、「布川事件再審公判傍聴記――確定判決から30年余り
     時を経て、今ようやく再審の幕が開いた――」。「この事件を一言で
     言えば「検察の証拠隠し」である。最新請求の審理の過程で百件を
     超える隠蔽証拠が開示された。…。一審から最高裁、再審請求の
     地裁から最高裁、合計二〇人の裁判官が揃いも揃って、冤罪を
     見過ごし、検察の嘘を素通りさせた。彼らこそ裁かれるべき
     かもしれない」。「ところが警察と検察は、桜井さん、杉山さんの
     二人に結びつかない証拠はすべて隠した」。
     桜井昌司さんと杉山卓男さん」

   『●布川事件の記録映画、……そして、………………
    《布川事件、再審無罪 発生から44年 水戸地裁土浦支部
    《映画「ジョージとタカオ」を観て 刑事司法の病理を体現する
     ふたりの中年男》
    《水戸地裁土浦支部は05年、「鑑定書が確定審の審理中に提出されて
     いれば有罪認定に合理的疑いが生じた」と述べ、再審開始の決定をした。
     検察側は即時抗告したが、東京高裁は08年、11カ所の中断が
     みられる桜井さんの自白の録音テープについて「取調官の誘導があった
     ことをうかがわせる」と指摘。検察側が新たに開示した「現場宅で見た
     のは杉山さんらではない」とする目撃証言も考慮し「確定判決の判断を
     維持できない」と認定した。最高裁も09年に再審開始を認めた》
    《弁護側は、検察側が2人に有利な証拠を再審請求審まで明らかにして
     いなかったことを「証拠隠し」と非難。裁判所の責任についても
     「冤罪(えんざい)の根絶のため、有罪になった構造を解明すべきだ」
     と求めてきた》

   『●強大な氷山の一角としての冤罪発覚
   『●東電OL殺人事件元被告マイナリさん、
       冤罪15年間への償いはできるのか?
    《▼「新証拠なんかじゃない。検察が隠し持っていたんですよ」。
     決定後の記者会見で昨年、再審無罪になった布川事件の桜井昌司さんが
     憤っていた。血痕が付着したコートなどの不利な証拠を出し渋り、
     DNA鑑定にも二の足を踏んだ検察の姿勢が冤罪(えんざい)
     生んだのは明白だ》

   『●冤罪(その2/2): せめて補償を
   『●またしても裁判所は機能せず、闘いは高知高裁へ:
       高知白バイ「冤罪」事件、地裁が再審請求を棄却
   『●「戦後70年 統一地方選/その無関心が戦争を招く」
      『週刊金曜日』(2015年4月3日、1034号)
   『●「検察・警察も冤罪防止のために“前向き”」?
     …刑事訴訟法の「改正案が成立すれば、新たな冤罪を生む」
   『●検察による恣意的・意図的な証拠の不開示、
     証拠の隠蔽や喪失、逆に、証拠の捏造…デタラメな行政
    《布川事件で再審無罪が確定した桜井昌司さん(72)の訴えを認めた
     二十七日の東京地裁判決は、警察官の違法な取り調べや検察官の
     証拠開示拒否などがなければ、「遅くとも控訴審判決(一九七三年)で
     無罪判決が言い渡され、釈放された可能性が高い」と捜査機関に猛省を
     促した。弁護団からは「画期的だ」との声が上がり、
     桜井さんは捜査機関の在り方を批判した》
    《桜井さんと同じ冤罪被害者も訴訟を支援した。大阪市の女児死亡火災で
     再審無罪となり、自身も国賠訴訟中の青木恵子さんは「桜井さんから
     希望をもらった」と喜んだ。いまだ再審の扉が開かれない袴田事件
     大崎事件に触れ、「順番に勝っていってもらいたい」と望んだ》

   『●飯塚事件…《しかしもっと恐ろしいのは、そんな誤りを認めず、
     国家による殺人を無かった事にする国家の強引さだろう》(清水潔さん)
    「ついでと言っては何ですが…桜井昌司さんについて…
     《清水潔… 【放送告知】強盗殺人容疑で有罪判決を受け、
     罪を償わされてから冤罪が明らかになった男性をカメラが追いました。
     裁判の間違いを裁判所が認めるまでに38年。ようやく潔白を手に
     入れて今度は10年で末期がん宣告です。壮絶な人生を描く
     ヒューマンドキュメンタリー。》」

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https://www.ntv.co.jp/document/backnumber/articles/18940v6mzkfe29llw8xf.html

NNNドキュメント ’21

2021年4月18日(日) 24:55
濡れ衣
~闘い続ける余命一年

強盗殺人犯として逮捕された男。検察は都合の良い証拠だけを使い無期懲役判決が下る。29年間投獄された男は、仮釈放から14年後にようやく無罪となった。この「布川事件」で潔白を勝ち取った男だったが、今度はがんにより余命一年の宣告を受けた。今、残された時間で冤罪被害者を支援し、濡れ衣を着せた司法の闇を世に引きずり出そうとしている。事件を20年以上追跡してきた日本テレビの映像により壮絶な人生に迫る。

ナレーター/石井康嗣  制作/日本テレビ  放送枠/30分

再放送
4月25日(日)5:00~/24:00~ 日テレNEWS24
5月2日(日)8:00~ BS日テレ
――――――――――――――――


 検察による恣意的・意図的な証拠の不開示、証拠の隠蔽や喪失、逆に証拠の捏造…デタラメな行政。布川冤罪事件の桜井昌司さん、《警察官のうそと検察官の証拠独占が冤罪を生む》と。強大な権力には政治判断=忖度を乱発し、一方、弱者には厳格・冷酷な司法判断…最「低」裁を頂点とする司法の堕落。

 日テレNEWSの映像資料【冤罪「布川事件」 29年間を獄中で過ごした桜井昌司さんとジャーナリスト・清水潔に聞く】(https://www.youtube.com/watch?v=WueXQENEeYA)によると、《強盗殺人事件「布川事件」の犯人として濡れ衣を着せられ、29年間を獄中で過ごした桜井昌司さん。冤罪はどのようにして作られたのか? 日本の刑事司法の問題点は? ジャーナリスト清水潔さんとともに話を聞いた。 ※桜井さんの闘いを追ったNNNドキュメント【濡れ衣 ~闘い続ける余命一年~】は、5月15日からHuluにて配信予定》。


【冤罪「布川事件」 29年間を獄中で過ごした桜井昌司さんとジャーナリスト・清水潔に聞く】(https://www.youtube.com/watch?v=WueXQENEeYA

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https://maga9.jp/210519-1/

雨宮処凛がゆく!
第558回:コロナ禍、不自由な日々の中で突き刺さる「無実の罪で獄中29年」、桜井昌司氏の言葉。の巻(雨宮処凛)
By 雨宮処凛 2021年5月19日

 「この一年、コロナのせいで季節の思い出もイベントの思い出も何もない」
 「人生、むちゃくちゃ損してる気がする」

 そんな声を耳にすることがたまにある。

 私自身も、自粛自粛のかけ声の中、時々うんざりする気持ちが込み上げる。「人となかなか会えない」「会食もできない」「旅行もできない」「海外なんてもってのほか」という日々が一年以上も続いているのだ。多くの人がストレスを抱え、不自由さに理不尽な思いを募らせている。

 唯一、「よかったかも」と思ったのは、自分が40代であることだ。

 もし、私が20歳の頃にコロナ禍が起きていたら……。「遊びたい盛り」に在宅を命じられるストレスは今の何百倍にもなっていただろう。そう思うと、「若者の軽率な行動」がメディアでことさらに非難されていることに同情したいような気持ちも少し、沸き起こる。同時に思うのは、もし20代前半とコロナ禍がかぶっていたら、私は決して物書きにはなっていなかっただろうということだ。

 なぜなら、20代前半はバイトをしながら「何者かになること」を目指していた時期だったからだ。いろんなイベントや集まりに行って、すでに「何者か」である人たちとがむしゃらに知り合い、刺激を受けていた。誘われた会には極力顔を出し、自分の「やりたいこと」「できること」はなんだろうと日々模索していた。生活費は、バイトで稼いでいた。

 そんな生活をしていた頃、コロナ禍が直撃していたら。せっかく東京でいろんなチャンスを掴もうにも、人と会う機会もイベントもないのであれば、高い家賃を払って東京にいる意味がない。しかも生活費を稼ぐためのバイト先も壊滅的な打撃を受けている状態。おそらく、コロナ禍での東京生活は半年と持たずに実家の北海道に帰っていただろう。そう思うと、若い世代に与える影響は、上の世代以降とは桁外れのものに思えてくる。

 それでも、40代の私も「損失」を日々感じている。

 軒並み中止となった講演会で、思いを共にする人々と出会う機会がなくなった(なのでたまにリアル講演会があるとすごく嬉しい)。コロナ前はよくしていた路上飲みもしていない。何より、人と会っていないので、気を抜くと「自分だけ仲間はずれにされている」感覚に陥ってしまう。何か「忘れ物」をしているような、宙ぶらりんな喪失感。そんなものを一年以上、抱えている。

 不満を燻らせていたところ、ガツンと頭を殴られるような一冊に出会った。それは4月に出版された桜井昌司さんの『俺の上には空がある広い空が』(マガジンハウス)。

 桜井昌司さんの名前を知る人はどれくらいいるだろう。彼は無実の罪を着せられ、29年間を獄中で過ごしたという「冤罪」の人だ20歳から、29年20代、30代のすべてを、殺人の濡れ衣を着せられて刑務所で過ごさざるを得なかったのである。そうして事件から実に44年後の2011年、無罪が確定

 すべての始まりは、1967年に起きた布川事件だった。今から54年前の8月、茨城県北相馬郡利根町布川で当時62歳の男性が殺され現金が奪われたのだ。

 同年10月、逮捕されたのが当時20歳だった桜井さんと、当時21歳だった杉山卓男さん。厳しい取り調べの中、あの手この手で自白を強要され、桜井さんは嘘の自白をしてしまう。そうして桜井さんと事件を結びつける物証はひとつもないにもかかわらず、無期懲役が確定してしまったのだ。

 20歳から29年間、自分がやってもいない殺人の罪で囚われの身となる――。誰にとっても、「人生で絶対に起きてほしくないことナンバーワン」ではないだろうか。しかし、桜井さんのすごいところは、それでも決してくじけなかったことだ。31歳で無期懲役が確定した時はさすがに「これで俺の人生は終わった」と思ったものの、前向きな気持ちを取り戻す。「今日という日は社会にいても刑務所にいても、どこで過ごしても一日しかない。ならば刑務所へ行っても、一日一日を人生の一日限りの今日として大事に生きよう」と決めたのだ。

 そうして「今なすべきことを全力でなせ」という思いで生きてきた。それまで一度も真面目に働いたことがなかったという桜井さんは、「刑務所では真面目に働いてみよう」と決め、靴工場で誰にも負けない作業量をこなした。それ以外にも父に仕送りするため、自己労作と呼ばれる「内職」もする。

 しかし、理不尽に獄中に囚われる日々の中、時々、「頭が爆発してしまう」ほど「自由になりたい!」という思いが押し寄せることがあったという。そんな時、桜井さんは深呼吸して、「俺の上には空がある。広い空がある。自由な空がある」と心を鎮めたという。

 そんな獄中生活を支えたのが、桜井さんの無実を信じる弁護団と支援者たち。が、再審請求は何度も棄却されてしまう。

 事件から29年後、仮釈放となって「シャバ」に。獄中にいる間に、母も父も亡くなっていた。が、無実の自分を信じ、見返りを求めず支援してくれた人々を裏切らないよう誠実に生きていくことを決め、地元の工務店で働く。99年には支援者だった女性と結婚し、01年、54歳の時には第二次再審請求。05年、再審開始が決まり、事件から44年後の11年、64歳でやっと無罪が確定したのだ。

 桜井さんと初めて会ったのは、4年前。17年5月に日比谷公園で開催された集会でのことだった。この日集まったのは、桜井さんの他に、90年、栃木で起きた「足利事件」で女児殺しの犯人にでっち上げられて17年を獄中で過ごした菅家利和さん(2010年、再審で無罪が確定)。63年、女子高生が殺害された「狭山事件」で逮捕され、31年間も獄中生活を送った石川一雄さん(再審請求中)。そして66年、一家4人が殺害された「袴田事件」で犯人とされ、48年も獄中に囚われていた袴田巌さんの姉・秀子さん。

 この4人を合わせた獄中生活の期間、なんと125年!

 「冤罪オールスターズ」と呼びたくなる面々が集まり、いまだ無罪が確定していない石川一雄さんの無実を訴えたのだった。

 その時会った桜井さんの印象は、一言でいうと「メチャクチャ明るい人」。ハイテンションで常にみんなを笑わせるムードメーカー的存在。しかも歌が好きで、なぜかCDデビューまで果たしているということだった。

 そんな桜井さんが癌の告知を受けたことを最近、テレビ番組で知った。ステージ4の直腸癌で、何もしなければ余命一年だという。桜井さんはこれまでの人生を考えた時の心境を、本書で以下のように書いている。

 「20歳で冤罪となって29年間の獄中生活、社会に戻り結婚。詩集と自作のCD作成、善意の弁護団と支援者に支えられての再審無罪、ドラマチックな数々の出来事を思うと、『俺の人生は楽しかった、満足だった、有り難かった』と思えた。このまま死んでも充分笑って死ねると思ったのだ」

 桜井さんは満足していても、やっぱりもっと、生きてほしい。そして冤罪についてだけじゃなく、桜井さんの超絶ポジティブなメンタルの保ち方について、もっともっと、発信してほしい。もっと詩も作ってほしいし歌ってほしい。勝手ながら、そう思う。

 桜井さんは現在、74歳。この6月、桜井さんが国家賠償を求めた控訴審の判決が出る予定だ。

 まずは判決を見守りたいと思っている。そしてぜひ、多くの人に、本書を読み、桜井さんの言葉に触れてほしい。

 「一度限りの人生と今日。ならば明るく楽しく」

 囚われの身だった桜井さんの言葉には、コロナ禍を乗り切るためのヒントが詰まっている。

     (「冤罪オールスターズ」の皆さんと。左から、桜井さん、
       袴田秀子さん、菅家さん、石川一雄さん、私)


雨宮処凛
あまみや・かりん:作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。格差・貧困問題、脱原発運動にも取り組む。07年に出版した『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版/ちくま文庫)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。近著に『ロスジェネのすべて』(あけび書房)、『相模原事件裁判傍聴記 「役に立ちたい」と「障害者ヘイト」のあいだ』(太田出版)。「反貧困ネットワーク」世話人、「週刊金曜日」編集委員、フリーター全般労働組合組合員。
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●飯塚事件…《しかしもっと恐ろしいのは、そんな誤りを認めず、国家による殺人を無かった事にする国家の強引さだろう》(清水潔さん)

2021年04月28日 00時00分48秒 | Weblog

(20210425[])
時事通信の記事【飯塚事件、再審認めず 元死刑囚側の特別抗告棄却―最高裁】(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021042300996&g=soc)。

 《福岡県飯塚市で1992年、小学1年の女児2人が殺害された「飯塚事件」で、殺人罪などで死刑が執行された久間三千年元死刑囚=執行時(70)=の再審請求審で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は23日までに、元死刑囚側の特別抗告を棄却する決定をした。21日付。再審開始を認めない判断が確定した》。

   『●贖罪:足利事件再鑑定から12日後の2008年10月28日朝、
                飯塚事件久間三千年元死刑囚の死刑が執行』  

    「2008年10月16日 足利事件 再鑑定へ
     2008年10月28日 飯塚事件 死刑執行
     2009年 4月20日 足利事件 再鑑定で一致せず
     ……そう、足利事件で誤鑑定であることが分かった時には、既に、
     久間さんの死刑が執行されていた。2008年10月16日
     DNA型鑑定に疑問が生じた時点で、死刑執行は停止されておくべき
     だったのに…。なぜ、急いで死刑執行したのか?、大変に大きな疑問である」

   『●NNNドキュメント’13: 
      『死刑執行は正しかったのか 飯塚事件 “切りとられた証拠”』
   『●①飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 
         廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン
   『●②飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 
         廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン
   『●飯塚事件冤罪者を国家が死刑執行、「この重すぎる現実」:
                    無惨…「死刑執行で冤罪を隠蔽」
    「リテラの伊勢崎馨さんによる記事【飯塚事件、なぜ再審を行わない?
     DNA鑑定の捏造、警察による見込み捜査の疑いも浮上…やっぱり冤罪だ!】」
    《冤罪が強く疑われながら死刑が執行されてしまったのが、1992年に
     福岡県で起こった「飯塚事件」である。そして、この飯塚事件にスポットをあて、
     冤罪疑惑に切り込んだドキュメンタリー番組が放送され、ネット上で話題を
     呼んだ。3日深夜に日本テレビで放送された
     『死刑執行は正しかったのかⅡ 飯塚事件 冤罪を訴える妻』だ》

   『●飯塚事件の闇…2008年10月16日足利事件の再鑑定で
           死刑停止されるべきが、10月28日に死刑執行
    「西日本新聞の二つの記事【死刑下した裁判官が関与 飯塚事件の
     再審請求審 識者「公正さ疑問」】…と、【飯塚事件再審認めず 
     福岡高裁 「目撃証言信用できる」】…」

 酷いなぁ…。予想通り…(2018年06月18日)裁判官も含めて《司法》は意地でも非をを認めることはできないでしょうね、だって、「無罪の久間三千年さんを死刑」にしてしまっているのですから。「死刑のスイッチ」は既に押されてしまっています。いまや、取り返しようも無いのです。責任の取りようがない。最「低」裁というアタマも腐敗しきっています。《司法》が非を認めたとたんに、崩壊のスタートですから。決して認めないでしょうね。マスコミもダンマリ。
 アベ様には寛大なるご判断、一般市民には《あまりにも横暴》、冷酷な小池裕最高裁判事は大崎事件でも…再審するかどうかを延々と議論し、三度にわたる再審開始決定をちゃぶ台返しした方。

   『●大崎事件…再審するかどうかを延々と議論し、
      三度にわたる再審開始決定を最「低」裁がちゃぶ台返し
    「まず、小池裕裁判長について。《小池裕氏は、NPO法人による
     森友学園問題で国側が持つ交渉記録等の証拠保全の申し立てについて、
     最高裁の裁判長として保全を認めなかった高裁判断を支持し、
     抗告を棄却した》方です。アベ様には寛大なるご判断、一般市民には
     《あまりにも横暴》、冷酷。「司法判断」としてもデタラメ」

 現在の最高裁裁判官は、アベ様の息のかかった方々ばかりだ、と言われています。

   『●アベ様のオトモダチのオトモダチを最高裁判事に任命?  
                「政治判断」乱発の最「低」裁からも忖度?
   『●あのアベ様のオトモダチのオトモダチ・木澤克之氏…
        《2017年最高裁判所裁判官国民審査》を迎える!!
    「【2017年最高裁判所裁判官国民審査】によると、以下の7名だそうです。
      ①小池裕
      ②戸倉三郎
      ③山口厚 
      ④菅野博之
      ⑤大谷直人
      ⑥木澤克之
      ⑦林景一
     …最後にもう一度、思い出そう…《はたしてこれらは、単なる偶然なのか
     つまり、安倍首相は最高裁人事まで私物化し、“オトモダチのオトモダチ”
     のために、ポストを用意してやったのではないか。そういう疑念が
     頭をもたげてくるのである》」

   『●「完全に司法に影響を与えようとする
     露骨な圧力にほかならない…暴挙」…着々と司法を掌握した効果
   『●「上告断念は、最高裁への抗議と不信任「最高裁には
         もはや何も期待できない」」…アベ様支配の最「低」裁
   『●《余ると分かっている電力を、なぜ原発で作り続けるのか?》
              核発電「麻薬」中毒なアベ様に忖度する九電
   『●《第二次安倍政権以降、司法の独立は脅かされつづけている》…〝本土〟
       マスコミの無関心も相まってソレが沖縄では如実に表れ続けている

 青木俊@AokiTonkoさんと清水潔@NOSUKE0607さんのつぶやき:

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https://twitter.com/AokiTonko/status/1385568659125334016

青木 俊@AokiTonko

〔同小法廷は、鑑定結果を証拠から除いた場合でも、元死刑囚が犯人であることへの高度の立証がされており…〕←ウソ
福岡高裁の「車の目撃証言は信用できる」も、ウソ

なぜウソかは事件について書かれた文献を読めばわかる。本でいえば、例えば「殺人犯はそこにいる」(清水潔

午後9:18  2021年4月23日
- -  -   - -  -   - -  -   - -  -   - -  -   - -  -   -

- -  -   - -  -   - -  -   - -  -   - -  -   - -  -   -
https://twitter.com/AokiTonko/status/1385577215102910468

青木 俊@AokiTonko

………
NNNドキュメントが実験をしている。目撃者の言うような状況で、車の側面のラインの色が識別できるか? 日大の教授が研究室のメンバーを率いて事件現場で科学的に実験した。結論は「不可能」。もちろん裁判所はこういう実験はしていない。

午後9:52  2021年4月23日
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https://twitter.com/NOSUKE0607/status/1385572625653526528

清水 潔@NOSUKE0607

当時のDNA鑑定が証拠能力失い、残るあの一瞬の車両の目撃証言で人一人が死刑になってしまったとすれば本当に恐ろしい
しかしもっと恐ろしいのは、そんな誤りを認めず、国家による殺人を無かった事にする国家の強引さであろう。

午後9:33  2021年4月23日
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 ついでと言っては何ですが…桜井昌司さんについて:

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https://twitter.com/NOSUKE0607/status/1382664962091339780

清水 潔@NOSUKE0607

【放送告知】強盗殺人容疑で有罪判決を受け、罪を償わされてから冤罪が明らかになった男性をカメラが追いました。裁判の間違いを裁判所が認めるまでに38年。ようやく潔白を手に入れて今度は10年で末期がん宣告です。壮絶な人生を描くヒューマンドキュメンタリー。日曜日深夜です。

午後8:59  2021年4月15日
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https://twitter.com/n_docu/status/1382622646618050561

NNNドキュメント【公式】@n_docu

今度の #NNNドキュメント

「濡れ衣」
~闘い続けた余命一年~

制作:#日本テレビ
ナレーション:#石井康嗣

殺人の「濡れ衣」を着せられ「29年投獄」された男。闘い続け…ようやく「潔白」を手にした。しかし「がんで余命一年宣告」今度は病魔が男を襲う。

#布川事件 #桜井昌司 #冤罪 #清水潔
午後6:11 · 2021年4月15日
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 免田栄さん《朝は「針一本落としても聞こえるくらい静か今日も誰かが召されると思うと体がぎゅーっと緊張した」と目をつむった》そうだ。ましてや、飯塚事件久間三千年さんは…。《森雅子法相…回答はにべもなかった。「個々の事項については答えを差し控える慎重な検討を経て執行命令を発した」》。〝急いで〟久間さんの死刑を執行した、当時の法相は……「『●飯塚事件冤罪者を国家が死刑執行、「この重すぎる現実」: 無惨…「死刑執行で冤罪を隠蔽」』…冤罪者を死刑! 警察・検察・裁判所はどう責任をとるつもりだろうかか? 「死刑執行命令を下したのは、麻生内閣の森英介法務大臣(当時)」、飯塚は麻生太郎氏の「地元」だ。冤罪死刑に係わった者たちは、何の贖罪の気持ちもわかないのだろうか?」

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https://www.jiji.com/jc/article?k=2021042300996&g=soc

飯塚事件、再審認めず 元死刑囚側の特別抗告棄却―最高裁
2021年04月23日17時26分

     (最高裁判所=東京都千代田区)

 福岡県飯塚市で1992年、小学1年の女児2人が殺害された「飯塚事件」で、殺人罪などで死刑が執行された久間三千年元死刑囚=執行時(70)=の再審請求審で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は23日までに、元死刑囚側の特別抗告を棄却する決定をした。21日付。再審開始を認めない判断が確定した

 久間元死刑囚は無罪を主張したが、遺体に付着した血液のDNA型鑑定や目撃証言などに基づき死刑が確定した。しかし、鑑定が再審無罪となった足利事件と同じ時期や手法で行われたことなどから、執行後の2009年、妻が「誤りがある」などと再審請求していた。

 同小法廷は、鑑定結果を証拠から除いた場合でも、元死刑囚が犯人であることへの高度の立証がされており、「確定判決に合理的な疑いは生じない」と結論付けた。

 福岡地裁は14年3月、鑑定について「単純に有罪認定の根拠にはできない」とする一方、試料が残っていないため再鑑定ができず、元死刑囚とDNA型が合致する可能性も十分にあると指摘。元死刑囚の車から女児と同じ血液型の血痕が検出されたことなどを理由に「高度の立証がされている」として請求を棄却した。

 福岡高裁も18年2月、遺留品の発見現場付近で「元死刑囚の車と似た車を見た」とする目撃証言の信用性を認め、元死刑囚側の即時抗告を棄却した。
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●《判決後、大西直樹裁判長は、捜査の問題点と刑事司法の改善の必要性を説き、「西山さんの15年を無駄にしてはならない」と話している》

2021年01月06日 00時00分32秒 | Weblog

[※『原発に挑んだ裁判官』(磯村健太郎・山口栄二) 朝日新聞出版(https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=21028)↑]


(2020年12月20日[日])
日刊ゲンダイの記事【「告白」あの事件の当事者/滋賀・呼吸器事件<前>「刑務官は戦う相手ではない」と…】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/282243)と、。
【「告白」あの事件の当事者/滋賀・呼吸器事件<後>「介護が必要な方の支えになりたい」】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/282567)。
東京新聞の【社説/再審の在り方 無実の人救う法整備を】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/73907?rct=editorial)。

 《2003年、滋賀県東近江市の湖東記念病院で、慢性呼吸不全で入院していた男性(当時72)が死亡。元看護助手・西山美香さんは、故意に患者の人工呼吸器を外し殺害したとして逮捕・起訴された。12年の服役後、今年3月、再審無罪が確定。西山さんが現在の思いを語る》。
 《殺害容疑をかけられて12年間服役した元看護助手・西山美香さんは今年3月、再審無罪が確定した。…西山さんの弁護団長を務めた井戸謙一弁護士は…「冤罪で絶望している人に道を開いた裁判だと思います」…判決後、大西直樹裁判長は、捜査の問題点と刑事司法の改善の必要性を説き、「西山さんの15年を無駄にしてはならない」と話している》。
 《無実でも有罪判決が確定すると、それを晴らす道は極めて狭い。再審関係の条文は古いままで、手続きも事実上、裁判官のさじ加減次第である。無辜(むこ)を救う究極の人権救済の法整備は急ぐべきだ》。

   『●《家族への脅迫状…「苦しみ抜いて一人で罪をかぶろう 
         としているのに許せない。もともと無実なのだから」》
    「大崎事件について、《元裁判官の木谷明弁護士…
     「無実の人を救済するために裁判所はあるのではないのか」》と。
     【報道特集】…によると、《”伝説”の元裁判官~冤罪救済に挑む…
     無罪判決を30件も出し、全てを確定させた元裁判官。
     退官後、81歳となった今、冤罪救済を目指す弁護士として裁判所に
     挑んでいる。そこで直面した裁判所の現状とは》。『イチケイのカラス』…
     のモデルの一部になっているらしい」

 『イチケイのカラス』がドラマ化されるそうだ。#イチケイのカラスhttps://www.fujitv.co.jp/ichikei/)。かなり期待できそう。

 さて、湖東記念病院での冤罪事件。
 《やっとこの日が来た。「呼吸器事件」で殺人犯にされた西山美香さんに大津地裁は「事件性なし」と再審無罪を言い渡した。自白の誘導などで殺人事件に仕立てた捜査と司法の責任は、極めて重い。…事件発生から十七年がたっていた》、《不当な捜査を招いた真相を、裁判を通して明らかにするには至らなかった》。
 《事件を作り上げ西山さんの自由を奪った警察、検察の人権侵害は断じて許されない。それをチェックできなかった裁判所も含めて、司法の責任は極めて重い》。《最初から数えて七つの裁判体が有罪判決や再審請求棄却を続け》た節穴な裁判所。警察・検察・裁判所は何も責任をとらないつもり? 《刑事司法のよどみや曇り》の解明を、《冤罪が生まれる構造に光》をあててこそ、《西山さんが待ち続けた「名誉回復」》が叶ったといえるのではないか。何度冤罪事件を繰り返し、再審の扉を何度固く閉じれば良いのか?

   『●金沢地裁原発差し止め判決: 井戸謙一元裁判官
   『●裁判所も歪む…《国が開発の政策的な枠組みを決め、その下で
       電力会社に》核発電所を…《そして裁判所も一体となり…》
    《原発訴訟で原告勝訴を決めた、たった3人の裁判長――その苦悩
     描いたのが『原発に挑んだ裁判官』(朝日文庫、著・磯村健太郎
     山口栄二、660円)だ。元京都大学原子炉実験所助教・小出裕章氏が
     評論する。…そして裁判所も一体となり…。…北陸電力志賀原発
     2号機の運転差し止めを命じた金沢地裁判決(井戸謙一裁判長)…》

   『●湖東記念病院人工呼吸器事件…冤罪服役13年、
     【元看護助手、再審で無罪が確定的に 滋賀の病院患者死亡】
   『●湖東記念病院人工呼吸器事件で冤罪服役…《刑事司法の
      よどみや曇り》の解明を、《冤罪が生まれる構造に光》を!
   『●警察・検察・裁判所は何も責任をとらないつもり? それなくして、
       《西山さんが待ち続けた「名誉回復」》が叶ったといえるのか?

 《無実でも有罪判決が確定すると、それを晴らす道は極めて狭い。…事実上、裁判官のさじ加減次第である。無辜(むこ)を救う究極の人権救済の法整備は急ぐべきだ》。

   『●山口正紀さん《冤罪…だれより責任の重いのが、無実の訴えに
            耳を貸さず、でっち上げを追認した裁判官だろう》
    《四十年間も潔白を訴えていた大崎事件(鹿児島)の原口アヤ子さんに
     再審の扉は開かなかった。最高裁が無実を示す新証拠の価値を
     一蹴したからだ。救済の道を閉ざした前代未聞の決定に驚く。
     「やっちょらん」-。原口さんは、そう一貫して訴えていた。
     殺人罪での服役。模範囚で、仮釈放の話はあったが、
     「罪を認めたことになる」と断った。十年間、服役しての
     再審請求だった…「疑わしきは被告人の利益に再審請求にも
     当てはまる。その原則があるのも、裁判所は「無辜(むこ)の救済」
     の役目をも負っているからだ。再審のハードルを決して高めては
     ならない》
    「再審するかどうかを延々と議論し、《三度にわたり再審開始決定
     出ながら》、最後に、ちゃぶ台返し。最「低」裁は何を怖れている
     のか? 誤りを潔く認めるべきだ。山口正紀さん、《冤罪は警察・
     検察だけで作られるものではない。…マスメディアにも責任…。
     だが、だれより責任の重いのが、無実の訴えに耳を貸さず、
     でっち上げを追認した裁判官だろう》。」

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https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/282243

「告白」あの事件の当事者
滋賀・呼吸器事件<前>「刑務官は戦う相手ではない」と…
公開日:2020/12/05 06:00 更新日:2020/12/05 06:00

 2003年、滋賀県東近江市の湖東記念病院で、慢性呼吸不全で入院していた男性(当時72)が死亡。元看護助手・西山美香さんは、故意に患者の人工呼吸器を外し殺害したとして逮捕・起訴された。12年の服役後、今年3月、再審無罪が確定。西山さんが現在の思いを語る。

 ◇  ◇  ◇

 西山さんは男性の死亡から1年後に警察の捜査段階で「呼吸器を外した」と認めた。公判では「取調官に誘導された」と否認に転じたが、05年に実刑12年が確定、17年に満期出所した。

 同年12月、大阪高裁は西山さんの訴えを認め、再審開始を決定。昨年3月18日に最高裁で再審開始が確定し、今年3月31日に大津地裁で無罪判決が言い渡された。

「高裁で再審開始決定が出た5日後には大阪高検に特別抗告されましたから、再審無罪の確定までは不安な日々でした。鹿児島・大崎事件(第4次再審請求中=懲役10年)の原口アヤ子さんは41年間無実を訴えていますし、松橋事件(懲役13年)も無罪確定まで34年かかっています。正直、再審開始が決まったときはほっとしたと同時に、長く闘われている方には申し訳ない気持ちもありましたね。最高裁で再審開始が確定してからは、あっという間の1年でした」


■女性刑務所で支えてくれた青木恵子さん

 受刑中の不安な日々は、和歌山県の女子刑務所で出会った女性に助けられた。大阪市東住吉区の女児焼死火災で20年間服役した青木恵子さんだ。

「一緒だったのは3年間くらいでした。刑務所の工場でスポンジの包装の作業をしていたのですが、隣の席になったり、不器用な私にやり方を教えてくれたりして、話すようになりました。青木さんの亡くなった娘さんと私は4歳くらいしか違わないこともあって励ましてくれました。当時の私は自暴自棄になっていて刑務官に『私はやっていない』『早く出せ』などと言っていましたが、『闘う相手が違う。再審を訴えるなら、落ち着いた生活をしなさい』と諭してくれたんです」

 青木さんは服役中の12年に再審決定し、16年に再審無罪が決定した。

「青木さんとは今も交流があって、先日も彼女の自宅に泊まって第10次再審請求中の名張毒ぶどう酒事件の関係者に一緒に会いに行きました。彼女は強くて、冤罪で苦しむ立場の方の支援に動いています」

 西山さんの無罪判決は、患者の死因が「致死性不整脈」の可能性が高く事件性がなかったこと、自白の信用性に疑問があること、の2つが認められたのが大きかった。だが、きわめて厳しい裁判だったという。

 弁護団長の井戸謙一弁護士は言う。

「当初は、引き受けたくないと思っていました。再審無罪となる裁判は、ほとんどが取調官の暴行や脅迫によって自白させられたケース。西山さんの場合は自ら『呼吸器を外した』と話して有罪となっているので、当初は私も無実なのか分かりませんでした。ただ、殺人事件の再審に弁護士が付かないのはおかしいので、ご両親の熱意もあって、まずは記録を読み始めたのです。それで『やっていない』と確信が持てました」

 残されていた調書は不自然なものだった。=この項つづく

(取材・文=小野真依子/日刊ゲンダイ)
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https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/282567

「告白」あの事件の当事者
滋賀・呼吸器事件<後>「介護が必要な方の支えになりたい」
公開日:2020/12/12 06:00 更新日:2020/12/12 06:00

     (再審で無罪となり、大津地裁前で万歳する
      西山美香さん(中央)ら(C)共同通信社)

■元看護助手の西山美香さん(40歳)

 2003年、滋賀県東近江市の湖東記念病院で、慢性呼吸不全で入院していた男性(当時72)が死亡した。殺害容疑をかけられて12年間服役した元看護助手・西山美香さんは今年3月、再審無罪が確定した。

 ◇  ◇  ◇

 今年3月31日、大津地裁は西山さんに無罪判決を言い渡した。西山さんの弁護団長を務めた井戸謙一弁護士は「再審無罪となる裁判は、ほとんどが取調官の暴行や脅迫によって自白させられたケース」と分析し、自ら「呼吸器を外した」と話して有罪になった西山さんの裁判は厳しいものになるとみていた。

 西山さんは任意の取り調べで、担当警察官に「人工呼吸器のアラームが鳴っていた」と認めるよう迫られた。認めれば、直ちに適切な処理をとらなかったことになる。西山さんは認めなかったが、警察官に机を蹴られたり、亡くなった男性の写真を見せられたりするうちに怖くなって供述を変えてしまう。アラーム音を聞いたことを認めたことによって看護師に対する取り調べが厳しくなり、責任を感じた西山さんが自分が故意にチューブを抜いたと供述した。結局、西山さんを逮捕起訴した証拠は自白のみだった

「裁判を受けたのは、調書を読んでいて無実を確信したから。滋賀県警愛知川署は事件当初、アラームが鳴っていたと思っていました。おむつ交換のため回ってきた看護師と西山さんらがそれに気づかず死亡させたとして、業務上過失致死容疑で捜査をしていたのです。一方、彼女たちはアラームは鳴っていなかったと主張。付き添いの家族すらも、その音を聞いていなかったことなど不自然な点はたくさんありました」(井戸弁護士)

 最終的に、患者の死因が「致死性不整脈」の可能性が高く事件性がなかったこと、自白の信用性に疑問があることから無罪となったが、この判決は大きかったと振り返る。

冤罪で絶望している人に道を開いた裁判だと思います」(井戸弁護士)

 判決後、大西直樹裁判長は、捜査の問題点と刑事司法の改善の必要性を説き、「西山さんの15年を無駄にしてはならない」と話している。


■やりたいことは「ふるさと納税」

 西山さんは担当刑事に「いろいろ言いたいこともある」と言う。だが、過去を恨むのではなく「冤罪で苦しむ人を救済できる、再審法の改正が進んでほしい」と冤罪支援を必要とする人には話をしにいったりしている。今月から、介護の仕事にも就いた。

「昨年1月から約1年間、リサイクル工場で働いていましたが、もともとお年寄りのお世話をしたいという思いがあって、介護が必要な方の支えになりたい。いずれはヘルパーの資格も取りたいですね。それに、両親も安心させたいですから。和歌山刑務所にいた頃も月1回、面会に来てくれて、今は裁判も終わってホッとしてくれているみたいです。今したいこと? ふるさと納税なんてやりたいですね」(西山美香さん)

 明るく話した。=この項おわり

(取材・文=小野真依子/日刊ゲンダイ)
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/73907?rct=editorial

社説
再審の在り方 無実の人救う法整備を
2020年12月12日 07時54分

 無実でも有罪判決が確定すると、それを晴らす道は極めて狭い。再審関係の条文は古いままで、手続きも事実上、裁判官のさじ加減次第である。無辜(むこ)を救う究極の人権救済の法整備は急ぐべきだ

 五日に九十五歳で亡くなった免田栄さんは死刑囚として刑事裁判史上初の再審無罪になった人だ。一九五二年に死刑が確定したが、無実を訴え続け、六度目の再審請求で再審が決定。八三年にアリバイが認められ無罪宣告された。

 獄中生活は実に三十四年これほどの人権侵害はない。免田さんは日本の人権を虹にたとえたことでも知られる。遠目には美しくとも、近づくと消える、実体がないのだと−。だが、捜査当局や司法界に、その反省は身に染みているのだろうか

 近年も郵便不正事件、布川事件東京電力女性社員殺害事件湖東病院事件など冤罪(えんざい)が相次ぐ。今も無実を訴えつつ服役する人々が存在する。

 問題の在りかははっきりしている。五百条超の条文がある刑事訴訟法のうち再審についての条文は十九のみで、七十年以上、一度も改正されたことがない

 再審を求める過程では証拠開示の規定がないし、無罪を示す証拠が検察官の手元にあったとしても開示義務はない。再審請求を受けた裁判官の裁量で具体的な進行が決まるのだ。

 日弁連によれば「裁判所の姿勢によって証拠開示が左右されており、検察官が裁判所の決定や勧告に応じない不誠実な対応を採ることもある」という。

 これは正さねばならない。再審請求の手続き段階で証拠一覧表の提出や証拠開示命令などのルールを明確化すべきである。むろん証拠物の閲覧・謄写ができる権利の法制化もいる。そのためには前提となる証拠類の適正保管や目録作成も必要である。裁判所に提出していない記録があれば、その保管も必要なのは当然だ。

 刑事訴訟法上では再審開始の決定に検察官が不服の申し立てができる。そのため再審公判の開始が遅れたり、再審開始の決定が取り消されることもある。検察官の不服申し立てを禁じてはどうか。不服があれば、再審公判の中で争えばよいのだから…。

 冤罪防止へ向けた制度をつくり直すのである。もちろん、なぜ冤罪が起きたのか、その原因究明の第三者的組織も必要と考える。無辜の人を救うための障害は撤廃されねばならない
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●《「袴田事件」で死刑判決を書きながら、後に「無罪の心証だった」と明かした元裁判官熊本典道さん》がお亡くなりになりました

2020年11月23日 00時00分52秒 | Weblog


熊本典道さんが亡くなられたとのこと、ご冥福をお祈りいたします。

   『●『美談の男』読了
   『●袴田事件: いい加減に誤まりを認めるべき
   『●作られた袴田冤罪事件、理不尽極まる漸くの初の証拠開示
   『●袴田事件、48年間のそれぞれの苦難……
      袴田巌さんと秀子さん、そして、熊本典道さん
   『●袴田事件: 静岡地裁は「疑わしきは被告人の利益に」を
   『●袴田事件、そして死刑執行後の『飯塚事件』再審:
                   司法の良心を示せるか?
   『●袴田事件・釈放!: 「捜査機関が重要な証拠を捏造した疑い」
               「拘置の続行は耐え難いほど正義に反する」

   『●映画「ザ・ハリケーン」と袴田事件:「冤罪事件を「絶対に忘れるな」」
    《ルビン・カーターさんが二十日亡くなった。七十六歳…
     デンゼル・ワシントン主演の映画「ザ・ハリケーン」のモデル
     といえば、思い出すだろうか▼一九六六年六月、
     米ニュージャージー州のバーで三人が殺された。現場近くを車で
     走っていたカーターさんが逮捕された。無実を訴えたが、
     有罪の評決が下り、八五年に釈放されるまで十九年間服役した。
     冤罪事件の背景には人種差別もあった袴田事件も同じ年同じ六月
     だった。同じ元ボクサー。獄中にあった袴田巌さん(78)は
     境遇の似たカーターさんが釈放された時、手紙を書いたという。
     「万歳万歳と叫びたい」。カーターさんの返事は
     「決してあきらめてはならない」だった》

   『●袴田事件…検察=《狼は本音を明かす。
      「おまえがどんな言い訳をしても食べないわけにはいかないのだ」》
    《狼は本音を明かす。「おまえがどんな言い訳をしても食べないわけには
     いかないのだ」▼袴田さんの無実を信じる人にとってはどうあっても狼に
     許されぬイソップ寓話(ぐうわ)の羊を思い出すかもしれない…
     検察と裁判所を納得させる羊の反論の旅はなおも続くのか
     ▼事件から五十二年長すぎる旅である

   『●《袴田巌さんは、いまも、死刑囚のまま》だ…
       政権や検察に忖度した東京高裁、そして、絶望的な最「低」裁
    「NTVの【NNNドキュメント’18我、生還す -神となった死刑囚・
     袴田巖の52年-】…《今年6月、東京高裁が再審開始を取り消した
     「袴田事件」。前代未聞の釈放から4年半、袴田巖さんは死刑囚のまま
     姉と二人故郷浜松で暮らす》」
    「三権分立からほど遠く、法治国家として公正に法に照らした
     「司法判断」ができず、アベ様ら政権に忖度した「政治判断」乱発な、
     ニッポン国の最「低」裁に何を期待できようか…。
     《巌さんは、いまも、死刑囚のまま》だ」

   『●冤罪は晴れず…「自白を偏重する捜査の危うさ…
       証拠開示の在り方…検察が常に抗告する姿勢の問題」
   『●袴田秀子さん《ボクシングに対する偏見…
      チンピラだっていうイメージ…その印象以外に何の証拠もなかった》
   『●山口正紀さん《冤罪…だれより責任の重いのが、無実の訴えに
           耳を貸さず、でっち上げを追認した裁判官だろう》
    「週刊朝日の記事【袴田事件で「捜査機関が証拠を”捏造”」 
     弁護団が新証拠の補充書を最高裁に提出 】」
    《静岡地裁の再審開始決定を取り消した東京高裁決定から、
     1年余りが経過した。死刑が確定した元プロボクサーの
     袴田巌さん(83)は最高裁に特別抗告中だが、弁護団はこのほど
     “新証拠”を提出した》

   『●《死刑を忠実に実行している》のはニッポンだけ…
       飯塚事件でも、《十三人の死刑執行》でも揺るがず…
   『●(ジョー・オダネルさん)「焼き場に立つ少年」は
     《鼻には詰め物…出血しやすい状態…なんらかの形で被爆した可能性》
    「関連して…青木理さん。ローマ法王来日に関して、もう一つの
     注目点は「死刑制度」。明日のミサに袴田巌さんを呼ばれている
     らしい。事実上の廃止も含めて国連加盟国の7割…死刑廃止が
     世界の潮流。存置派は、先進国でアメリカの一部の州とニッポンのみ。
     昨年も13人のオウム幹部を死刑…。死刑制度を考えるきっかけに」

   『● CD『Free Hakamada』の《ジャケットには、元プロボクサーの
          袴田さんが…名誉チャンピオンベルトを持った写真》

 袴田巌さんと秀子さん、そして、熊本典道さん。
 迂闊にも見落としていた記事。東京新聞の記事【袴田さんの姉、一審判事を見舞う 無罪の心証を告白、福岡で入院中】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/67301)によると、《1966年に静岡県で一家4人が殺害された強盗殺人事件で死刑が確定し、再審請求中の元プロボクサー袴田巌さん(84)の弁護団は9日、静岡市内で記者会見し、袴田さんの姉秀子さん(87)らが、一審静岡地裁で無罪との心証を持ちながら死刑判決を書き、福岡市内の病院に入院中の元裁判官熊本典道さん(83)を見舞ったと明らかにした。危篤状態が続く熊本さんは2007年、袴田さんが無罪との心証を持ちながら他の裁判官との合議で死刑判決を書いたと告白。14年に静岡地裁が再審開始を決定した直前にも陳述書を提出している。今月3~4日に見舞ったが、会話はできなかったという》。

 袴田巖さん「1審の裁判官の熊本」「人間、生きてりゃぁ、会えるんだね」…。
 東京新聞の【おくやみ/熊本典道さん死去 元裁判官】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/68336)によると、《熊本典道さん(くまもと・のりみち=元裁判官)11日、急性肺炎のため死去、83歳。佐賀県出身。葬儀は近親者で営む。66年に静岡県で一家4人が殺害された強盗殺人事件の一審静岡地裁で、袴田巌さんの死刑判決を書いた。判決翌年の69年に退官。自責の念から07年に無罪の心証を持っていたことを告白し、その後、再審を求める陳述書を裁判所に提出した。第2次再審請求で静岡地裁が14年、DNA型鑑定結果を新証拠と認めて再審開始を決定。18年には釈放された袴田さんと50年ぶりに面会した》。

 佐藤直子記者による、東京新聞の【特報Web/袴田事件の元裁判官 熊本典道さん死去/苦悩の半生とは?】(https://tokuho.tokyo-np.co.jp/n/nd5a61f002cc1)によると、《1966年に静岡県で一家4人が殺害された「袴田事件」で死刑判決を書きながら、後に「無罪の心証だった」と明かした元裁判官熊本典道さん(83)が11日、急性肺炎で死去した。判決の翌年に裁判官を退官した後は波乱に富んだ人生を送りながら、死刑確定後に釈放された袴田巌さん(84)の再審請求審の支援に力を注いだ人物だった》。

 さらに、片山夏子記者による、5月に出ていた東京新聞の記事【「デコちゃんが行く」 袴田巌さんを支える姉・秀子さんの生涯が漫画に】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/16668)によると、《一九六六年に静岡県で一家四人が殺害された強盗殺人事件で死刑が確定し、第二次再審請求中の元プロボクサー袴田巌さん(84)を支え続ける姉の秀子さん(87)の生涯を描いた漫画「デコちゃんが行く 袴田ひで子物語」が出版された。戦中を生き抜き、弟の無罪を信じて幾多の苦難にもへこたれない姿は周りの人たちを勇気づけている》。
 改めて、袴田秀子さんの凄さを感じさせられました。

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/68164

袴田事件元判事の熊本典道氏死去 無罪の心証告
2020年11月13日 09時43分 (共同通信)

     (死去した熊本典道さん)

 1966年に静岡県で一家4人が殺害された強盗殺人事件で死刑が確定し、再審請求中の袴田巌さんの一審静岡地裁判決で、無罪との心証を持ちながら死刑判決を書いたと後に告白した元裁判官熊本典道(くまもと・のりみち)さんが11日午後2時57分、急性肺炎のため福岡市の病院で死去した。83歳。佐賀県出身。葬儀は近親者で営む。

 66年に静岡県で4人を殺害したなどとして起訴された袴田さんの一審を担当。判決翌年の69年退官。自責の念から2007年、公判当時、無罪との心証を持っていたと告白。それ以降、袴田さんの再審請求審を巡り、陳述書を裁判所に提出するなど支援を続けていた。
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https://tokuho.tokyo-np.co.jp/n/nd5a61f002cc1

特報Web
袴田事件の元裁判官 熊本典道さん死去
苦悩の半生とは?

袴田事件元裁判官・熊本さん死去 判決の重さに苦悩した半生とは?
東京新聞 特報Web
2020/11/19 13:49

(2020年11月19日東京新聞に掲載)

 1966年に静岡県で一家4人が殺害された「袴田事件」で死刑判決を書きながら、後に「無罪の心証だった」と明かした元裁判官熊本典道さん(83)が11日、急性肺炎で死去した。判決の翌年に裁判官を退官した後は波乱に富んだ人生を送りながら、死刑確定後に釈放された袴田巌さん(84)の再審請求審の支援に力を注いだ人物だった。(佐藤直子)


[冤罪 訴え続ける5人の日常 映画「獄友」杉並と中野で上映会:東京新聞 TOKYO Web
◆きょうから5回「布川事件」桜井さんの対談も 殺人など凶悪事件の有罪判決が確定した後、釈放されて冤罪(えんざい)を訴え続け
www.tokyo-np.co.jp https://www.tokyo-np.co.jp/article/25636

[「デコちゃんが行く」 袴田巌さんを支える姉・秀子さんの生涯が漫画に:東京新聞 TOKYO Web
一九六六年に静岡県で一家四人が殺害された強盗殺人事件で死刑が確定し、第二次再審請求中の元プロボクサー袴田巌さん(84)を支援
www.tokyo-np.co.jp https://www.tokyo-np.co.jp/article/16668


▼目次
  司法試験トップ合格の裁判官
  死刑判決に悩み退官「無実の心証」明かす
  自責の念から酒におぼれ、生活保護受けた時期も
  50年越しで本人と対面「裁判官も過ちを犯す」


司法試験トップ合格の裁判官

 「『秀子だよ、分かる?』って呼びかけたら、熊本さんは口もきけなかったけど、目でうなずいた」。袴田さんの姉秀子さん(87)が、最後になった面会を振り返った。

 今月2日、熊本さんの家族から「医師に『命はあと2、3日』と告げられた」と電話があった。秀子さんは袴田さんの支援者と一緒に翌朝、福岡市の入院先に向かった。熊本さんの腕をさすりながら、「元気出しなよー」と声をかけて病室を後にした。

 佐賀県唐津市出身の熊本さんは九州大法学部を卒業後、司法試験にトップで合格。63年に任官した。静岡県清水市(現静岡市清水区)のみそ製造会社の専務一家4人を殺害、家に放火するなどしたとして起訴された袴田さんの一審静岡地裁の公判を担当し、死刑判決を書いた。


死刑判決に悩み退官「無実の心証」明かす

 判決を悔やんで半年後に裁判官を退官した後、弁護士に転身。自責の念から「公判当時、無罪との心証を持っていた」と告白し、最高裁に再審を求める上申書を提出したのは2007年のことだった。自白の信ぴょう性に疑問を抱いて無罪を主張したものの、有罪だとする裁判長ともう一人の裁判官の考えを覆せなかったと打ち明けた

     (孫の写真を眺める熊本さん。長女に連れられて今年3月、
      初めて会った=2010年6月1日、福岡市東区で)
     (生前の熊本典道さん=2010年3月、福岡市東区で)

 当時の記者会見によれば、熊本さんは控訴審で判決が否定されると期待しながらそうはならず、1980年に最高裁で死刑が確定。袴田さんの人生を台無しにしたことに耐えられなかったと、長い沈黙を破った理由を説明した。


自責の念から酒におぼれ、生活保護受けた時期も

 袴田事件の取材を続けているジャーナリストの青柳雄介さんは、初めて会ったときに話の途中で何度も嗚咽を漏らし、涙を流す熊本さんの姿が目に焼き付いている。「いちずな人だった。判決によって自分の人生も随分、曲がってしまったのでしょう」。弁護士になった後は、酒におぼれ、家族と離別。肝硬変や前立腺がんを患い、生活保護を受けながら暮らした時期もあった。

 告白後は再審開始のために支援を続けた。2014年、第2次再審請求で静岡地裁がDNA型の鑑定結果を新証拠と認めて再審開始を決定。決定理由で捜査機関の証拠の捏造にまで言及し、袴田さんの死刑と拘置を停止して釈放した

 ………。
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/16668

「デコちゃんが行く」 袴田巌さんを支える姉・秀子さんの生涯が漫画に
2020年5月24日 20時31分

     (袴田厳さんの姉秀子さんの漫画「デコちゃんが行く」)

 一九六六年に静岡県で一家四人が殺害された強盗殺人事件で死刑が確定し、第二次再審請求中の元プロボクサー袴田巌さん(84)を支え続ける姉の秀子さん(87)の生涯を描いた漫画「デコちゃんが行く 袴田ひで子物語」が出版された。戦中を生き抜き、弟の無罪を信じて幾多の苦難にもへこたれない姿は周りの人たちを勇気づけている。(片山夏子)


◆支援者が自費出版

 漫画は浜松市に住む袴田さん姉弟の日常を支える「袴田さん支援クラブ」の猪野待子代表=同市=が自費出版。猪野さんが監修し、静岡市の漫画家たたらなおきさんが作画した。猪野さんは「どんな困難が襲ってきてもへこたれず、なにくそと前進する気丈な人。事件に巻き込まれた家族の暗さとは懸け離れ、会う人が皆元気をもらって帰って行く。閉塞感のある現代で生きるのに疲れてしまった人たちに届けたいと思った」と話す。

 漫画は、「デコちゃん」こと秀子さんの生涯を描く。六人兄弟の五番目で巌さんが六番目。遠州弁で何でもやってやろうを意味する「やらまいか精神」が旺盛な姉御肌で、素直でおとなしい巌さんの面倒をよくみた。だが、秀子さんが三十三歳のとき、巌さんが逮捕され、人生が激変した。

     (袴田秀子さん)

 一貫して弟の無罪を信じてきたが、世間の目は冷たく、眠れずに酒に頼った日々も。支援者に支えられ立ち直った後も、最高裁で死刑が確定し、巌さんの面会拒否が続いたり、拘禁反応が悪化したりなど試練が。秀子さんは「自分にも生きる希望が必要だ」と感じ、六十一歳のとき、巌さんと同居するためのマンションを建てた。その願いがかなったのは二十年後だ。


◆「漫画の第2部も」

 秀子さんは「こちら特報部」の取材に「過去を振り返ってもどうにもならんこと。くよくよしないの。巌は四十八年間も刑務所の中で苦労した。私の苦労なんてどうってことない」と笑う。気付いたら五十年以上闘っていたが、「無罪になるまで、命ある限り闘い続ける。百歳まで生きるから漫画の第二部も作ってほしい」と話す。

 巌さんは二〇一四年三月に釈放されたが、今も拘禁反応が続き、毎日、何時間も街中を歩く。見守り隊として同行する浜松市の清水一人さん(71)は「秀子さんは巌さんを一切否定せずに包み込み、自由にさせている。それはすごいこと」と言う。見守り隊の磐田市の自営業女性(49)は「秀子さんに笑顔じゃない時期があったなんて想像できない。会った人はその人柄にひかれまた会いたくなる」。小学三年の時に事件に興味を持って以来、支援に関わる東京都狛江市の高校一年畑山智哉さん(15)は「漫画を読み、改めて秀子さんの信念を感じた」と話した。


◆くじけぬ姿勢若い世代に

 袴田事件弁護団事務局長の小川秀世弁護士(67)は、弁護団が秀子さんに激励されてきたと説明する。「支援活動は秀子さんのけん引力があってこそ。周りが秀子さんに勇気づけられている。くじけない秀子さんの姿勢が、漫画を通じて若い世代にも伝わったら」

 ジャーナリストの大谷昭宏氏は取材で何度も秀子さんに会い、元気をもらったと語る。「長年権力に痛めつけられてきたのに、打ちひしがれるどころか、それをはね返して余りある力がある」。一四年、拘置停止の決定を出した静岡地裁で裁判長は「捏造された疑いのある証拠で死刑の恐怖の下、拘束されてきた」とし「これ以上拘置を続けることは耐え難いほど正義に反する」と司法を批判した。「これほど猛省を促された司法なのに決定からすでに六年。姉弟は高齢。一日も早く無罪判決を出すべきだ。漫画で秀子さんの元気をもらうと同時に、世論をもう一度高めなくては」

 漫画はA5判、千三百六十四円(税別)。全国の書店で扱っている。
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●大崎事件…再審するかどうかを延々と議論し、三度にわたる再審開始決定を最「低」裁がちゃぶ台返し

2019年07月01日 00時00分15秒 | Weblog


大崎事件に対する冷酷な最「低」裁決定についての東京新聞の三つの記事【大崎事件 再審取り消し 最高裁 鑑定の証明力否定】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201906/CK2019062702000175.html)と、
池田悌一記者による記事【大崎事件 再審、ハードルさらに高く】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201906/CK2019062702000174.html)と、
蜘手美鶴記者による【大崎事件 再審の扉3度閉ざす 弁護団「最高裁の決定は横暴」】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201906/CK2019062702000160.html)。

 《「大崎事件」で、殺人罪などで服役した義姉の原口アヤ子さん(92)が裁判のやり直しを求めた第三次再審請求審で、最高裁第一小法廷(小池裕裁判長)は、再審開始を認めた福岡高裁宮崎支部と鹿児島地裁の決定を取り消し、再審請求を棄却する決定をした。再審を認めない判断が確定》。
 《第一次再審請求審を加えると、三度にわたり再審開始決定が出ながら、再審の扉は唐突に閉じられた。「疑わしきは被告の利益に」という刑事裁判の鉄則は守られたのか。新旧証拠の総合評価で確定判決に疑いが生じれば、再審を開始すべきだとする「白鳥決定」に沿ったと言えるか疑問だ》。
 《四十年間、一貫して潔白を訴え、無罪判決を法廷で聞くという原口アヤ子さん(92)の悲願は、三度目の再審請求でもかなわなかった。一九七九年に起きた「大崎事件」の第三次再審請求審をめぐる最高裁決定。弁護側の新証拠の価値を一蹴した判断に、弁護団からは「あまりにも横暴だ」と怒りの声が上がった》。

 まず、小池裕裁判長について。《小池裕氏は、NPO法人による森友学園問題で国側が持つ交渉記録等の証拠保全の申し立てについて、最高裁の裁判長として保全を認めなかった高裁判断を支持し、抗告を棄却した》方です。アベ様には寛大なるご判断、一般市民には《あまりにも横暴》、冷酷。「司法判断」としてもデタラメ。

   『●「「3.11」から2年③ 東北復興と壁」
         /『週刊金曜日』(2013年3月15日、935号)について
    「山口正紀さん【裁判長の訴訟指揮も報じるべきだ 大崎事件再審請求】、
     「冤罪は警察・検察だけで作られるものではない。…
     マスメディアにも責任…。だが、だれより責任の重いのが、
     無実の訴えに耳を貸さず、でっち上げを追認した裁判官だろう」」

   『●知らなかった冤罪事件: 鹿児島大崎事件
   『●「飯塚事件」「福岡事件」「大崎事件」
       ・・・・・・に係わる弁護士たちで『九州再審弁護連絡会』発足

   『●「あたいはやっちょらん」の叫び!…
      「だれより責任の重いのが…でっち上げを追認した裁判官」
    《「やってないものは、やってない」-。殺人罪で服役した原口アヤ子さんは
     一貫して無実を叫んだ。その願いは第三次の再審請求でやっと重い扉を
     開けた。裁判所は早く無実を認めるべきである》。
    「《あたいはやっちょらん》…《だれより責任の重いのが…
     でっち上げを追認した裁判官》、《鹿児島地裁は証拠開示を認めず、
     原口さんの無実の訴えに再審の重い扉を開くことはなかった》。
       年老いた原口アヤ子さん…。無慈悲な司法、長年月に渡る放置
     というか見殺し。司法の「」だ…《原口さんは既に九十歳。三審制でも
     過去二回の再審請求でも救えなかった。司法界の恥と刻まれる》」

   『●39年間「あたいはやっちょらん」、
     一貫して無実を訴えてきた90歳の原口アヤ子さんに早く無罪判決を

    《重い再審の扉が大きく開き、光が差し込んだ。「大崎事件」の
     第3次再審請求即時抗告審。昨年6月の鹿児島地裁決定に続き、
     福岡高裁宮崎支部も再審開始を認めた12日、弁護団や
     支援者たちは喜びに包まれた。逮捕から39年一貫して無実
     訴えてきた原口アヤ子さんも今は90歳で、残された時間は限られる。
     「命あるうちに無罪判決を」。願いは今度こそ届くのか-》

   『●冷酷な司法…【NNNドキュメント’18/
      あたいはやっちょらん 大崎事件 再審制度は誰のもの?】

 再審するかどうかを延々と議論し、《三度にわたり再審開始決定が出ながら》、最後に、ちゃぶ台返し。最「低」裁は何を怖れているのか? 誤りを潔く認めるべきだ。

   『●検察による恣意的・意図的な証拠の不開示、
      証拠の隠蔽や喪失、逆に、証拠の捏造…デタラメな行政
    《布川事件で再審無罪が確定した桜井昌司さん(72)の訴えを認めた
     二十七日の東京地裁判決は、警察官の違法な取り調べや検察官の
     証拠開示拒否などがなければ、「遅くとも控訴審判決(一九七三年)で
     無罪判決が言い渡され、釈放された可能性が高い」と捜査機関に猛省を
     促した。弁護団からは「画期的だ」との声が上がり、
     桜井さんは捜査機関の在り方を批判した》
    《桜井さんと同じ冤罪被害者も訴訟を支援した。大阪市の女児死亡火災で
     再審無罪となり、自身も国賠訴訟中の青木恵子さんは「桜井さんから
     希望をもらった」と喜んだ。いまだ再審の扉が開かれない袴田事件
     大崎事件に触れ、「順番に勝っていってもらいたい」と望んだ》

 《あたいはやっちょらん》の叫びは小池裕裁判長らによって揉消され、事件に係わった警察官や検察といった行政、裁判所といった司法は安堵した訳です。
 《白鳥決定無視の過ち》を犯し、冤罪者の〝沈黙〟を待つ裁判官らの冷酷さ…。白鳥決定を無視し、再審するかどうかの判断を延々と引き伸ばし、最後は最「低」裁がちゃぶ台返し。原口アヤ子さんがあまりに御気の毒だ。

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201906/CK2019062702000175.html

大崎事件 再審取り消し 最高裁 鑑定の証明力否定
2019年6月27日 朝刊

     (原口アヤ子さん)

 鹿児島県大崎町で一九七九年に男性の遺体が見つかった「大崎事件」で、殺人罪などで服役した義姉の原口アヤ子さん(92)が裁判のやり直しを求めた第三次再審請求審で、最高裁第一小法廷(小池裕裁判長)は、再審開始を認めた福岡高裁宮崎支部と鹿児島地裁の決定を取り消し、再審請求を棄却する決定をした。再審を認めない判断が確定した。二十五日付。裁判官五人全員一致の意見。 

 一審、二審の再審開始決定を最高裁が覆したのは初めてとみられる。共犯とされた元夫(故人)の再審開始も取り消した。

 最高裁は、一、二審が重視した弁護側が新証拠として提出した法医学鑑定を検討。鑑定は、確定判決が「窒息死と推定される」とした男性の死因について、「転落事故による出血性ショックの可能性が極めて高い」と指摘していた。

 最高裁は鑑定について、写真だけでしか遺体の情報を把握できていないことなどを挙げ、「死因または死亡時期の認定に、決定的な証明力を有するとまではいえない」と判断した。

 有罪の根拠となった「タオルで首を絞めた」などとする元夫ら親族三人の自白については、「三人の知的能力や供述の変遷に問題があることを考慮しても、信用性は強固だといえる」と評価。「法医学鑑定に問題があることを踏まえると、自白に疑義が生じたというには無理がある」とした。

 最高裁は「鑑定を『無罪を言い渡すべき明らかな証拠』とした高裁支部と地裁の決定を取り消さなければ著しく正義に反する」と結論づけた。

 弁護団は二十六日、東京都内で記者会見し、「許し難い決定だ」と批判。第四次再審請求を検討するとした。

 第三次再審請求審では、鹿児島地裁が二〇一七年六月、目撃証言の信用性を否定する心理学者の鑑定や法医学鑑定を基に、再審開始を認めた。一八年三月の福岡高裁宮崎支部決定は、心理鑑定の証拠価値は認めなかったが、「法医学鑑定と整合せず不自然」などとして親族らの自白の信用性を否定し、再審開始決定を維持した。
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201906/CK2019062702000174.html

大崎事件 再審、ハードルさらに高く
2019年6月27日 朝刊

<解説> 確定判決に疑問を投げかけた法医学鑑定を「証明力はない」と一蹴し、大崎事件の再審開始を認めなかった最高裁決定は、再審のハードルをさらに上げかねない

 「絞殺ではなく事故死の可能性がある」と指摘したこの鑑定について、一審と二審は証明力を認めて再審開始決定を出した。これに対し、最高裁は「遺体を直接検分していない」「十二枚の写真からしか遺体の情報を得られていない」と証明力を否定した。

 だが、そもそも遺体は腐敗が進んでおり、確定判決時の鑑定も「他殺を想像させる。窒息死と推定」という程度。絞殺の根拠は、共犯者とされた親族三人の自白に依存していた。

 親族三人は、捜査段階から何度も供述を変遷させていた。「タオルで絞め殺した」と自白しながら、いまだタオルは特定されていない。

 第一次再審請求審を加えると、三度にわたり再審開始決定が出ながら、再審の扉は唐突に閉じられた。「疑わしきは被告の利益に」という刑事裁判の鉄則は守られたのか。新旧証拠の総合評価で確定判決に疑いが生じれば、再審を開始すべきだとする「白鳥決定」に沿ったと言えるか疑問だ。 (池田悌一)
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201906/CK2019062702000160.html

大崎事件 再審の扉3度閉ざす 弁護団「最高裁の決定は横暴」
2019年6月27日 朝刊

     (大崎事件の再審請求が棄却され、記者会見で言葉を詰まらせ、
      うつむく鴨志田祐美弁護団事務局長=26日、東京・霞が関の司法クラブで)

 四十年間、一貫して潔白を訴え、無罪判決を法廷で聞くという原口アヤ子さん(92)の悲願は、三度目の再審請求でもかなわなかった。一九七九年に起きた「大崎事件」の第三次再審請求審をめぐる最高裁決定。弁護側の新証拠の価値を一蹴した判断に、弁護団からは「あまりにも横暴だ」と怒りの声が上がった。 (蜘手美鶴

 「原口さんの人生をかけた闘いに、最高裁はちゃんと向き合っていない。五人の裁判官は何を考えているのか」。東京・霞が関の司法記者クラブで二十六日に会見した鴨志田祐美弁護団事務局長は、表情をこわばらせ語気を強めた。

 一九九五年に初めて再審請求を申し立てて以降、これまで地裁、高裁で三回の再審開始決定が出ている。「ある意味一番頼りにしていたのは最高裁。長い長い闘いにピリオドを打ってくれると信じていた」と落胆を隠さない。

 会見に同席した元裁判官の木谷明弁護士も「無実の人を救済するために裁判所はあるのではないのか。大変がっかりしている」と批判した。

 原口さんの長女京子さん(64)には、鴨志田弁護士が電話で連絡した。京子さんはしばらく絶句した後、「これは裁判所のトップが決めたことなんですか? それなら日本の恥ですよね。お母さんも私も、もうちょっとで楽になれると思ったのに…」と漏らしたという。弁護団は、原口さんには決定内容をまだ伝えていないという。

 これまで脳梗塞を二度患い、原口さんは発声もままならない状態。今月七日にあった誕生日会では、鴨志田弁護士が再審請求審について話すと、目に光が宿り、何かを言いたそうに頭を持ち上げた。「一緒に同じ法廷で裁判長の『被告人は無罪』っていうのを聞こうね」と話しかけると、大きくうなずいたという。

 

 最高裁は今回、高裁支部に審理を差し戻すことをせず、書面の審査のみで自ら再審請求棄却を判断するという異例の決定をした。

 再審制度に詳しい白鴎大法学部の村岡啓一教授(刑事訴訟法)は「原口さんの関与があったかには触れず、法律論だけで決着を付けてしまっている」と指摘。「選ぶべきは再審開始だった。事故死の可能性についても、再審公判でやるべきだった。ここで終わってしまったのは、原口さんへのものすごく冷たい仕打ちだ」と非難した。

大崎事件> 鹿児島県大崎町で1979年10月、農業中村邦夫さん=当時(42)=が酒に酔って道路脇の溝に落ちているのを住民が発見。3日後、遺体が自宅横の牛小屋で見つかり、隣に住んでいた中村さんの義姉原口アヤ子さんと親族の計4人が殺人容疑などで逮捕された。原口さんは一貫して否認したが、親族3人は殺害や死体遺棄を自白。一審・鹿児島地裁は原口さんに懲役10年を言い渡し、1981年に最高裁で確定。親族3人は懲役1~8年の判決が確定し、出所後いずれも死亡した。
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●検察による恣意的・意図的な証拠の不開示、証拠の隠蔽や喪失、逆に、証拠の捏造…デタラメな行政

2019年06月06日 00時00分11秒 | Weblog


東京新聞の二つの記事【布川事件 国・県に賠償命令 「証拠開示拒否・警察偽証は違法」】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201905/CK2019052802000134.html)と、
蜘手美鶴記者による【「ウソや証拠独占冤罪生む」布川事件損賠判決 逮捕から52年 桜井さん捜査批判】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201905/CK2019052802000121.html)。

 《一九六七年に茨城県利根町布川で男性が殺害された布川事件で、再審無罪が確定した桜井昌司さん(72)が国と県に計約一億九千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が二十七日、東京地裁であった。市原義孝裁判長は、検察官の証拠開示の拒否や公判での警察官の偽証を「違法」と認定》。
 《布川事件で再審無罪が確定した桜井昌司さん(72)の訴えを認めた二十七日の東京地裁判決は、警察官の違法な取り調べや検察官の証拠開示拒否などがなければ、「遅くとも控訴審判決一九七三年で無罪判決が言い渡され、釈放された可能性が高い」と捜査機関に猛省を促した》

 《桜井昌司さんと杉山卓男さんは冤罪で29年間も獄中に》。《市原義孝裁判長は、検察官の証拠開示の拒否や公判での警察官の偽証「違法」と認定。国と県に対し連帯して約七千六百万円を支払うよう命じた。市原裁判長は、これらの違法行為がなければ遅くとも控訴審で無罪判決が言い渡され、釈放された可能性が高いと指摘した》。
 検察による恣意的・意図的な証拠の不開示、証拠の隠蔽や喪失、逆に、証拠の捏造…行政がデタラメ。桜井昌司さん《警察官のうそと検察官の証拠独占が冤罪を生む》と言います。そして、強大な権力には政治判断=忖度を乱発し、弱者には厳格・冷酷な司法判断…司法の堕落。そんな中で、《判決後に記者会見した桜井さんは「警察官のうそと検察官の証拠独占が冤罪を生む踏み込んだ判決に感謝している」と評価》しておれる。また、《弁護団からは「画期的だ」との声が上が》った。
 《自身も国賠訴訟中の青木恵子さんは「桜井さんから希望をもらった」と喜んだ。いまだ再審の扉が開かれない袴田事件大崎事件に触れ、「順番に勝っていってもらいたい」と望んだ》…他の冤罪事件にも波及することを望む。

 東京新聞の社説【布川事件に賠償 再審でも証拠開示を】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019053102000176.html)によると、《再審無罪となった男性に対し、「国と県は賠償せよ」と東京地裁が命じた。一九六七年の布川事件(茨城)だ。検察に不利な証拠でも開示義務を指摘した点は大きい。再審でも同じルールが必要だ。母親が早く自白するように言っている」「被害者宅近くで目撃証言がある」-。取り調べでは事実と異なる供述の誘導があった。公判でも捜査官の偽証があった。検察官も証拠開示を拒否した。損害賠償を認めた根拠には、警察・検察側の不公正の数々が積み重なっている。何より判決が証拠開示の在り方について、「裁判の結果に影響を及ぼす可能性が明白なものは、被告に有利か不利かを問わず法廷に出す義務がある」と述べた意義は大きい。検察が合理的な理由がなく証拠開示を拒否することは、できないはずである手持ち証拠は基本的にすべて法廷に出すという規範が働くことが期待される。万一、証拠隠しが発覚すれば、賠償義務が生じることになるからだ。問題は再審のケースである。刑事訴訟法には、再審での証拠開示についての明文規定がない。検察側は再審では積極的に応じようとしない傾向があるし、訴訟指揮権も裁判官の裁量次第である。…近年の再審無罪のケースは、検察側の証拠開示が決め手になっている場合が多い。松橋事件(熊本)、東京電力女性社員殺害事件(東京)、東住吉事件大阪)…。新証拠が確定判決をゆるがせ、無罪に導いている。もはや全面的な証拠開示が必要なときだ。裁判員裁判の時代でもある。冤罪(えんざい)をこれ以上、生んではいけない

   『●『冤罪File(2010年3月号)』読了
   『●それは、職業裁判官の怠慢にすぎない
    「…など職業裁判官の怠慢の例は
     数え上げたらきりがありません。ましてや、福岡事件西武雄さん
     飯塚事件久間三千年さんといった無罪な人を死刑・私刑にして
     しまった可能性(控え目に表現しています)さえあります。村木厚子さん
     志布志事件の裁判結果などは極々稀な例です」

   『●『冤罪ファイル(2010年10月号)』読了
   『●『検察に、殺される』読了
   『●布川事件の記録映画、・・・そして、・・・・・・・・・
    《布川事件、再審無罪 発生から44年 水戸地裁土浦支部 2011年5月24日》

   『●冤罪だらけ: 裁判官の目は節穴か?
   『●強大な氷山の一角としての冤罪発覚
   『●「前川さんの身になってほしい!」: 「福井事件」という明々白な冤罪
   『●東電OL殺人事件元被告マイナリさん、
        冤罪15年間への償いはできるのか?
   『●血の通わぬ冷たい国の冷たい司法: 「奥西勝死刑囚(87)
                     ・・・・・・死刑囚の心の叫び」は届かず
   『●またしても裁判所は機能せず、闘いは高知高裁へ:
          高知白バイ「冤罪」事件、地裁が再審請求を棄却
   『●「戦後70年 統一地方選/その無関心が戦争を招く」
            『週刊金曜日』(2015年4月3日、1034号)
   『●「検察・警察も冤罪防止のために“前向き”」?…
       刑事訴訟法の「改正案が成立すれば、新たな冤罪を生む」
   『●刑事訴訟法の「改正」どころか、警察・検察に、
             司法取引と盗聴拡大という「追いゼニ」
   『●②飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 廃止か?」
               …話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン
    《狭山事件…で逮捕され、31年も獄中生活を余儀なくされた石川和雄さん
     だけでなく、「冤罪オールスターズ」と呼びたくなる面々が集まっていた。
       67年、茨城で起きた「布川事件」の強盗殺人犯とされ、29年も刑務所に
     ブチ込まれた桜井晶司さん(2011年、無罪が確定)。66年、一家4人が
     殺害された「袴田事件」で犯人とされ、48年も獄中に囚われていた
     袴田巌さんの姉・秀子さん。そして90年、栃木で起きた「足利事件」で
     女児殺しの犯人にでっち上げられて17年を獄中で過ごした菅家利和さん
     (2010年、再審で無罪が確定)》

   『●《日本の刑事司法はおそろしいほどに後進的…
       代用監獄…人質司法》…さらに、司法取引まで投げ渡す大愚
    《直後には東京地検特捜部でも捜査報告書の捏造事件が発覚し、
     加えて足利事件布川事件といった重要事件での冤罪が相次いで
     判明したため、検察に対するメディアや世論の批判はかつてないほど高まった》

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201905/CK2019052802000134.html

布川事件 国・県に賠償命令 「証拠開示拒否・警察偽証は違法」
2019年5月28日 朝刊

     (国家賠償を命じる判決を受け、記者会見する桜井昌司さん
      =27日午後、東京都千代田区で)

 一九六七年に茨城県利根町布川で男性が殺害された布川事件で、再審無罪が確定した桜井昌司さん(72)が国と県に計約一億九千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が二十七日、東京地裁であった。市原義孝裁判長は、検察官の証拠開示の拒否や公判での警察官の偽証「違法」と認定。国と県に対し連帯して約七千六百万円を支払うよう命じた。

 市原裁判長は、これらの違法行為がなければ遅くとも控訴審で無罪判決が言い渡され、釈放された可能性が高いと指摘した。

 判決で市原裁判長は、県警の警察官が取り調べ段階で桜井さんに、母親が早く自白するように言っている被害者宅近くで桜井さんを見たという目撃者がいる-などと発言した内容は虚偽で欺くような取り調べ手法は違法と判断。ほかにも供述の誘導があり、「限度を超えた取り調べがあった」と非難した。警察官が取り調べを録音したテープの存在を隠し、公判で偽証したとも批判した。

 検察官の証拠開示の在り方については、「裁判の結果に影響を及ぼす可能性が明白なものについては、被告に有利か不利かを問わず法廷に出す義務がある」と指摘。その上で、控訴審段階で弁護側が、目撃者に関する捜査報告書や別の目撃証言を巡る参考人調書などの開示を求めたにもかかわらず、検察側が開示を拒絶したのは合理的理由はなく、違法だとした。

 桜井さんには既に、拘束された二十九年分の刑事補償として約一億三千万円が支払われたが、判決は控訴審判決時点から損害が発生していたと認定し、刑事補償額を差し引いた七千六百万円の支払いを命じた。

 判決後に記者会見した桜井さんは「警察官のうそと検察官の証拠独占が冤罪を生む。踏み込んだ判決に感謝している」と評価した。


<水戸地検の横井朗次席検事のコメント> 判決内容を精査し上級庁などと協議した上で対応を検討したい。

<茨城県警の浅野芳徳監察室長のコメント> 判決内容を精査し今後の対応を検討する。
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201905/CK2019052802000121.html

「ウソや証拠独占冤罪生む」布川事件損賠判決 逮捕から52年 桜井さん捜査批判
2019年5月28日 朝刊

     (支援者らを前に、勝訴を報告する桜井昌司さん
      (前列、左から2人目)=27日、東京都千代田区で)

 布川事件で再審無罪が確定した桜井昌司さん(72)の訴えを認めた二十七日の東京地裁判決は、警察官の違法な取り調べや検察官の証拠開示拒否などがなければ、「遅くとも控訴審判決(一九七三年)で無罪判決が言い渡され、釈放された可能性が高い」と捜査機関に猛省を促した。弁護団からは「画期的だ」との声が上がり、桜井さんは捜査機関の在り方を批判した。 (蜘手美鶴

 「捜査官がウソを言い、検察官が証拠を独占するやり方が冤罪(えんざい)を生む。それが許されないのは当たり前。裁判所が踏み込んで認定してくれて感謝している

 判決後、弁護団と東京都内で記者会見した原告の桜井昌司さんは、逮捕から五十二年の「戦い」を振り返り、支援者の前でほっとした表情を見せた。捜査や公判の違法性が認められた点を挙げ、「検察官や警察官の個人責任を問う法律をつくるべきだ」と訴えた。

 桜井さんと同じ冤罪被害者も訴訟を支援した。大阪市の女児死亡火災で再審無罪となり、自身も国賠訴訟中の青木恵子さんは「桜井さんから希望をもらった」と喜んだ。いまだ再審の扉が開かれない袴田事件大崎事件に触れ、「順番に勝っていってもらいたい」と望んだ。


<布川事件> 1967年8月、茨城県利根町布川の大工玉村象天さん=当時(62)=が自宅で絞殺され、県警は別の窃盗容疑などで逮捕していた桜井昌司さんと杉山卓男さんを強盗殺人の疑いで再逮捕した。2人は公判で無罪を主張したが、水戸地裁土浦支部は70年に無期懲役判決を言い渡し、78年に最高裁が上告を棄却して確定した。2人の再審請求に同支部は2005年、再審開始を決定。11年5月に無罪判決が言い渡された。
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●《日本の刑事司法はおそろしいほどに後進的…代用監獄…人質司法》…さらに、司法取引まで投げ渡す大愚

2018年06月24日 00時00分53秒 | Weblog


久田将義責任編集TABLO』(http://tablo.jp/)の記事【青木理 連載『逆張りの思想』第七回/『司法取引が日本でも導入』 囁かれる冤罪増加の危惧】(http://tablo.jp/serialization/aoki/news003373.html)。
神保哲生さんのvideonews.comの記事【日本版司法取引は大量の冤罪を生むことになる ゲスト/森炎氏(弁護士)】(http://www.videonews.com/marugeki-talk/894/)。

 《この新制度の根本に横たわる大きな問題点はあまり論じられていない…2点…。まず、米国などで司法取引が広く導入されているとはいっても、日米の間では刑事司法制度の現状が大きく異なる。というより、日本の刑事司法はおそろしいほどに後進的である。…代用監獄人質司法…。もう一点、そもそもこの新制度がなぜ導入されることになったのか…。…今回の新制度導入の原点をさかのぼると、大阪地検特捜部証拠改竄事件に行き当たる.... いつしか法務省などは次のような理屈を唱えはじめる。『証拠改竄などという犯罪が起きてしまったのは、検事が職務熱心なためだった…』…誰が考えても首をかしげる"屁理屈"…焼け太りというか泥棒に追い銭…。つまるところ官には甘く、民には厳しいーー言葉を変えれば、強者にはおもねり、弱者とみれば噛みつく捜査機関に、私たちは強力な武器をまたも投げ与えてしまったのである》
 《来る6月1日、日本の刑事司法史上では初となる、司法取引制度が導入される。…果たして司法取引は冤罪の減少に寄与するのだろうか。残念ながら答えはノーだ》。

 《日本の刑事司法はおそろしいほどに後進的代用監獄人質司法》…さらに、司法取引まで投げ渡す大愚な国。それは、いま話題の大阪地検特捜部の「村木厚子元厚労省局長の冤罪事件」〝村木事件〟がその原点…森友問題「不起訴」から権限拡大が無意味であり、むしろ市民にとって害悪しかない司法制度の投げ渡し。

   『●教員について密告させ、労組を監視する=
        自公支持者の皆さんの大好きな「超・監視管理社会」
   『●「検察・警察も冤罪防止のために“前向き”」?…
       刑事訴訟法の「改正案が成立すれば、新たな冤罪を生む」
   『●青木理さん「供述が立証の柱…もっと物証が欲しい。
         「通信傍受を縦横無尽に使いたい。司法取引も」と…」
    《…犯罪が起きる前だから、供述が立証の柱になる。それだけに頼っては
     冤罪(えんざい)だらけになる。もっと物証が欲しい。「通信傍受
     縦横無尽に使いたい。司法取引も」と考えるだろう》
    「さて、《真面目な警察官であれば何を考えるか》? デンデン王国
     「裸の王様」アベ様の御好きな超管理社会・監視社会・密告社会です。
     自公お維の議員の皆さん、支持者の皆さん、無関心派「眠り猫」の
     皆さん、本当にそんな社会を目指しているのですか? あまりに
     悍ましいと思うのですが…。《政治や社会の矛盾に声を上げる人が
     疑われる社会は健全か》? 「平成の治安維持法」があるような社会は
     健全ですか? 青木さんは《社会に異議申し立てする人が片端から
     捜査対象になる社会は、断じていい社会ではない》と」

 《官には甘く、民には厳しいーー言葉を変えれば、強者にはおもねり、弱者とみれば噛みつく捜査機関》…森友問題・加計問題・自衛隊日報問題に関する組織的文書改竄の官僚には起訴無しで、同じデータ改竄の神戸製鋼には強制捜査。
 アベ様の御好きな超管理社会・監視社会・密告社会…《私たちは強力な武器をまたも投げ与えてしまった》。検察・検事は《職務熱心》…アベ様や取り巻き連中、官僚は《職務熱心》とでも…?

 《司法取引が導入されれば、冤罪のリスクが大きくなることは明白だ実は日本人は多少の冤罪はやむなしと考えているのか》? 《なぜ検察不祥事に端を発する検察改革論争の末検察の捜査権限を強化するような法律ができてしまうのか》??

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http://tablo.jp/serialization/aoki/news003373.html

青木理 「逆張りの思想」
『司法取引が日本でも導入』 囁かれる冤罪増加の危惧
2018年06月04日 冤罪 司法取引 裁判所 警察 青木理

 この6月1日から、いわゆる司法取引制度が日本でも新設された。他人の罪を明かせば自身の罪が軽減されるという制度の性格上、冤罪が増えかねないといった懸念をメディアも伝えている。

 一方で、米国などはすでに広く導入している制度であり(厳密には日米の制度は少々異なるが、複雑なためここで細かく論じない)、これによって贈収賄などの権力型犯罪、オレオレ詐欺などの組織犯罪、あるいは暴力団犯罪の摘発強化に期待を寄せる声もある。

 だが、この新制度の根本に横たわる大きな問題点はあまり論じられていない。本サイト読者のため、ここでは2点に絞り、ごく簡単に解説を加えておきたい。

 まず、米国などで司法取引が広く導入されているとはいっても、日米の間では刑事司法制度の現状が大きく異なる。というより、日本の刑事司法はおそろしいほどに後進的である。

 例えば、あなたが何らかの罪を犯した嫌疑を受けたと仮定しよう。警察に身柄を拘束されると通常、警察署の留置場に叩き込まれる(=代用監獄)。また、取り調べは密室で行われ、徹底して孤独な状況のなか、場合によっては何十日も続けられる。しかも容疑を否認したり黙秘したりすれば、なかなか保釈を受けることができない。場合によっては何十日、ひどい例では何百日も勾留され、警察や検察は保釈を餌にもして自白を迫ることもある(=人質司法)。

 さらに警察や検察が強制権限を駆使して集めた証拠や証言は警察や検察が独占してしまい、仮に被疑者・被告人の無実を示すような証拠があっても平気で隠されてしまう裁判所も検察や警察の言いなりの傾向が強く、検察が起訴した際の有罪率は約99%に達する。

 以上は過去の冤罪事件に共通する悪弊の数々。近年は裁判員裁判がスタートし、一部の犯罪捜査における取り調べが可視化(=録音・録画)されることとなり、若干の改善が図られてきたとはいうものの、大きな枠組みは依然として変わっていない。

 世界の先進民主主義国を見渡しても、これほど閉鎖的で後進的な刑事司法がまかり通っている国は見当たらず、国際機関などからたびたび勧告を受けているのだが、法務省はそれらを一向にあらためようとしてこなかった。

 だというのに、司法取引という強力無比な武器まで日本の捜査機関は手に入れた。言葉は悪いが、腐った土壌の上に作物を植えても、その作物は臭くて食べられない。冤罪増加が懸念されるのも至極当然だと私は思う。

 もう一点、そもそもこの新制度がなぜ導入されることになったのか、という点にも触れておく。

 今回の新制度導入の原点をさかのぼると、大阪地検特捜部証拠改竄事件に行き当たる......と書けば、勘のいい読者はハテ?と首をかしげるだろう。前代未聞というべき検察の大不祥事がいったいなぜ捜査機関の権限拡大につながってしまったのか、と。

 郵便不正事件を捜査する大阪地検で証拠改竄が発覚したのは2010年のこと。捜査の主任検事が証拠品の電子データを書き換えたのは、罪なき者を犯罪者にでっちあげようとしたのが目的とみられ、捜査機関としては決してあってはならない権力犯罪であり、当該の主任検事らは刑事処分を受けた。

 ここで詳しくは記さないが、直後には東京地検特捜部でも捜査報告書の捏造事件が発覚し、加えて足利事件布川事件といった重要事件での冤罪が相次いで判明したため、検察に対するメディアや世論の批判はかつてないほど高まった。

 これを受けて当時の民主党政権は、検察捜査のありようなどを見直すため、法務大臣の私的諮問機関として「検察のあり方検討会議」を立ちあげた。その議論は、法務大臣の常設諮問機関である「法制審議会」にも引き継がれた。

 当然ながら諮問会議での議論は、密室での取り調べや人質司法といった日本の刑事司法の問題点を洗い出し、改善策を模索する方向へと動き出すーーはずだった

 だが、諮問会議の事務局を担う法務省などは議論を巧みに骨抜きにした。一時は激しかったメディアや世論の批判も東日本大震災の発生などで忘れられ、いつしか法務省などは次のような理屈を唱えはじめる。

   『証拠改竄などという犯罪が起きてしまったのは、検事が職務熱心なため
    だった。というのも昨今は人権意識や弁護活動の高まりなどによって、
    取り調べで自白を得るのがなかなか難しい。だから検事は職務熱心
    あまり、証拠改竄にまで手を染めてしまった。これを防ぐには、
    捜査側にさらなる武器を与えるのが必要だーー』

 誰が考えても首をかしげる"屁理屈"である。しかし、信じがたいかもしれないが、法務省が事務局を担って検察OBや警察OBが大きな顔をする諮問会議では、こうした"屁理屈"が主流の議論となり、取り調べの可視化などは極めて例外的な事件に限定する一方、盗聴法通信傍受法)の大幅強化や司法取引の導入などが決まってしまったのである。

 また言葉が悪くなってしまって恐縮だが、焼け太りというか泥棒に追い銭というか、検察や警察はそうして司法取引制度を手に入れた。これが権力犯罪の摘発強化などにつながると考える方がおめでたいというべきだろう。

 実際、森友学園への国有地格安売却や財務省の公文書改竄問題では、大阪地検特捜部が先ごろ財務省幹部や職員全員の不起訴を決めた。一方で東京地検と警視庁は、品質データを改竄した神戸製鋼所には近く強制捜査に踏み切ると報じられている。

 日本企業の信頼性や交通機関の安全性に直結する神戸製鋼のデータ改竄はもとより重い。しかし、国会や国民を平然と欺き、末端職員に自殺者まで発生し、民主主義を根腐れさせる公文書の改竄さらに重大な犯罪ではないのか。

 つまるところ官には甘く、民には厳しいーー言葉を変えれば、強者にはおもねり、弱者とみれば噛みつく捜査機関に、私たちは強力な武器をまたも投げ与えてしまったのである。(文◎青木理 連載『逆張りの思想』第七回)
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http://www.videonews.com/marugeki-talk/894/

2018年5月26日
日本版司法取引は大量の冤罪を生むことになる
森炎氏(弁護士)
マル激トーク・オン・ディマンド 第894回(2018年5月26日)

 来る6月1日、日本の刑事司法史上では初となる、司法取引制度が導入される。

 これは2年前の2016年5月24日に可決成立した刑事訴訟法の改正案の施行に伴うもの。刑訴法の改正案は裁判員裁判事件と特捜事件に限って取り調べの録音録画を義務化することと引きかえに、盗聴権限の拡大や司法取引など検察の捜査権限を大幅に強化する施策が盛り込まれていた。

 この刑事訴訟法の改正は、検察による証拠の捏造などによって村木厚子厚労次官を不当に逮捕、起訴した冤罪事件をきっかけに、検察改革の必要性が叫ばれたことを受け、有識者たちが4年以上の年月をかけて検察改革のあり方を議論してきたことの集大成とも言うべきもの。事件への反省から、いかに冤罪を無くすかが有識者会議での議論の主眼となるはずだったものが、取り調べの可視化については、全事件の約3%にあたる特捜事件と裁判員裁判対象事件のみに限定される一方で、盗聴権限は対象犯罪が大幅に拡大されたほか、検察は司法取引という新たな捜査権限を手にすることとなった

 果たして司法取引は冤罪の減少に寄与するのだろうか

 残念ながら答えはノーだ

 裁判官出身で、その後、弁護士として活動するかたわら著書を通じて日本の刑事司法制度の問題点に警鐘を鳴らしてきた森炎氏は、司法取引は冤罪を無くすどころかむしろ冤罪が増えることを前提としている制度だと指摘する。

 司法取引には自らの罪を認めることで刑を軽くして貰う「自己負罪型」と、自分が罪を犯した時、共犯者に対する捜査に協力することの引き換えに罪を軽減してもらう「捜査公判協力型」の2種類がある。アメリカでは司法の効率化のために全事件の95%が「自己負罪型」の司法取引によって実際には裁判を経ずに刑罰が決定されている。「自己負罪型」の司法取引も、裁判を通じて証拠を確認するプロセスが省かれるため、冤罪や身代わりのリスクはあるが、同時にその経済効果は絶大だ。警察や検察は軽微な事件の大半を自己負罪型の司法取引で処理することで、重大事件の捜査により多くの資源を投入することが可能になるというメリットがある。

 ところが今回日本で導入される司法取引は捜査公判協力型だけだ。これは、「仲間(共犯者)を裏切ってその犯罪行為を証言すればあなたの刑は軽くしてあげます」というもの。

 また、司法取引の対象犯罪も、今回は死刑になるような重い犯罪は除かれ、組織犯罪がらみや談合、脱税、インサイダーなどの経済犯罪に限定されている。

 検察が、処罰の軽減をエサに情報提供を求めることができれば、組織的な犯罪などでより大物の主犯格や大ボスの立件に寄与することはあるだろう。また、会社ぐるみの経済犯罪などで、末端の社員が全ての罪を被らせられる「トカゲの尻尾切り」なども難しくなるかもしれない。

 しかし、そのようなメリットを想定したとしても、司法取引が導入されれば、冤罪のリスクが大きくなることは明白だ。それは自らの罪を軽くしたい一心で、嘘の証言をする人が出てくることが避けられないからだ。

 今回の法改正では虚偽供述を罰する条文も盛り込まれたが、明らかに嘘とわかる証言でない限り、証言の虚偽性を暴くことは容易ではない。そもそも検察が司法取引を持ちかける理由は、共犯者からの証言以外の証拠が得られないからだ。他に十分な証拠があれば、共犯者の罪を軽くしてまで司法取引などする必要がないはずだ。

 つまり、日本版司法取引というのは、取引きの当人は「嘘で他人を陥れてでも自分の罪を軽くしたい」という明白な利益相反の立場にあり、にもかかわらず、その証言は共犯者の犯行の唯一の裏付けとなる場合が多いといういたって不安定な制度なのだ。

 藤井浩人美濃加茂市長の贈収賄事件では、藤井氏に30万円を渡したと主張する贈賄側の会社社長は、3億円を超える別の金融犯罪で逮捕されていた。その取り調べの中で、「藤井にカネを渡した」と供述したことが事件の発端となった。ところが、この社長は3億を超える金融詐欺を働いていながら、当初2100万円分でしか起訴されていなかった。藤井氏の弁護人の郷原信郎弁護士は「藤井の贈収賄の捜査に協力すれば、金融詐欺の方の罪は軽くしてやる」というような、事実上の司法取引があったとしか思えないと主張した。

 そこで言う「司法取引があったとしか思えない」という主張は、「だから会社社長が藤井氏にカネを渡したとする証言は信用できない」という意味を含んでいる。つまり、藤井氏を陥れるために、本来あってはならないような取引きが行われていた疑いがある、という意味だ。しかし、6月1日に司法取引が正式に導入されれば、もはや司法取引は「あってはならない取引き」ではなくなる。藤井氏のような事件でも堂々と司法取引を行うことが可能になるのだ。そして、その時、被告人の弁護士は「司法取引があったからその証言は怪しい」と主張することが事実上不可能になる

 司法取引の導入によって日本の刑事司法はどう変わるのか。なぜ検察不祥事に端を発する検察改革論争の末検察の捜査権限を強化するような法律ができてしまうのか。実は日本人は多少の冤罪はやむなしと考えているのか。司法取引が導入されることの影響とそのリスクについて、森氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

PROFILE
森炎 (もり ほのお)
弁護士
1959年東京都生まれ。東京大学法学部卒業。東京地裁、大阪地裁などの裁判官、三井住友海上火災保険(株)への出向勤務などを経て、96年より現職。著書に『司法権力の内幕』、『裁判員のためのかみくだき刑法』、共著に『虚構の法治国家』など。

出演者 神保哲生 宮台真司
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●「死刑という刑罰」: 飯塚事件では「冤罪被害者」を死刑…「冤罪被害者」の命を、最早、償いようもない

2018年05月04日 00時00分02秒 | Weblog


レイバーネットのコラム【●木下昌明の映画の部屋 第239回/死刑映画週間『獄友』『白と黒』など8本を上映〜「死刑という刑罰」を考える】(http://www.labornetjp.org/news/2018/0216eiga)。

 《金聖雄(キム・ソンウン)監督の『獄友(ごくとも)』は、日本で起きた狭山袴田布川足利といったよく知られた殺人事件で長期拘束された5人の「冤罪(えんざい)被害者」に焦点を当てたドキュメンタリー。彼らはなぜウソの自白をしたのか、獄中で何があったのか? 互いに「獄友」と励まし合ってきたことなどが描かれる》。

   『●氷見事件(富山冤罪事件)の冤罪被害者のいま
                 ・・・「人生の歯車は狂ったまま」
   『●「人生の歯車は狂ったまま」:
       東京新聞・桐山桂一さん「冤罪とは犯罪よりも罪深い刑罰」

   『●名張毒ぶどう酒事件という冤罪
   『●「疑わしきは罰する」名張毒ぶどう酒事件、あ~っため息が・・・
   『●司法権力の〝執念〟:
           映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』

   『●血の通わぬ冷たい国の冷たい司法: 「奥西勝死刑囚(87)
                     ・・・・・・死刑囚の心の叫び」は届かず

   『●名張毒ぶどう酒事件第八次再審請求審:  
         検証もせずに、今度は新証拠ではないとは!
   『●「触らぬ神にたたりなし、ということなのか」?  
      訴えることが出来なくなるのを待つ司法の残酷さ!
   『●司法権力の〝執念〟: 映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』
   『●奥西勝冤罪死刑囚が亡くなる: 
        訴えることが出来なくなるのを待った司法の残酷さ!
   『●血の通わぬ冷たい国の冷たい司法: 「奥西勝死刑囚(87)
                     ・・・・・・死刑囚の心の叫び」は届かず

 例えば、氷見事件では、今も「人生の歯車は狂ったまま」だそうだ。
 例えば、名張毒ぶどう酒事件奥西勝さんは、訴えることが出来なくなるのを…冷酷。
 例えば、飯塚事件では、冤罪者・久間三千年さんを死刑・殺人・私刑。「冤罪被害者」の命を、最早、償いようもない。
 《安倍政権下での死刑執行は31》…だそうだ。

   『●NNNドキュメント’13: 
      『死刑執行は正しかったのか 飯塚事件 “切りとられた証拠”』
   『●①飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 
         廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン
   『●②飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 
         廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン
   『●飯塚事件冤罪者を国家が死刑執行、
       「この重すぎる現実」: 無惨…「死刑執行で冤罪を隠蔽」

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http://www.labornetjp.org/news/2018/0216eiga

木下昌明の映画の部屋 : 死刑映画週間『獄友』『白と黒』など8本を上映


木下昌明の映画の部屋 第239回
死刑映画週間『獄友』『白と黒』など8本を上映〜「死刑という刑罰」を考える

 死刑って何だろう。なぜ廃止にならないのか。これまで映画でも絞首刑をはじめ、ガス室、銃殺、首に金輪をはめてネジで絞めあげるなどの数々の処刑を見てきたが、そんな残酷シーンに衝撃を受けても、いつしか忘れてしまう。

 死刑は世界的にみれば廃止に向かっている。隣国の韓国では20年間も執行されていない。が、日本をはじめ中国や北朝鮮はいまだに続いている。これでいいのか?

 「死刑という刑罰」を考える映画週間と銘打ち、8本の映画と8人の「語る人」によるイベントを2月17日に開催する。

 新作の金聖雄(キム・ソンウン)監督の『獄友(ごくとも)』は、日本で起きた狭山袴田布川足利といったよく知られた殺人事件で長期拘束された5人の「冤罪(えんざい)被害者」に焦点を当てたドキュメンタリー。彼らはなぜウソの自白をしたのか、獄中で何があったのか? 互いに「獄友」と励まし合ってきたことなどが描かれる。

 イスラエルの『スペシャリスト~自覚なき殺戮(さつりく)者』は、ユダヤ人を強制収容所に送り込んだナチスの親衛隊中佐アイヒマンの裁判記録。ここから哲学者ハンナ・アーレントが追究した‟凡庸”な悪の本質もあぶり出されてくる。

 中山節夫監督の『新・あつい壁』は、ルポライターの主人公が、無実なのに死刑にされた男の事件を追った劇映画。

 堀川弘道監督の『白と黒』は1963年と旧作ながら面白い。死刑廃止論者の弁護士が妻を殺されたのに犯人の弁護を買ってでる――犯人像が二転三転するミステリー。そこから何がみえてくるのか?

 その他『プリズン・エクスペリメント』『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』『弁護人』『ヒトラーへの285枚の葉書』など。『ヒトラー……』にはギロチンがちらりと出てくるが、胸にぐさり――。これらの作品を素材に金聖雄、鵜飼哲(さとし)、黄英治(ファン・ヨンチ)、坂上香、森達也、佐藤慶紀、太田昌国氏らが語る。

 ちなみに安倍政権下での死刑執行は31人。(『サンデー毎日』2018年2月25号)

※2月17日~23日東京・渋谷ユーロスペースにて。問い合わせ03-3461-0211

〔追記〕『ヒトラーへの285枚の葉書』についてわたしが語ることになりました。改めて見直すと、死刑がどうのの問題を超えて、なかなか奥行の深い作品で、考えさせられました。
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●②飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン

2017年09月10日 00時00分15秒 | Weblog


(※ その①戻る[←ココ])

NTVのウェブ頁【NNNドキュメント’17死刑執行は正しかったのかⅡ 飯塚事件 冤罪を訴える妻】(http://www.ntv.co.jp/document/backnumber/archive/post-63.html)。
マガジン9の記事【雨宮処凛がゆく!/第424回:もし、冤罪で捕まったら〜「死刑執行は正しかったのか」から考える〜の巻】(http://maga9.jp/karin170906/)。

   『●NNNドキュメント’13:
      『死刑執行は正しかったのか 飯塚事件 “切りとられた証拠”』

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http://www.ntv.co.jp/document/backnumber/archive/post-63.html

NNNドキュメント’17

2017年9月3日(日) 24:55
死刑執行は正しかったのかⅡ
飯塚事件
冤罪を訴える妻

25年前、福岡県で幼女2人が殺害された「飯塚事件」。犯人と断定された男は、死刑執行された。しかしその後、冤罪を訴える妻が福岡地裁に異例の死後再審請求を起こす。4年前、番組では死刑判決の証拠のひとつDNA鑑定の疑惑を放送。再審は棄却されたが、地裁はDNA鑑定を事実上証拠から排除した。残る証拠を争点に妻は高裁へ即時抗告。今回カメラの前で初めて胸の内を語った。はたして死刑執行は正しかったのか

ナレーター/湯浅真由美 制作/日本テレビ 放送枠/30分

再放送     
9月10日(日)11:00~ BS日テレ
9月10日(日)5:00~/24:00~ CS「日テレNEWS24」
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http://maga9.jp/karin170906/

雨宮処凛がゆく!
第424回:もし、冤罪で捕まったら〜「死刑執行は正しかったのか」から考える〜の巻(雨宮処凛)
By 雨宮処凛 2017年9月6日

 あなたは死刑制度に賛成だろうか、それとも反対だろうか。
 この国では、死刑に賛成する人の割合は約8割だという。それほどの人が「必要」だと思う死刑制度。が、被害者感情などは多く語られても、制度そのものの「欠陥」が語られることはあまりない。
 なぜ、そんなことを書いたのかというと、ある番組を見たからだ。それは9月3日に放送された「NNNドキュメント′17 死刑執行は正しかったのかⅡ 飯塚事件 冤罪を訴える妻」。
 飯塚事件とは、1992年、二人の女児が殺害された事件。その犯人として逮捕されたのが、久間三千年氏。逮捕された彼は一貫して無実を訴えていたものの、06年に死刑が確定し08年死刑が執行される。
 しかし、死刑執行されてから、重要な証拠のひとつに疑惑が浮上するのだ。それがDNA鑑定。当時のDNA鑑定の手法であるMCT118型鑑定の信憑性が大いに揺らぐのである。ちなみに、同じ鑑定方法を用いて有罪とされた足利事件菅家利和氏は、再鑑定によってDNA型が一致しないことが判明し、釈放されている。久間氏の有罪の決め手のひとつとなった鑑定は足利事件と同じ鑑定人によって同じ方法で行なわれていた
 この事実だけとっても「冤罪」の可能性がものすごい勢いで浮かび上がるわけだが、番組では、警察の「見込み捜査」も指摘されている。
 事件現場で目撃されていた久間氏のものらしき車。が、なぜか日が経つにつれ、目撃証言はより具体的になっていく。そして車の型も、最初から久間氏のものに合わせたタイプに絞られているという不思議。その背景には、事故の4年前に7歳の女の子が行方不明になるという事件があった。久間氏はその際、事情を聞かれていたのだ。
 4年前の行方不明事件。捕まっていない犯人。その際に事情を聞かれていた久間氏。そうして不自然な目撃情報と未成熟なDNA鑑定のもと、事件から2年後に逮捕されてしまう。そうして08年、久間氏は無実を訴えながらも死刑執行されてしまうのだ。
 番組を見て、今年5月、冤罪の被害に遭った人々に会ったことを思い出した。
 お会いしたのはこの連載の414回でも触れた、「不当逮捕から54年 狭山事件の再審を求める市民集会」でのこと。
 この日は、狭山事件(詳しくは414回を参照)で逮捕され、31年も獄中生活を余儀なくされた石川和雄さんだけでなく、「冤罪オールスターズ」と呼びたくなる面々が集まっていた。
 67年、茨城で起きた「布川事件」の強盗殺人犯とされ、29年も刑務所にブチ込まれた桜井晶司さん(2011年、無罪が確定)。66年、一家4人が殺害された「袴田事件」で犯人とされ、48年も獄中に囚われていた袴田巌さんの姉・秀子さん。そして90年、栃木で起きた「足利事件」で女児殺しの犯人にでっち上げられて17年を獄中で過ごした菅家利和さん(2010年、再審で無罪が確定)。
 石川さん、桜井さん、袴田さん、菅家さんの4人を合わせた獄中生活の期間は、なんと125年である。
 無実の罪によって、何十年も獄中生活を強いられる。自分の人生で絶対に起きてほしくないことランキングの3位以内に確実に入る事態である。が、私の目の前に、そんな経験を余儀なくされた人たちがいた。そうして、何十年もの人生を奪われていた。「許せない」。足利事件の菅家さんは、集会スピーチで何度も何度もその言葉を繰り返した。
 が、まだ彼らは「まし」な方なのかもしれない――。飯塚事件の番組を見て、思った。なぜなら、久間氏は無実を訴えながらも、既に死刑を執行されてしまっているのだこれほどに「取り返しのつかないこと」って、他にあるだろうか未成熟な鑑定手法。事件解決を急いだ果ての見込み捜査。4年前の女児行方不明事件が解決していない警察の焦りもあったのだろう。この辺りは、狭山事件と非常に似た構図である。
 狭山事件の一ヶ月前には、東京で「吉展ちゃん誘拐事件」が起きていた。この事件で身代金を奪われ、犯人を取り逃がすという大失態を犯していた警察は、世間の厳しい批判に晒されていた。警察の「メンツ」を賭けて、とにかく一刻も早く犯人を逮捕したかったのだろう。そこで捕まったのが、出身の石川和雄さんだった。
 自分たちのメンツを何よりも重んじる「仕事できない」集団の暴走によって、数十年を奪われるどころか命そのものを奪われる――。もし、自分や大切な人の身にそんなことが起こったら。そう思うだけで、怒りを通り越して気が遠くなってくる。
 そんな飯塚事件から思い出したのは、イギリスのある冤罪事件だ。死刑執行後に真犯人が見つかるという悲劇からイギリスでは60年代に廃止論が高まり、死刑執行はされなくなったのだ
 が、この国では、「死刑」についての議論が盛り上がることはほぼない。多くの人にとって、警察の捜査は疑問を挟むものではなく、「冤罪かどうか」などという疑いを持つ人も少ないだろう。が、冤罪についての本などを読むと、決して他人事でないことがよくわかる。自分が犯人でないことから取り調べに適当に応じたり、ちょっとした嘘をついたことがのちのち取り返しのないことになってゆくのだ。
 冤罪などに関心のある人にお勧めしたい本は、NNNドキュメントを手がけた清水潔氏の『殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』だ。「文庫X」として話題になったあの本である。足利事件や飯塚事件、そしてDNA鑑定のMCT118などについてがよくわかる。また、このDNA鑑定については、最近出版された青木俊氏の小説『潔白』にも詳しい。ちなみにこの本の帯の言葉は「死刑が誤りだった時、国は全力で真実を隠蔽する」。緻密な取材に基づいたリアリティ溢れる小説だ。布川事件について知りたい人は『冤罪放浪記 布川事件 元・無期懲役囚の告白』を読むといい。狭山事件についてはやはり鎌田慧氏の『狭山事件の真実』だろう。
 これらを読めば、この国の死刑制度や司法、捜査のあり方などに大いなる問題意識を持つことは間違いないだろう。
 まずは、知ること
 普段から「自分が一文無しになったら」「住む場所がなくなったら」などが不安で貧困問題の取材と称していろいろ情報を収集しまくっている私だが、「冤罪で捕まったら」という場合のノウハウまで手に入れられたら、はっきり言って無敵である。この国では、情報の有無が時に生死を分かつ。知っておいて損はないはずだ。

     (左から、布川事件の桜井さん、袴田事件の袴田さんのお姉さん、
      足利事件の菅家さん、狭山事件の石川さん、私)
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