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■『ダムと環境の科学Ⅱ』情報

2012年03月09日 00時00分11秒 | 書籍情報庫




『ダムと環境の科学Ⅱ/ダム湖生態系と流域環境保全』、大森浩二・一柳英隆 編著、京都大学学術出版会、2011年10月1日 初版第一刷発行。

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http://www.kyoto-up.or.jp/book.php?id=1753

内容

「脱ダム」や「ダム撤去」も視野に入ってきた昨今だが、維持管理により環境への負荷を低減する道もある。湿潤変動帯に位置する日本のダム湖の遷移過程や生態系の特性を解明し、流域管理の新たな手法を提案する。プランクトン、魚類、鳥類の生息実態から物質循環、栄養カスケード効果まで、計100基以上のダムのデータにより検証した。

目次

口絵


はじめに

Part I ダム湖の物理化学的特徴

第1章 物理的,地形学的特徴〔大森浩二・山田佳裕・末次忠司・牛島 健・一柳英隆〕
1.1 自然湖沼・ダム湖の定義
1.2 自然湖沼・ダム湖の分布,地形的・物理的特性
 1.2.1 分布
 1.2.2 湖盆形態
 1.2.3 水位変動と沿岸帯形成
1.3 自然湖沼の成層化と物質循環
 1.3.1 水温・光
 1.3.2 成層期と循環期
 1.3.3 溶存酸素量
1.4 集水域と流出量
 1.4.1 集水域
 1.4.2 流入量・湖水交換速度
1.5 堆砂特性
 1.5.1 ダム湖への堆砂プロセス
 1.5.2 ダム湖における堆砂実態
 1.5.3 堆砂に伴う貯水容量の減少と生態系への影響
 1.5.4 有機物等の堆積
1.6 濁水
 1.6.1 ダム湖と自然湖沼における濁水の違い
 1.6.2 濁水の原因
 1.6.3 水位低下時の濁水
1.7 流入フロントの形成
1.8 ダム湖の普遍的な構造と日本のダム湖の特徴

第2章 水質と富栄養化〔山田佳裕・大森浩二・牛島 健〕
2.1 富栄養化と物質循環
 2.1.1 湖沼の富栄養化と遷移
 2.1.2 湖沼の物質循環
2.2 ダム湖の水質の概要
 2.2.1 ダム湖表層の水質
 2.2.2 ダム湖通過による水質の変化
2.3 自然湖沼とダム湖の違い
 2.3.1 沿岸域の攪乱
 2.3.2 ダム湖湛水直後の水質:水没農地等の影響
 2.3.3 ダム運用後の水質変化:ダム湖の遷移過程
■コラム1 モデルによるアオコ発生予測〔大森浩二〕

第3章 湿潤変動帯におけるダム湖と自然湖沼〔大森浩二〕
3.1 自然湖沼とダム湖の違い
3.2 湖沼の遷移に関する比較
 3.2.1 短期的な物質循環過程
 3.2.2 長期的な物質循環過程:ダム湖の遷移
 3.2.3 日本の流域特性とダム湖:安定大陸と湿潤変動帯
3.3 まとめと今後の展望

補遺 ダム湖生態系の時間的変化〔森下郁子〕
誕生直後のダム湖とプランクトンの大発生/特異なダム湖の生態系/壮年期のダム湖の下流での生物学的現象/老年期を迎えたダム湖/アメリカのダムの昨今

Part Ⅱ ダム湖生物群集の特徴と分類

第4章 ダム湖生物群集と生態系管理〔大森浩二〕
4.1 ダム湖生物群集を解析する意義
4.2 ダム湖生物群集とその相互作用
 4.2.1 湖沼の生物群集と生態系
 4.2.2 生物間相互作用とダム湖生態系
4.3 ダム湖生物群集と管理目標
■コラム2 生態系とは?〔大森浩二〕
■コラム3 栄養カスケード効果とバイオマニピュレーション〔大森浩二〕

第5章 ダム湖のプランクトン群集の特徴〔高村典子・中川 惠・一柳英隆・辻 彰洋〕
5.1 ダム湖におけるプランクトンの研究
5.2 ダム湖のプランクトン群集の解析
 5.2.1 既存プランクトンデータの概要
 5.2.2 植物プランクトンデータ
 5.2.3 動物プランクトンデータ
 5.2.4 環境データ
 5.2.5 解析に用いたプランクトンタクサの扱い
 5.2.6 プランクトン群集の座標付けと環境変数との対応
5.3 ダム湖プランクトンの座標付け
 5.3.1 植物プランクトン
 5.3.2 動物プランクトン(甲殻類:枝角類とカイアシ類)
 5.3.3 動物プランクトン(ワムシ類)
5.4 ダム湖のプランクトン種の分布傾度
5.5 より良きプランクトンモニタリングのために
■コラム4 植物プランクトン種群の設定〔辻 彰洋〕
■コラム5 植物プランクトン群集の計数:何を知るための計数なのか〔高村典子・中川 惠〕

第6章 魚類相からみたダム湖の特性〔森下郁子〕
6.1 ダム湖を魚類相で評価する
 6.1.1 生物の指標で環境を評価する
 6.1.2 指標生物としての魚
 6.1.3 ハビタット評価のためのHIM
6.2 ダム湖魚類相のFHIMを用いた解析
 6.2.1 ダム湖魚類相の分析方法
 6.2.2 ダム湖の魚類相の特徴とそれに影響する要因
 6.2.3 魚類相からみたダム湖の類型化
 6.2.4 ダム湖上・下流での魚類相の違い
6.3 ダム湖の魚類相と今後の課題
■コラム6 生物多様性時代のダム〔森下郁子〕

第7章 水鳥群集からみたダム湖の特徴〔山岸 哲〕
7.1 ダム湖の水鳥群集研究の意義
7.2 水鳥の調査
7.2.1 水鳥類のカウント
7.2.2 ダム湖の環境特性
7.2.3 データの解析
7.3 水鳥群集とダム湖の特性との関係
7.4 水鳥群集とダム湖の操作
7.5 おわりに

Part Ⅲ ダム湖の物質循環

第8章 リン濃度とクロロフィルa濃度の関係からみたダム湖の特徴〔大森浩二〕
8.1 湖沼におけるクロロフィルa濃度
8.2 ダム湖のクロロフィルa濃度特性解析
 8.2.1 解析対象ダム
 8.2.2 ダム湖の特性分類
8.3 ダム湖をどのように管理したらよいのか
■コラム7 水質基準〔大森浩二〕
■コラム8 日本のダム湖における植物プランクトン・動物プランクトン・魚類の関係〔一柳英隆・大森浩二〕

第9章 ダム湖における水質形成の特徴と安定同位体比を用いた富栄養化の解析〔山田佳裕〕
9.1 安定同位体比を用いて富栄養化を解析する
9.2 ダム湖における物質循環調査
 9.2.1 調査対象ダム
 9.2.2 観測および分析
9.3 ダム湖の生元素分布と物質循環
 9.3.1 元素の分布からみた富栄養化の分類と物質循環の特徴
 9.3.2 ダム湖の水質に及ぼす水文環境の影響
 9.3.3 ダム湖における炭素・窒素安定同位体比の分布
 9.3.4 魚類の炭素・窒素安定同位体比を指標とした富栄養化の解析
9.4 新たな生態系の評価軸
■コラム9 生態系の健全性〔大森浩二〕

第10章 ダム湖物質循環のモデル解析と生態系の健全性〔大森浩二〕
10.1 生態系モデルをつくる目的
10.2 ダム湖生態系モデル
 10.2.1 ダム湖生態系モデルの構成
 10.2.2 ダム湖生態系モデル計算の結果
 10.2.3 ダム湖生態系モデルの結論:ダム湖の生物群集管理と流入フロント
10.3 河川生態系モデル
 10.3.1 河川生態系モデルの構成
 10.3.2 河川生態系モデル計算の結果
 10.3.3 河川生態系モデルの結論:下流河川環境の動態
10.4 流域生態系モデルによる解析
10.5 生態系の管理目標:ダム湖生態系と下流河川生態系の健全性
 10.5.1 ダム湖生態系の健全性
 10.5.2 下流河川生態系の健全性
 10.5.3 ダム湖生態系と下流河川生態系の管理
■コラム10 河川生態系〔大森浩二〕
■コラム11 レジームシフト〔大森浩二〕

Part IV 流域環境の保全

第11章 止水域が流域環境に与える影響〔大森浩二〕
11.1 流域環境の何に注目すべきか?
11.2 自然湖沼とダム湖の比較から何が明らかとなるのか?
11.3 自然湖沼とダム湖が流域に与える影響
 11.3.1 自然湖沼とダム湖の特性比較:データの比較
 11.3.2 流域環境に与える影響
11.4 まとめ:止水域による下流環境への複合的な影響

第12章 ダム湖群と流域の健全性〔大森浩二〕
12.1 河川の分断化と生息場所の改変
12.2 ダムによる河川分断化に対する河川生物絶滅リスク評価
 12.2.1 個体群存続確率分析
 12.2.2 流域全体の河川横断工作物による種個体群分断化に対する効果
 12.2.3 個体群および流域の大きさ
 12.2.4 対象生物種
 12.2.5 ダム湖による陸封化が個体群の存続確率に与える効果
 12.2.6 簡易PVA法とその吉野川での適用例
12.3 ダム湖の富栄養化による下流河川の有機汚濁化および濁水の長期化
 12.3.1 ダム湖による周辺河川環境の改変
 12.3.2 重信川流域における解析
12.4 河川生態系の機能に対する影響
12.5 山・川・海の連携:湿潤変動帯における河川生態系の特徴と沿岸域に対する影響
12.6 ダム問題群解決のためのフローチャート
■コラム12 大型ダムにおける魚道の課題〔一柳英隆〕
■コラム13 生態系の機能と生態系サービス〔大森浩二〕

第13章 流域の健全性回復と保全策〔大森浩二〕
13.1 湿潤変動帯におけるダム湖環境問題群と環境保全
 13.1.1 環境保全目標
 13.1.2 生物群集の管理
 13.1.3 流域生態系の総合管理
13.2 保全の対策
 13.2.1 ダム湖内の保全策とモニタリング
 13.2.2 河川・流域の保全策とモニタリング
13.3 まとめ
■コラム14 ダム湖の水質対策〔一柳英隆〕
■コラム15 ダムやダム湖が流域の生物多様性を保全する?〔一柳英隆〕

おわりに
謝辞
付表
用語解説〔大森浩二・一柳英隆・山田佳裕〕
索引
編著者紹介


プロフィール
[編著者紹介]
大森 浩二(おおもり こうじ)
愛媛大学沿岸環境科学研究センター准教授
専門は,個体群生態学,群集生態学,生態系生態学.安定同位体比分析及び数理モデルによる水域生態系解析を行い,河川から沿岸にいたるまで幅広く生態系保全提案を行っている.著書に『海洋ベントスの生態学』(分担著・東海大学出版会,2003),『天草の渚にて』(分担著・東海大学出版会,2005),『環境科学と生態学のためのR統計』(監訳・共立出版,2011)など.
執筆:はじめに,第1〜4,8,10〜13章,コラム1〜3,7〜11,13,おわりに,用語解説.

一柳 英隆(いちやなぎ ひでたか)
財団法人ダム水源地環境整備センター嘱託研究員,九州大学大学院工学研究院学術研究員
専門は,動物生態学.河川に生息する動物の生活史や個体群動態,保全について取り組んでいる.著書に『ダムと環境の科学㈵ ダム下流生態系』(共著・京都大学学術出版会,2009),『河川環境の指標生物学』(分担著・北隆館,2010)など.
執筆:第1,5章,コラム8,12,14,15,用語解説.


[著者紹介](五十音順)
牛島  健(うしじま けん)
北海道大学大学院工学研究院特任助教
専門は,環境工学,環境水理学,環境システム.ダム貯水池で発生するアオコ及びカビ臭の実務的対策,発展途上国向けサニテーションシステムとその導入戦略について研究している.
執筆:第1,2章.

末次 忠司(すえつぎ ただし)
山梨大学大学院医学工学総合研究部社会システム工学系教授
専門は,河川防災,減災,応用生態工学.管理論的対応のため,氾濫シミュレータにより住民を避難誘導するシステム構築を行っている.著書に『図解雑学 河川の科学』(ナツメ社,2005),『河川の減災マニュアル』(技報堂出版,2009),『河川技術ハンドブック』(鹿島出版会,2010)など.
執筆:第1章.

高村 典子(たかむら のりこ)
独立行政法人国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター センター長,東京大学大学院連携併任教授
専門は,陸水生態学.陸水生態系における生物多様性損失の定量的評価に関する研究に取り組んでいる.著書に『生態系再生の新しい視点:湖沼からの提案』(編著・共立出版,2009),『なぜ地球の生き物を守るのか』(分担著・文一総合出版,2010),『ダム湖・ダム河川の生態系と管理:日本における特性・動態・評価』(分担著・名古屋大学出版会,2010)など.
執筆:第5章,コラム5.

辻  彰洋(つじ あきひろ)
国立科学博物館植物研究部研究主幹
専門は,微細藻類,特に珪藻類の分類および生態.日本の湖沼に生息する固有種を追いかけている.著書に『琵琶湖の中心目珪藻』(共著・滋賀県琵琶湖研究所,2001),『淡水珪藻生態図鑑』(共著・内田老鶴圃,2005)など.
執筆:第5章,コラム4.

中川  惠(なかがわ めぐみ)
独立行政法人国立環境研究所 高度技能専門員
専門は,陸水生態学.1996年より霞ヶ浦の生物モニタリングのうちプランクトンを担当している.2011年よりGEMS / Water Japanの窓口を担当している.
執筆:第5章,コラム5.

森下 郁子(もりした いくこ)
社団法人淡水生物研究所所長
専門は,指標生物学,比較河川学.日本だけでなく世界の主な河川を踏査し比較河川学を提唱する.ダム湖に関しても1955年からの長きにわたり新しくできる水域の変遷を調べて判ったことを発表してきた.著書に『川の健康診断』(NHKブックス,1977年),『ダム湖の生態学』(山海堂,1983年),『川のHの条件』(共著・山海堂,2000年)など.
執筆:補遺,第6章,コラム6.

山岸  哲(やまぎし さとし)
山階鳥類研究所名誉所長,新潟大学朱鷺自然再生学研究センター長,兵庫県立コウノトリの郷公園長
専門は,行動生態学,保全鳥類学.著書に『保全鳥類学』(監修・京都大学学術出版会,2007),『日本の希少鳥類を守る』(編著・京都大学学術出版会,2009)など.
執筆:第7章.

山田 佳裕(やまだ よしひろ)
香川大学農学部准教授
専門は陸水学,生物地球化学.貯水池及びその流域における環境容量の算出手法について研究している.著書に『岩波講座 地球環境学4 水・物質循環系の変化』(分担著・岩波書店,1999),『流域環境学:流域ガバナンスの理論と実践』(分担著・京都大学学術出版会,2009)など.
執筆:第1,2,9章,用語解説.
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