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●袴田事件、48年間のそれぞれの苦難・・・・・・袴田巌さんと秀子さん、そして、熊本典道さん

2014年03月29日 00時00分47秒 | Weblog


asahi.comの二つの記事【袴田死刑囚の姉ら拘置所到着 「どうしても会いたい」】(http://www.asahi.com/articles/ASG3W552KG3WUTIL01V.html)と、
【袴田巌さん、東京拘置所から釈放 再審開始決定受け】(http://www.asahi.com/articles/ASG3W56BSG3WUTPB019.html?iref=comtop_6_01)。
東京新聞の記事【袴田事件再審決定 「証拠捏造の疑い」】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014032702000264.html)。
asahi.comの社説【死刑囚の再審―過ちはすみやかに正せ】(http://www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=comtop_pickup_p)。
東京新聞の社説【袴田事件再審決定 冤罪は国家の犯罪】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014032802000164.html)。
最後に、袴田事件をずっと支援されてきた保坂展人さんのasahi.comのコラム【袴田さん釈放に万感 問われる国の責任】(http://www.asahi.com/and_w/life/SDI2014032835581.html?iref=comtop_fbox_d2_03)。

   ●『DAYS JAPAN 2007年12月号』読了 (1/2)
    「森達也氏の本にも出てきた保坂展人氏や亀井静香氏の
     「~まだ間に合うのなら⑨~ 死刑大国・日本」。
     元ボクサー袴田さんの冤罪の件も。保坂議員のメモから起こした
     図が生々しい(森さんの「死刑」にも同様の図有り)。」

   『●『創 (12月号)』読了 (2/2)
   『●『冤罪File No.2 (6月号)』読了
   『●『月刊誌3冊』読了(2/4)
   『●『冤罪File(No.06、2009年6月号)』
   『●冤罪事件映画化: 袴田事件
   『●冤罪が増幅されはしまいか?
   『●冤罪によるアリ地獄
   『●名張毒ぶどう酒事件という冤罪
   『●『美談の男』読了
    「『美談の男/冤罪 袴田事件を裁いた元主任裁判官・熊本典道の秘密』、
     7月に読了。尾形誠規著。鉄人社。2010年6月刊、第1刷。
      本の帯、「私は無罪を確信しながら死刑判決を言い渡した―――。
     39年前の過ちを自ら告白した元エリート判事の転落と再生/
     酒……家族崩壊……自殺未遂……放浪……そして―――。
     逃れたくとも逃れられない袴田事件の呪縛」。
      「裁判員制度が始まろうとしているいま、いつ誰が熊本と
     同じ立場になってもおかしくない」・・・」

   『●『創(2010年7月号)』
   『●袴田事件: いい加減に誤まりを認めるべき
   『●『冤罪File(No.10)』読了
   『●冤罪デモ
   『●それは、職業裁判官の怠慢にすぎない
   『●『検察に、殺される』読了
   『●強大な氷山の一角としての冤罪発覚
   『●「前川さんの身になってほしい!」: 「福井事件」という明々白な冤罪
   『●作られた袴田冤罪事件、理不尽極まる漸くの初の証拠開示
   『●死刑という制度: 「吊るせ、吊るせ」の合唱で何か状況は変わるのか?
   『●手遅れ!! ~死刑のスイッチを押すことと死刑執行~
   『●PC遠隔操作冤罪事件: やはり捏造しようとしていないか?
   『●「どうなるのニッポン」『週刊金曜日』
       (2013年7月26日、953号)についてのつぶやき
   『●飯塚事件の久間三千年さんと福岡事件の西武雄さん
   『●袴田事件: 静岡地裁は「疑わしきは被告人の利益に」を
   『●「曽野綾子とは何か」 『週刊金曜日』
          (2014年1月24日号、976号)についてのつぶやき
   『●袴田事件、そして死刑執行後の『飯塚事件』再審:
                         司法の良心を示せるか?
   『
●袴田事件・釈放!: 「捜査機関が重要な証拠を捏造した疑い」
                 「拘置の続行は耐え難いほど正義に反する」


以下は、昨日の「つぶやき」。

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■報道ステーションで袴田さんのインタビュー。思っていたより、遥かにしっっかりとしておられる。実感がわかない印象だ。お姉さんの秀子さんが本当に嬉しそうだ。本当に良かった。いま晩酌をしておられる頃か?(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/049357a4c458aa9a0094191c2b363e56 …

■報道ステーションでトップニュース。裁判長の言葉「正義に反する」(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/049357a4c458aa9a0094191c2b363e56 …)。証拠の捏造まで厳しく断罪。裁判時に、衣類という証拠の変更を申し立ててまで捏造。熊本典道元裁判長のコメントを聞いてみたい(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/1ce91952c0e77c5dc55b877bf1632238 …

■意に反して袴田事件の死刑判決を書いた元裁判官・熊本典道さん(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/1ce91952c0e77c5dc55b877bf1632238 …)のインタビュー。贖罪の言葉。熊本さん自身も大変に苦しかった事と思う。また、元刑事のコメントに怒りがわく。何の反省の言葉もないとは

■どう責任をとるつもりか?(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/049357a4c458aa9a0094191c2b363e56) 『袴田さんを祝福、捜査批判』(http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20140327-1276329.html)/「ゴビンダ・プラサド・マイナリさん・・足利事件で再審無罪が確定した菅家利和さん・・名張毒ぶどう酒事件で1972年に死刑が確定し、昨年11月に第8次再審請求を申し立てた奥西勝死刑囚(88)の鈴木泉弁護団長は「私たち弁護団にとって、再審開始決定が出たことは何よりの励ましになる」とコメント」
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 東京新聞社説「真犯人を取り逃がした上、ぬれぎぬを着せられた人物の一生を破滅に追い込む」・・・・・・ましてや飯塚事件。既に久間三千年さんは、麻生内閣の森英介法務大臣のゴーサインの下、死刑執行。どう責任をとるのだろうか? 責任など、とれる訳もないのだが・・・・・・。「真犯人を取り逃がした上」、死刑執行・・・・・・暗澹たる思いだ。「冤罪であれば、警察、検察庁、裁判所、すべてが誤りを犯したことになる」、取り返しようのない「不可逆な誤り」である。
 最後に、保坂展人さんのコラム。全く同感。「永遠の沈黙」を待つ残酷な司法・・・・・・「捜査をした警察・検察、死刑判決を続けた司法の責任をうやむやにするには、袴田さんの生命が尽きることが、国にとって一番都合がよかったのではないでしょうか。再審の扉を閉じたまま袴田さんが亡くなれば、真相を闇の中へ葬ることができるからです。この間、袴田さんを担当した検察官も裁判官も次々と交代していきました。ただ、時がすぎるのを待っているかのように。しかし、「永遠の沈黙」に陥ることはありませんでした」

   『●冤罪死刑囚の死を待ち、責任を逃れようとする冷酷な人々

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http://www.asahi.com/articles/ASG3W552KG3WUTIL01V.html

袴田死刑囚の姉ら拘置所到着 「どうしても会いたい」
2014年3月27日16時26分

 静岡地裁の再審開始決定を受け、袴田巌死刑囚(78)の姉ひで子さん(81)が27日午後3時ごろ、支援者らとともに、袴田死刑囚がいる東京・小菅の東京拘置所に到着した。ひで子さんは「ただ、ただ、うれしいだけです。巌の拘置を一日も早く解いてあげたい」と改めて喜びを語った。

 袴田元被告は精神を病んでおり、ひで子さんが毎月面会に出向いても、会えない状態が3年半続いている。ひで子さんは「いつもなら、会いたくないと言われたらすぐに帰るんですが、今日はどうしても会いたい。いい知らせがあるからどうしても出てこいと言って、頑張るつもりです」と話した。

 最初にかけてあげたい言葉は何かと聞かれると、「本人が分からなくても、『元気か?再審開始になった』と言ってみようと思います」と答えた。
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http://www.asahi.com/articles/ASG3W56BSG3WUTPB019.html?iref=comtop_6_01

袴田巌さん、東京拘置所から釈放 再審開始決定受け
2014年3月27日17時26分

 静岡地裁の再審開始決定を受け、袴田巌死刑囚(78)が27日午後5時20分すぎ、東京・小菅の東京拘置所から釈放された。逮捕から48年ぶり。姉ひで子さん(81)らと一緒に車に乗り、拘置所を出た。

 支援者によると、袴田元被告には決定文を見せて再審開始について伝えたが、「ウソだ」と信じられない様子だったという。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014032702000264.html

袴田事件再審決定 「証拠捏造の疑い」
2014年3月27日 夕刊

 静岡県清水市(現静岡市清水区)で一九六六年にみそ製造会社の専務一家四人が殺害された袴田事件の第二次再審請求で、静岡地裁は二十七日、強盗殺人罪などで死刑判決が確定した袴田巌(はかまだいわお)元被告(78)の再審開始と刑の執行、拘置の停止を決定した。村山浩昭裁判長は、確定判決で犯行時の着衣と認定された「五点の衣類」について「後日捏造(ねつぞう)された疑いがある」と結論付けた。事件発生から約四十八年、死刑確定から約三十四年で裁判がやり直され、死刑判決が取り消される可能性がある。 

 法務省によると、死刑囚の再審が決定したケースで、拘置の執行停止が認められたのは初めて。死刑囚の再審開始決定は財田川、免田、松山、島田と、後に決定が取り消された名張毒ぶどう酒事件に続き戦後六例目で九年ぶり。名張以外の四人は再審無罪となった。静岡地検が即時抗告すれば、再審を認めるか否かの判断は東京高裁に委ねられる。弁護団は即時抗告しないよう地検に申し入れた。

 第二次請求審の最大の争点は、五点の衣類が袴田元被告のものかどうかだった。検察、弁護側双方の推薦した専門家二人がDNA型鑑定を実施。ともに、白半袖シャツの右肩の血痕が袴田元被告のDNA型と完全には一致しないとの見解を示した。弁護団が「五点の衣類は何者かが捏造した証拠」とした一方、検察側は「試料が古く、信用性が低い」と主張してきた。

 決定は、鑑定から「五点の衣類の血痕は、袴田元被告のものでも犯行着衣でもない可能性が相当程度認められる」と指摘。鑑定結果は「無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たる」と判断した。

 五点の衣類は事件から一年二カ月後、同社のみそタンク内から見つかった。決定は「実験結果からみても、衣類の染まり具合はみその色に比べて薄く、血痕の赤みも強すぎる。長時間みその中に隠されていたにしては不自然」と指摘。

 弁護側は、衣類のうちズボンはサイズが合わず袴田元被告のものでもないと主張。決定は確定判決の認定を否定し「ズボンが袴田元被告のものではなかったとの疑いに整合する」と認定した。

 再審開始決定を受け、袴田元被告の姉の秀子さん(81)は二十七日午後、東京拘置所へ面会に向かう。

 <静岡地検・西谷隆次席検事> 予想外の決定であり、本庁の主張が認められなかったのは、誠に遺憾。上級庁と協議し、速やかに対応したい。
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http://www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=comtop_pickup_p

死刑囚の再審―過ちはすみやかに正せ
2014年3月28日(金)付

 無実の人を罪におとし、長年にわたり、死刑台の縁に立たせる。許されないことが起きたおそれが強い。

 静岡県で48年前、一家4人が殺害された。犯人として死刑を宣告された袴田巌さんの再審の開始を静岡地裁が決定した。

 検察側は抗告によって手続きを長引かせるべきではない。すみやかに再審すべきである。

 80年代、免田栄さんら死刑が確定した4人が相次いで再審で無罪になった。自白の強要、とりわけ死刑の取り返しのつかなさを考えさせたはずだった。

 袴田さんの死刑確定や第1次再審請求審はそうした動きと並行していたのだが、判決は今日まで維持されている。あの教訓ははたして生かされたのか。司法界は猛省せねばなるまい。

 今回の決定が特に重いのは、袴田さん有罪の重要証拠で、犯行時に着ていたとされた衣服5点について、捜査機関が捏造(ねつぞう)した疑いがあるとさえ言及していることだ。

 死刑を決定づけた証拠がでっち上げだったとしたら、かつてない深刻な事態である。

 捜査・検察当局に求められるのは、この指摘を真摯(しんし)に受けとめ、何が起きたのか徹底調査することではないか。

 袴田さんは78歳。いつ執行されるか分からない死刑の恐怖と向き合う拘置所暮らしで精神の病が進み、姉や弁護人による面会でさえ難しくなった。

 死刑の確定から34年である。むだにしていい時間はない。

 再審を開くかどうかの判断にここまで時間を要している裁判のあり方も検討すべきだ。

 衣服の血痕に用いたDNA鑑定の新しい技術が今回の決定を後押ししたのは確かだろう。ただし、衣服は一審が始まった後に現場近くで突然見つかったとされ、その不自然さのほか、袴田さんには小さすぎる問題などがかねて指摘されていた。

 「疑わしきは被告人の利益に」の理念は尊重されていたのか、問い直すべきだ。

 27年かかって棄却に終わった第1次再審請求審と比べ、第2次審では証拠の開示が大きく進んだ。裁判所が検察に強く促した結果、当初は調べられていなかった証拠が多く出された。

 袴田さんに有利なのに、弁護側が存在さえ知らなかった証言もあった。それもなぜ、もっと早くできなかったのか、と思わざるをえない。

 今回の再審開始決定は、釈放にもあえて踏み込んだ。裁判長が、これ以上の拘束は「耐え難いほど正義に反する」とまで断じた意味はあまりに重い。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014032802000164.html

【社説】
袴田事件再審決定 冤罪は国家の犯罪
2014年3月28日

 裁判所が自ら言及した通り、「耐え難いほど正義に反する状況」である。捏造(ねつぞう)された証拠で死刑判決が確定したのか。速やかに裁判をやり直すべきだ。

 事件発生から一年二カ月後に工場のみそタンクから見つかった血痕の付いた衣類五点は、確定判決が、袴田巌さんを犯人と認定する上で最も重視した証拠だった。

 その衣類について、今回の静岡地裁決定は「後日捏造された疑いがある」と述べた。

 検察庁も裁判所も証拠の捏造を見抜けないまま死刑を宣告していたのであろうか。


◆「こちらが犯行着衣」

 絶対にあってはならないことであるが、死刑を言い渡した当の裁判所が、その疑いが極めて高くなったと認めたのである。ただならぬ事態と言わざるを得ない。

 そもそも、起訴の段階で犯行着衣とされたのは、血痕と油の付着したパジャマだった。

 ところが、一審公判の中でパジャマに関する鑑定の信用性に疑いがもたれるや、問題の衣類五点がみそタンクの中から突然見つかり、検察官は「こちらが真の犯行着衣である」と主張を変更した。

 袴田さんは、公判では起訴内容を否認したが、捜査段階で四十五通の自白調書が作られていた。毎日十二時間以上に及んだという厳しい取り調べの末に追い込まれた自白で、その内容は、日替わりで変遷していた。

 一審判決は、そのうち四十四通を、信用性も任意性もないとして証拠から排斥したが、残り一通の検察官作成の自白調書だけを証拠として採用し、問題の衣類五点を犯行着衣と認定して死刑を言い渡した。判決はそのまま高裁、最高裁を経て一九八〇年に確定した。この間、どれほどの吟味がなされたのか。

 この確定判決をおかしいと考えていたのは、再審を請求した弁護側だけではなかった。


◆新証拠の開示が鍵に

 一審で死刑判決を書いた元裁判官の熊本典道さん(76)は二〇〇七年、「自白に疑問を抱き無罪を主張したが、裁判官三人の合議で死刑が決まった」と告白している。

 「評議の秘密」を破ることは裁判官の職業倫理に反する暴挙だと批判されたが、この一件で、袴田事件に対する市民の疑念も決定的に深まったのではないか。

 第二次再審請求審では、弁護団の開示請求を受けて、裁判所が検察側に幾度も証拠開示を勧告。静岡地検は、これまで法廷に提出していなかった五点の衣類の発見時のカラー写真、その衣類のズボンを販売した会社の役員の供述調書、取り調べの録音テープなど六百点の新証拠を開示した。その一部が再審の扉を開く鍵になった。

 これまでの再審請求事件では、捜査当局が集めた証拠の開示、非開示は検察の判断に委ねられたままで、言い換えれば、検察側は自分たちに都合のよい証拠しか出してこなかったともいえる。弁護側から見れば、隠されたことと同じだ。今回の請求審では、証拠開示の重要性があらためて証明されたといっていい。

 そもそもが、公権力が公費を使って集めた証拠である。真相解明には、検察側の手持ち証拠が全面開示されてしかるべきだろう。

 柔道二段で体格もよい被害者を襲う腕力があるのは、元プロボクサーの彼以外にない…。従業員だから給料支給日で現金があることを知っている…。袴田さんは、いわゆる見込み捜査で犯人に仕立てられた。一カ月余り尾行され、逮捕後は、時に水も与えられない取り調べで「自白」に追い込まれる。典型的な冤罪(えんざい)の構図である。無理な捜査は証拠捏造につながりやすい。

 冤罪であれば、警察、検察庁、裁判所、すべてが誤りを犯したことになる。真犯人を取り逃がした上、ぬれぎぬを着せられた人物の一生を破滅に追い込む。被害者側は真相を知り得ない。冤罪とは国家の犯罪である。

 市民の常識、良識を事実認定や量刑に反映させる裁判員裁判の時代にある。誤判につながるような制度の欠陥、弱点は皆無にする必要がある。


◆検察は即時抗告やめよ

 司法の判断が二転三転した名張毒ぶどう酒事件を含め、日弁連が再審請求を支援している重要事件だけでも袴田事件以外に八件。証拠開示を徹底するなら、有罪認定が揺らぐケースはほかにもあるのではないか。

 冤罪は、古い事件に限らない。今も起きうることは、やはり証拠捏造が明らかになった村木厚子さんの事件などが示している。

 袴田さんの拘置停止にまで踏み込んだ今決定は、地裁が無罪を確信したことを意味している。

 検察は即時抗告することなく、速やかに再審は開始されるべきである。
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http://www.asahi.com/and_w/life/SDI2014032835581.html?iref=comtop_fbox_d2_03

袴田さん釈放に万感 問われる国の責任
<太陽のまちから> 特別寄稿
保坂展人
2014年3月28日

 無実の死刑囚として拘置されていた元プロボクサーの袴田巌さん(78)が、48年ぶりに釈放されました。3月27日午後5時、東京拘置所から出てくる映像を見て、万感こみあげるものがありました。
 私が袴田さんの置かれている立場を知ったのは、衆議院法務委員会に属して活動していた1998年のことでした。人権問題をたびたび法務委員会で取り上げていることを知って、姉のひで子さんが支援者の方々と議員会館に訪ねてこられたのです。
 当時、すでに30年を超える長期の拘置が続き、しかも確定死刑囚として20年あまりも「死刑執行の恐怖」にさらされていた袴田さんは次第に心の変調をきたすようになっていました。90年代半ばには、弟の無実を信じて励ましてきた唯一の理解者であるひで子さんの面会も拒絶するようになった、と聞きました。
 私の仕事は、拘置所での袴田さんの身体や精神の状況をできるだけ詳細に聞き取り、ひで子さんや弁護団、支援者に伝えることでした。袴田さんは裁判の中で、「神さま―。僕は犯人ではありません。僕は毎日叫んでいます」(母親にあてた手紙)などと大量の手紙を記して、無実を訴えていました。司法の場で自らの潔白が証明されることを信じていたのです。
 ところが、68年、静岡地裁で死刑判決。76年、東京高裁で控訴棄却、80年に最高裁で上告が棄却され、死刑が確定します。
 しかし、一審で死刑判決を出した静岡地裁は、警察・検察による連日12時間に及ぶ取り調べによって作成された45通の供述調書のうち、じつに44通を「違法な取り調べ」によるものとして棄却しました。長時間にわたり自白を迫る強引な調書作成過程の信用性を認めませんでした。それでも、残る1通を採用して死刑判決を出したのです。
 94年、一縷の望みをかけた再審請求が静岡地裁で棄却されると、袴田さんは裁判関係書類の差し入れを拒否し、弁護士とも面会しなくなりました。
 誰とも会わなくなって3年半以上続いた袴田さんの様子をみるために、私は半年ががりで法務省矯正局と交渉して、東京拘置所での面会にこぎつけました。2003年3月10日、私は姉のひで子さんと弁護士と一緒に袴田さんと会い、言葉をかわしました。
 しかし、袴田さんは、空想の世界の住人になっていました。このときの様子は、「塀の中に閉じ込められた『秘密』の闇」として、このコラム(2013年11月19日)で触れましたが、あらためて記します。

 保坂 「元気ですか」

 袴田 「元気ですよ」

 保坂 「今日はあなたの誕生日ですが、分かります? 67歳ですね」

 袴田 「そんなことを言われても困るんだよ。もういないんだから、ムゲンサイサイネンゲツ(無限歳歳年月?)歳はない。地球がないときに生まれてきた。地球を作った人……」

 保坂 「ご両親についてお話したい」

 袴田 「困るんだなー。全てに勝利したんだから」

     「無罪で勝利した。袴田巌の名において……」

     「神の国の儀式があって、袴田巌は勝った。日本国家に対して5億円の損害賠償を取って……」

 保坂 「5億円はどうしたんですか」

 袴田 「神の国で使っている」

 保坂 「袴田巌さんはどこに行ったのですか?」

 袴田 「袴田巌は、智恵の一つ。私が中心になった。昨年儀式があった」 

 長年の拘置によって精神に変調をきたす拘禁反応が強く出ていて、すぐにでも治療が必要な状態でしたが、何の治療もなされませんでした。
 07年、私は、国会内に、ひとりの法律家を招いた勉強会をセットしました。一審の死刑判決に関与したことを悔いて、号泣しながら袴田さんに謝罪した元裁判官の熊本典道さん。多数のメディアの前で、「自分は無罪を確信していたが、他のふたりの裁判官に押し切られて死刑判決を書いてしまった。悔やんでも悔やみきれない」と告白したのです。
 再審への期待が高まったのは、いまから10年も前のことでした。
 04年8月。四谷の中華料理店で私はひで子さんや弁護士の皆さんと、東京拘置所にいる袴田さんに、どのように「再審開始」という朗報を伝えるかの案を練っていました。東京高裁に対する期待は大きく、「きっと始まる、大丈夫だ」という声がありました。しかし、東京高裁は再審を求める訴え(即時抗告)を棄却しました。
 それでも、ひで子さんをはじめ、支援者も弁護団もあきらめませんでした。ボクシング界からも支援の輪は広がりました。私が09年に国会を去った後も、袴田さんを支援する国会議員連盟がつくられました。ただ、弁護士をはじめ熱心な支援者のなかにはすでに他界された方もいます。
 思い出すのは、無実を訴えながら03年に獄中で亡くなった波崎事件の冨山常喜さん(享年86)のことです。
 亡くなる半年前、私は東京拘置所と交渉して、所内にある集中治療室で民間の医師の立ち会いのもとに冨山さんの健康状態をチェックする機会を設けました。

   「このままじゃ死ねないよ。無実を認めてもらわないと」

 病床の冨山さんはそうつぶやきました。人工透析と中心静脈栄養のチューブがつながっている状態を見て、医師は言いました。

   「このままでは、必ず感染症で亡くなります。うちの病院でリハビリをしましょう」

 しかし、その提案は認められませんでした。そして、医師の言葉通り、冨山さんは半年後、感染症のため息を引き取りました。
 それだけに、48年という歳月をへて、袴田さんが生きて東京拘置所を出ることができたことは幸いです。
 この間に、ずさんな捜査による冤罪(えんざい)である、との認識は広がっていました。再審開始決定を下した静岡地裁が今回、「証拠の捏造」と断罪するよりはるか前に、冤罪を訴える元プロボクサー「Hakamada」の名は世界に知れ渡り、EU各国の大使館をはじめ注目を集めていました。そのため、袴田さんに死刑が執行される可能性はありませんでした。
 そうしたなか、捜査をした警察・検察、死刑判決を続けた司法の責任をうやむやにするには、袴田さんの生命が尽きることが、国にとって一番都合がよかったのではないでしょうか。再審の扉を閉じたまま袴田さんが亡くなれば、真相を闇の中へ葬ることができるからです。この間、袴田さんを担当した検察官も裁判官も次々と交代していきました。ただ、時がすぎるのを待っているかのように。
 しかし、「永遠の沈黙」に陥ることはありませんでした。私は袴田さんが生還した喜びをかみしめながら、この不条理を半世紀続けた国家の責任を強く問うべきだと考えています。
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