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●《冤罪事件というのは、最終的に再審などで無罪が証明されたとしても、その間に失われた時間は二度と取り戻せない。桜井昌司氏は…》

2021年12月30日 00時00分59秒 | Weblog

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神保哲生さんのビデオニュースドットコムの記事【布川”冤罪”事件の悲劇を繰り返さないために/マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1078回) ゲスト 桜井昌司(さくらい しょうじ)布川事件元被告人・冤罪被害者】(https://www.videonews.com/marugeki-talk/1078)。

 《冤罪事件というのは、最終的に再審などで無罪が証明されたとしても、その間に失われた時間は二度と取り戻せない桜井昌司氏はまさに画に描いたような冤罪事件の被害者だ》。

 ましてや、死刑執行されていては、冤罪死刑囚を生き返らせることは不可能だ。あまりに残酷だ、久間三千年(くま・みちとし)さんの死刑執行を思うと。
 《検察による口封じ殺人》《国家による殺人》…。布川事件冤罪被害者桜井昌司さん《無惨に殺された人の無念を晴らす殺したのは誰か検察庁です》と。当時の首相は麻生太郎氏、飯塚を含む福岡8区の出身。その麻生太郎内閣の法務大臣は森英介氏。2008年10月16日、足利事件のDNA再鑑定で、直ぐに、久間さんの死刑執行は停止されるべきだった ――― しかし、わずか10日ほど後の10月28日、死刑は執行された…。首相や法相、検察・警察の関係者、あまりに冷酷だ…。関わった裁判官も。《各裁判所は、弁護側が指摘したさまざまな疑問・矛盾を無視。結局、科警研の「MCT118型鑑定」によるDNA型鑑定をほぼ唯一の根拠とした死刑判決が確定した》。
 《無実の罪で29年間の服役を強要された桜井、杉山両氏は刑事補償法に基づき1億3千万円(1日あたり1万2500円×365日×29年)と1審から上告審までにかかった裁判費用の約1500万円が支払われることになった》…刑事補償法では冤罪死刑囚にどう《補償》するのだろうか?

   『●飯塚事件は《足利事件に続いて「DNA冤罪=DNA型鑑定を悪用した
     冤罪」が発覚するのを恐れた検察による口封じ殺人ではなかったか……》

 布川冤罪事件で《潔白を勝ち取った男…冤罪被害者を支援し、濡れ衣を着せた司法の闇を世に引きずり出そうとしている桜井昌司さん。
 《冤罪事件というのは、最終的に再審などで無罪が証明されたとしても、その間に失われた時間は二度と取り戻せない》《桜井氏が失った29年間の自由と、桜井氏やその家族が44年間背負い続けた「殺人犯」というレッテルの重荷は、いかなる形でも取り戻すことはできない》。布川事件桜井昌司さんは《冤罪で服役29》《事件発生から54年の長い時間》…検察や警察の捜査の違法性を認め、国と茨城県の損害賠償が確定しました。54年の苦難にとても報いることはできませんが、その一部に少しでも報いられたとしたら、この判決を歓迎すべきかと思いました。検察や警察は《判決の結果を真摯に受け止め》、二度とこのような冤罪被害者が出ないよう、改善を約束すべきです。そのために何をすべきかを明らかにすべき。

   『●布川冤罪事件…《合計二〇人の裁判官が揃いも揃って、冤罪を見過ごし、
         検察の嘘を素通りさせた。彼らこそ裁かれるべきかもしれない》
   『●桜井昌司さん《冤罪で服役29年》《事件発生から54年の長い時間》
      …検察や警察の捜査の違法性を認め、国と茨城県の損害賠償が確定
   『●布川冤罪事件で《潔白を勝ち取った男…冤罪被害者を支援し、
     濡れ衣を着せた司法の闇を世に引きずり出そうとしている》桜井昌司さん

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https://www.videonews.com/marugeki-talk/1078



【桜井昌司×宮台真司×神保哲生:布川”冤罪”事件の悲劇を繰り返さないために【ダイジェスト】】
https://youtu.be/hNw7LAIUcpA


布川”冤罪”事件の悲劇を繰り返さないために
マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1078回)


ゲスト

桜井昌司(さくらい しょうじ)
布川事件元被告人・冤罪被害者
1947年栃木県生まれ。1962年茨城県立竜ヶ崎第一高等学校中退。67年8月に起きた強盗殺人事件の犯人として逮捕・起訴され、78年に無期懲役が確定。29年間服役後、96年に仮釈放され土木建築会社に勤務。2011年水戸地裁の再審公判で無罪判決が確定。21年国と県への損害賠償訴訟に勝訴し7400万円の賠償命令を勝ち取る。著書に『俺の上には空がある広い空が』、『CDブック 獄中詩集 壁のうた』など。


概要

 冤罪事件というのは、最終的に再審などで無罪が証明されたとしても、その間に失われた時間は二度と取り戻せない

 桜井昌司氏はまさに画に描いたような冤罪事件の被害者だ。

 齢74歳になる桜井氏は1967年、彼が20歳の時に突如逮捕され、捜査当局による嘘や改ざん、隠蔽などによって茨城県の布川で起きた殺人の自白に追い込まれた結果、20歳から49歳までの29年間、刑務所に入れられ自由を奪われることとなった。 いわゆる布川事件だ。

 桜井氏は当初窃盗の容疑で逮捕された。本人の弁を借りれば、実際に窃盗には身に覚えがあったので、警察に逮捕された時は罪を認める覚悟をしていたが、殺人については桜井氏にはアリバイがあった。被害者が殺害されたとされる時刻、彼は東京の兄の家にいたのだ。しかし、警察は桜井氏の兄が、「その日は弟は来ていないと言っているぞ」という嘘の供述を桜井氏に示した上で、警察署内の代用監獄における長時間の厳しい取り調べと、「罪を認めれば助かるが、認めなければ死刑になるぞ」など、ありとあらゆる嘘や強要、誤導の限りを尽くし、共犯者と見做された杉山卓男氏とともに、桜井氏をやってもいない罪の自白に追い込んでしまう

 これも冤罪事件ではお決まりのパターンだが、警察は被疑者が実際にはやっていようがやっていなかろうが、とりあえず罪を認めれば、今この瞬間の辛く苦しい長時間の取り調べから解放されるという甘言と、実際には存在しない目撃者が大勢いるかのような嘘などで被疑者の抵抗する気力を奪い、被疑者を追い込んでいく。そして最後は「自分はやっていないのだから、いくら取り調べ段階で自白しても、裁判の場で無実が証明されるはず」という桜井氏の法律的な無知につけ込んで、自白に追い込んでいった。当時の桜井氏は、自身の供述が裁判で証拠になることすら知らなかったという。無論、桜井氏は公判で否認に転じたが、裁判では捜査段階での自白の任意性や具体性、信頼性などが認められ、桜井氏は杉山氏とともに無期懲役の判決を受けてしまう。

 警察、検察は自分たちが描いたストーリーに沿って桜井、杉山両氏を自白させた上で、そのストーリーに沿った目撃証言などを用意したが、最終的にはこの事件では両氏の犯行を裏付ける物証は何もなく、事実上捜査段階での自白だけが有罪の決め手となった。いや、実際には数々の物証は存在したが、いずれの物証も両氏の犯行を裏付けていなかった画に描いたような冤罪事件だった

 結局、桜井氏は杉山氏とともに最初の逮捕から29年間、服役した後、模範囚ということで1996年に仮釈放された。しかし、氏は自身の潔白を訴え服役中も支援者に手紙を書き続けた結果、徐々に支援者の輪が拡がり、氏の釈放から5年後の2001年、遂に2度目の再審請求でこの事件の再審が認められる。

 再審の決め手となったのは、桜井氏を支援する弁護団が検察にこれまで開示されていない証拠の開示を求め続けた結果、いくつかの決定的な証拠が新たに開示されたことだった。新たに開示された桜井氏の自白を録音したテープを鑑定した結果、テープには13箇所の編集・改ざんの痕跡があることがわかったほか、自白内容と検死報告書では殺害方法が異なっているなど、実に初歩的なレベルで両氏の犯行を否定する証拠が次々と見つかった。警察と検察は桜井、杉山両氏が犯人ではないことを裏付ける証拠を保有していながら、それを何十年もの間、隠していたのだ

 そもそも唯一の証拠となった自白の任意性が揺らぎ、その他の間接的な証拠も嘘や偽計に基づいて得られたものであることが明らかになったのだから、両氏が無罪になるのは当たり前だった。そもそも桜井・杉山両氏の犯行を裏付ける証拠など最初から存在しなかったのだ

 桜井氏は2011年5月24日、再審公判で水戸地裁から無罪判決を受け、検察は最高裁まで争ったが、同年6月7日、最高裁が検察の特別抗告を棄却し、桜井、杉山氏の無罪が確定した。1967年の寝耳に水の逮捕から44年の月日が流れ、当時20歳だった桜井氏は64歳になっていた

 無実の罪で29年間の服役を強要された桜井、杉山両氏は刑事補償法に基づき1億3千万円(1日あたり1万2500円×365日×29年)と1審から上告審までにかかった裁判費用の約1500万円が支払われることになった。また、桜井氏が2012年に、冤罪の責任を追及するために国と茨城県を相手に起こした約1億9千万円の国家賠償請求訴訟では、裁判所が茨城県警と水戸地方検察庁の取調べの違法性を認め、2021年8月、東京高裁から国と茨城県に計約7400万円の賠償を命じる判決が下されている。

 このように桜井氏が受けた不当な逮捕と強要された自白や捏造された証拠に基づく有罪判決、そしてその後の29年に及ぶ懲役に対しては、金銭的には補償が行われることになった。しかし、桜井氏が失った29年間の自由と、桜井氏やその家族が44年間背負い続けた「殺人犯」というレッテルの重荷は、いかなる形でも取り戻すことはできない。服役中だった桜井氏は両親を看取ることもできなかった。

 現在74歳となった桜井氏は、冤罪を防止するための社会活動を積極的に行っている。しかし、裁判所から捜査の違法性が断罪され、多額の賠償責任まで負わされた警察と検察は、まったく反省などしてないと桜井氏は言う。無罪を示唆する証拠が次々と露呈しても、検察は桜井氏の弁護団の再審請求に対し、最高裁に特別抗告をしてまで徹底抗戦した。また、冤罪が確定した後で桜井氏が求めた損害賠償請求に対しても、検察は最後まで争う姿勢を崩さなかった。しかも、冤罪が確定した後も、警察と検察から謝罪の申し入れなどは一切ないと桜井氏は言う。

 布川事件の再審無罪決定と相前後して、足利事件氷見事件志布志事件、そして村木厚子さんの郵便不正事件などで次々と衝撃的な冤罪が明らかになったことを受けて、公訴権を独占する上に、密室の取り調べが許される検察の暴走が冤罪を生んでいるとの批判が巻き起こり、2009年に民主党政権下で刑事訴訟制度の改正論議が始まった。しかしその後、政権が自民党に戻る中、一連の制度改正論議の結果として行われた2016年の刑事訴訟法の改正では、むしろ検察の権限が大幅に拡大されるという信じられないような展開を見せている

 冤罪事件の直後にはメディア上でも刑事訴訟制度への批判的な論説が多少は散見されるが、捜査機関から日々リーク情報をもらわなければ仕事が成り立たない記者クラブメディアは、基本的には警察、検察とは共犯関係にある。メディアが冤罪と隣り合わせにある自白偏重の人質司法制度にぶら下がっている限り、この問題が良い方向へ向かう可能性はほとんど期待できない。法律や制度の改正は政治の仕事だが、世論の後押しがないところで政治が司法制度に手を突っ込むのは不可能に近い。政治家にとっても警察や検察は怖い存在だからだ。そしてメディアが現在の刑事司法の実態を正しく報じ始めない限り、世論は人質司法という名の密室の中で何が起きているのかを永久に知ることができない日本の刑事司法制度の後進性や非人道性国連の拷問禁止委員会から度々改善勧告を受けるなど国際的にも断罪されているのだ。

 末期ガンに侵されながらも冤罪防止活動で発信を続ける桜井氏は、現行の刑訴法の下では、むしろ冤罪が増え、桜井氏のような被害者が増えることが懸念されると、怒りを隠さない

 今週は戦後の冤罪事件史の中でも最悪の部類に数えられる布川”冤罪”事件の当事者である桜井昌司氏に、なぜやってもいない犯行を自白してしまったのか、その自白の結果、自身のその後の人生がどのようなものになってしまったのか、44年もの間、諦めることなく自身の潔白を訴え続ける力はどこから湧いてきたのかなどについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が聞いた。
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●飯塚事件は《足利事件に続いて「DNA冤罪=DNA型鑑定を悪用した冤罪」が発覚するのを恐れた検察による口封じ殺人ではなかったか……》

2021年12月06日 00時00分20秒 | Weblog

―――――― 《2次再審請求で問い直される「T供述」の信用性 岩田弁護士は「Kさんが目撃したのが犯人であれば急転直下、真犯人の存在とともに久間さんの無実もはっきりする」と述べ、再審請求でK証言の果たす役割を解説した》



 (2021年09月26日[日])
山口正紀さんによる、レイバーネットの記事【検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪〜「飯塚事件」を問う】(http://www.labornetjp.org/news/2021/0911yama)。

 《「飯塚事件」をご存知だろうか。1992年、福岡県飯塚市で起きた2女児殺害事件で逮捕され、無実を訴えていた久間三千年(くま・みちとし)さんが死刑判決を受け、2008年に死刑が執行された(当時70歳)。その第2次再審請求の支援を訴える「飯塚事件の再審を求める東京集会」が9月4日、オンラインで開かれた。この事件で有罪判決の根拠とされたのが科警研(警察庁科学警察研究所)によるDNA型鑑定だった。一方、同じ時期・同じ手法で科警研が行なった「足利事件」のDNA型鑑定が誤りだったことが明らかになり、再審無罪となった。実は、この足利事件で「DNA型再鑑定へ」と報道されたのが08年10月上旬その10日余り後、突然再審準備中の久間さんの死刑が執行された。それを知った時、私は恐ろしい疑惑に駆られた。この死刑執行は、足利事件に続いて「DNA冤罪=DNA型鑑定を悪用した冤罪が発覚するのを恐れた検察による口封じ殺人ではなかったか……。(山口正紀)》

 《検察による口封じ殺人》《国家による殺人》…。布川事件冤罪被害者桜井昌司さん《無惨に殺された人の無念を晴らす殺したのは誰か検察庁です》と。当時の首相は麻生太郎氏、飯塚を含む福岡8区の出身。その麻生太郎内閣の法務大臣は森英介氏。2008年10月16日、足利事件のDNA再鑑定で、直ぐに、久間さんの死刑執行は停止されるべきだった ――― しかし、わずか10日ほど後の10月28日、死刑は執行された…。首相や法相、検察・警察の関係者、あまりに冷酷だ…。関わった裁判官も。《各裁判所は、弁護側が指摘したさまざまな疑問・矛盾を無視。結局、科警研の「MCT118型鑑定」によるDNA型鑑定をほぼ唯一の根拠とした死刑判決が確定した》。

   『●贖罪:足利事件再鑑定から12日後の2008年10月28日朝、
                飯塚事件久間三千年元死刑囚の死刑が執行』 
 
    「2008年10月16日 足利事件 再鑑定へ
     2008年10月28日 飯塚事件 死刑執行
     2009年 4月20日 足利事件 再鑑定で一致せず
     ……そう、足利事件で誤鑑定であることが分かった時には、既に、
     久間さんの死刑が執行されていた。2008年10月16日
     DNA型鑑定に疑問が生じた時点で、死刑執行は停止されておくべき
     だったのに…。なぜ、急いで死刑執行したのか?、大変に大きな疑問である」

   『●NNNドキュメント’13: 
      『死刑執行は正しかったのか 飯塚事件 “切りとられた証拠”』
   『●①飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 
         廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン
   『●②飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 
         廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン
   『●飯塚事件冤罪者を国家が死刑執行、「この重すぎる現実」:
                    無惨…「死刑執行で冤罪を隠蔽」
    「リテラの伊勢崎馨さんによる記事【飯塚事件、なぜ再審を行わない?
     DNA鑑定の捏造、警察による見込み捜査の疑いも浮上…やっぱり冤罪だ!】」
    《冤罪が強く疑われながら死刑が執行されてしまったのが、1992年に
     福岡県で起こった「飯塚事件」である。そして、この飯塚事件にスポットをあて、
     冤罪疑惑に切り込んだドキュメンタリー番組が放送され、ネット上で話題を
     呼んだ。3日深夜に日本テレビで放送された
     『死刑執行は正しかったのかⅡ 飯塚事件 冤罪を訴える妻』だ》

   『●飯塚事件の闇…2008年10月16日足利事件の再鑑定で
           死刑停止されるべきが、10月28日に死刑執行
   『●飯塚事件…《しかしもっと恐ろしいのは、そんな誤りを認めず、
     国家による殺人を無かった事にする国家の強引さだろう》(清水潔さん)

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http://www.labornetjp.org/news/2021/0911yama

検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪―「飯塚事件の再審を求める東京集会」(オンライン)から(上)

●山口正紀の「言いたいことは山ほどある」第14回(2021/9/11 不定期コラム)
検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪――「飯塚事件の再審を求める東京集会」(オンライン)から(上)

     (*2017年NNNドキュメントより)

 「飯塚事件」をご存知だろうか。1992年、福岡県飯塚市で起きた2女児殺害事件で逮捕され、無実を訴えていた久間三千年(くま・みちとし)さんが死刑判決を受け、2008年に死刑が執行された(当時70歳)。その第2次再審請求の支援を訴える「飯塚事件の再審を求める東京集会」が9月4日、オンラインで開かれた。この事件で有罪判決の根拠とされたのが科警研(警察庁科学警察研究所)によるDNA型鑑定だった。一方、同じ時期・同じ手法で科警研が行なった「足利事件のDNA型鑑定が誤りだったことが明らかになり、再審無罪となった。実は、この足利事件で「DNA型再鑑定へ」と報道されたのが08年10月上旬その10日余り後、突然再審準備中の久間さんの死刑が執行された。それを知った時、私は恐ろしい疑惑に駆られた。この死刑執行は、足利事件に続いて「DNA冤罪=DNA型鑑定を悪用した冤罪が発覚するのを恐れた検察による口封じ殺人ではなかったか……。(以下、事件・裁判の経過とオンライン集会の模様を3回にわたって報告する)


●疑惑の死刑執行1年後、妻が再審請求

 死刑執行からちょうど1年後の09年10月28日、久間さんの妻が新たなDNA型鑑定などを新証拠(再審を開始すべき理由)として、福岡地裁に再審請求を申し立てた。

 しかし、福岡地裁は14年、科警研が行なったDNA型鑑定を「(久間さんの)犯人性を基礎づける事実とすることはできない」と認めたものの、「DNA型鑑定以外の状況証拠による確定判決は揺るがない」として、再審請求を棄却した。

 再審弁護団は即時抗告したが、福岡高裁は18年、即時抗告を棄却。弁護団は特別抗告したが、最高裁第1小法廷は今年4月21日、特別抗告も棄却した。

 このため、久間さんの妻と再審弁護団は7月9日、確定判決の根拠とされた目撃証言を否定する新たな目撃証言などを理由に、2度目の再審請求を福岡地裁に申し立てた。

 オンライン集会は、この第2次再審請求の意義・内容を報告し、支援の輪を広げていこうと企画され、飯塚事件再審の実現に向けて尽力してきた九州大学の大出良知・名誉教授、再審法改正をめざす市民の会の木谷明代表(元裁判官)、布川事件の冤罪被害者・桜井昌司さんら幅広い支援者たちの呼びかけで開催された。

 集会では、弁護団から第1次再審請求を棄却した最高裁決定と第1次請求の総括、第2次再審請求の経過と内容が詳しく報告され、再審請求人である久間さんの妻のメッセージが読み上げられた。また、8月に国家賠償請求訴訟(国賠)の控訴審で勝訴したばかりの桜井さんが再審実現に向けて連帯のアピールを行い、「死刑執行は口封じ何というひどい国だろう。久間さんの無念は必ず晴らせると確信しています」と訴えた。

 集会について報告する前に、第1次請求に対する最高裁決定、第2次再審請求書、弁護団が編集したブックレット『死刑執行された冤罪・飯塚事件』(2017年・現代人文社)などをもとに、まず事件と裁判、再審請求審の経過を紹介しておこう。


●福岡県警は事件直後から久間さんを犯人視し、「見込み捜査」

 92年2月20日、飯塚市内で登校途中の小学校1年生女児2人が行方不明になり、翌日、約20キロ離れた福岡県甘木市(現・朝倉市)の山中で遺体が発見された。死因は扼殺、2人の膣内などから微量の血液が検出された。

 福岡県警は、かつて近くで起きた同種の事件で捜査対象にしたことのある久間さんを事件直後からマークし、その動静を監視(見込み捜査)。3月には遺留品発見現場付近で「ダブルタイヤのワンボックスカーを目撃した」とのT証人の調書を作成した。久間さんは、この「目撃証言」に合致する車を持っていた。

 続いて県警は久間さんに毛髪を任意提出させ、遺体周辺から採取された血液とともに科警研に鑑定を依頼。科警研は6月、〈血液型は、犯人のものとみられる血液、久間ともにB型。DNA型は「MCT118型鑑定」の結果、犯人のものとみられる型と久間が提出した毛髪から採取した型が一致した〉との鑑定書を出した。

 県警は7月、その「追試」として帝京大学の石山昱夫(いくお)教授にDNA型鑑定を依頼した。石山教授は「ミトコンドリア法」という当時、最も鋭敏な検査とされた方法で検査。約1年半後の94年1月に出された石山教授の鑑定書は、「久間さんのDNA型は検出されず被害者以外の第三者(犯人と思われる)の型が検出された」と結論した。

 それでも県警は94年9月23日、久間さんを死体遺棄容疑で逮捕した。
 翌日の『朝日新聞』夕刊(東京本社版)は、社会面トップ見開きで《56歳無職男性を逮捕/小1女児2人殺害事件/遺体運び捨てた容疑/DNAと繊維鑑定が決め手》と大々的に報道、久間さんの経歴や一問一答を掲載した。『読売新聞』も、社会面4段で《無職の56歳男性逮捕/遺棄容疑/殺人容疑でも追及》と大きく報じた。

 『朝日』はその後も、続報で《ワゴン車入念に清掃/容疑者、売却直前に》《容疑者に似た男目撃/遺留品の現場、車で去る》などと犯人視の報道を続けた。

 久間さんは66日間に及んだ取調べに一貫して否認した。県警は10月14日、久間さんを死体遺棄罪で起訴し、殺人容疑で再逮捕した。だが、その後も「自白」は一切なかった

 95年2月20日、福岡地裁で初公判が開かれ、久間さんは起訴内容を全面否認。その後も一貫して無実を訴え続けた。しかし99年9月29日、福岡地裁は久間さんに死刑判決を言い渡した。判決は「被告人の犯行との結びつきを証明する直接証拠がなく、個々の状況事実の単独では被告人を犯人と断定することが出来ない」としながら、概略次のような「状況事実」を列挙し、有罪と認定した。

 ①被告人の車のシートから検出された血痕と被害者の1人の血液型が一致する ②遺体から検出された血液型、DNA型が被告人と一致する ③現場付近で目撃された車と被告人の車種が一致する ④被害者の着衣に付着した繊維と車のシートの繊維が同一 ⑤被告人には土地鑑があり、アリバイも不明。

 私が参加する「人権と報道・連絡会」では2010年1月の定例会で、弁護団の徳田靖之弁護士から事件と裁判の経過について詳細な報告を受けた。その中で徳田弁護士は、一審判決が有罪の根拠とした「状況事実」について、次のように問題点を指摘した。

 「①車のシートの血液型が被害者と一致したというが、血液型だけでそれを被害者の血痕と断定することはできない。③④は車種が同じというだけの話。⑤は全くの間接証拠に過ぎない。③の目撃者が目撃した人物は『年齢30~40歳。髪は長めで七・三分け』ということだったが、久間さんは当時55歳、髪はオールバックだった」

 結局、一審判決は「②科警研によるDNA型鑑定に依拠して有罪と認定したことになる。だが、そのDNA型鑑定をめぐっても重大な矛盾があった。実は、科警研は「MCT118型鑑定」のほかに、独自に「HLADQα型」検査も行っていたが、この検査では被害者の血液から久間さんの型は検出されなかった。そして、石山教授の「ミトコンドリア法」による鑑定も不一致だった。つまり、県警は複数のDNA型鑑定を行ったものの、「MCT118型鑑定」以外はすべて「久間=犯人説を否定していたことになる。

 久間さんはこの一審判決に対して直ちに控訴したが、2001年10月10日、福岡高裁は控訴を棄却。さらに06年9月8日、最高裁は上告を棄却した。各裁判所は、弁護側が指摘したさまざまな疑問・矛盾を無視。結局、科警研の「MCT118型鑑定」によるDNA型鑑定をほぼ唯一の根拠とした死刑判決が確定した。


●「足利事件のDNA型再鑑定へ」報道の直後に死刑執行

 その2年後、状況が大きく動いた。同じ科警研鑑定(「MCT118型鑑定」)を証拠に有罪とされた足利事件について、08年10月、東京高裁が再鑑定する方針を決めた

 足利事件とは、1990年5月、栃木県足利市のパチンコ店で4歳女児が行方不明になり、渡良瀬川河川敷で遺体が発見された事件だ。栃木県警は91年12月、科警研のDNA型鑑定を証拠として保育園の送迎バス運転手だった菅家利和さんを逮捕。菅家さんは起訴され、裁判途中から無実を訴えたが、無期懲役の有罪判決が確定、服役させられていた。

 この東京高裁の再鑑定方針について、新聞各紙は、《高裁、DNA再鑑定へ》(10月17日付『朝日』)、《DNAを再鑑定へ》(18日付『毎日新聞』)と、全国版で大きく報じた。

 これは当時、再審請求を準備していた久間さんに大きな希望の光となったはずだ。ところが、この報道から10日後の10月28日、法務省は突然、久間さんの死刑を執行した。

 死刑執行を命じた法務省が、足利事件の再鑑定報道を知らなかったはずはない。森英介法相は「慎重かつ適正な検討を加えた」と述べた。いったいどんな「検討」をしたのか

 それから約半年後の09年5月、足利事件のDNA型鑑定結果が出た。弁護側・検察側が推薦した鑑定人2人が、いずれも「STR法」による鑑定で「犯人と菅家さんのDNA型は一致しない」と結論した。

 弁護側推薦の本田克也・筑波大教授は、「MCT118型」による追試鑑定も行った。結果は、菅家さんが「18―29型」、犯人は「18―24型」。どちらも「16―26型」としていた科警研の鑑定結果は、精度の低い「MCT118法」においても完全な誤りだった

 飯塚事件弁護団は、この本田教授に飯塚事件の再鑑定を依頼した。ところが、飯塚事件では捜査段階で採取された鑑定試料を科警研が全量消費していた」という。このため、本田教授は科警研鑑定のデータ・写真を解析し、再鑑定した。

 その結果は、「科警研鑑定はDNA型も血液型も誤りという衝撃的な内容だった。血液型は、犯人がAB型、久間さんはB型。「MCT118型」によるDNA型は、犯人が「16―25型」、久間さんは「18―30型」だった。科警研鑑定は、犯人・久間さんとも「16―26型」としていたが、それはすべて間違っていた、と本田鑑定は指摘した。

 遺族と弁護団は死刑執行1年後の10月28日、本田鑑定を新証拠に再審を請求した。だがメディアの反応は鈍く、全国紙各紙が社会面3~4段で伝えただけだった。その背景には、逮捕時にメディアが繰り広げた犯人視報道がある。徳田弁護士は「人権と報道・連絡会」で、「九州では東京以上にひどい犯人視報道が行われ、みんな久間さんを殺人鬼と信じ込まされました」と話した。メディアも〈無実の死刑〉に加担していた。(続く)

Last modified on 2021-09-11 22:51:36
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http://www.labornetjp.org/news/2021/0913yama

●山口正紀の「言いたいことは山ほどある」(2021/9/13不定期コラム)
検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪――「飯塚事件の再審を求める東京集会」(オンライン)から(中)

 久間三千年(くま・みちとし)さんの死刑執行は、「DNA冤罪」が露顕するのを恐れた検察の「口封じ殺人」ではなかったか――こんな恐るべき疑惑をはらんだ「飯塚事件」。その再審を目指して開かれたオンライン集会(9月4日)では、最高裁「特別抗告棄却」決定(4月21日)の問題点、久間さんの妻と再審弁護団が福岡地裁に申し立てた第2次再審請求(7月9日)の内容が詳しく報告された。一連の報告は、①科警研DNA型鑑定のデータ改ざん有罪判決の根拠とされたT目撃証言の不自然さ――など、死刑判決の「証拠」が福岡県警によって改ざん・捏造されたものであることを明らかにした。

     (*写真=徳田靖之弁護士(NNNドキュメントより))


●「もっと早く再審請求していれば」……

 集会ではまず、刑事裁判から弁護活動に取り組んできた徳田靖之弁護士が、第1次再審請求の経過と請求棄却決定の問題点を報告、最初に飯塚事件の3つの特徴を挙げた。

 第1は、死刑が執行されてしまった事件であること。執行は08年10月28日だったが、徳田弁護士は少し前に久間さんに面会し、再審請求について話し合っていた。「あの時もう少し早く再審請求していれば、執行はなかったのではないか。弁護士の怠慢で執行を許してしまった。その過ちを背負いながら再審に取り組んできました」と徳田弁護士は悔やむ。

 一方、死刑執行された事件であることは、裁判官にはハードルの高さになり、慎重な審理を求められる。もし再審無罪になれば、国家による過った殺人を認めることになる。「それが、裁判所が再審開始を拒み続ける理由にもなります」と徳田弁護士。

 第2は、真犯人を特定できる証拠の血痕がありながら、捜査段階で全量消費されてしまったこと。被害者の膣内などから採取された血痕・体液は「100回鑑定ができるぐらい十分な量があった」(石山昱夫・帝京大学教授)のに、科警研の技官たちは3回の鑑定で全部使い切ってしまった」という。しかも、「使い切った」理由も明らかにされていない。徳田弁護士は「これが、無実を証明するうえで大きなハンデになっています」と述べた。

 だが、試料の血痕はほんとうに「全量消費」されたのか、そんな疑問もある。

 第3は、任意取調べを受けた段階から死刑執行の日まで、久間さんが終始一貫無実を訴え、完全否認を貫いた事件であること。わが国ではこれまで、免田事件など再審で死刑囚が無罪になった事件はあるが、その多くは何らかの形で「自白」が取られており、その任意性、信用性が否定されて再審開始の道が開かれてきた。

 本件では、こうした自白が全く存在せず、直接的証拠もない。確定判決も、「間接事実の総合評価によって犯人性を判断するしかない」とした。それだけに、裁判では有罪認定の中核となった「状況証拠」の証拠能力、信用性が徹底的に吟味されなければならない。弁護団は再審請求で、確定判決の証拠構造の中核が、①科警研のDNA型鑑定②遺留品発見現場でのT目撃証言であるとし、この2つに証拠価値がないことを立証した。


●DNA型鑑定、目撃証言のでたらめさを立証した新証拠

 福岡地裁に申し立てた第1次再審請求(09年10月)で、弁護団は2つの新証拠を提出した。1つは、本田克也・筑波大教授によるDNA型鑑定・血液型鑑定に関する法医学鑑定書。2つ目は、厳島行雄・日本大学教授によるT目撃証言に関する心理学鑑定書だ。本田鑑定は、科警研による「MCT118型」鑑定の証拠能力を全面的に否定した。鑑定書によると、「MCT118型」によるDNA型について、科警研鑑定は犯人・久間さんとも「16―26型」としていたが、久間さんのDNA型は「18-30型」であり、明らかに誤っていた。血液型についても「被害者はO型とA型であり、犯人はAB型。B型の久間さんは犯人ではありえない」と結論した。久間さんの無実を物語る衝撃的な鑑定だ

 再審請求審では、科警研がDNA型鑑定の際に撮影したネガフィルムが証拠開示され、本田教授が解析した結果、科警研鑑定書に添付された写真が改ざんされていたことも明るみに出た。ネガフィルムには確定判決で証拠採用された写真より広い範囲が写っていた。そのネガの写真に焼き付けられていない部分に、「久間さんでも被害者のものでもないDNA型」が確認された。これは真犯人のもの以外に考えられない。

 科警研はそれを隠すため、意図的に写真を切断して焼き付けたと考えるほかない。徳田弁護士は「ネガフィルムは科警研による証拠改ざんの痕跡を示す証拠」と指摘した。

 厳島鑑定は、T目撃証言が警察官に誘導されたものであると断定した。T目撃証言とは、女児2人が行方不明になって数時間後、〈遺留品発見現場の近くの山道で久間さんの車と特徴が同じ紺色のワンボックスカーを見た〉という内容だ。厳島教授は現場で再現実験を行い、このT証言の不自然さを指摘した。

 事件発生(92年2月20日)から2週間余、3月9日に作られた供述調書は、T証人が「目撃した」という不審車と不審人物について、極めて詳細に供述している。

 T供述は不審車の特徴として、①ナンバーは不明②標準タイプのワゴン車③メーカーはトヨタやニッサンではない④やや古い型⑤車体は紺色⑥車体にはラインがなかった⑦後部タイヤはダブルタイヤ⑧後輪のホイルキャップの中に黒いラインがあった⑨窓ガラスは黒く車内は見えなかった――という9項目を挙げた。

 不審人物の特徴としては、①頭の前の方が禿げていた②髪は長めで分けていた③上衣は毛糸で④胸はボタン式⑤薄茶色の⑥チョッキで⑦チョッキの下は白いカッターの長そでシャツを着ていた⑧年齢は30~40歳だった――という8項目を挙げた。

 しかし、T証人がこの不審車を目撃したという現場の「八丁峠」はカーブが続く山道。T証人は坂道の下りカーブを時速20~30キロで運転中、左カーブで対向車線に停まっていた「不審なワゴン車」を見た、としている。

 はたして、山道の下りカーブを運転中に、前記のような詳細な「目撃」が可能なのか。車がすれ違うのに要するのはほんの数秒。しかも、「後輪がダブルタイヤだった」というのは、下りカーブで後ろを振り返って見る危険を冒さなければ知り得ない情報だ。

 厳島教授は、現場での走行再現実験の結果に基づき、「目撃はごく短時間であり、対象物の詳しい形状まで記憶することは不可能T目撃証言は作られた供述」と断言した。

 さらに、再審請求審で証拠開示された捜査報告書により、T証言が捜査員の誘導によるものであることを示す事実が明らかになった。実は供述調書が取られる2日前の3月7日、捜査員が久間さん宅を下見して車を調べ、「車体にはボディラインなし」などと報告していた。この捜査員が2日後、T証人の聴取を担当し、調書を作成していたのだ。

 当時、久間さんが乗っていたのは、マツダの「ウエストコースト」というワゴン車。この車種には本来、車体に特徴的なラインが付けられていたが、久間さんはラインを消して乗っていた。そのことを知らなければ、わざわざ「トヨタやニッサンではない」「ラインがなかったなどと供述するわけがない。詳細なT証言は、捜査員による完全な誘導だった


●再審申し立てに判断を回避した最高裁

 確定死刑判決が有罪認定の根拠とした2つの柱=DNA型鑑定とT目撃証言は、弁護団が提出した2つの新証拠と再審請求審で開示された証拠により、完全に破綻した。

 ところが、2014年3月31日付で福岡地裁が出した決定は「請求棄却」だった。

 地裁決定は、科警研のDNA型鑑定については「証明力の評価に変化が生じた」として事実上、証明力を否定した。しかし、T目撃証言については、「厳島鑑定は供述の信用性を揺るがすものではない」「新証拠によって旧証拠の証明力や信用性が減殺されることはない」などとして、証拠能力を認めた。

 山道の下り坂カーブを走行中、わずか数秒間すれ違っただけで、運転者の髪形や詳しい服装から、「車体にはラインがなく、後輪はダブルタイヤだった」などという車の特徴までつかみ記憶していた、などという荒唐無稽な「証言」を、裁判官たちは「信用できる」と言うのだ。そんな裁判官たちの判断を私たちは「信用できる」だろうか。

 そのうえで地裁決定は、「DNA型鑑定以外の状況証拠を総合すれば、事件本人(注;久間さん)が犯人であることについて、合理的な疑いを超えた高度の立証がされていることに変わりはなく、新証拠はいずれも確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせるものではない」と結論付け、再審請求を棄却した。

 さらに福岡高裁は18年2月6日、弁護団の即時抗告を棄却、最高裁も今年4月21日、「記録を精査しても、原決定(再審請求棄却決定)を取り消すべき事由は見当たらない」として、特別抗告を棄却する決定を行なった。

 弁護団は特別抗告で、2つの新証拠をめぐる論点だけでなく、高裁決定の憲法違反も指摘していた。福岡高裁の再審請求審では、裁判官3人のうち1人が、刑事裁判で死刑判決を出した一審・福岡地裁の審理に主任裁判官として参加していた。

 かつて自分が加わり死刑判決を出した裁判の再審請求に対して、ニュートラルな状態で審理に臨むことができるのか。裁判官は、もし再審請求を認めれば、自分が「無実の人に対する死刑」を命じた事実に直面することになる

 弁護団は特別抗告で、「これは憲法37条が定める〈公平な裁判を受ける権利〉に反する」と指摘し、憲法違反を主張したが、最高裁決定はこれについて判断を示さなかった

 この決定について、徳田弁護士は「決定文はわずか6ページ。ほとんど何も書いていないに等しく、これでは分析のしようもない。特別抗告から3年も経っており、最高裁は特別抗告を正面から受けとめて真摯に検討していると思っていたのに、弁護団の申立てに対してほとんど判断を回避した」と憤りをこめて批判した。

 それでも徳田弁護士は、第1次再審請求の到達点として、次の2点を挙げた。

 第1に、DNA型鑑定で久間さんの型が全く検出されなかったことが明らかになり、有罪判決の証拠の主たる柱の1つが破綻したこと。第2に、T目撃証言が捜査員に誘導されたものであることが明らかになり、その信用性が徹底的に揺らいだこと。

 それに、第2次再審請求では、警察が握りつぶしてきた真犯人につながる新たな目撃証言が加わる。この強力な新証拠を前に、裁判所は、司法が犯した「冤罪死刑」という取り返しのつかない過ちに目を逸らし続けることができるだろうか。(続く)

Last modified on 2021-09-15 11:03:30
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http://www.labornetjp.org/news/2021/0915yama

●山口正紀の「言いたいことは山ほどある」(2021/9/15不定期コラム)
検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪――「飯塚事件の再審を求める東京集会」(オンライン)から(下)

 久間三千年(くま・みちとし)さんの死刑執行は、「口封じのための国家殺人」ではなかったか――「飯塚事件」の再審実現を目指して開かれたオンライン集会(9月4日)で、この事件の捜査をめぐり、「真犯人の目撃証言無視という新たな疑惑が指摘された。弁護団は7月に申し立てた第2次再審請求で「事件当日、被害少女2人と真犯人と思われる人物を目撃した」というKさんの証言を新証拠として提出した。驚くべきことにKさんは事件直後、犯人に直結するこの目撃を警察に通報したのに、福岡県警はこの決定的証言を調書も取らずに握りつぶしていた。事件発生から29年ぶりに浮上した真犯人の影。久間さんに対する見込み捜査に突っ走っていた警察は、「冤罪による死刑」だけでなく、みすみす「真犯人を逃がす」というもう一つの重大な罪も犯していた疑いが濃厚になった。


●「今にも泣きだしそうだった少女の顔」――鮮烈な29年前の記憶

 集会では、徳田靖之弁護士に続き、再審弁護団主任弁護人の岩田務弁護士が第2次再審請求の新証拠と第2次再審請求の課題について報告した。

 新証拠は、福岡県内に住む男性Kさん(72歳)が、「事件当日の1992年2月20日午前11時ごろ、飯塚市内の八木山バイパスを走行中、後部座席に小学生の女児2人を載せたワンボックスタイプの軽自動車を目撃した」という証言だ。

 その現場は、女児2人が行方不明になった場所に近接した場所。Kさんが弁護士に行なった陳述によると、問題の軽自動車は制限を下回る時速40キロ以下でノロノロ運転していた。その後ろについてイライラしていたKさんは、登坂車線で軽自動車を追い越す際、「こんな迷惑な運転をするのはどんな奴か」と思って運転席を見た。すると、「自分より少し若いくらい(30~40歳)の色白で坊主頭、細身の男性」が運転しており、後部座席には「オカッパ頭でランドセルを背負った女の子」が乗っていた。また、後部座席には「もう1人、女の子が横になっていて、その横にもランドセルがあった」――。

 しかし、Kさんはなぜ、そのような30年近くも前の古い記憶をはっきり覚えていたのか。そしてなぜ、今ごろになって「証言」することにしたのか。当然、検察側は突っ込んでくる。これについて岩田弁護士は、①記銘②保持③想起――の3点から説明した。

①〈記銘〉=なぜ記憶に残ったか。理由は、非常に強い印象を受けた出来事であったこと。後部座席に乗っていた女の子は「うらめしそうな」「うらさびしそうな」「今にも泣きだしそうな」表情をしていた。その異常な表情とともに、平日昼前の時間帯にランドセルを背負った子どもが車に乗っているのを不審に感じ、「誘拐ではないか」という思いを抱いた。さらにその夜、「飯塚市内で少女2人が行方不明」というニュースが流れ、「自分が見たのは行方不明の少女たちではないか」と思い、翌朝110番通報して目撃内容を伝えた

②〈保持〉=なぜ記憶を保ち続けたか。110番通報の1週間後、刑事が来て事情聴取を受け、目撃内容を詳細に説明した。ところが、刑事はメモをしただけで供述調書は取らず、その後何の連絡もしてこなかった。しかし、自分が目撃したのは被害少女と真犯人だと確信し、3年後の第1回公判を傍聴して直接確認した。すると、被告人は自分が目撃したのと全くの別人で驚いた。ただ、「DNA型鑑定が一致した」という検察官の冒頭陳述を聞き、自分が目撃した車は事件に関係がなかったのか、と思い直した。

③〈想起〉=なぜ今回、その目撃を思い出したのか。その後も事件について関心を持ち続けていた。2019年、『西日本新聞』が飯塚事件に関する特集記事を連載した。その中に、「DNA型鑑定が崩れた」という記事があり、「それなら、やはり自分が見たのは犯人だったに違いない」と思い、『西日本新聞』に連絡した。それが記事になり、徳田弁護から連絡があって、新証拠となる詳細な陳述書が作成された。その中で、弁護士にこう訴えた――「あの女の子の恨めしそうな表情が28年間、私を離してくれなかった」。


●第2次再審請求で問い直される「T供述」の信用性

 岩田弁護士は「Kさんが目撃したのが犯人であれば急転直下、真犯人の存在とともに久間さんの無実もはっきりする」と述べ、再審請求でK証言の果たす役割を解説した。

 K証言は、第1次再審請求の地裁決定がほぼ唯一の「証拠」とした「T供述」と真っ向から対立する。事件の2週間余り後、「不審なワゴン車を見た」と供述したT証言と、事件翌朝、「少女2人が乗った軽自動車を見た」と通報したK証言。2つの証言の信用性は表裏一体であり、K証言の信用性が強まれば、T供述の信用性は弱まる。

 しかも、T供述は犯行(被害少女)を直接目撃したものではなく、間接証拠に過ぎない。しかし、K証言は「被害少女2人を目撃した」というもので、直接証拠となる。

 この重要な手掛かりとなる目撃通報を受けた福岡県警は、直ちに捜査員を出して供述調書を取るべきなのに、1週間後に刑事が来てメモしただけで放置した。

 その一方、警察は久間さんに対する見込み捜査に走り、「久間=犯人」に合致する証拠集めに躍起になった。そうして作られたのが、「ワゴン車の詳しすぎる特徴」をはじめ、捜査員に誘導された痕跡が顕著なT供述だった。

 岩田弁護士は「第2次再審請求では、T供述の信用性が攻防の中心になる。全部目撃するのは不可能なほど膨大な情報を『目撃した』とするT供述を、裁判官は『誘導はなく、信用できる」と評価した。これをKさんの目撃証言を中心に、いろんな方向から崩していく。それが第2次再審請求の課題です」と報告を締めくくった。


●「久間三千年は無実です」――妻の悲痛なメッセージ

 岩田弁護士の報告に続き、再審請求人である久間さんの妻が集会に寄せた次のようなメッセージが紹介された。

 「久間三千年は無実です。私たち家族の幸せは、平凡な生活の中にあり、夫の優しさ思いやりは、日々の生活の中に満ちあふれていました。夫は一方的に犯人扱いされ逮捕、起訴され裁判にかけられました夫は終始一貫して無実を訴え続けてきました
 私たち家族は、夫を疑ったこともなく、理不尽な仕打ちを受けながらも夫が生かされていることだけを、心のよりどころとして、耐え続けてきました。突然の死刑執行に目の前が真っ暗になり何も考えられなく、途方に暮れました。
 無実を訴え続ける夫に殺人の汚名を着せて、命まで奪う国の法律があるとは、思ってもみませんでした。
 無実を訴え続け命まで奪われた夫の無念を晴らし名誉を回復するために再審請求をしましたが、最高裁での特別抗告も棄却されました。
 令和3年7月9日に、第2次再審請求をしました。
 どうしてなのでしょうか。終始一貫して無実を訴えている者の再審の審理は、無理なのでしょうか。すぐにでも裁判を受ける権利は平等にあるべきです。
 無茶なことを言っているのではなく、裁判が間違っているからやり直して欲しいと願っているだけです。公平な権利さえも与えられないのでしょうか。
 裁判所において、刑事裁判の目的は、「無罪の発見である」、被告人の人権保障にある。
 「百人の真犯人を逃がしても一人の無辜(むこ)を罰してはならない」とする考え方。
 刑事裁判は、憲法に保障されている人権を守るためにあると、ある書籍に書いてありました。このことを原点として裁判に臨んでいる裁判官もいらっしゃいます。
 検察官の職務についても「公益の代表者」と義務づけ、真相究明と同時に被告人の後見的役割を担う、とあり、法的用語や条文など解りにくいところは多いのですが、再審を願っているだけなのです。
 どうか、皆様方のお力添えを宜しくお願い致します。いつ、どんな時でも一人の人間が公平公正な裁きを受けられることを心から望んでいます。
 令和3年9月4日」


●「久間さんの無念を晴らす」――桜井昌司さんの連帯アピール

 続いて、布川事件冤罪被害者桜井昌司さんが連帯のアピールを行なった 「話を聞くたび、ひどい事件だと思います。東の足利、西の飯塚と言われ、DNA型鑑定で有罪にされた。しかし、久間さんは死刑が執行された何という国家だろうと思う。警察はなぜK証人にきちんと聴取しなかったのか。別の事件で警察は久間さんを疑っていたそうで、警察はひたすら有罪証拠をかき集めた。布川でも同じことがありました。

 T供述を検証した八丁峠の映像を見て思いました。現場は九十九折の山道で、道路の左側には溝があり、脱輪するかもしれない。そんな場所で、対向車がダブルタイヤだったなんてわかりっこない。こんなことを優秀な裁判官がなぜわからないのか

 日本の警察はこれまでも証拠を捏造してきました。そうして、どれだけの人が刑務所に入れられ、殺されてきたか。すべてが無責任です。冤罪事件で国家賠償しても、だれも懐が痛まない。そのお金も税金です。足利事件、布川事件、ゴビンダさんの事件東電事件)、東住吉事件だれもその責任を追及しない

 再審法を改正しないといけない。税金で集めた証拠を法廷に出すのは当たり前じゃないですか。久間さんの無念は必ず果たせると確信しています。必ず勝ちます。一緒にがんばりましょう。無惨に殺された人の無念を晴らす殺したのは誰か検察庁です

 桜井さんは1967年に起きた布川事件で杉山卓男さん(故人)とともに無期懲役刑が確定したが、2011年に再審無罪をかちとった。8月27日、この冤罪の責任を問う国家賠償訴訟の控訴審で勝利し、国・県は上告できず9月10日、勝訴が確定した。桜井さんは13日に会見し、「54年間ずっと背負っていた冤罪の重荷を下ろすことができた」と話した。

 だが、桜井さんの闘いは終わらない。国賠訴訟の一審勝訴後、直腸がんが見つかり、食事療法でがんと闘っている。そうして、冤罪と闘う全国の「獄友」の雪冤のために東奔西走する久間さんの無念を晴らす。それも、桜井さんの大きな目標の1つだ。(了)

Last modified on 2021-09-15 11:00:47
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●飯塚事件の闇…2008年10月16日足利事件の再鑑定で死刑停止されるべきが、10月28日に死刑執行

2018年06月18日 00時00分15秒 | Weblog


西日本新聞の二つの記事【死刑下した裁判官が関与 飯塚事件の再審請求審 識者「公正さ疑問」】(https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/390048/)と、
【飯塚事件再審認めず 福岡高裁 「目撃証言信用できる」】(https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/392137/)。

 《福岡県飯塚市で1992年に女児2人が殺害された「飯塚事件」の再審請求を巡り、久間三千年元死刑囚=執行時(70)=を死刑とした一審福岡地裁判決(99年)に関与した柴田寿宏裁判官が、福岡高裁での再審請求即時抗告審の「結審」時に裁判体裁判官3人で構成加わっていたことが分かった。一審や二審の裁判官が再審請求審に関わっても違法ではないとした最高裁判例があるが、識者は「一審判決を書いた裁判官の関与は公正さに欠け、避けるべきだった」と疑問視》。
 《「飯塚事件」で、福岡高裁は6日、殺人などの罪で死刑が確定し、執行された久間三千年(みちとし)元死刑囚=執行時(70)=の再審請求を退けた福岡地裁決定を支持し、弁護側の即時抗告を棄却した。岡田信裁判長は、DNA型鑑定の証明力を事実上否定した一方で、目撃証言など他の状況証拠の信用性を認め元死刑囚が犯人であることが重層的に絞り込まれていると判断》。

 それにしても、滅茶苦茶がまかり通っていないか? しかも、滅茶苦茶な高裁決定。《岡田信裁判長は、DNA型鑑定の証明力を事実上否定》しておきながら、《目撃証言など他の状況証拠の信用性を認め元死刑囚が犯人であることが重層的に絞り込まれていると判断》…なんてあり得ない論理。物証も無く、判決後2年で「死刑」。しかも、久間三千年さんは終始無罪を主張していた。
 2008年10月16日に足利事件のDNA再鑑定が決定された時点で、久間三千年さんの死刑は停止されるべきだったはずで…でも、彼/彼女らは知らぬ顔で、無実を主張続けていた久間三千年さんをわずか10日程の後の10月28日に死刑執行。凄い人たちです。良心の欠片も無い。

   『●袴田事件…検察=《狼は本音を明かす。
       「おまえがどんな言い訳をしても食べないわけにはいかないのだ」

 裁判官も含めて《司法》は意地でも非をを認めることはできないでしょうね、だって、「無罪の久間三千年さんを死刑」にしてしまっているのですから。「死刑のスイッチ」は既に押されてしまっています。いまや、取り返しようも無いのです。責任の取りようがない。最「低」裁というアタマも腐敗しきっています。《司法》が非を認めたとたんに、崩壊のスタートですから。決して認めないでしょうね。マスコミもダンマリ。

   『●贖罪:足利事件再鑑定から12日後の2008年10月28日朝、
               飯塚事件久間三千年元死刑囚の死刑が執行
  
    「2008年10月16日 足利事件 再鑑定へ
     2008年10月28日 飯塚事件 死刑執行
     2009年 4月20日 足利事件 再鑑定で一致せず
     ……そう、足利事件で誤鑑定であることが分かった時には、既に、
     久間さんの死刑が執行されていた。2008年10月16日
     DNA型鑑定に疑問が生じた時点で、死刑執行は停止されておくべき
     だったのに…。なぜ、急いで死刑執行したのか?、大変に大きな疑問である」

   『●NNNドキュメント’13: 
      『死刑執行は正しかったのか 飯塚事件 “切りとられた証拠”』
   『●①飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 
         廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン
   『●②飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 
         廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン
   『●飯塚事件冤罪者を国家が死刑執行、「この重すぎる現実」:
                       無惨…「死刑執行で冤罪を隠蔽」
    「リテラの伊勢崎馨さんによる記事【飯塚事件、なぜ再審を行わない?
     DNA鑑定の捏造、警察による見込み捜査の疑いも浮上…やっぱり冤罪だ!】」
    《冤罪が強く疑われながら死刑が執行されてしまったのが、1992年に
     福岡県で起こった「飯塚事件」である。そして、この飯塚事件にスポットをあて、
     冤罪疑惑に切り込んだドキュメンタリー番組が放送され、ネット上で話題を
     呼んだ。3日深夜に日本テレビで放送された
     『死刑執行は正しかったのかⅡ 飯塚事件 冤罪を訴える妻』だ》

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https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/390048/

死刑下した裁判官が関与 飯塚事件の再審請求審 識者「公正さ疑問」
2018年01月30日 06時00分

 福岡県飯塚市で1992年に女児2人が殺害された「飯塚事件」の再審請求を巡り、久間三千年(みちとし)元死刑囚=執行時(70)=を死刑とした一審福岡地裁判決(99年)に関与した柴田寿宏裁判官が、福岡高裁での再審請求即時抗告審の「結審」時に裁判体裁判官3人で構成加わっていたことが分かった。一審や二審の裁判官が再審請求審に関わっても違法ではないとした最高裁判例があるが、識者は「一審判決を書いた裁判官の関与は公正さに欠け、避けるべきだった」と疑問視している。

 即時抗告審の決定は2月6日に出される予定。

 柴田裁判官は95年2月に始まった飯塚事件の一審の審理に96年5月から加わり、99年9月に死刑判決を出した裁判官3人のうちの1人。福岡高裁によると、2017年4月に高裁に赴任し、飯塚事件の即時抗告審を担当する第2刑事部に5月末まで所属した。6月から職務代行裁判官として那覇地裁で勤務、9月にそのまま同地裁へ異動した。

 関係者によると、第2刑事部時代の昨年5月18日には検察側、弁護側との最終の3者協議に他の裁判官2人と共に出席。弁護団共同代表の徳田靖之弁護士が20分にわたり、有罪判決の根拠となった目撃証言などに信用性はないとする最後の意見陳述を行い、同日、岡田信裁判長が手続き終了を表明して事実上結審した。

 再審請求の審理は通常の公判とは違い非公開で実施。裁判体は3者協議で検察、弁護側双方から意見を聞いたり、証拠開示を勧告したりして、最終的な再審開始の可否を判断する。

 刑事訴訟法は一審や二審の公判を担当した裁判官が上級審の審理に関与することを禁じている。最高裁は59年、再審請求審はこの規定の対象外としたが、神奈川大の白取祐司教授(刑事訴訟法)は「75年の最高裁『白鳥決定』は、疑わしきは被告人の利益にという刑事裁判の鉄則は再審請求にも適用されると判断し、再審は無辜(むこ)の救済制度として生まれ変わった。59年の古い判例は見直されるべきだ」と指摘。今回のケースも「一審判決に関わった裁判官の心証は白紙でなく、再審請求審で中立公正な判断はできない」と批判した。

 福岡高裁は取材に対し、柴田裁判官の具体的な関与や審理の公正さへの影響について「個別の事件についてコメントしない」と回答。第2刑事部を2カ月で離れたことは「那覇地裁の裁判長の健康上の理由に伴うもの」と説明した。

 ◆飯塚事件 1992年、福岡県飯塚市で小学1年の女児2人=ともに当時(7)=が行方不明になり、同県甘木市(現朝倉市)の山中で遺体が見つかった。94年に殺人などの容疑で逮捕された久間三千年元死刑囚は無罪を主張。DNA型鑑定が有罪認定の根拠の一つとなり、2006年に死刑が確定、08年に執行された。元死刑囚の妻が09年に再審請求。福岡地裁は14年、DNA型鑑定は「直ちに有罪認定の根拠とすることはできない」としつつ「他の状況証拠で高度な立証がなされている」と請求を棄却。弁護側が福岡高裁に即時抗告した。

=2018/01/30付 西日本新聞朝刊=
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https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/392137/

飯塚事件再審認めず 福岡高裁 「目撃証言信用できる」
2018年02月07日 06時00分

 福岡県飯塚市で1992年に女児2人が殺害された「飯塚事件」で、福岡高裁は6日、殺人などの罪で死刑が確定し、執行された久間三千年(みちとし)元死刑囚=執行時(70)=の再審請求を退けた福岡地裁決定を支持し、弁護側の即時抗告を棄却した。岡田信裁判長は、DNA型鑑定の証明力を事実上否定した一方で、目撃証言など他の状況証拠の信用性を認め元死刑囚が犯人であることが重層的に絞り込まれていると判断した。弁護側は最高裁に特別抗告する方針。

 久間元死刑囚は捜査段階から一貫して無罪を主張。犯行を裏付ける直接的な証拠がない中、高裁は確定判決や地裁決定と同様に(1)被害者の所持品の遺棄現場で目撃された不審車と元死刑囚の車の特徴が一致(2)元死刑囚の車のシート繊維と、女児の服に付着した繊維の鑑定結果が符合(3)元死刑囚の車から被害者と同じ血液型の血痕と尿痕を検出-などの状況証拠を踏まえ「元死刑囚以外に、こうした事実関係のすべてを説明できる者が存在する可能性は抽象的なものにとどまる」とした。

 弁護側が「警察官の誘導があった」と主張した目撃証言については「誘導はうかがわれず信用性は揺るがない」と退けた。

 再審無罪となった「足利事件」と同じ「MCT118法」が使われたDNA型鑑定については「犯人と元死刑囚の型が一致したとも一致しないとも認めることはできない」と判断した上で「DNA型鑑定を除いても高度の立証がなされている」と結論付けた。


■適正、妥当な決定

 福岡高検の秋山実次席検事の話 即時抗告審においても検察官の主張が認められたもので、適正、妥当な決定であると考える。


■死刑判決の裁判官関与「憲法違反」 弁護団、特別抗告へ

 飯塚事件の再審開始を認めなかった福岡高裁決定を受け、会見した弁護団は6日、一審の死刑判決に関わった柴田寿宏裁判官が再審請求即時抗告審にも一時関与した問題について「公平な裁判を保障した憲法に違反する可能性がある」と指摘、特別抗告の理由とする方針を明らかにした。

 弁護団の徳田靖之共同代表によると、昨年5月に高裁で開かれた弁護側、検察側、高裁による最終の3者協議に柴田裁判官は名乗らずに出席したという。「公正でも適正でもない。その場で分かっていれば審理から外れるように求めていた」と批判。今回の決定について「一審の合議内容などが(柴田裁判官から)今回の高裁の裁判体に伝わっていたとすれば信用性が決定的に揺らぐ」と指摘した。

 高裁や弁護団によると、柴田裁判官は1999年の福岡地裁の死刑判決を出した裁判官3人のうちの1人。飯塚事件の再審請求を担当する福岡高裁第2刑事部に昨年4月から5月末まで所属し、9月に那覇地裁に異動した。

 飯塚事件 1992年2月、福岡県飯塚市で小学1年の女児2人=ともに当時(7)=が行方不明になり、山中で遺体が見つかった。94年に殺人などの容疑で逮捕された久間三千年元死刑囚は一貫して無罪を主張。福岡地裁は99年、DNA型鑑定などを根拠に死刑判決を言い渡し、2006年に最高裁で確定、08年に執行された。09年に妻が再審を請求。福岡地裁が14年に棄却、弁護側が即時抗告した。

=2018/02/07付 西日本新聞朝刊=
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●①飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン

2017年09月10日 00時00分22秒 | Weblog


NTVのウェブ頁【NNNドキュメント’17死刑執行は正しかったのかⅡ 飯塚事件 冤罪を訴える妻】(http://www.ntv.co.jp/document/backnumber/archive/post-63.html)。
マガジン9の記事【雨宮処凛がゆく!/第424回:もし、冤罪で捕まったら〜「死刑執行は正しかったのか」から考える〜の巻】(http://maga9.jp/karin170906/)。

   『●NNNドキュメント’13:
      『死刑執行は正しかったのか 飯塚事件 “切りとられた証拠”』

 《あなたは死刑制度に賛成だろうか、それとも反対だろうか。この国では、死刑に賛成する人の割合は約8割だという。それほどの人が「必要」だと思う死刑制度。が、被害者感情などは多く語られても、制度そのものの「欠陥」が語られることはあまりない。…犯人として逮捕されたのが、久間三千年氏。逮捕された彼は一貫して無実を訴えていたものの、06年に死刑が確定し08年死刑が執行……石川さん、桜井さん、袴田さん、菅家さんの4人を合わせた獄中生活の期間は、なんと125年である…が、まだ彼らは「まし」な方なのかもしれない――飯塚事件の番組を見て、思った。なぜなら、久間氏は無実を訴えながらも、既に死刑を執行されてしまっているのだ。これほどに「取り返しのつかないこと」って、他にあるだろうか》。

 まず、この二つの記事に関係なく、ブログ主は死刑制度廃止を支持します。
 マガ9の雨宮処凛さんの記事にもある通り、死刑存置支持者がなんと8割を超えるニッポン…。ましてや、裁判員裁判制度で「死刑のスイッチ」を押させられる時代だというのに、暢気すぎる。

   『●善良な市民には関係ない?? 
      死刑制度存置派驚異の8割の我国では全く揺るがず!?
   『●袴田冤罪事件を機に死刑制度の再考ができない我国
   『●無残!……『朝日』は、素人に《人を裁くという経験を通じ、
               死刑と向き合い、是非を考え》させたいらしい
   『●手遅れ!! ~死刑のスイッチを押すことと死刑執行~
   『●「裁判員制度」の下での「死刑制度」存置支持
   『●それは、職業裁判官の怠慢にすぎない
   『●裁判員制度下で少年死刑判決
   『●裁判員の心を慮る・・・
   『●そのスイッチを押せない
   『●『きみが選んだ死刑のスイッチ』読了(1/2)
   『●『きみが選んだ死刑のスイッチ』読了(2/2)
   『●裁判員制度: 被告にとっても憲法違反
   『●裁判員制度を即刻中止に
   『●「死刑のスイッチ」を押すこと: 裁判員のストレス障害
   『●裁判員制度という不始末に最高裁はどのような落し前を?
   『●死刑という制度:  
       「吊るせ、吊るせ」の合唱で何か状況は変わるのか?
   『●「彼を赦したわけではない。
      しかし死刑にして問題が解決するわけではない」

   『●「殺すなかれ・・・」 
       ・・・「彼らを処刑することが「社会正義」なのだろうか」?
   『●「死刑のスイッチ」を強制する裁判員制度: 
      「やった人でないと、この苦しみは分からない」
   『●裁判員の心を慮る・・・
   『●シロウト裁判官の地獄…: 「裁判員の経験を
      話した親しい友人にこう問われた。「人を殺したのか?」」

 さて、飯塚事件の冤罪者・久間三千年さん。取り返しようのない手遅れ…冤罪者を死刑執行しています。終始無実を訴えていたにもかかわらず、「死刑判決からたった2年足らずの死刑囚に執行命令」が出されたこと、さらに、(足利事件について)「2008年10月16日にDNA型鑑定に疑問が生じた時点で、死刑執行は停止されておくべきだった」のに、同年10月28日に死刑が実施されたこと…あまりに酷すぎます。「死刑執行命令を下したのは、麻生内閣の森英介法務大臣(当時)」、飯塚は麻生太郎氏の「地元」だ。また、《青木俊氏の小説『潔白』…ちなみにこの本の帯の言葉は「死刑が誤りだった時、国は全力で真実を隠蔽する」》。
 久間三千年さんやご家族の皆さんは、一体どれほど無念だったことでしょうか。さらには、被害者やそのご遺族に対しても大変な侮辱行為です。

   『●『創(2009年11月号)』読了
   『●それは、職業裁判官の怠慢にすぎない
   『●手遅れ!! ~死刑のスイッチを押すことと死刑執行~
   『●和歌山県警科学捜査研究所の鑑定結果捏造事件と
              和歌山毒カレー冤罪事件、そして死刑制度
   『●冤罪で死刑執行、あってはならない!!
     「冤罪で死刑にしてしまった警察や検察、法務大臣、裁判官、
      一体どう責任を取るのでしょうか。異例の早さで死刑執行が実施された
      久間さん、一体どれほど無念だったことでしょうか。
      被害者やそのご遺族に対しても大変な侮辱行為ではないでしょうか?」

   『●『冤罪File』(2012年11月号、No.17)についてのつぶやき
   『●死刑存置賛成派と飯塚事件
   『●冤罪(その2/2): せめて補償を
   『●飯塚事件の久間三千年さんと福岡事件の西武雄さん
   『●贖罪:足利事件再鑑定から12日後の2008年10月28日朝、
               飯塚事件久間三千年元死刑囚の死刑が執行
  
    「2008年10月16日 足利事件 再鑑定へ
     2008年10月28日 飯塚事件 死刑執行
     2009年 4月20日 足利事件 再鑑定で一致せず
     ……そう、足利事件で誤鑑定であることが分かった時には、既に、
     久間さんの死刑が執行されていた。2008年10月16日
     DNA型鑑定に疑問が生じた時点で、死刑執行は停止されておくべき
     だったのに…。なぜ、急いで死刑執行したのか?、大変に大きな疑問である」

   『●手遅れ!! ~死刑のスイッチを押すことと死刑執行~
    「陶山博生氏(p.43)は飯塚事件で一審担当。久間三千年さんの
     「死刑執行命令を下したのは、麻生内閣の森英介法務大臣(当時)である。
     大臣任命後1か月後に、死刑判決からたった2年足らずの死刑囚に
     執行命令を下すのは極めて異例である。…再申請求の準備
     なぜ久間氏の死刑が先に執行されたのか、全く理解に苦しむ

   『●「官僚司法とその提灯持ちは改革を拒否し続けている」
                  ・・・冷たい司法が続くわけだ

   『●「飯塚事件」「福岡事件」「大崎事件」
     ・・・・・・に係わる弁護士たちで『九州再審弁護連絡会』発足

   『●足利事件と飯塚事件と、そして「国家は人を殺す」:
                谷垣禎一法相「死刑制度は国民から支持」

   「実は菅家氏逮捕後、類似の事件が隣市で起きていた
    著者はある人物を突き止めた。ルパン三世に似た男。
    警察に情報を提供したが動かない。なぜか。著者は疑う。
    もし真犯人が逮捕されれば、過去のDNA型鑑定の誤りが明白になる
    すると同じ鑑定で死刑が執行された飯塚事件はどうなるか
    (警察は「犯人のDNA」は鑑定で全量消費されてしまったと言う。
    本当か。DNAは簡単に増幅できる。試料を全量使うことと
    半量使うことの間に
    質的な差は出ない慎重な研究者なら原試料の一部を保存しているはずだ)。
    著者の推測通りなら、
    司法の威信が根幹から揺らぐ隠蔽された闇は限りなく深い

   『●袴田事件、そして死刑執行後の『飯塚事件』再審
                       司法の良心を示せるか?

   『●足利事件と飯塚事件との12日間:
         死刑執行された久間三千年さんの冤罪は晴らされるか?

   『●「情況証拠のみ」によって「高度に立証」?:
       飯塚事件の再審請求棄却と冤罪下での死刑執行と裁判員制度

   『●袴田冤罪事件を機に死刑制度の再考ができない我国
   『●「疑わしきは罰せず」「疑わしきは被告人の利益に」:
             今ごろそれを裁判所に訴えねばならないとは・・・

   『●鎌田慧さんインタビュー: 「一人の人間として勇気をふるった名判決」
   『●死刑制度存置: 袴田事件にどう責任?、そして、飯塚事件の絶望感
    「また、袴田さんを有罪にした証拠が否定された最大の要因が48年前の
     血痕のDNA鑑定だったことを振り返れば、どんなに昔の事件であっても
     後に再鑑定ができるように、試料の保存・適正管理をする仕組みも必要だろう。
     袴田事件の再審開始決定が出た4日後に、
     死刑執行後の再審請求が棄却された「飯塚事件」では、
     試料が使い切られていてDNA再鑑定ができなくなっている

   『●疑わしきは死刑に:
      この先も決して翻されることはない冤罪死刑・飯塚事件

    「本件では、久間氏と犯行との結び付きを証明する
     直接証拠は存在せず、情況証拠のみによって有罪認定が行われており、
     中でも警察庁科学警察研究所が行ったいわゆるMCT118型DNA型鑑定
     よって、被害女児の身体等に付着していた血液から久間氏と一致する
     DNA型が検出されたことなどが死刑判決の重要な証拠とされている。」
    「……しかし、DNA型鑑定の信用性に疑問が生じている以上、
     上記血液から検出されたDNA型と久間氏のDNA型が一致する可能性
     というのも科学的な裏付けを伴わない推論に過ぎない。しかも、決定も
     指摘するとおり、本件においては再鑑定のための資料が残されておらず
     再鑑定を行う機会が奪われている。それにもかかわらず、決定は、
     これらの事情を請求人に不利益に扱ったものであって、
     到底容認できないものである」

   『●試料が無い!! DNA鑑定も杜撰なら、
           証拠保全も杜撰 ~冤罪死刑の飯塚事件~

   『●「飯塚事件」「福岡事件」「大崎事件」
       ・・・・・・に係わる弁護士たちで『九州再審弁護連絡会』発足


(※ その②続く[←ココ])

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●試料が無い!! DNA鑑定も杜撰なら、証拠保全も杜撰 ~冤罪死刑の飯塚事件~

2014年08月13日 00時00分07秒 | Weblog


東京新聞の記事【有罪男性の「DNA鑑定は誤り」 再審請求へ』(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014080301001680.html)。
asahi.comの記事【「DNA再鑑定で別人の可能性」 暴行事件で再審請求へ】(http://www.asahi.com/articles/ASG845D8DG84UTIL02M.html?iref=comtop_6_04)。
東京新聞の記事【袴田さん抗告審 証拠衣類のネガ存在 検察 従来説明撤回し謝罪】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014080602000137.html)。

 「検察側が「存在しない」と裁判所や弁護団に説明してきた五点の衣類のカラー写真のネガが存在していたことが五日、分かった。証拠開示を求めてきた弁護団は「検察の証拠隠しだ」と批判」・・・・・・袴田事件ではまたしても、証拠捏造だけでなく、隠蔽も発覚。しかも、「検察幹部は・・・・・・「再審開始決定後、警察が倉庫を整理していて偶然、ネガを見つけた。故意に隠したのではない」」・・・・・・なんて、白々しいにもほどがあるDNA鑑定も杜撰なら、証拠保全も杜撰。しかも、だれも責任をとらない。酷いものである。

   『●真の司法改革とは?、そして「イヌのイヌのイヌのイヌ」
   『●「敗戦特集」 『週刊金曜日』
      (2014年8月8日・15日合併号、1003号)についてのつぶやき


 「無罪が確定した「足利事件」と同時期の約20年前に実施されたDNA鑑定が有力な証拠となり、有罪判決を受けた中部地方の男性について、弁護士が現在の方法で鑑定をやり直したところ、犯人と一致しない結果が出たとして、今月中にも同地方の裁判所に再審請求を起こすことが3日、分かった。鑑定をやり直したのは、足利事件を担当した佐藤博史弁護士で、取材に対し「足利事件と同様に、精度が低い鑑定で有罪が確定したのは全国で8人いる。現在の技術で、正しい判断をすべきだ」と話している」・・・・・・飯塚事件には波及しないのか? 確実にそこに波及しなければ、大変に奇妙だ。まさか、「再鑑定のための試料が残されていない」ことを、飯塚事件の再審却下の言い訳に使わないでしょうね? 『●沖縄密約文書: 「捨てちゃったんだからもういいジャン」の国を許す最高裁』なんてことはないでしょうね? 倉庫を整理していて、「偶然」、後からDNA試料が見つかったりしないでしょうね?


   『●死刑存置賛成派と飯塚事件
   『●NNNドキュメント’13:
       死刑執行は正しかったのか 飯塚事件 “切りとられた証拠”』
   『●飯塚事件の久間三千年さんと福岡事件の西武雄さん
   『●贖罪:足利事件再鑑定から12日後の2008年10月28日朝、
               飯塚事件久間三千年元死刑囚の死刑が執行』  
   『●手遅れ!! ~死刑のスイッチを押すことと死刑執行~
    「陶山博生氏(p.43)は飯塚事件で一審担当。久間三千年さんの
     「死刑執行命令を下したのは、麻生内閣の森英介法務大臣(当時)である。
     大臣任命後1か月後に、死刑判決からたった2年足らず死刑囚
     執行命令を下すのは極めて異例である。・・・再申請求の準備・・・
     なぜ久間氏の死刑が先に執行されたのか、全く理解に苦しむ

   『●「官僚司法とその提灯持ちは改革を拒否し続けている」
                  ・・・冷たい司法が続くわけだ
   『●「飯塚事件」「福岡事件」「大崎事件」
     ・・・・・・に係わる弁護士たちで『九州再審弁護連絡会』発足
   『●足利事件と飯塚事件と、そして「国家は人を殺す」:
                谷垣禎一法相「死刑制度は国民から支持」
    実は菅家氏逮捕後、類似の事件が隣市で起きていた
    著者はある人物を突き止めた。ルパン三世に似た男。
    警察に情報を提供したが動かない。なぜか。著者は疑う。
    もし真犯人が逮捕されれば、過去のDNA型鑑定の誤りが明白になる
    すると同じ鑑定で死刑が執行された飯塚事件はどうなるか
    (警察は「犯人のDNA」は鑑定で全量消費されてしまったと言う。
    本当か。DNAは簡単に増幅できる。試料を全量使うことと
    半量使うことの間に
    質的な差は出ない慎重な研究者なら原試料の一部を保存しているはずだ)。
    著者の推測通りなら、
    司法の威信が根幹から揺らぐ隠蔽(いんぺい)された闇は限りなく深い


   『
●袴田事件、そして死刑執行後の『飯塚事件』再審
                       司法の良心を示せるか?
   『●足利事件と飯塚事件との12日間:
         死刑執行された久間三千年さんの冤罪は晴らされるか?
   『●「情況証拠のみ」によって「高度に立証」?:
       飯塚事件の再審請求棄却と冤罪下での死刑執行と裁判員制度
   『●袴田冤罪事件を機に死刑制度の再考ができない我国
   『●「疑わしきは罰せず」「疑わしきは被告人の利益に」:
             今ごろそれを裁判所に訴えねばならないとは・・・
   『●鎌田慧さんインタビュー: 「一人の人間として勇気をふるった名判決」
   『●死刑制度存置: 袴田事件にどう責任?、そして、飯塚事件の絶望感
    「また、袴田さんを有罪にした証拠が否定された最大の要因が48年前の
     血痕のDNA鑑定だったことを振り返れば、どんなに昔の事件であっても
     後に再鑑定ができるように、
試料の保存・適正管理をする仕組みも必要だろう。
     袴田事件の再審開始決定が出た4日後に、
     
死刑執行後の再審請求が棄却された「飯塚事件」では、
     
試料が使い切られていてDNA再鑑定ができなくなっている

   『●疑わしきは死刑に:
      この先も決して翻されることはない冤罪死刑・飯塚事件
    「本件では、久間氏と犯行との結び付きを証明する
     
直接証拠は存在せず、情況証拠のみによって有罪認定が行われており、
     中でも警察庁科学警察研究所が行ったいわゆる
MCT118型DNA型鑑定
     よって、被害女児の身体等に付着していた血液から久間氏と一致する
     DNA型が検出されたことなどが死刑判決の重要な証拠とされている。」
    「・・・・・・しかし、DNA型鑑定の信用性に疑問が生じている以上、
     上記血液から検出されたDNA型と久間氏のDNA型が一致する可能性
     というのも科学的な裏付けを伴わない推論に過ぎない。しかも、決定も
     指摘するとおり、本件においては再鑑定のための資料が残されておらず
     再鑑定を行う機会が奪われている。それにもかかわらず、決定は、
     これらの事情を請求人に不利益に扱ったものであって、
     到底容認できないものである」

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http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014080301001680.html

有罪男性の「DNA鑑定は誤り」 再審請求へ
2014年8月3日 21時54分

 無罪が確定した「足利事件」と同時期の約20年前に実施されたDNA鑑定が有力な証拠となり、有罪判決を受けた中部地方の男性について、弁護士が現在の方法で鑑定をやり直したところ、犯人と一致しない結果が出たとして、今月中にも同地方の裁判所に再審請求を起こすことが3日、分かった。

 鑑定をやり直したのは、足利事件を担当した佐藤博史弁護士で、取材に対し「足利事件と同様に、精度が低い鑑定で有罪が確定したのは全国で8人いる。現在の技術で、正しい判断をすべきだ」と話している。

 佐藤弁護士によると、男性は約20年前、女性を暴行したとして逮捕された。

(共同)
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http://www.asahi.com/articles/ASG845D8DG84UTIL02M.html?iref=comtop_6_04

DNA再鑑定で別人の可能性」 暴行事件で再審請求へ
2014年8月4日20時23分

 約20年前に女性に暴行をしたとして有罪判決を受け、服役した中部地方の男性が、「DNA型鑑定をやり直したら、真犯人とは別人の可能性があるという結果が出た」として、今月中にも再審請求する方針であることがわかった。有罪の決め手となった当時のDNA型鑑定は、再審無罪が確定した足利事件で「証拠能力がない」と判断されて問題となったのと同じ手法だったという。

 男性のDNA型鑑定のやり直しに協力したのは、足利事件でも弁護人を務めた佐藤博史弁護士。佐藤弁護士によると、男性は約20年前に逮捕され、一貫して無罪を主張していた。しかし、事件現場に残された犯人の体液と男性のDNA型が一致したなどとして、有罪判決が確定。現在は服役を終えているという。

 当時のDNA型鑑定は「MCT118型」と呼ばれる手法。捜査への導入間もない時期で、1千人に1人程度を特定できる精度しかなかったという。そこで今年に入り、男性の口内の細胞を使ってDNA型鑑定を実施したところ、当時の男性の鑑定結果とは異なる可能性があることが分かったという。

 佐藤弁護士は「当時の現場に残された試料が残っていれば、改めて最新のDNA型鑑定をするよう求めたい。そうすれば、犯人と別人かどうかはっきりする」と話している。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014080602000137.html

袴田さん抗告審 証拠衣類のネガ存在 検察 従来説明撤回し謝罪
2014年8月6日 朝刊

 静岡地裁が三月に再審開始決定を出した袴田巌(いわお)さん(78)の即時抗告審で、検察側が「存在しない」と裁判所や弁護団に説明してきた五点の衣類のカラー写真のネガが存在していたことが五日、分かった。証拠開示を求めてきた弁護団は「検察の証拠隠しだ」と批判している。 

 東京高裁で開かれた高裁、東京高検との三者協議後に弁護団が明らかにした。

 事件は、一九六六年に静岡県清水市(現静岡市清水区)で発生。みそ製造会社の専務一家四人が殺害された。強盗殺人などの疑いで逮捕された袴田さんは八〇年に死刑が確定した。

 犯行時の着衣とされた五点の衣類は事件の一年二カ月後、現場のみそ工場タンク内で見つかった。静岡地裁の再審開始決定は、長い間みそに漬けられていたはずの衣類のカラー写真の色合いが不自然であるとし、「捜査機関に捏造(ねつぞう)された疑いがある」と指摘した。今回存在が判明したネガとカラー写真との衣類の色合いの違いが、高裁の判断を左右する可能性が出てきた。

 第二次再審請求審で、静岡地検が五点の衣類のカラー写真を初めて開示した。弁護団は、衣類をさまざまなみそに漬け込んで色の変化を調べた独自の実験結果と比較。「(カラー写真に写っている)五点の衣類のみその染まり方は極端に薄い。一年二カ月も漬かっていたとは考えられない」とし、捜査機関自らがタンクに入れたと主張した。

 弁護団によると、静岡地検は、第二次再審請求審の三者協議が続いていた二〇一〇年と一一年、写真のネガの開示を求めた弁護団に「ネガはない」と回答していた。しかし五日の三者協議では一転して高検検事が「地検検事が事実に反する答えをしたことを率直に謝罪する」と述べ、ネガの存在を認めたという。ネガは百十一枚で、検察側は再審開始決定後一部のネガを鑑定し時間の経過によりカラーの色合いが変わったと主張しているという。弁護団は残りのネガの中に、袴田さんの無罪を証明する証拠があるとみて開示を求めた。

 検察幹部は取材に「再審開始決定後、警察が倉庫を整理していて偶然、ネガを見つけた。故意に隠したのではない」としている。
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●疑わしきは死刑に: この先も決して翻されることはない冤罪死刑・飯塚事件

2014年05月15日 00時00分46秒 | Weblog


日本弁護士連合会のWPに出ていた会長声明【飯塚事件再審請求棄却決定に関する会長声明】(http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2014/140331.html)。

 「久間氏はその後も無実を訴え、再審請求を準備していたが、死刑判決の確定からわずか2年後の2008年(平成20年)10月28日、久間氏(当時70歳)に対する死刑が執行・・・・・・しかも、・・・・・・再鑑定のための資料が残されておらず、再鑑定を行う機会が奪われている」・・・・・・。警察・検察、裁判所の面子、国家の威信をかけても冤罪が翻ることはないと思います。「疑わしきは死刑に」を実践してしまった塚事件、まったく酷いもので、取り返しのつかないとんでもない冤罪死刑・リンチ死事件。

   『●死刑存置賛成派と飯塚事件
   『●NNNドキュメント’13:
       死刑執行は正しかったのか 飯塚事件 “切りとられた証拠”』
   『●飯塚事件の久間三千年さんと福岡事件の西武雄さん
   『●贖罪:足利事件再鑑定から12日後の2008年10月28日朝、
               飯塚事件久間三千年元死刑囚の死刑が執行』  
   『●手遅れ!! ~死刑のスイッチを押すことと死刑執行~
    「陶山博生氏(p.43)は塚事件で一審担当。久間三千年さんの
     「死刑執行命令を下したのは、麻生内閣の森英介法務大臣(当時)である。
     大臣任命後1か月後に、死刑判決からたった2年足らず死刑囚
     執行命令を下すのは極めて異例である。・・・再申請求の準備・・・
     なぜ久間氏の死刑が先に執行されたのか、全く理解に苦しむ

   『
●「官僚司法とその提灯持ちは改革を拒否し続けている」
                  ・・・冷たい司法が続くわけだ
   『●「飯塚事件」「福岡事件」「大崎事件」
     ・・・・・・に係わる弁護士たちで『九州再審弁護連絡会』発足
   『●足利事件と飯塚事件と、そして「国家は人を殺す」:
                谷垣禎一法相「死刑制度は国民から支持」
   『●袴田事件、そして死刑執行後の『飯塚事件』再審
                       司法の良心を示せるか?
   『●足利事件と飯塚事件との12日間:
         死刑執行された久間三千年さんの冤罪は晴らされるか?
   『●「情況証拠のみ」によって「高度に立証」?:
       飯塚事件の再審請求棄却と冤罪下での死刑執行と裁判員制度
   『●袴田冤罪事件を機に死刑制度の再考ができない我国
   『●「疑わしきは罰せず」「疑わしきは被告人の利益に」:
             今ごろそれを裁判所に訴えねばならないとは・・・
   『●鎌田慧さんインタビュー: 「一人の人間として勇気をふるった名判決」


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http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2014/140331.html


飯塚事件再審請求棄却決定に関する会長声明

本日、福岡地方裁判所第2刑事部は、いわゆる「塚事件」に関する再審請求事件につき、再審請求を棄却する旨の決定を行った。

本件は、1992年(平成4年)2月20日、福岡県飯塚市において小学校1年生の女児2名が登校途中に失踪し、翌21日に遺体が発見されたという事件であり、久間三千年氏が略取誘拐、殺人、死体遺棄の容疑で逮捕・起訴された。久間氏は一貫して本件への関与を否認していたが、1999年(平成11年)9月29日、第一審の福岡地方裁判所は死刑判決を言い渡し、その後、控訴・上告も棄却され、2006年(平成18年)10月8日、死刑判決が確定した。

久間氏はその後も無実を訴え、再審請求を準備していたが、死刑判決の確定からわずか2年後の2008年(平成20年)10月28日、久間氏(当時70歳)に対する死刑が執行された。そのため、久間氏の遺志を引き継いだ遺族によって再審請求が行われていたものである。

本件では、久間氏と犯行との結び付きを証明する直接証拠は存在せず、情況証拠のみによって有罪認定が行われており、中でも警察庁科学警察研究所が行ったいわゆるMCT118型DNA型鑑定によって、被害女児の身体等に付着していた血液から久間氏と一致するDNA型が検出されたことなどが死刑判決の重要な証拠とされている。

本日の決定は、新たな鑑定によってDNA型鑑定の証明力を確定判決の当時よりも慎重に検討すべき状況に至っているとしつつも、上記血液から検出されたDNA型と久間氏のDNA型が異なることが明らかになったものではなく、両者が一致する可能性も十分もあるとし、その余の情況証拠を総合すれば確定判決の有罪認定に合理的な疑いは生じないとして、再審請求を棄却した。しかし、DNA型鑑定の信用性に疑問が生じている以上、上記血液から検出されたDNA型と久間氏のDNA型が一致する可能性というのも科学的な裏付けを伴わない推論に過ぎない。しかも、決定も指摘するとおり、本件においては再鑑定のための資料が残されておらず、再鑑定を行う機会が奪われている。それにもかかわらず、決定は、これらの事情を請求人に不利益に扱ったものであって、到底容認できないものである。

また、当連合会は、2011年(平成23年)10月、人権擁護大会において、「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を採択するとともに、2013年(平成25年)2月には、谷垣禎一法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出している。

死刑判決が誤判であった場合に、これが執行されてしまうと取り返しがつかない。飯塚事件は、再審請求が棄却されたとはいっても、えん罪の疑いの濃い事案において、その懸念が現実化したものである。

当連合会としては、誤った裁判による死刑の執行がなされることのないよう、死刑確定者に対する死刑の執行を停止することを求めるとともに、本件の再審請求について引き続き注視していく。

 2014年(平成26年)3月31日
  日本弁護士連合会
  会長 山岸 憲司
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●「情況証拠のみ」によって「高度に立証」?: 飯塚事件の再審請求棄却と冤罪下での死刑執行と裁判員制度

2014年04月02日 00時00分02秒 | Weblog


gendai.netの記事【袴田巌さん「失われた48年」 あまりにも少ない国の“代償”】(http://gendai.net/articles/view/newsx/149044)と、
asahi.comの記事【(48年目の「無実」 袴田事件再審決定:下)冤罪発掘、遅れる日本 米、官民で検証も】(http://www.asahi.com/articles/DA3S11057455.html)。
そして大変に残念で無念な結果となった飯塚事件について、東京新聞の二つの記事【飯塚事件の再審棄却、福岡地裁 2女児殺害で既に死刑】(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014033101001118.html)と、
【弁護団「結論ありき」と地裁批判 飯塚事件、再審棄却で】(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014033101001902.html)。
西日本新聞の記事【飯塚事件、再審請求を棄却 「状況証拠で高度な立証」 福岡地裁】(http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/79182)。
最後に、日弁連のWEBの会長声明【日弁連/飯塚事件再審請求棄却決定に関する会長声明】(http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2014/140331.html)。

 「袴田氏は長い拘禁生活で精神を病み、糖尿病に加え認知症も進んでいる。捜査機関は証拠をでっち上げ、司法は再審請求を先延ばしにしてきた。国家の罪は極めて重い」・・・・・・袴田巌さんの「失われた48年」、警察・検察・裁判所の罪はあまりに重い。最後の最後、ラストチャンスで、良い裁判長にあたったことが幸運だったようだ。 
 それにしても、飯塚事件・・・・・・。袴田巌さんの「失われた48年」でも大変な問題であるけれども、ましてや死刑を実施してしまった飯塚事件の冤罪死刑囚・久間三千年さん、どう形容すればいいのだろうか?  「犬」や「ひらめヒラメ裁判官」という言葉を投げつけざるを得ない、福岡地裁平塚浩司裁判長に。特に、「決定理由で、平塚裁判長は弁護側の主張を「現場試料の再鑑定に基づかず、抽象的に推論するにすぎない」と指摘。「本田鑑定を踏まえても、犯人の型と元死刑囚の型が一致しないことが明らかになったわけでなく、一致する可能性も十分ある」とした」というのは、意識的か無意識か科警研のミスで現場DNA試料を全て使い切っている初歩的ミス、再試できないという明確なミスなのに、酷い決定理由。

   『●死刑存置賛成派と飯塚事件
   『●NNNドキュメント’13:
          死刑執行は正しかったのか 飯塚事件 “切りとられた証拠”』
   『●飯塚事件の久間三千年さんと福岡事件の西武雄さん
   『●贖罪:足利事件再鑑定から12日後の2008年10月28日朝、
               飯塚事件久間三千年元死刑囚の死刑が執行』  
   『●手遅れ!! ~死刑のスイッチを押すことと死刑執行~
    「陶山博生氏(p.43)は飯塚事件で一審担当。久間三千年さんの
     「死刑執行命令を下したのは、麻生内閣の森英介法務大臣(当時)である。
     大臣任命後1か月後に、死刑判決からたった2年足らず死刑囚
     執行命令を下すのは極めて異例である。・・・再申請求の準備・・・
     なぜ久間氏の死刑が先に執行されたのか、全く理解に苦しむ

   『●「官僚司法とその提灯持ちは改革を拒否し続けている」
                         ・・・冷たい司法が続くわけだ
   『●「飯塚事件」「福岡事件」「大崎事件」
     ・・・・・・に係わる弁護士たちで『九州再審弁護連絡会』発足
   『●足利事件と飯塚事件と、そして「国家は人を殺す」:
                谷垣禎一法相「死刑制度は国民から支持」
   『●袴田事件、そして死刑執行後の『飯塚事件』再審
                           司法の良心を示せるか?
   『●足利事件と飯塚事件との12日間:
         死刑執行された久間三千年さんの冤罪は晴らされるか?
   『●「耐え難いほど正義に反する状況」を認めれない仙台地裁
                       ~筋弛緩剤混入事件守大助さん~


 西日本新聞の記事によると、DNAの証拠に関係なく「高度な立証」!?、だそうだ。 しかも「状況証拠」「情況証拠」のみだって!?、呆れた。・・・・・・「「それ以外の状況証拠でも元死刑囚が犯人だという高度な立証がなされている」との判断」。

 日弁連の会長も声明を発表・・・・・・「久間氏と犯行との結び付きを証明する直接証拠は存在せず、情況証拠のみによって有罪認定が行われており、中でも警察庁科学警察研究所が行ったいわゆるMCT118型DNA型鑑定によって、被害女児の身体等に付着していた血液から久間氏と一致するDNA型が検出されたことなどが死刑判決の重要な証拠とされている」。「誤った裁判による死刑の執行」であり不可逆な誤り、非常に恐ろしい。

 そして、裁判員制度。「「とんでもないことが起きた」。袴田巌(いわお)さん(78)の再審開始決定を知り、東京都内に住む元裁判員の50代女性はそら恐ろしくなった。3年前、東京地裁の裁判員裁判の死刑判決に関わった」・・・・・・懸念されていたことが現実に。素人裁判官として「死刑のスイッチ」を押させられるなんて、真っ平御免だ。
 さて、飯塚事件の冤罪死刑囚久間三千年さんの「死刑のスイッチ」を押した森英介元法相、いまも自信を持ってそのスイッチを押した、と言えるのだろうか? 是非、森英介氏に聞いてみたいものである。

   『●冤罪(その2/2): せめて補償を
   『●手遅れ!! ~死刑のスイッチを押すことと死刑執行~


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http://gendai.net/articles/view/newsx/149044

袴田巌さん「失われた48年」 あまりにも少ない国の“代償”
2014年3月28日 掲載

 1966年に静岡県で一家4人が殺害された「袴田事件」の再審開始が27日、静岡地裁で認められ、80年に死刑が確定していた袴田巌氏(78)が東京拘置所から48年ぶりに釈放された。

 27日の決定に検察側が即時抗告すれば、再審を行うかの判断は東京高裁に委ねられる。だが、再審を言い渡した村山浩昭裁判長は、犯行時に袴田氏が着ていたと認定された衣類5点について、「後日捏造された疑いがある」「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」と結論づけた。検察がどうあがいても、逆転無罪は確実だろう。

 となると、政府は袴田氏の“失われた48年間”に対して、代償を払う責任がある。

   「補償金額は、冤罪被害者への補償を定めた〈刑事補償法〉で、
    拘束日数に応じて決まります。1日当たり1000~1万2500円の
    範囲で、拘束中の苦痛や逸失利益、裁判所や捜査機関の過失などを
    考慮して判断されます」(弁護士の紀藤正樹氏)


■1時間当たりたったの521円

 最近の冤罪では、東電OL殺害事件(12年)と足利事件(10年)の元被告に、最大額の1日1万2500円の計算で補償金が支払われた。袴田氏もこのケースに該当すれば、48年分で2億1900万円をもらう権利を手にする。

 もっとも、「時給」に換算すれば、たったの521円だ。都道府県別の最低賃金で最も安い時給664円を大幅に下回る。十分な補償とは到底いえないだろう。

 刑事補償法とは別に、国に対し国家賠償法による損害賠償を請求できるが、勝訴するのは至難のワザだ。

   「国家賠償請求が認められるのは、捜査や起訴段階での警察や検察の
    行為に故意または過失があったことを、訴訟を起こした側が
    立証できた場合のみです。袴田事件に関しても、48年前の事件に
    かかわる証拠を握っている権力側の方が有利なのです」(前出の紀藤弁護士)

 最近では、郵便不正事件で無罪が確定した村木厚子厚生労働事務次官が、国に330万円の損害賠償を求めていたが、最高裁での上告が今月25日に退けられ、村木氏の敗訴が確定した。

 袴田氏は長い拘禁生活で精神を病み、糖尿病に加え認知症も進んでいる。捜査機関は証拠をでっち上げ、司法は再審請求を先延ばしにしてきた。国家の罪は極めて重い
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http://www.asahi.com/articles/DA3S11057455.html

(48年目の「無実」 袴田事件再審決定:下)
 冤罪発掘、遅れる日本 米、官民で検証も
2014年3月30日05時00分

 「とんでもないことが起きた」。袴田巌(いわお)さん(78)の再審開始決定を知り、東京都内に住む元裁判員の50代女性はそら恐ろしくなった。3年前、東京地裁の裁判員裁判の死刑判決に関わった。静岡地裁の決定は、袴田さんの死刑判決の根拠となっていた証拠は「警察による捏造(ねつぞう)の疑いがある」と明確に指… ・・・・・・。
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http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014033101001118.html

飯塚事件の再審棄却、福岡地裁 2女児殺害で既に死刑
2014年3月31日 12時48分

     (飯塚事件の再審が棄却され、報道陣の取材に応じる徳田靖之弁護士
       =31日午後、福岡市)

 福岡県飯塚市で1992年、7歳の女児2人が誘拐、殺害された飯塚事件で死刑が確定、執行された久間三千年元死刑囚=当時(70)=の再審請求審で、福岡地裁は31日、裁判のやり直しを認めず、棄却する決定をした。死刑執行後の再審開始を認めるかどうか判断が注目されていた。

 平塚浩司裁判長は決定理由で「確定判決の有罪認定に合理的な疑いは生じない。弁護団の新証拠には無罪を言い渡すべき明白性はない」と判断した。

 久間元死刑囚は捜査段階から一貫して無実を主張したが、確定判決は複数の状況証拠で有罪を導いた。08年10月に死刑を執行された。

(共同)
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http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014033101001902.html

弁護団「結論ありき」と地裁批判 飯塚事件、再審棄却で
2014年3月31日 17時36分

   (記者会見の冒頭で、声明を読み上げる岩田務弁護士(手前)
    =31日午後、福岡市中央区)

 福岡県で1992年、女児2人が誘拐、殺害された「飯塚事件」で死刑が確定、執行された久間三千年元死刑囚=当時(70)=の弁護団は31日、福岡市で記者会見し、再審請求を棄却した福岡地裁を批判した。「再審を開始すれば死刑制度の存在意義を問い直すことになるとの重大性に目を奪われ、再審をしないとの結論にした」との声明を発表した。

 共同弁護団長の徳田靖之弁護士は、DNA鑑定が、後に再審無罪となった「足利事件」とほぼ同時期に、同手法で同じ警察庁科学警察研究所でなされた点に触れ「裁判所は当時の技官の証言を信用した。なぜ飯塚だけは信用できるのか」と疑問を投げかけた。

(共同)
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http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/79182

飯塚事件、再審請求を棄却 「状況証拠で高度な立証」 福岡地裁
2014年03月31日(最終更新 2014年03月31日 13時19分)

   (福岡地裁に入る弁護団の徳田靖之弁護士(中央)
    =31日午前9時半ごろ、福岡市中央区)

 福岡県飯塚市で1992年に女児2人が殺害された「飯塚事件」で、殺人と誘拐などの罪で死刑が確定し、刑が執行された久間三千年(くまみちとし)元死刑囚=執行時(70)=の遺族が申し立てた再審請求で、福岡地裁は31日、請求を棄却する決定をした。平塚浩司裁判長は、確定判決の根拠の一つとなったDNA型鑑定を「直ちに有罪認定の根拠とすることはできない」とした上で「それ以外の状況証拠でも元死刑囚が犯人だという高度な立証がなされている」との判断を示した。弁護側は即時抗告する方針。

 再審請求審の最大の争点は、被害者に付着していた血液のDNA型鑑定の信用性だった。弁護側は鑑定に使われたネガフィルムの再鑑定を本田克也筑波大教授(法医学)に依頼し、「ネガには元死刑囚とは別人のDNA型が写っており、真犯人の可能性がある」とする鑑定書を新証拠として提出した。

 決定理由で、平塚裁判長は弁護側の主張を「現場試料の再鑑定に基づかず、抽象的に推論するにすぎない」と指摘。「本田鑑定を踏まえても、犯人の型と元死刑囚の型が一致しないことが明らかになったわけでなく、一致する可能性も十分ある」とした。

 刑事訴訟法では、再審は「無罪を言い渡すべき明らかな新証拠」が見つかった時などに認められる。検察側はネガは確定判決の審理でも証拠提出しており、「鑑定書は新証拠には当たらない」と主張したが、決定は新証拠と認めた。

 このほか、被害者の遺体発見現場近くで元死刑囚のワゴン車に似た車を見たという目撃証言についても、弁護側は心理学者の分析を基に「供述内容が詳細で警察官の誘導があった」と主張したが、決定は「目撃者は警察官から誘導を受ける可能性がない時期から車の特徴を述べていた」と否定した。

=2014/03/31付 西日本新聞夕刊=
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http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2014/140331.html

飯塚事件再審請求棄却決定に関する会長声明

本日、福岡地方裁判所第2刑事部は、いわゆる「飯塚事件」に関する再審請求事件につき、再審請求を棄却する旨の決定を行った。

本件は、1992年(平成4年)2月20日、福岡県飯塚市において小学校1年生の女児2名が登校途中に失踪し、翌21日に遺体が発見されたという事件であり、久間三千年氏が略取誘拐、殺人、死体遺棄の容疑で逮捕・起訴された。久間氏は一貫して本件への関与を否認していたが、1999年(平成11年)9月29日、第一審の福岡地方裁判所は死刑判決を言い渡し、その後、控訴・上告も棄却され、2006年(平成18年)10月8日、死刑判決が確定した。

久間氏はその後も無実を訴え、再審請求を準備していたが、死刑判決の確定からわずか2年後の2008年(平成20年)10月28日、久間氏(当時70歳)に対する死刑が執行された。そのため、久間氏の遺志を引き継いだ遺族によって再審請求が行われていたものである。

本件では、久間氏と犯行との結び付きを証明する直接証拠は存在せず、情況証拠のみによって有罪認定が行われており、中でも警察庁科学警察研究所が行ったいわゆるMCT118型DNA型鑑定によって、被害女児の身体等に付着していた血液から久間氏と一致するDNA型が検出されたことなどが死刑判決の重要な証拠とされている。

本日の決定は、新たな鑑定によってDNA型鑑定の証明力を確定判決の当時よりも慎重に検討すべき状況に至っているとしつつも、上記血液から検出されたDNA型と久間氏のDNA型が異なることが明らかになったものではなく、両者が一致する可能性も十分もあるとし、その余の情況証拠を総合すれば確定判決の有罪認定に合理的な疑いは生じないとして、再審請求を棄却した。しかし、DNA型鑑定の信用性に疑問が生じている以上、上記血液から検出されたDNA型と久間氏のDNA型が一致する可能性というのも科学的な裏付けを伴わない推論に過ぎない。しかも、決定も指摘するとおり、本件においては再鑑定のための資料が残されておらず、再鑑定を行う機会が奪われている。それにもかかわらず、決定は、これらの事情を請求人に不利益に扱ったものであって、到底容認できないものである。

また、当連合会は、2011年(平成23年)10月、人権擁護大会において、「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を採択するとともに、2013年(平成25年)2月には、谷垣禎一法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出している。

死刑判決が誤判であった場合に、これが執行されてしまうと取り返しがつかない。飯塚事件は、再審請求が棄却されたとはいっても、えん罪の疑いの濃い事案において、その懸念が現実化したものである。

当連合会としては、誤った裁判による死刑の執行がなされることのないよう、死刑確定者に対する死刑の執行を停止することを求めるとともに、本件の再審請求について引き続き注視していく。

 2014年(平成26年)3月31日
  日本弁護士連合会
  会長 山岸 憲司
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●贖罪:足利事件再鑑定から12日後の2008年10月28日朝、飯塚事件久間三千年元死刑囚の死刑が執行

2013年10月28日 00時00分34秒 | Weblog


当時の森英介法相の執行命令の下、2008年10月28日朝、飯塚事件 久間三千年元死刑囚の死刑が執行された。当時の弁護士たちは、「贖罪」のために今も、異例の死刑執行後の再審請求を続けている。

 ウィキペディアによると、
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  【http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%AF%E5%A1%9A%E4%BA%8B%E4%BB%B6

   
飯塚事件(いいづかじけん)とは、1992年(平成4年)発生した2人の女児が
  殺害された事件。状況証拠しか .... 2008年1028、当時の法務大臣である
  森英介によって死刑執行の命令が出され、福岡拘置所においてK(当時70歳)の
  死刑が執行され死亡した。
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   ●NNNドキュメント’13: 『死刑執行は正しかったのか
                        飯塚事件 “切りとられた証拠”』』 

 NNNドキュメント’13によると、足利事件と飯塚事件、両事件のDNA型鑑定時期・鑑定方法・鑑定人が同じ。そして、科警研のDNA型鑑定(MCT118法)について、

   2008年10月16日 足利事件 再鑑定へ
   2008年10月28日 飯塚事件 死刑執行
   2009年 4月20日 足利事件 再鑑定で一致せず

・・・・・・そう、足利事件で誤鑑定であることが分かった時には、既に、久間さんの死刑が執行されていた。2008年10月16日にDNA型鑑定に疑問が生じた時点で、死刑執行は停止されておくべきだったのに・・・・・・。なぜ、急いで死刑執行したのか?、大変に大きな疑問である。

 また、科警研の元のネガフィルムがようやく公開されると、科警研がトリミングしており、「真犯人の可能性があるDNA型」が恣意的に(死刑判決の根拠になった)科警研鑑定書のフィルムから切り取られていた。もしトリミングされていなければ、久間三千年さんのDNA型とはまったく一致しないことが明らかだったはず。これは、足利事件のキーパーソン筑波大学法医学・本田克也教授の意見である。

 さらには、血液型判定も間違いであったらしい。現場で見つかった犯人の血液型はB型で、久間さんもB型だとされていたが、犯人の血液型は、単独犯である限り、AB型である、と先の本田教授は断言。 実は、事件直後、福岡県警科捜研は犯人の血液型をAB型としていたが、その後、科警研がB型とした経緯があった。これまでDNA型鑑定(MCT118法)がおかしいということのみが言われていたが、血液型判定までもがおかしかったわけだ。

 こんな明らかな見込み捜査で、しかも目撃内容や証拠もいい加減・・・・・・、なぜ、そんなに急いで死刑執行したのか? 「確定死刑囚の事件ひいては死刑制度への論争に波及するのを恐れ、執行に踏み切ったという見方」であるのならば、言葉を失う。

 --------------------------------------------------------------------------------
  【http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%AF%E5%A1%9A%E4%BA%8B%E4%BB%B6

   ジャーナリストの青木理は、そもそも物証自体の提出経緯が極めて唐突に
  出てきて証拠自体が微細なものであることなどを挙げているほか、司法、警察への
  取材の蓄積や経験から、死刑は「確実」な件のみ執行をするという法務省の
  慣習を考えると、同時期に省および検察内部でDNA鑑定への信憑性が
  問題化していた足利事件が、確定死刑囚の事件ひいては死刑制度への論争に
  波及するのを恐れ、執行に踏み切ったという見方をしている。
 --------------------------------------------------------------------------------

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