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●飯塚事件は《足利事件に続いて「DNA冤罪=DNA型鑑定を悪用した冤罪」が発覚するのを恐れた検察による口封じ殺人ではなかったか……》

2021年12月06日 00時00分20秒 | Weblog

―――――― 《2次再審請求で問い直される「T供述」の信用性 岩田弁護士は「Kさんが目撃したのが犯人であれば急転直下、真犯人の存在とともに久間さんの無実もはっきりする」と述べ、再審請求でK証言の果たす役割を解説した》



 (2021年09月26日[日])
山口正紀さんによる、レイバーネットの記事【検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪〜「飯塚事件」を問う】(http://www.labornetjp.org/news/2021/0911yama)。

 《「飯塚事件」をご存知だろうか。1992年、福岡県飯塚市で起きた2女児殺害事件で逮捕され、無実を訴えていた久間三千年(くま・みちとし)さんが死刑判決を受け、2008年に死刑が執行された(当時70歳)。その第2次再審請求の支援を訴える「飯塚事件の再審を求める東京集会」が9月4日、オンラインで開かれた。この事件で有罪判決の根拠とされたのが科警研(警察庁科学警察研究所)によるDNA型鑑定だった。一方、同じ時期・同じ手法で科警研が行なった「足利事件」のDNA型鑑定が誤りだったことが明らかになり、再審無罪となった。実は、この足利事件で「DNA型再鑑定へ」と報道されたのが08年10月上旬その10日余り後、突然再審準備中の久間さんの死刑が執行された。それを知った時、私は恐ろしい疑惑に駆られた。この死刑執行は、足利事件に続いて「DNA冤罪=DNA型鑑定を悪用した冤罪が発覚するのを恐れた検察による口封じ殺人ではなかったか……。(山口正紀)》

 《検察による口封じ殺人》《国家による殺人》…。布川事件冤罪被害者桜井昌司さん《無惨に殺された人の無念を晴らす殺したのは誰か検察庁です》と。当時の首相は麻生太郎氏、飯塚を含む福岡8区の出身。その麻生太郎内閣の法務大臣は森英介氏。2008年10月16日、足利事件のDNA再鑑定で、直ぐに、久間さんの死刑執行は停止されるべきだった ――― しかし、わずか10日ほど後の10月28日、死刑は執行された…。首相や法相、検察・警察の関係者、あまりに冷酷だ…。関わった裁判官も。《各裁判所は、弁護側が指摘したさまざまな疑問・矛盾を無視。結局、科警研の「MCT118型鑑定」によるDNA型鑑定をほぼ唯一の根拠とした死刑判決が確定した》。

   『●贖罪:足利事件再鑑定から12日後の2008年10月28日朝、
                飯塚事件久間三千年元死刑囚の死刑が執行』 
 
    「2008年10月16日 足利事件 再鑑定へ
     2008年10月28日 飯塚事件 死刑執行
     2009年 4月20日 足利事件 再鑑定で一致せず
     ……そう、足利事件で誤鑑定であることが分かった時には、既に、
     久間さんの死刑が執行されていた。2008年10月16日
     DNA型鑑定に疑問が生じた時点で、死刑執行は停止されておくべき
     だったのに…。なぜ、急いで死刑執行したのか?、大変に大きな疑問である」

   『●NNNドキュメント’13: 
      『死刑執行は正しかったのか 飯塚事件 “切りとられた証拠”』
   『●①飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 
         廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン
   『●②飯塚事件冤罪者を死刑執行:「死刑存置か? 
         廃止か?」…話題にも上らない、死刑賛成派8割なニッポン
   『●飯塚事件冤罪者を国家が死刑執行、「この重すぎる現実」:
                    無惨…「死刑執行で冤罪を隠蔽」
    「リテラの伊勢崎馨さんによる記事【飯塚事件、なぜ再審を行わない?
     DNA鑑定の捏造、警察による見込み捜査の疑いも浮上…やっぱり冤罪だ!】」
    《冤罪が強く疑われながら死刑が執行されてしまったのが、1992年に
     福岡県で起こった「飯塚事件」である。そして、この飯塚事件にスポットをあて、
     冤罪疑惑に切り込んだドキュメンタリー番組が放送され、ネット上で話題を
     呼んだ。3日深夜に日本テレビで放送された
     『死刑執行は正しかったのかⅡ 飯塚事件 冤罪を訴える妻』だ》

   『●飯塚事件の闇…2008年10月16日足利事件の再鑑定で
           死刑停止されるべきが、10月28日に死刑執行
   『●飯塚事件…《しかしもっと恐ろしいのは、そんな誤りを認めず、
     国家による殺人を無かった事にする国家の強引さだろう》(清水潔さん)

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http://www.labornetjp.org/news/2021/0911yama

検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪―「飯塚事件の再審を求める東京集会」(オンライン)から(上)

●山口正紀の「言いたいことは山ほどある」第14回(2021/9/11 不定期コラム)
検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪――「飯塚事件の再審を求める東京集会」(オンライン)から(上)

     (*2017年NNNドキュメントより)

 「飯塚事件」をご存知だろうか。1992年、福岡県飯塚市で起きた2女児殺害事件で逮捕され、無実を訴えていた久間三千年(くま・みちとし)さんが死刑判決を受け、2008年に死刑が執行された(当時70歳)。その第2次再審請求の支援を訴える「飯塚事件の再審を求める東京集会」が9月4日、オンラインで開かれた。この事件で有罪判決の根拠とされたのが科警研(警察庁科学警察研究所)によるDNA型鑑定だった。一方、同じ時期・同じ手法で科警研が行なった「足利事件のDNA型鑑定が誤りだったことが明らかになり、再審無罪となった。実は、この足利事件で「DNA型再鑑定へ」と報道されたのが08年10月上旬その10日余り後、突然再審準備中の久間さんの死刑が執行された。それを知った時、私は恐ろしい疑惑に駆られた。この死刑執行は、足利事件に続いて「DNA冤罪=DNA型鑑定を悪用した冤罪が発覚するのを恐れた検察による口封じ殺人ではなかったか……。(以下、事件・裁判の経過とオンライン集会の模様を3回にわたって報告する)


●疑惑の死刑執行1年後、妻が再審請求

 死刑執行からちょうど1年後の09年10月28日、久間さんの妻が新たなDNA型鑑定などを新証拠(再審を開始すべき理由)として、福岡地裁に再審請求を申し立てた。

 しかし、福岡地裁は14年、科警研が行なったDNA型鑑定を「(久間さんの)犯人性を基礎づける事実とすることはできない」と認めたものの、「DNA型鑑定以外の状況証拠による確定判決は揺るがない」として、再審請求を棄却した。

 再審弁護団は即時抗告したが、福岡高裁は18年、即時抗告を棄却。弁護団は特別抗告したが、最高裁第1小法廷は今年4月21日、特別抗告も棄却した。

 このため、久間さんの妻と再審弁護団は7月9日、確定判決の根拠とされた目撃証言を否定する新たな目撃証言などを理由に、2度目の再審請求を福岡地裁に申し立てた。

 オンライン集会は、この第2次再審請求の意義・内容を報告し、支援の輪を広げていこうと企画され、飯塚事件再審の実現に向けて尽力してきた九州大学の大出良知・名誉教授、再審法改正をめざす市民の会の木谷明代表(元裁判官)、布川事件の冤罪被害者・桜井昌司さんら幅広い支援者たちの呼びかけで開催された。

 集会では、弁護団から第1次再審請求を棄却した最高裁決定と第1次請求の総括、第2次再審請求の経過と内容が詳しく報告され、再審請求人である久間さんの妻のメッセージが読み上げられた。また、8月に国家賠償請求訴訟(国賠)の控訴審で勝訴したばかりの桜井さんが再審実現に向けて連帯のアピールを行い、「死刑執行は口封じ何というひどい国だろう。久間さんの無念は必ず晴らせると確信しています」と訴えた。

 集会について報告する前に、第1次請求に対する最高裁決定、第2次再審請求書、弁護団が編集したブックレット『死刑執行された冤罪・飯塚事件』(2017年・現代人文社)などをもとに、まず事件と裁判、再審請求審の経過を紹介しておこう。


●福岡県警は事件直後から久間さんを犯人視し、「見込み捜査」

 92年2月20日、飯塚市内で登校途中の小学校1年生女児2人が行方不明になり、翌日、約20キロ離れた福岡県甘木市(現・朝倉市)の山中で遺体が発見された。死因は扼殺、2人の膣内などから微量の血液が検出された。

 福岡県警は、かつて近くで起きた同種の事件で捜査対象にしたことのある久間さんを事件直後からマークし、その動静を監視(見込み捜査)。3月には遺留品発見現場付近で「ダブルタイヤのワンボックスカーを目撃した」とのT証人の調書を作成した。久間さんは、この「目撃証言」に合致する車を持っていた。

 続いて県警は久間さんに毛髪を任意提出させ、遺体周辺から採取された血液とともに科警研に鑑定を依頼。科警研は6月、〈血液型は、犯人のものとみられる血液、久間ともにB型。DNA型は「MCT118型鑑定」の結果、犯人のものとみられる型と久間が提出した毛髪から採取した型が一致した〉との鑑定書を出した。

 県警は7月、その「追試」として帝京大学の石山昱夫(いくお)教授にDNA型鑑定を依頼した。石山教授は「ミトコンドリア法」という当時、最も鋭敏な検査とされた方法で検査。約1年半後の94年1月に出された石山教授の鑑定書は、「久間さんのDNA型は検出されず被害者以外の第三者(犯人と思われる)の型が検出された」と結論した。

 それでも県警は94年9月23日、久間さんを死体遺棄容疑で逮捕した。
 翌日の『朝日新聞』夕刊(東京本社版)は、社会面トップ見開きで《56歳無職男性を逮捕/小1女児2人殺害事件/遺体運び捨てた容疑/DNAと繊維鑑定が決め手》と大々的に報道、久間さんの経歴や一問一答を掲載した。『読売新聞』も、社会面4段で《無職の56歳男性逮捕/遺棄容疑/殺人容疑でも追及》と大きく報じた。

 『朝日』はその後も、続報で《ワゴン車入念に清掃/容疑者、売却直前に》《容疑者に似た男目撃/遺留品の現場、車で去る》などと犯人視の報道を続けた。

 久間さんは66日間に及んだ取調べに一貫して否認した。県警は10月14日、久間さんを死体遺棄罪で起訴し、殺人容疑で再逮捕した。だが、その後も「自白」は一切なかった

 95年2月20日、福岡地裁で初公判が開かれ、久間さんは起訴内容を全面否認。その後も一貫して無実を訴え続けた。しかし99年9月29日、福岡地裁は久間さんに死刑判決を言い渡した。判決は「被告人の犯行との結びつきを証明する直接証拠がなく、個々の状況事実の単独では被告人を犯人と断定することが出来ない」としながら、概略次のような「状況事実」を列挙し、有罪と認定した。

 ①被告人の車のシートから検出された血痕と被害者の1人の血液型が一致する ②遺体から検出された血液型、DNA型が被告人と一致する ③現場付近で目撃された車と被告人の車種が一致する ④被害者の着衣に付着した繊維と車のシートの繊維が同一 ⑤被告人には土地鑑があり、アリバイも不明。

 私が参加する「人権と報道・連絡会」では2010年1月の定例会で、弁護団の徳田靖之弁護士から事件と裁判の経過について詳細な報告を受けた。その中で徳田弁護士は、一審判決が有罪の根拠とした「状況事実」について、次のように問題点を指摘した。

 「①車のシートの血液型が被害者と一致したというが、血液型だけでそれを被害者の血痕と断定することはできない。③④は車種が同じというだけの話。⑤は全くの間接証拠に過ぎない。③の目撃者が目撃した人物は『年齢30~40歳。髪は長めで七・三分け』ということだったが、久間さんは当時55歳、髪はオールバックだった」

 結局、一審判決は「②科警研によるDNA型鑑定に依拠して有罪と認定したことになる。だが、そのDNA型鑑定をめぐっても重大な矛盾があった。実は、科警研は「MCT118型鑑定」のほかに、独自に「HLADQα型」検査も行っていたが、この検査では被害者の血液から久間さんの型は検出されなかった。そして、石山教授の「ミトコンドリア法」による鑑定も不一致だった。つまり、県警は複数のDNA型鑑定を行ったものの、「MCT118型鑑定」以外はすべて「久間=犯人説を否定していたことになる。

 久間さんはこの一審判決に対して直ちに控訴したが、2001年10月10日、福岡高裁は控訴を棄却。さらに06年9月8日、最高裁は上告を棄却した。各裁判所は、弁護側が指摘したさまざまな疑問・矛盾を無視。結局、科警研の「MCT118型鑑定」によるDNA型鑑定をほぼ唯一の根拠とした死刑判決が確定した。


●「足利事件のDNA型再鑑定へ」報道の直後に死刑執行

 その2年後、状況が大きく動いた。同じ科警研鑑定(「MCT118型鑑定」)を証拠に有罪とされた足利事件について、08年10月、東京高裁が再鑑定する方針を決めた

 足利事件とは、1990年5月、栃木県足利市のパチンコ店で4歳女児が行方不明になり、渡良瀬川河川敷で遺体が発見された事件だ。栃木県警は91年12月、科警研のDNA型鑑定を証拠として保育園の送迎バス運転手だった菅家利和さんを逮捕。菅家さんは起訴され、裁判途中から無実を訴えたが、無期懲役の有罪判決が確定、服役させられていた。

 この東京高裁の再鑑定方針について、新聞各紙は、《高裁、DNA再鑑定へ》(10月17日付『朝日』)、《DNAを再鑑定へ》(18日付『毎日新聞』)と、全国版で大きく報じた。

 これは当時、再審請求を準備していた久間さんに大きな希望の光となったはずだ。ところが、この報道から10日後の10月28日、法務省は突然、久間さんの死刑を執行した。

 死刑執行を命じた法務省が、足利事件の再鑑定報道を知らなかったはずはない。森英介法相は「慎重かつ適正な検討を加えた」と述べた。いったいどんな「検討」をしたのか

 それから約半年後の09年5月、足利事件のDNA型鑑定結果が出た。弁護側・検察側が推薦した鑑定人2人が、いずれも「STR法」による鑑定で「犯人と菅家さんのDNA型は一致しない」と結論した。

 弁護側推薦の本田克也・筑波大教授は、「MCT118型」による追試鑑定も行った。結果は、菅家さんが「18―29型」、犯人は「18―24型」。どちらも「16―26型」としていた科警研の鑑定結果は、精度の低い「MCT118法」においても完全な誤りだった

 飯塚事件弁護団は、この本田教授に飯塚事件の再鑑定を依頼した。ところが、飯塚事件では捜査段階で採取された鑑定試料を科警研が全量消費していた」という。このため、本田教授は科警研鑑定のデータ・写真を解析し、再鑑定した。

 その結果は、「科警研鑑定はDNA型も血液型も誤りという衝撃的な内容だった。血液型は、犯人がAB型、久間さんはB型。「MCT118型」によるDNA型は、犯人が「16―25型」、久間さんは「18―30型」だった。科警研鑑定は、犯人・久間さんとも「16―26型」としていたが、それはすべて間違っていた、と本田鑑定は指摘した。

 遺族と弁護団は死刑執行1年後の10月28日、本田鑑定を新証拠に再審を請求した。だがメディアの反応は鈍く、全国紙各紙が社会面3~4段で伝えただけだった。その背景には、逮捕時にメディアが繰り広げた犯人視報道がある。徳田弁護士は「人権と報道・連絡会」で、「九州では東京以上にひどい犯人視報道が行われ、みんな久間さんを殺人鬼と信じ込まされました」と話した。メディアも〈無実の死刑〉に加担していた。(続く)

Last modified on 2021-09-11 22:51:36
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http://www.labornetjp.org/news/2021/0913yama

●山口正紀の「言いたいことは山ほどある」(2021/9/13不定期コラム)
検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪――「飯塚事件の再審を求める東京集会」(オンライン)から(中)

 久間三千年(くま・みちとし)さんの死刑執行は、「DNA冤罪」が露顕するのを恐れた検察の「口封じ殺人」ではなかったか――こんな恐るべき疑惑をはらんだ「飯塚事件」。その再審を目指して開かれたオンライン集会(9月4日)では、最高裁「特別抗告棄却」決定(4月21日)の問題点、久間さんの妻と再審弁護団が福岡地裁に申し立てた第2次再審請求(7月9日)の内容が詳しく報告された。一連の報告は、①科警研DNA型鑑定のデータ改ざん有罪判決の根拠とされたT目撃証言の不自然さ――など、死刑判決の「証拠」が福岡県警によって改ざん・捏造されたものであることを明らかにした。

     (*写真=徳田靖之弁護士(NNNドキュメントより))


●「もっと早く再審請求していれば」……

 集会ではまず、刑事裁判から弁護活動に取り組んできた徳田靖之弁護士が、第1次再審請求の経過と請求棄却決定の問題点を報告、最初に飯塚事件の3つの特徴を挙げた。

 第1は、死刑が執行されてしまった事件であること。執行は08年10月28日だったが、徳田弁護士は少し前に久間さんに面会し、再審請求について話し合っていた。「あの時もう少し早く再審請求していれば、執行はなかったのではないか。弁護士の怠慢で執行を許してしまった。その過ちを背負いながら再審に取り組んできました」と徳田弁護士は悔やむ。

 一方、死刑執行された事件であることは、裁判官にはハードルの高さになり、慎重な審理を求められる。もし再審無罪になれば、国家による過った殺人を認めることになる。「それが、裁判所が再審開始を拒み続ける理由にもなります」と徳田弁護士。

 第2は、真犯人を特定できる証拠の血痕がありながら、捜査段階で全量消費されてしまったこと。被害者の膣内などから採取された血痕・体液は「100回鑑定ができるぐらい十分な量があった」(石山昱夫・帝京大学教授)のに、科警研の技官たちは3回の鑑定で全部使い切ってしまった」という。しかも、「使い切った」理由も明らかにされていない。徳田弁護士は「これが、無実を証明するうえで大きなハンデになっています」と述べた。

 だが、試料の血痕はほんとうに「全量消費」されたのか、そんな疑問もある。

 第3は、任意取調べを受けた段階から死刑執行の日まで、久間さんが終始一貫無実を訴え、完全否認を貫いた事件であること。わが国ではこれまで、免田事件など再審で死刑囚が無罪になった事件はあるが、その多くは何らかの形で「自白」が取られており、その任意性、信用性が否定されて再審開始の道が開かれてきた。

 本件では、こうした自白が全く存在せず、直接的証拠もない。確定判決も、「間接事実の総合評価によって犯人性を判断するしかない」とした。それだけに、裁判では有罪認定の中核となった「状況証拠」の証拠能力、信用性が徹底的に吟味されなければならない。弁護団は再審請求で、確定判決の証拠構造の中核が、①科警研のDNA型鑑定②遺留品発見現場でのT目撃証言であるとし、この2つに証拠価値がないことを立証した。


●DNA型鑑定、目撃証言のでたらめさを立証した新証拠

 福岡地裁に申し立てた第1次再審請求(09年10月)で、弁護団は2つの新証拠を提出した。1つは、本田克也・筑波大教授によるDNA型鑑定・血液型鑑定に関する法医学鑑定書。2つ目は、厳島行雄・日本大学教授によるT目撃証言に関する心理学鑑定書だ。本田鑑定は、科警研による「MCT118型」鑑定の証拠能力を全面的に否定した。鑑定書によると、「MCT118型」によるDNA型について、科警研鑑定は犯人・久間さんとも「16―26型」としていたが、久間さんのDNA型は「18-30型」であり、明らかに誤っていた。血液型についても「被害者はO型とA型であり、犯人はAB型。B型の久間さんは犯人ではありえない」と結論した。久間さんの無実を物語る衝撃的な鑑定だ

 再審請求審では、科警研がDNA型鑑定の際に撮影したネガフィルムが証拠開示され、本田教授が解析した結果、科警研鑑定書に添付された写真が改ざんされていたことも明るみに出た。ネガフィルムには確定判決で証拠採用された写真より広い範囲が写っていた。そのネガの写真に焼き付けられていない部分に、「久間さんでも被害者のものでもないDNA型」が確認された。これは真犯人のもの以外に考えられない。

 科警研はそれを隠すため、意図的に写真を切断して焼き付けたと考えるほかない。徳田弁護士は「ネガフィルムは科警研による証拠改ざんの痕跡を示す証拠」と指摘した。

 厳島鑑定は、T目撃証言が警察官に誘導されたものであると断定した。T目撃証言とは、女児2人が行方不明になって数時間後、〈遺留品発見現場の近くの山道で久間さんの車と特徴が同じ紺色のワンボックスカーを見た〉という内容だ。厳島教授は現場で再現実験を行い、このT証言の不自然さを指摘した。

 事件発生(92年2月20日)から2週間余、3月9日に作られた供述調書は、T証人が「目撃した」という不審車と不審人物について、極めて詳細に供述している。

 T供述は不審車の特徴として、①ナンバーは不明②標準タイプのワゴン車③メーカーはトヨタやニッサンではない④やや古い型⑤車体は紺色⑥車体にはラインがなかった⑦後部タイヤはダブルタイヤ⑧後輪のホイルキャップの中に黒いラインがあった⑨窓ガラスは黒く車内は見えなかった――という9項目を挙げた。

 不審人物の特徴としては、①頭の前の方が禿げていた②髪は長めで分けていた③上衣は毛糸で④胸はボタン式⑤薄茶色の⑥チョッキで⑦チョッキの下は白いカッターの長そでシャツを着ていた⑧年齢は30~40歳だった――という8項目を挙げた。

 しかし、T証人がこの不審車を目撃したという現場の「八丁峠」はカーブが続く山道。T証人は坂道の下りカーブを時速20~30キロで運転中、左カーブで対向車線に停まっていた「不審なワゴン車」を見た、としている。

 はたして、山道の下りカーブを運転中に、前記のような詳細な「目撃」が可能なのか。車がすれ違うのに要するのはほんの数秒。しかも、「後輪がダブルタイヤだった」というのは、下りカーブで後ろを振り返って見る危険を冒さなければ知り得ない情報だ。

 厳島教授は、現場での走行再現実験の結果に基づき、「目撃はごく短時間であり、対象物の詳しい形状まで記憶することは不可能T目撃証言は作られた供述」と断言した。

 さらに、再審請求審で証拠開示された捜査報告書により、T証言が捜査員の誘導によるものであることを示す事実が明らかになった。実は供述調書が取られる2日前の3月7日、捜査員が久間さん宅を下見して車を調べ、「車体にはボディラインなし」などと報告していた。この捜査員が2日後、T証人の聴取を担当し、調書を作成していたのだ。

 当時、久間さんが乗っていたのは、マツダの「ウエストコースト」というワゴン車。この車種には本来、車体に特徴的なラインが付けられていたが、久間さんはラインを消して乗っていた。そのことを知らなければ、わざわざ「トヨタやニッサンではない」「ラインがなかったなどと供述するわけがない。詳細なT証言は、捜査員による完全な誘導だった


●再審申し立てに判断を回避した最高裁

 確定死刑判決が有罪認定の根拠とした2つの柱=DNA型鑑定とT目撃証言は、弁護団が提出した2つの新証拠と再審請求審で開示された証拠により、完全に破綻した。

 ところが、2014年3月31日付で福岡地裁が出した決定は「請求棄却」だった。

 地裁決定は、科警研のDNA型鑑定については「証明力の評価に変化が生じた」として事実上、証明力を否定した。しかし、T目撃証言については、「厳島鑑定は供述の信用性を揺るがすものではない」「新証拠によって旧証拠の証明力や信用性が減殺されることはない」などとして、証拠能力を認めた。

 山道の下り坂カーブを走行中、わずか数秒間すれ違っただけで、運転者の髪形や詳しい服装から、「車体にはラインがなく、後輪はダブルタイヤだった」などという車の特徴までつかみ記憶していた、などという荒唐無稽な「証言」を、裁判官たちは「信用できる」と言うのだ。そんな裁判官たちの判断を私たちは「信用できる」だろうか。

 そのうえで地裁決定は、「DNA型鑑定以外の状況証拠を総合すれば、事件本人(注;久間さん)が犯人であることについて、合理的な疑いを超えた高度の立証がされていることに変わりはなく、新証拠はいずれも確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせるものではない」と結論付け、再審請求を棄却した。

 さらに福岡高裁は18年2月6日、弁護団の即時抗告を棄却、最高裁も今年4月21日、「記録を精査しても、原決定(再審請求棄却決定)を取り消すべき事由は見当たらない」として、特別抗告を棄却する決定を行なった。

 弁護団は特別抗告で、2つの新証拠をめぐる論点だけでなく、高裁決定の憲法違反も指摘していた。福岡高裁の再審請求審では、裁判官3人のうち1人が、刑事裁判で死刑判決を出した一審・福岡地裁の審理に主任裁判官として参加していた。

 かつて自分が加わり死刑判決を出した裁判の再審請求に対して、ニュートラルな状態で審理に臨むことができるのか。裁判官は、もし再審請求を認めれば、自分が「無実の人に対する死刑」を命じた事実に直面することになる

 弁護団は特別抗告で、「これは憲法37条が定める〈公平な裁判を受ける権利〉に反する」と指摘し、憲法違反を主張したが、最高裁決定はこれについて判断を示さなかった

 この決定について、徳田弁護士は「決定文はわずか6ページ。ほとんど何も書いていないに等しく、これでは分析のしようもない。特別抗告から3年も経っており、最高裁は特別抗告を正面から受けとめて真摯に検討していると思っていたのに、弁護団の申立てに対してほとんど判断を回避した」と憤りをこめて批判した。

 それでも徳田弁護士は、第1次再審請求の到達点として、次の2点を挙げた。

 第1に、DNA型鑑定で久間さんの型が全く検出されなかったことが明らかになり、有罪判決の証拠の主たる柱の1つが破綻したこと。第2に、T目撃証言が捜査員に誘導されたものであることが明らかになり、その信用性が徹底的に揺らいだこと。

 それに、第2次再審請求では、警察が握りつぶしてきた真犯人につながる新たな目撃証言が加わる。この強力な新証拠を前に、裁判所は、司法が犯した「冤罪死刑」という取り返しのつかない過ちに目を逸らし続けることができるだろうか。(続く)

Last modified on 2021-09-15 11:03:30
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http://www.labornetjp.org/news/2021/0915yama

●山口正紀の「言いたいことは山ほどある」(2021/9/15不定期コラム)
検察による口封じ殺人? 死刑執行された冤罪――「飯塚事件の再審を求める東京集会」(オンライン)から(下)

 久間三千年(くま・みちとし)さんの死刑執行は、「口封じのための国家殺人」ではなかったか――「飯塚事件」の再審実現を目指して開かれたオンライン集会(9月4日)で、この事件の捜査をめぐり、「真犯人の目撃証言無視という新たな疑惑が指摘された。弁護団は7月に申し立てた第2次再審請求で「事件当日、被害少女2人と真犯人と思われる人物を目撃した」というKさんの証言を新証拠として提出した。驚くべきことにKさんは事件直後、犯人に直結するこの目撃を警察に通報したのに、福岡県警はこの決定的証言を調書も取らずに握りつぶしていた。事件発生から29年ぶりに浮上した真犯人の影。久間さんに対する見込み捜査に突っ走っていた警察は、「冤罪による死刑」だけでなく、みすみす「真犯人を逃がす」というもう一つの重大な罪も犯していた疑いが濃厚になった。


●「今にも泣きだしそうだった少女の顔」――鮮烈な29年前の記憶

 集会では、徳田靖之弁護士に続き、再審弁護団主任弁護人の岩田務弁護士が第2次再審請求の新証拠と第2次再審請求の課題について報告した。

 新証拠は、福岡県内に住む男性Kさん(72歳)が、「事件当日の1992年2月20日午前11時ごろ、飯塚市内の八木山バイパスを走行中、後部座席に小学生の女児2人を載せたワンボックスタイプの軽自動車を目撃した」という証言だ。

 その現場は、女児2人が行方不明になった場所に近接した場所。Kさんが弁護士に行なった陳述によると、問題の軽自動車は制限を下回る時速40キロ以下でノロノロ運転していた。その後ろについてイライラしていたKさんは、登坂車線で軽自動車を追い越す際、「こんな迷惑な運転をするのはどんな奴か」と思って運転席を見た。すると、「自分より少し若いくらい(30~40歳)の色白で坊主頭、細身の男性」が運転しており、後部座席には「オカッパ頭でランドセルを背負った女の子」が乗っていた。また、後部座席には「もう1人、女の子が横になっていて、その横にもランドセルがあった」――。

 しかし、Kさんはなぜ、そのような30年近くも前の古い記憶をはっきり覚えていたのか。そしてなぜ、今ごろになって「証言」することにしたのか。当然、検察側は突っ込んでくる。これについて岩田弁護士は、①記銘②保持③想起――の3点から説明した。

①〈記銘〉=なぜ記憶に残ったか。理由は、非常に強い印象を受けた出来事であったこと。後部座席に乗っていた女の子は「うらめしそうな」「うらさびしそうな」「今にも泣きだしそうな」表情をしていた。その異常な表情とともに、平日昼前の時間帯にランドセルを背負った子どもが車に乗っているのを不審に感じ、「誘拐ではないか」という思いを抱いた。さらにその夜、「飯塚市内で少女2人が行方不明」というニュースが流れ、「自分が見たのは行方不明の少女たちではないか」と思い、翌朝110番通報して目撃内容を伝えた

②〈保持〉=なぜ記憶を保ち続けたか。110番通報の1週間後、刑事が来て事情聴取を受け、目撃内容を詳細に説明した。ところが、刑事はメモをしただけで供述調書は取らず、その後何の連絡もしてこなかった。しかし、自分が目撃したのは被害少女と真犯人だと確信し、3年後の第1回公判を傍聴して直接確認した。すると、被告人は自分が目撃したのと全くの別人で驚いた。ただ、「DNA型鑑定が一致した」という検察官の冒頭陳述を聞き、自分が目撃した車は事件に関係がなかったのか、と思い直した。

③〈想起〉=なぜ今回、その目撃を思い出したのか。その後も事件について関心を持ち続けていた。2019年、『西日本新聞』が飯塚事件に関する特集記事を連載した。その中に、「DNA型鑑定が崩れた」という記事があり、「それなら、やはり自分が見たのは犯人だったに違いない」と思い、『西日本新聞』に連絡した。それが記事になり、徳田弁護から連絡があって、新証拠となる詳細な陳述書が作成された。その中で、弁護士にこう訴えた――「あの女の子の恨めしそうな表情が28年間、私を離してくれなかった」。


●第2次再審請求で問い直される「T供述」の信用性

 岩田弁護士は「Kさんが目撃したのが犯人であれば急転直下、真犯人の存在とともに久間さんの無実もはっきりする」と述べ、再審請求でK証言の果たす役割を解説した。

 K証言は、第1次再審請求の地裁決定がほぼ唯一の「証拠」とした「T供述」と真っ向から対立する。事件の2週間余り後、「不審なワゴン車を見た」と供述したT証言と、事件翌朝、「少女2人が乗った軽自動車を見た」と通報したK証言。2つの証言の信用性は表裏一体であり、K証言の信用性が強まれば、T供述の信用性は弱まる。

 しかも、T供述は犯行(被害少女)を直接目撃したものではなく、間接証拠に過ぎない。しかし、K証言は「被害少女2人を目撃した」というもので、直接証拠となる。

 この重要な手掛かりとなる目撃通報を受けた福岡県警は、直ちに捜査員を出して供述調書を取るべきなのに、1週間後に刑事が来てメモしただけで放置した。

 その一方、警察は久間さんに対する見込み捜査に走り、「久間=犯人」に合致する証拠集めに躍起になった。そうして作られたのが、「ワゴン車の詳しすぎる特徴」をはじめ、捜査員に誘導された痕跡が顕著なT供述だった。

 岩田弁護士は「第2次再審請求では、T供述の信用性が攻防の中心になる。全部目撃するのは不可能なほど膨大な情報を『目撃した』とするT供述を、裁判官は『誘導はなく、信用できる」と評価した。これをKさんの目撃証言を中心に、いろんな方向から崩していく。それが第2次再審請求の課題です」と報告を締めくくった。


●「久間三千年は無実です」――妻の悲痛なメッセージ

 岩田弁護士の報告に続き、再審請求人である久間さんの妻が集会に寄せた次のようなメッセージが紹介された。

 「久間三千年は無実です。私たち家族の幸せは、平凡な生活の中にあり、夫の優しさ思いやりは、日々の生活の中に満ちあふれていました。夫は一方的に犯人扱いされ逮捕、起訴され裁判にかけられました夫は終始一貫して無実を訴え続けてきました
 私たち家族は、夫を疑ったこともなく、理不尽な仕打ちを受けながらも夫が生かされていることだけを、心のよりどころとして、耐え続けてきました。突然の死刑執行に目の前が真っ暗になり何も考えられなく、途方に暮れました。
 無実を訴え続ける夫に殺人の汚名を着せて、命まで奪う国の法律があるとは、思ってもみませんでした。
 無実を訴え続け命まで奪われた夫の無念を晴らし名誉を回復するために再審請求をしましたが、最高裁での特別抗告も棄却されました。
 令和3年7月9日に、第2次再審請求をしました。
 どうしてなのでしょうか。終始一貫して無実を訴えている者の再審の審理は、無理なのでしょうか。すぐにでも裁判を受ける権利は平等にあるべきです。
 無茶なことを言っているのではなく、裁判が間違っているからやり直して欲しいと願っているだけです。公平な権利さえも与えられないのでしょうか。
 裁判所において、刑事裁判の目的は、「無罪の発見である」、被告人の人権保障にある。
 「百人の真犯人を逃がしても一人の無辜(むこ)を罰してはならない」とする考え方。
 刑事裁判は、憲法に保障されている人権を守るためにあると、ある書籍に書いてありました。このことを原点として裁判に臨んでいる裁判官もいらっしゃいます。
 検察官の職務についても「公益の代表者」と義務づけ、真相究明と同時に被告人の後見的役割を担う、とあり、法的用語や条文など解りにくいところは多いのですが、再審を願っているだけなのです。
 どうか、皆様方のお力添えを宜しくお願い致します。いつ、どんな時でも一人の人間が公平公正な裁きを受けられることを心から望んでいます。
 令和3年9月4日」


●「久間さんの無念を晴らす」――桜井昌司さんの連帯アピール

 続いて、布川事件冤罪被害者桜井昌司さんが連帯のアピールを行なった 「話を聞くたび、ひどい事件だと思います。東の足利、西の飯塚と言われ、DNA型鑑定で有罪にされた。しかし、久間さんは死刑が執行された何という国家だろうと思う。警察はなぜK証人にきちんと聴取しなかったのか。別の事件で警察は久間さんを疑っていたそうで、警察はひたすら有罪証拠をかき集めた。布川でも同じことがありました。

 T供述を検証した八丁峠の映像を見て思いました。現場は九十九折の山道で、道路の左側には溝があり、脱輪するかもしれない。そんな場所で、対向車がダブルタイヤだったなんてわかりっこない。こんなことを優秀な裁判官がなぜわからないのか

 日本の警察はこれまでも証拠を捏造してきました。そうして、どれだけの人が刑務所に入れられ、殺されてきたか。すべてが無責任です。冤罪事件で国家賠償しても、だれも懐が痛まない。そのお金も税金です。足利事件、布川事件、ゴビンダさんの事件東電事件)、東住吉事件だれもその責任を追及しない

 再審法を改正しないといけない。税金で集めた証拠を法廷に出すのは当たり前じゃないですか。久間さんの無念は必ず果たせると確信しています。必ず勝ちます。一緒にがんばりましょう。無惨に殺された人の無念を晴らす殺したのは誰か検察庁です

 桜井さんは1967年に起きた布川事件で杉山卓男さん(故人)とともに無期懲役刑が確定したが、2011年に再審無罪をかちとった。8月27日、この冤罪の責任を問う国家賠償訴訟の控訴審で勝利し、国・県は上告できず9月10日、勝訴が確定した。桜井さんは13日に会見し、「54年間ずっと背負っていた冤罪の重荷を下ろすことができた」と話した。

 だが、桜井さんの闘いは終わらない。国賠訴訟の一審勝訴後、直腸がんが見つかり、食事療法でがんと闘っている。そうして、冤罪と闘う全国の「獄友」の雪冤のために東奔西走する久間さんの無念を晴らす。それも、桜井さんの大きな目標の1つだ。(了)

Last modified on 2021-09-15 11:00:47
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●袴田冤罪事件…タンパク質に糖分が触れると「メイラード反応」が進み、1年2カ月後には《常識的な範囲で『赤みは残らない』》はずだ

2021年04月14日 00時00分33秒 | Weblog

(20210331[])
山田雄之記者による、二つの東京新聞の記事【1年以上みそ漬けだった服の血痕、なぜ赤いまま? 袴田さん審理差し戻しで焦点 DNA型鑑定論争には終止符】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/76240)と、
【科学論争で審理さらに長期化の懸念 袴田さん差し戻し審で3者協議】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/93105)。

 《「もう50年以上、裁判をしている長いですよ。とにかく勝つしかない」 裁判所と検察側、弁護側の3者が非公開で協議後、袴田さんの姉秀子さん(88)は弁護団とともに東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し、再審開始決定までの道のりの長さに疲れたような表情を見せた》。

 「鑑定技術の進展によって細胞が数個分あればDNAの検出は十分に可能だとされていて、鑑定の信用性を否定すべきとは思わない。犯人のものとされるシャツに付いた血痕と袴田さんのDNA型が違い、血痕は袴田さんのものではないという重大な疑いが生じる」との指摘にもかかわらず、「DNA型鑑定論争には終止符」と言われてもねぇ。

 〝味噌漬け〟により縮んだとはいえ、異常に小さすぎる衣服のサイズなど、数々の《重大な疑い》があるにもかかわらず、《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん。

 タンパク質に糖分が触れると「メイラード反応」が進み、1年2カ月後には《常識的な範囲で『赤みは残らない』》はずだ。《1年以上みそ漬けにされても「血痕の赤み」が残る》訳も無く、《弁護側は高裁段階で「メイラード反応が進行し、血痕は黒くなっていたはずだ」》は十分に《常識的》だ。《再審請求審では弁護側、検察側の双方が、血液を付けた衣類をみそに漬け込んだ実験の結果を証拠として提出。いずれも5~6カ月経過すると褐色化が進み、赤みが完全に消える結果が出》ている。
 《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん。すぐさま、袴田巌さんに無罪を! マスコミももっと後押しすべきなのではないか。裁判所も自分たちの先輩の誤りを受け入れるべき…『●《読者はこうした報道を何日もシャワーのように浴びた。…裁判官たちも例外では》ない…袴田事件の《冤罪に加担したメディアの責任》』。

   『●『美談の男』読了
   『●袴田事件: いい加減に誤まりを認めるべき
   『●作られた袴田冤罪事件、理不尽極まる漸くの初の証拠開示
   『●袴田事件、48年間のそれぞれの苦難……
      袴田巌さんと秀子さん、そして、熊本典道さん
   『●袴田事件: 静岡地裁は「疑わしきは被告人の利益に」を
   『●袴田事件、そして死刑執行後の『飯塚事件』再審:
                   司法の良心を示せるか?
   『●袴田事件・釈放!: 「捜査機関が重要な証拠を捏造した疑い」
               「拘置の続行は耐え難いほど正義に反する」

   『●映画「ザ・ハリケーン」と袴田事件:「冤罪事件を「絶対に忘れるな」」
   『●袴田事件…検察=《狼は本音を明かす。
      「おまえがどんな言い訳をしても食べないわけにはいかないのだ」》
    《狼は本音を明かす。「おまえがどんな言い訳をしても食べないわけには
     いかないのだ」▼袴田さんの無実を信じる人にとってはどうあっても狼に
     許されぬイソップ寓話(ぐうわ)の羊を思い出すかもしれない…
     検察と裁判所を納得させる羊の反論の旅はなおも続くのか
     ▼事件から五十二年長すぎる旅である

   『●《袴田巌さんは、いまも、死刑囚のまま》だ…
       政権や検察に忖度した東京高裁、そして、絶望的な最「低」裁
    「NTVの【NNNドキュメント’18我、生還す -神となった死刑囚・
     袴田巖の52年-】…《今年6月、東京高裁が再審開始を取り消した
     「袴田事件」。前代未聞の釈放から4年半、袴田巖さんは死刑囚のまま
     姉と二人故郷浜松で暮らす》」
    「三権分立からほど遠く、法治国家として公正に法に照らした
     「司法判断」ができず、アベ様ら政権に忖度した「政治判断」乱発な、
     ニッポン国の最「低」裁に何を期待できようか…。
     《巌さんは、いまも、死刑囚のまま》だ」

   『●冤罪は晴れず…「自白を偏重する捜査の危うさ…
       証拠開示の在り方…検察が常に抗告する姿勢の問題」
   『●袴田秀子さん《ボクシングに対する偏見…
      チンピラだっていうイメージ…その印象以外に何の証拠もなかった》
   『●山口正紀さん《冤罪…だれより責任の重いのが、無実の訴えに
           耳を貸さず、でっち上げを追認した裁判官だろう》
    「週刊朝日の記事【袴田事件で「捜査機関が証拠を”捏造”」 
     弁護団が新証拠の補充書を最高裁に提出 】」
    《静岡地裁の再審開始決定を取り消した東京高裁決定から、
     1年余りが経過した。死刑が確定した元プロボクサーの
     袴田巌さん(83)は最高裁に特別抗告中だが、弁護団はこのほど
     “新証拠”を提出した》

   『●《死刑を忠実に実行している》のはニッポンだけ…
       飯塚事件でも、《十三人の死刑執行》でも揺るがず…
   『●(ジョー・オダネルさん)「焼き場に立つ少年」は
     《鼻には詰め物…出血しやすい状態…なんらかの形で被爆した可能性》
   『● CD『Free Hakamada』の《ジャケットには、元プロボクサーの
          袴田さんが…名誉チャンピオンベルトを持った写真》
   『●《「袴田事件」で死刑判決を書きながら、後に「無罪の心証だった」
        と明かした元裁判官熊本典道さん》がお亡くなりになりました
    「袴田巌さんと秀子さん、そして、熊本典道さん」

   『●映画『BOX 袴田事件 命とは』で熊本典道さん役…《「法廷では
     裁判官自身も裁かれている」。自分で自分を裁こうとした日々…》
   『●袴田巌さんに無罪を…《死と隣り合わせの生活が心にもたらした影響
     …暗黒の日々の長さを思わざるをえない…夜は終わったわけではない》
   『●《読者はこうした報道を何日もシャワーのように浴びた。…裁判官
     たちも例外では》ない…袴田事件の《冤罪に加担したメディアの責任》

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/76240

1年以上みそ漬けだった服の血痕、なぜ赤いまま? 袴田さん審理差し戻しで焦点 DNA型鑑定論争には終止符
2020年12月24日 05時50分

 袴田巌さん(84)の再審請求審で最高裁第3小法廷が審理を東京高裁に差し戻したのは、「なぜ1年以上もみそに漬けられた衣類の血痕に、まだ赤みが残っているのかという疑問からだった。DNA型鑑定論争には終止符を打ったが、血痕の化学反応を巡る今後の検討結果次第で、再審開始が近づく可能性がある。(山田雄之

【関連記事】袴田さん審理差し戻し 再審理認めぬ決定を最高裁が取り消す





◆5点の衣類「DNA残っても微量、劣化の可能性高い」

 「DNAが残っているとしても極めて微量で、劣化している可能性が高い。確定判決に合理的な疑いを差し挟む証拠とは言えない」

 事件から1年2カ月後にみそ工場のタンクから見つかり、犯行時の着衣とされる「5点の衣類」。その衣類に付いた血痕のDNA型が、袴田さんや被害者と一致するかが焦点となっていた第2次再審請求審で、最高裁はDNA型鑑定の証拠価値を否定した。

 弁護側が推薦した筑波大の本田克也教授が、独自の手法に基づく鑑定で「袴田さんや被害者の型と一致しないとした結論を評価し、2014年の静岡地裁は再審開始決定を導いた。一方、18年の東京高裁は「研究途上で、科学的原理や有効性には深刻な疑問がある」とし、再審開始を認めなかった

 最高裁が今回、鑑定論争に終止符を打ったことで、差し戻し審での焦点は、1年以上みそ漬けにされても「血痕の赤み」が残るのか否かに移る。


◆弁護側「血痕黒いはず」、高裁は分析や考察せず

 「5点の衣類」発見当時の実況見分調書などには、血痕は「濃赤色」「濃赤紫色」の記述がある。

 再審請求審では弁護側、検察側の双方が、血液を付けた衣類をみそに漬け込んだ実験の結果を証拠として提出。いずれも5~6カ月経過すると褐色化が進み、赤みが完全に消える結果が出た。タンパク質に糖分が触れると「メイラード反応」という化学反応が起き、タンパク質は褐色化する。血液にはタンパク質が含まれ、みそは糖分がある。

 弁護側は高裁段階で「メイラード反応が進行し、血痕は黒くなっていたはずだ」と主張したが、高裁は専門的知見に基づく分析や考察をすることなく、「メイラード反応はさほど進行していなかったはずだ」と一蹴した


◆最高裁「著しく正義に反する」と高裁非難

 最高裁は決定で、メイラード反応を巡る高裁の訴訟指揮を「審理を尽くしていない」とし、高裁決定を取り消さなければ「著しく正義に反すると非難した。「現時点では1年余りみそ漬けにされた血痕に赤みが残る可能性があるのかどうかを判断するには不十分」と指摘。「弁護側の主張通りであれば、袴田さんが犯行直後にみそタンクに衣類を入れたとすることに疑いが生じる。袴田さんの犯人性にも合理的な疑いを差し込む可能性がある」と述べた。

 さらに一歩踏み込んだのが、外交官出身の林景一裁判官と行政法学者出身の宇賀克也裁判官が述べた反対意見だ。衣類をタンクに入れたのは犯行直後ではなく発見直前と考えられ、袴田さん以外の第三者による可能性を指摘。ただちに再審を開始すべきだとした。

 最高裁の多数意見が再審でなく審理の差し戻しとしたことに、あるベテラン裁判官は「最高裁は再審開始決定も検討しただろうが、慎重に判断すべきだとの考えが勝ったのでは」と推察した。今後、東京高裁での差し戻し審では、みそと血痕のメイラード反応について、専門家らが意見を戦わせることになりそうだ。
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/93105

科学論争で審理さらに長期化の懸念 袴田さん差し戻し審で3者協議
2021年3月23日 06時00分

 袴田巌さん(85)の第2次再審請求審で、最高裁が東京高裁に差し戻した審理を巡る3者協議が22日、高裁で始まった。審理の焦点は、犯行時の着衣とされた衣類の血痕の色みが不自然かどうか。1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)で一家4人が殺害されてから半世紀余り。科学論争に陥るのではなく、早期に再審開始を決定すべきだとする声もある。(山田雄之


◆「50年以上も」

 「もう50年以上、裁判をしている。長いですよ。とにかく勝つしかない」

 裁判所と検察側、弁護側の3者が非公開で協議後、袴田さんの姉秀子さん(88)は弁護団とともに東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し、再審開始決定までの道のりの長さに疲れたような表情を見せた。

     (「早く再審開始を」と求める袴田巌さんの姉秀子さん(左)と
            小川秀世弁護士=東京・霞が関の司法記者クラブで)

 最高裁は昨年12月、逮捕から1年以上たって、袴田さんの勤務先のみそタンクから発見された「犯行時の5点の衣類」に、赤みを帯びた血痕が残っていたことを疑問視。血液のタンパク質がみその糖分に5~6カ月触れると「メイラード反応」で褐色化するという可能性について、専門的知見に基づき十分に審理されていないなどとして、高裁に審理を差し戻した。


◆消えた赤み

 みそに漬かった血液が褐色化し、赤みが消えることが証明されれば、第三者がタンクに隠した疑いが濃くなる。

 弁護団は最高裁の決定を受け、複数の専門家に相談したものの、血とみその化学反応を調べた研究結果は見当たらず、研究に取り組んでいる専門家がいる形跡も確認できなかった。

 そこで弁護団は自ら、血液を付着させた布をみそに漬ける実験を100以上のパターンで実施。血を付けてからみそに漬けるまでの時間やみその種類をどのように条件を変えても、すべて2週間以内に血液の赤みは消え、黒や黒褐色になった

 3者協議後の会見に参加した弁護団の小川秀世弁護士は、「現段階では1年以上もみそに漬かれば、血液の赤みが消えてしまうと推認できる」と指摘。3者協議に出した意見書では、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則再審にも適用されるとして、「速やかに審理を進め、早期の再審開始決定を」と求めたという。


◆再審への道

 あるベテラン裁判官は「裁判所の指揮次第では検証実験をする可能性もある」と指摘。そうなればさらなる長期化は必至だ。最高裁決定では、2人の裁判官が「時間をかけることには反対」などとして再審を直ちに開始すべきだとの反対意見を述べている。

 白鴎大の村岡啓一教授(刑事訴訟法)は「科学論争になれば審理は長引く。いたずらに踏み込みすぎるべきではない。常識的な範囲で『赤みは残らない』と証明できれば、裁判所は再審開始を認めてもいいのではないか」と話した。

【関連記事】1年以上みそ漬けだった服の血痕、なぜ赤いまま? 袴田さん審理差し戻しで焦点 DNA型鑑定論争には終止符
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●山口正紀さん《冤罪…だれより責任の重いのが、無実の訴えに耳を貸さず、でっち上げを追認した裁判官だろう》

2019年10月30日 00時00分40秒 | Weblog


東京新聞の2019年6月28日の社説【最高裁の判断 なぜ再審の扉を閉ざす】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019070102000126.html)。
亀井洋志氏による、週刊朝日の記事【袴田事件で「捜査機関が証拠を”捏造”」 弁護団が新証拠の補充書を最高裁に提出 】(https://dot.asahi.com/wa/2019062800063.html)。

 《四十年間も潔白を訴えていた大崎事件(鹿児島)の原口アヤ子さんに再審の扉は開かなかった。最高裁が無実を示す新証拠の価値を一蹴したからだ。救済の道を閉ざした前代未聞の決定に驚く。「やっちょらん」-。原口さんは、そう一貫して訴えていた。殺人罪での服役。模範囚で、仮釈放の話はあったが、「罪を認めたことになる」と断った。十年間、服役しての再審請求だった…疑わしきは被告人の利益には再審請求にも当てはまる。その原則があるのも、裁判所は「無辜(むこ)の救済」の役目をも負っているからだ。再審のハードルを決して高めてはならない》。
 《静岡地裁の再審開始決定を取り消した東京高裁決定から、1年余りが経過した。死刑が確定した元プロボクサーの袴田巌さん(83)は最高裁に特別抗告中だが、弁護団はこのほど“新証拠”を提出した》。

   『●「「3.11」から2年③ 東北復興と壁」
         /『週刊金曜日』(2013年3月15日、935号)について
    「山口正紀さん【裁判長の訴訟指揮も報じるべきだ 大崎事件再審請求】、
     「冤罪は警察・検察だけで作られるものではない。…
     マスメディアにも責任…。だが、だれより責任の重いのが、
     無実の訴えに耳を貸さず、でっち上げを追認した裁判官だろう」」

   『●知らなかった冤罪事件: 鹿児島大崎事件
   『●「飯塚事件」「福岡事件」「大崎事件」
       ・・・・・・に係わる弁護士たちで『九州再審弁護連絡会』発足

   『●「あたいはやっちょらん」の叫び!…
      「だれより責任の重いのが…でっち上げを追認した裁判官」
   『●39年間「あたいはやっちょらん」、
     一貫して無実を訴えてきた90歳の原口アヤ子さんに早く無罪判決を

   『●冷酷な司法…【NNNドキュメント’18/
      あたいはやっちょらん 大崎事件 再審制度は誰のもの?】
   『●大崎事件…再審するかどうかを延々と議論し、
      三度にわたる再審開始決定を最「低」裁がちゃぶ台返し
    「まず、小池裕裁判長について。《小池裕氏は、NPO法人による
     森友学園問題で国側が持つ交渉記録等の証拠保全の申し立てについて、
     最高裁の裁判長として保全を認めなかった高裁判断を支持し、
     抗告を棄却した》方です。アベ様には寛大なるご判断、一般市民には
     《あまりにも横暴》、冷酷。「司法判断」としてもデタラメ」

 再審するかどうかを延々と議論し、《三度にわたり再審開始決定が出ながら》、最後に、ちゃぶ台返し。最「低」裁は何を怖れているのか? 誤りを潔く認めるべきだ。
 山口正紀さん、《冤罪は警察・検察だけで作られるものではない。…マスメディアにも責任…。だが、だれより責任の重いのが、無実の訴えに耳を貸さず、でっち上げを追認した裁判官だろう》。
 「無辜の救済」を拒む最「低」裁の意図は何か?
 白鳥決定を持ち出すと、原口アヤ子さんを何か犯人であるかのような印象を与えてしまうかもしれない。でも、冤罪なのですから、「無辜の救済」が正しい表現。

   『●袴田事件…検察=《狼は本音を明かす。
      「おまえがどんな言い訳をしても食べないわけにはいかないのだ」》
    《狼は本音を明かす。「おまえがどんな言い訳をしても食べないわけには
     いかないのだ」▼袴田さんの無実を信じる人にとってはどうあっても狼に
     許されぬイソップ寓話(ぐうわ)の羊を思い出すかもしれない…
     検察と裁判所を納得させる羊の反論の旅はなおも続くのか
     ▼事件から五十二年長すぎる旅である

   『●《袴田巌さんは、いまも、死刑囚のまま》だ…
       政権や検察に忖度した東京高裁、そして、絶望的な最「低」裁
    「NTVの【NNNドキュメント’18我、生還す -神となった死刑囚・
     袴田巖の52年-】…《今年6月、東京高裁が再審開始を取り消した
     「袴田事件」。前代未聞の釈放から4年半、袴田巖さんは死刑囚のまま
     姉と二人故郷浜松で暮らす》」
    「三権分立からほど遠く、法治国家として公正に法に照らした
     「司法判断」ができず、アベ様ら政権に忖度した「政治判断」乱発な、
     ニッポン国の最「低」裁に何を期待できようか…。
     《巌さんは、いまも、死刑囚のまま》だ」

   『●冤罪は晴れず…「自白を偏重する捜査の危うさ…
       証拠開示の在り方…検察が常に抗告する姿勢の問題」
   『●袴田秀子さん《ボクシングに対する偏見…
      チンピラだっていうイメージ…その印象以外に何の証拠もなかった》

 《袴田巌さんは、いまも、死刑囚のまま》。《特別抗告が棄却され、袴田さんが再収監されるような事態になれば、国民の信頼はおろか、海外からも日本の司法は総スカンを食うことになる》。

   『●木谷明さん《冤罪を回避するために法曹三者…
      無実の者を処罰しないという強い意志、意欲をもって仕事にあたること》

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019070102000126.html

【社説】
最高裁の判断 なぜ再審の扉を閉ざす
2019年6月28日

 四十年間も潔白を訴えていた大崎事件(鹿児島)の原口アヤ子さんに再審の扉は開かなかった。最高裁が無実を示す新証拠の価値を一蹴したからだ。救済の道を閉ざした前代未聞の決定に驚く。

 「やっちょらん」-。原口さんは、そう一貫して訴えていた。殺人罪での服役。模範囚で、仮釈放の話はあったが、「罪を認めたことになる」と断った。十年間、服役しての再審請求だった。

 鹿児島県大崎町で一九七九年に起きた事件だった。被害者が酒に酔い、側溝に落ちているのを住民が発見した。三日後に遺体が自宅横にある牛小屋で見つかった。原口さんは隣に住み、被害者の義姉にあたる。親族の計四人が殺人容疑などで逮捕され、八一年に最高裁で確定した。

 そもそも本当に殺人なのかも疑われる事件だ。側溝に転落した際の「出血性ショック死の可能性が極めて高い」からだ。新証拠の鑑定はそう記している。この見方は地裁・高裁も支持している。何しろ確定判決時の鑑定は「他殺を想像させる。窒息死と推定」という程度のあいまいさだった。

 では、絞殺という根拠は何か。実は共犯者とされた親族の自白に寄り掛かっている。供述は捜査段階でくるくる変わる。虚偽自白の疑いとみても不思議でない。

 なぜ自白したか。「警察の調べが厳しかったから」だそうだ。しかも知的障害のある人だった。今なら取り調べが適切だったか、捜査側がチェックされたはずだ。

 最高裁は新鑑定を「遺体を直接検分していない」「十二枚の写真からしか遺体の情報を得られていない」と証明力を否定した。親族の自白は「相互に支え合い信用性は強固」とした。だが、本当に「強固」なのか。過去の冤罪(えんざい)事件では、捜査側が描くストーリーに沿った供述を得るため、強要や誘導があるのはもはや常識である。

 最高裁の判断には大いに違和感を持つ。審理を高裁に差し戻すこともできたはずである。事件の真相に接近するには、そうすべきだった。事故死か他殺かの決着も、再審公判でできたはずだ。再審取り消しは論理自体が強引である。もっと丁寧に真実を追求する姿勢が見えないと、国民の司法に対する信頼さえ損なう

 疑わしきは被告人の利益には再審請求にも当てはまる。その原則があるのも、裁判所は無辜(むこ)の救済の役目をも負っているからだ。再審のハードルを決して高めてはならない。
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https://dot.asahi.com/wa/2019062800063.html

袴田事件で「捜査機関が証拠を”捏造”」 弁護団が新証拠の補充書を最高裁に提出 
亀井洋志 2019.7.1 10:30 週刊朝日

     (白半袖シャツに開いた2つの穴と、袴田さんの体の傷(赤ライン)の位置)
     (味噌タンクから発見された白半袖シャツ。右肩の2つの穴の周りだけ
      血が付いている=いずれも藤原よし江さん提供)

 静岡地裁の再審開始決定を取り消した東京高裁決定から、1年余りが経過した。死刑が確定した元プロボクサーの袴田巌さん(83)は最高裁に特別抗告中だが、弁護団はこのほど“新証拠”を提出した。焦点となるのは、袴田さんの犯行時の着衣とされた「5点の衣類(スポーツシャツ、白半袖シャツ、ズボン、ステテコ、ブリーフ)」だ。弁護団は衣類は袴田さんのものではなく、捜査機関によって捏造(ねつぞう)された可能性が高いと重ねて主張した。

    (【写真】味噌工場のタンクから発見された白半袖シャツはこちら)

 改めて事件を振り返る。1966年6月30日、静岡県清水市(現・静岡市清水区)の味噌会社の専務宅から出火。焼け跡から一家4人の他殺死体が見つかった。味噌会社の従業員で当時30歳だった袴田さんが強盗殺人などの疑いで逮捕された。袴田さんは連日10時間以上に及ぶ苛酷な取り調べを受け、逮捕から20日目に「自白」してしまう。裁判では無罪を主張したが、事件から1年2カ月も経って味噌工場のタンクの中から血染めの衣類が発見される。いま焦点となっている「5点の衣類」だ。事件直後、警察が徹底的に捜索しながら見つからなかった衣類が突然発見されるのだから、きわめて不可解な展開だ。

 その後、警察は袴田さんの実家を捜索すると、都合のいいことに発見されたズボンの共切れを見つけ出す。その結果、「5点の衣類」が決定的な証拠とされ、68年9月、静岡地裁は袴田さんに死刑判決を言い渡したのである。

 2度目の再審請求で弁護団は、新証拠についての書面を提出した。そこで指摘したのは、「5点の衣類」のうち、スポーツシャツと、下着の白半袖シャツの右肩に付いた穴状の損傷に関するものだ。事件当時、袴田さんは白半袖シャツの上にスポーツシャツを着て、右肩(右上腕部)にケガをしたとされている。だが、不自然なことにスポーツシャツの右肩には釘で刺したような穴が1カ所あるだけだが、白半袖シャツには穴が二つ空いている。しかも、穴の位置がいずれも一致せずに、ずれているのだ。

 実は、死刑が確定する前の東京高裁で、犯行着衣とされた「5点の衣類」が本当に袴田さんのものなのかを検証するための試着実験が行われている。この時、衣類の穴の矛盾点が明らかになったが、裁判ではほとんど問題にされなかったという。その理由について、袴田さんの弁護団が6月7日に開いた記者会見で、角替(つのがえ)清美弁護士が次のように説明した。

「高裁は、確かに穴の位置はずれているが、おおむね一致している、という見方でした。スポーツシャツに穴が一つで、白半袖シャツに二つあることについては、スポーツシャツはゆったりしているが、白半袖シャツは肌にぴったりと密着している。だから一度スポーツシャツに刺さった鋭い刃物状のものが、白シャツの2カ所に穴を開けることもあり得るということでした」

 白半袖シャツの二つの穴の周囲には、内側から染みついた袴田さんのものとされるB型の血がついていた。ここで気になるのは、出血した袴田さんの傷の位置はどこなのか、ということだ。

 袴田さんは2014年、逮捕されてから47年7カ月ぶりに釈放されたが、驚くべきことに右肩の傷あとが残っていたのだ。生きた証拠であり、衣類の穴との位置関係を比較すれば、矛盾点はいっそう明確になる。

 この測定実験を思い立った支援者の藤原よし江さんは、「5点の衣類」の写真など、裁判資料をもとにスポーツシャツと白半袖シャツの穴を再現し、測定した。その結果、スポーツシャツの穴も、白半袖シャツにできた二つの穴も、袴田さんの傷あとの位置とは、まったく一致しなかったのである。

 藤原さんに話を聞いた。

「シャツの穴の問題は、ずっとおかしいと思っていました。控訴審の段階でも弁護団(再審弁護団とは別)が鑑定を求めていますが、裁判所は却下しました。白半袖シャツの穴のまわりには血が付いているのに、袴田さんの肩の傷の位置に血が付いていない=写真参照=のは、誰が見てもおかしいと思うはずです」

 袴田さんがこれまで一貫して主張し続けてきたのは、事件当時、パジャマ姿で専務宅の消火活動を手伝い、その際、右肩にケガをしたということだ。

 実際にパジャマの右肩部分に、何かに引っ掛けてできた「カギ裂き」の破れがあり、その部分に血が付いていたことがわかった。袴田さんの体の傷あとを測定した藤原さんは、判決文などをもとにパジャマのカギ裂き部分も特定した。すると、傷あとの位置とぴったりと一致したのである。藤原さんが語る。

「裁判所は、パジャマにカギ裂きがあることや、カギ裂きの位置も確認しながら、袴田さんが右肩に傷を負ったことを示す衣類が、二つあることのおかしさについては黙殺したのです。ものすごく非常識な認定をしながら、死刑判決を出していることが本当に許せません」

 再審請求審で弁護団は、本田克也・筑波大学教授(法医学)に鑑定を依頼した。本田教授は「5点の衣類」に付着した血液のDNA型は、被害者のものと一致しないと結論付け、白シャツの右肩の穴のまわりに付いた血も、「袴田さんのものではない」との結果を出した。今回の藤原さんの測定実験も、この「本田鑑定」の正しさを裏付けている。

 14年5月、静岡地裁はこのDNA鑑定結果を「無罪を言い渡すべき明らかな証拠に該当する」と評価し、再審開始を認める決定をした。当時の村山浩昭裁判長は「(5点の衣類は)捜査機関によって捏造された疑いがある」とまで言及し、「これ以上拘束を続けることは、耐え難いほど正義に反する」として拘置の執行停止も決めたのだ。

 だが、昨年6月、東京高裁(大島隆明裁判長)は、本田教授のDNA型鑑定について「手法に疑問がある」などとして、「新証拠としては認められない」とした。

 昨年6月に弁護団が最高裁に特別抗告してから、1年が経過した。弁護団は最高裁側の感触を得るため、調査官に面談を求めているが、回答すらしてこないという。

 最高裁の調査官は、裁判官の指示に従って裁判に必要な調査を行い、資料の作成や、判決の素案作りなどを行う黒子役だ。主席調査官のもとに上席調査官3人が、刑事・民事・行政事件を担当している。最高裁の調査官には、エリートと目される裁判官が起用される。

 弁護団の西嶋勝彦弁護士がこう嘆く。

「20年くらい前までは、調査官も気さくに面談に応じたものです。袴田事件ばかりではなく、名張毒ぶどう酒事件でも対応してくれていました。特別抗告状や補充書の論点を口頭で説明したり、時にはスライドなどを使ったりすることもありました。それが、裁判官会議の申し合わせで決めたのか、ある時から一斉に対応しなくなったのです。調査官がどこまで記録を読み込んでいるのか、裁判官がどこまで合議しているのか。ブラックボックスでまったくわからなくなってしまいました」

 最高裁の決定はある日突然、何の前触れもなく通知される。こんなシステムはおかしいのではないか。調査官が弁護側の面談に応じれば、証拠との向き合い方はまったく異なってくるだろう。現在の調査官に、証拠を丁寧に吟味する姿勢は見られない

 『裁判官幹部人事の研究』などの著書がある明治大学政治経済学部の西川伸一教授がこう指摘する。

「最高裁は孤高の存在で、国民から恐れられているくらいのほうが判決に威厳があっていいんだという発想があるのでしょう。一方で、裁判官は選挙で選ばれるわけではないから、国民の信頼を失うことを非常に恐れています。最高裁長官は年頭のあいさつに、必ず『国民の信頼』という言葉を入れています。けれども、国民に向けて閉鎖的なイメージは拭いようもありません。調査官は各小法廷の裁判官に資料を上げるだけなのですから、合議の秘密には当たらないはずです。弁護人と会談するのも裁判に必要な調査の一環だと思いますが、どうにもユーザーフレンドリーではありませんね」

 特別抗告が棄却され、袴田さんが再収監されるような事態になれば、国民の信頼はおろか、海外からも日本の司法は総スカンを食うことになるだろう。袴田事件のこれまでの経過に対し、再審開始を決定した静岡地裁が発した「耐え難いほど正義に反するという戒めが、軽んじられるようなことがあってはならない。(本誌・亀井洋志
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●「情況証拠のみ」によって「高度に立証」?: 飯塚事件の再審請求棄却と冤罪下での死刑執行と裁判員制度

2014年04月02日 00時00分02秒 | Weblog


gendai.netの記事【袴田巌さん「失われた48年」 あまりにも少ない国の“代償”】(http://gendai.net/articles/view/newsx/149044)と、
asahi.comの記事【(48年目の「無実」 袴田事件再審決定:下)冤罪発掘、遅れる日本 米、官民で検証も】(http://www.asahi.com/articles/DA3S11057455.html)。
そして大変に残念で無念な結果となった飯塚事件について、東京新聞の二つの記事【飯塚事件の再審棄却、福岡地裁 2女児殺害で既に死刑】(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014033101001118.html)と、
【弁護団「結論ありき」と地裁批判 飯塚事件、再審棄却で】(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014033101001902.html)。
西日本新聞の記事【飯塚事件、再審請求を棄却 「状況証拠で高度な立証」 福岡地裁】(http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/79182)。
最後に、日弁連のWEBの会長声明【日弁連/飯塚事件再審請求棄却決定に関する会長声明】(http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2014/140331.html)。

 「袴田氏は長い拘禁生活で精神を病み、糖尿病に加え認知症も進んでいる。捜査機関は証拠をでっち上げ、司法は再審請求を先延ばしにしてきた。国家の罪は極めて重い」・・・・・・袴田巌さんの「失われた48年」、警察・検察・裁判所の罪はあまりに重い。最後の最後、ラストチャンスで、良い裁判長にあたったことが幸運だったようだ。 
 それにしても、飯塚事件・・・・・・。袴田巌さんの「失われた48年」でも大変な問題であるけれども、ましてや死刑を実施してしまった飯塚事件の冤罪死刑囚・久間三千年さん、どう形容すればいいのだろうか?  「犬」や「ひらめヒラメ裁判官」という言葉を投げつけざるを得ない、福岡地裁平塚浩司裁判長に。特に、「決定理由で、平塚裁判長は弁護側の主張を「現場試料の再鑑定に基づかず、抽象的に推論するにすぎない」と指摘。「本田鑑定を踏まえても、犯人の型と元死刑囚の型が一致しないことが明らかになったわけでなく、一致する可能性も十分ある」とした」というのは、意識的か無意識か科警研のミスで現場DNA試料を全て使い切っている初歩的ミス、再試できないという明確なミスなのに、酷い決定理由。

   『●死刑存置賛成派と飯塚事件
   『●NNNドキュメント’13:
          死刑執行は正しかったのか 飯塚事件 “切りとられた証拠”』
   『●飯塚事件の久間三千年さんと福岡事件の西武雄さん
   『●贖罪:足利事件再鑑定から12日後の2008年10月28日朝、
               飯塚事件久間三千年元死刑囚の死刑が執行』  
   『●手遅れ!! ~死刑のスイッチを押すことと死刑執行~
    「陶山博生氏(p.43)は飯塚事件で一審担当。久間三千年さんの
     「死刑執行命令を下したのは、麻生内閣の森英介法務大臣(当時)である。
     大臣任命後1か月後に、死刑判決からたった2年足らず死刑囚
     執行命令を下すのは極めて異例である。・・・再申請求の準備・・・
     なぜ久間氏の死刑が先に執行されたのか、全く理解に苦しむ

   『●「官僚司法とその提灯持ちは改革を拒否し続けている」
                         ・・・冷たい司法が続くわけだ
   『●「飯塚事件」「福岡事件」「大崎事件」
     ・・・・・・に係わる弁護士たちで『九州再審弁護連絡会』発足
   『●足利事件と飯塚事件と、そして「国家は人を殺す」:
                谷垣禎一法相「死刑制度は国民から支持」
   『●袴田事件、そして死刑執行後の『飯塚事件』再審
                           司法の良心を示せるか?
   『●足利事件と飯塚事件との12日間:
         死刑執行された久間三千年さんの冤罪は晴らされるか?
   『●「耐え難いほど正義に反する状況」を認めれない仙台地裁
                       ~筋弛緩剤混入事件守大助さん~


 西日本新聞の記事によると、DNAの証拠に関係なく「高度な立証」!?、だそうだ。 しかも「状況証拠」「情況証拠」のみだって!?、呆れた。・・・・・・「「それ以外の状況証拠でも元死刑囚が犯人だという高度な立証がなされている」との判断」。

 日弁連の会長も声明を発表・・・・・・「久間氏と犯行との結び付きを証明する直接証拠は存在せず、情況証拠のみによって有罪認定が行われており、中でも警察庁科学警察研究所が行ったいわゆるMCT118型DNA型鑑定によって、被害女児の身体等に付着していた血液から久間氏と一致するDNA型が検出されたことなどが死刑判決の重要な証拠とされている」。「誤った裁判による死刑の執行」であり不可逆な誤り、非常に恐ろしい。

 そして、裁判員制度。「「とんでもないことが起きた」。袴田巌(いわお)さん(78)の再審開始決定を知り、東京都内に住む元裁判員の50代女性はそら恐ろしくなった。3年前、東京地裁の裁判員裁判の死刑判決に関わった」・・・・・・懸念されていたことが現実に。素人裁判官として「死刑のスイッチ」を押させられるなんて、真っ平御免だ。
 さて、飯塚事件の冤罪死刑囚久間三千年さんの「死刑のスイッチ」を押した森英介元法相、いまも自信を持ってそのスイッチを押した、と言えるのだろうか? 是非、森英介氏に聞いてみたいものである。

   『●冤罪(その2/2): せめて補償を
   『●手遅れ!! ~死刑のスイッチを押すことと死刑執行~


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http://gendai.net/articles/view/newsx/149044

袴田巌さん「失われた48年」 あまりにも少ない国の“代償”
2014年3月28日 掲載

 1966年に静岡県で一家4人が殺害された「袴田事件」の再審開始が27日、静岡地裁で認められ、80年に死刑が確定していた袴田巌氏(78)が東京拘置所から48年ぶりに釈放された。

 27日の決定に検察側が即時抗告すれば、再審を行うかの判断は東京高裁に委ねられる。だが、再審を言い渡した村山浩昭裁判長は、犯行時に袴田氏が着ていたと認定された衣類5点について、「後日捏造された疑いがある」「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」と結論づけた。検察がどうあがいても、逆転無罪は確実だろう。

 となると、政府は袴田氏の“失われた48年間”に対して、代償を払う責任がある。

   「補償金額は、冤罪被害者への補償を定めた〈刑事補償法〉で、
    拘束日数に応じて決まります。1日当たり1000~1万2500円の
    範囲で、拘束中の苦痛や逸失利益、裁判所や捜査機関の過失などを
    考慮して判断されます」(弁護士の紀藤正樹氏)


■1時間当たりたったの521円

 最近の冤罪では、東電OL殺害事件(12年)と足利事件(10年)の元被告に、最大額の1日1万2500円の計算で補償金が支払われた。袴田氏もこのケースに該当すれば、48年分で2億1900万円をもらう権利を手にする。

 もっとも、「時給」に換算すれば、たったの521円だ。都道府県別の最低賃金で最も安い時給664円を大幅に下回る。十分な補償とは到底いえないだろう。

 刑事補償法とは別に、国に対し国家賠償法による損害賠償を請求できるが、勝訴するのは至難のワザだ。

   「国家賠償請求が認められるのは、捜査や起訴段階での警察や検察の
    行為に故意または過失があったことを、訴訟を起こした側が
    立証できた場合のみです。袴田事件に関しても、48年前の事件に
    かかわる証拠を握っている権力側の方が有利なのです」(前出の紀藤弁護士)

 最近では、郵便不正事件で無罪が確定した村木厚子厚生労働事務次官が、国に330万円の損害賠償を求めていたが、最高裁での上告が今月25日に退けられ、村木氏の敗訴が確定した。

 袴田氏は長い拘禁生活で精神を病み、糖尿病に加え認知症も進んでいる。捜査機関は証拠をでっち上げ、司法は再審請求を先延ばしにしてきた。国家の罪は極めて重い
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http://www.asahi.com/articles/DA3S11057455.html

(48年目の「無実」 袴田事件再審決定:下)
 冤罪発掘、遅れる日本 米、官民で検証も
2014年3月30日05時00分

 「とんでもないことが起きた」。袴田巌(いわお)さん(78)の再審開始決定を知り、東京都内に住む元裁判員の50代女性はそら恐ろしくなった。3年前、東京地裁の裁判員裁判の死刑判決に関わった。静岡地裁の決定は、袴田さんの死刑判決の根拠となっていた証拠は「警察による捏造(ねつぞう)の疑いがある」と明確に指… ・・・・・・。
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http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014033101001118.html

飯塚事件の再審棄却、福岡地裁 2女児殺害で既に死刑
2014年3月31日 12時48分

     (飯塚事件の再審が棄却され、報道陣の取材に応じる徳田靖之弁護士
       =31日午後、福岡市)

 福岡県飯塚市で1992年、7歳の女児2人が誘拐、殺害された飯塚事件で死刑が確定、執行された久間三千年元死刑囚=当時(70)=の再審請求審で、福岡地裁は31日、裁判のやり直しを認めず、棄却する決定をした。死刑執行後の再審開始を認めるかどうか判断が注目されていた。

 平塚浩司裁判長は決定理由で「確定判決の有罪認定に合理的な疑いは生じない。弁護団の新証拠には無罪を言い渡すべき明白性はない」と判断した。

 久間元死刑囚は捜査段階から一貫して無実を主張したが、確定判決は複数の状況証拠で有罪を導いた。08年10月に死刑を執行された。

(共同)
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http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014033101001902.html

弁護団「結論ありき」と地裁批判 飯塚事件、再審棄却で
2014年3月31日 17時36分

   (記者会見の冒頭で、声明を読み上げる岩田務弁護士(手前)
    =31日午後、福岡市中央区)

 福岡県で1992年、女児2人が誘拐、殺害された「飯塚事件」で死刑が確定、執行された久間三千年元死刑囚=当時(70)=の弁護団は31日、福岡市で記者会見し、再審請求を棄却した福岡地裁を批判した。「再審を開始すれば死刑制度の存在意義を問い直すことになるとの重大性に目を奪われ、再審をしないとの結論にした」との声明を発表した。

 共同弁護団長の徳田靖之弁護士は、DNA鑑定が、後に再審無罪となった「足利事件」とほぼ同時期に、同手法で同じ警察庁科学警察研究所でなされた点に触れ「裁判所は当時の技官の証言を信用した。なぜ飯塚だけは信用できるのか」と疑問を投げかけた。

(共同)
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http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/79182

飯塚事件、再審請求を棄却 「状況証拠で高度な立証」 福岡地裁
2014年03月31日(最終更新 2014年03月31日 13時19分)

   (福岡地裁に入る弁護団の徳田靖之弁護士(中央)
    =31日午前9時半ごろ、福岡市中央区)

 福岡県飯塚市で1992年に女児2人が殺害された「飯塚事件」で、殺人と誘拐などの罪で死刑が確定し、刑が執行された久間三千年(くまみちとし)元死刑囚=執行時(70)=の遺族が申し立てた再審請求で、福岡地裁は31日、請求を棄却する決定をした。平塚浩司裁判長は、確定判決の根拠の一つとなったDNA型鑑定を「直ちに有罪認定の根拠とすることはできない」とした上で「それ以外の状況証拠でも元死刑囚が犯人だという高度な立証がなされている」との判断を示した。弁護側は即時抗告する方針。

 再審請求審の最大の争点は、被害者に付着していた血液のDNA型鑑定の信用性だった。弁護側は鑑定に使われたネガフィルムの再鑑定を本田克也筑波大教授(法医学)に依頼し、「ネガには元死刑囚とは別人のDNA型が写っており、真犯人の可能性がある」とする鑑定書を新証拠として提出した。

 決定理由で、平塚裁判長は弁護側の主張を「現場試料の再鑑定に基づかず、抽象的に推論するにすぎない」と指摘。「本田鑑定を踏まえても、犯人の型と元死刑囚の型が一致しないことが明らかになったわけでなく、一致する可能性も十分ある」とした。

 刑事訴訟法では、再審は「無罪を言い渡すべき明らかな新証拠」が見つかった時などに認められる。検察側はネガは確定判決の審理でも証拠提出しており、「鑑定書は新証拠には当たらない」と主張したが、決定は新証拠と認めた。

 このほか、被害者の遺体発見現場近くで元死刑囚のワゴン車に似た車を見たという目撃証言についても、弁護側は心理学者の分析を基に「供述内容が詳細で警察官の誘導があった」と主張したが、決定は「目撃者は警察官から誘導を受ける可能性がない時期から車の特徴を述べていた」と否定した。

=2014/03/31付 西日本新聞夕刊=
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http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2014/140331.html

飯塚事件再審請求棄却決定に関する会長声明

本日、福岡地方裁判所第2刑事部は、いわゆる「飯塚事件」に関する再審請求事件につき、再審請求を棄却する旨の決定を行った。

本件は、1992年(平成4年)2月20日、福岡県飯塚市において小学校1年生の女児2名が登校途中に失踪し、翌21日に遺体が発見されたという事件であり、久間三千年氏が略取誘拐、殺人、死体遺棄の容疑で逮捕・起訴された。久間氏は一貫して本件への関与を否認していたが、1999年(平成11年)9月29日、第一審の福岡地方裁判所は死刑判決を言い渡し、その後、控訴・上告も棄却され、2006年(平成18年)10月8日、死刑判決が確定した。

久間氏はその後も無実を訴え、再審請求を準備していたが、死刑判決の確定からわずか2年後の2008年(平成20年)10月28日、久間氏(当時70歳)に対する死刑が執行された。そのため、久間氏の遺志を引き継いだ遺族によって再審請求が行われていたものである。

本件では、久間氏と犯行との結び付きを証明する直接証拠は存在せず、情況証拠のみによって有罪認定が行われており、中でも警察庁科学警察研究所が行ったいわゆるMCT118型DNA型鑑定によって、被害女児の身体等に付着していた血液から久間氏と一致するDNA型が検出されたことなどが死刑判決の重要な証拠とされている。

本日の決定は、新たな鑑定によってDNA型鑑定の証明力を確定判決の当時よりも慎重に検討すべき状況に至っているとしつつも、上記血液から検出されたDNA型と久間氏のDNA型が異なることが明らかになったものではなく、両者が一致する可能性も十分もあるとし、その余の情況証拠を総合すれば確定判決の有罪認定に合理的な疑いは生じないとして、再審請求を棄却した。しかし、DNA型鑑定の信用性に疑問が生じている以上、上記血液から検出されたDNA型と久間氏のDNA型が一致する可能性というのも科学的な裏付けを伴わない推論に過ぎない。しかも、決定も指摘するとおり、本件においては再鑑定のための資料が残されておらず、再鑑定を行う機会が奪われている。それにもかかわらず、決定は、これらの事情を請求人に不利益に扱ったものであって、到底容認できないものである。

また、当連合会は、2011年(平成23年)10月、人権擁護大会において、「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を採択するとともに、2013年(平成25年)2月には、谷垣禎一法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出している。

死刑判決が誤判であった場合に、これが執行されてしまうと取り返しがつかない。飯塚事件は、再審請求が棄却されたとはいっても、えん罪の疑いの濃い事案において、その懸念が現実化したものである。

当連合会としては、誤った裁判による死刑の執行がなされることのないよう、死刑確定者に対する死刑の執行を停止することを求めるとともに、本件の再審請求について引き続き注視していく。

 2014年(平成26年)3月31日
  日本弁護士連合会
  会長 山岸 憲司
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●贖罪:足利事件再鑑定から12日後の2008年10月28日朝、飯塚事件久間三千年元死刑囚の死刑が執行

2013年10月28日 00時00分34秒 | Weblog


当時の森英介法相の執行命令の下、2008年10月28日朝、飯塚事件 久間三千年元死刑囚の死刑が執行された。当時の弁護士たちは、「贖罪」のために今も、異例の死刑執行後の再審請求を続けている。

 ウィキペディアによると、
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  【http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%AF%E5%A1%9A%E4%BA%8B%E4%BB%B6

   
飯塚事件(いいづかじけん)とは、1992年(平成4年)発生した2人の女児が
  殺害された事件。状況証拠しか .... 2008年1028、当時の法務大臣である
  森英介によって死刑執行の命令が出され、福岡拘置所においてK(当時70歳)の
  死刑が執行され死亡した。
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   ●NNNドキュメント’13: 『死刑執行は正しかったのか
                        飯塚事件 “切りとられた証拠”』』 

 NNNドキュメント’13によると、足利事件と飯塚事件、両事件のDNA型鑑定時期・鑑定方法・鑑定人が同じ。そして、科警研のDNA型鑑定(MCT118法)について、

   2008年10月16日 足利事件 再鑑定へ
   2008年10月28日 飯塚事件 死刑執行
   2009年 4月20日 足利事件 再鑑定で一致せず

・・・・・・そう、足利事件で誤鑑定であることが分かった時には、既に、久間さんの死刑が執行されていた。2008年10月16日にDNA型鑑定に疑問が生じた時点で、死刑執行は停止されておくべきだったのに・・・・・・。なぜ、急いで死刑執行したのか?、大変に大きな疑問である。

 また、科警研の元のネガフィルムがようやく公開されると、科警研がトリミングしており、「真犯人の可能性があるDNA型」が恣意的に(死刑判決の根拠になった)科警研鑑定書のフィルムから切り取られていた。もしトリミングされていなければ、久間三千年さんのDNA型とはまったく一致しないことが明らかだったはず。これは、足利事件のキーパーソン筑波大学法医学・本田克也教授の意見である。

 さらには、血液型判定も間違いであったらしい。現場で見つかった犯人の血液型はB型で、久間さんもB型だとされていたが、犯人の血液型は、単独犯である限り、AB型である、と先の本田教授は断言。 実は、事件直後、福岡県警科捜研は犯人の血液型をAB型としていたが、その後、科警研がB型とした経緯があった。これまでDNA型鑑定(MCT118法)がおかしいということのみが言われていたが、血液型判定までもがおかしかったわけだ。

 こんな明らかな見込み捜査で、しかも目撃内容や証拠もいい加減・・・・・・、なぜ、そんなに急いで死刑執行したのか? 「確定死刑囚の事件ひいては死刑制度への論争に波及するのを恐れ、執行に踏み切ったという見方」であるのならば、言葉を失う。

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  【http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%AF%E5%A1%9A%E4%BA%8B%E4%BB%B6

   ジャーナリストの青木理は、そもそも物証自体の提出経緯が極めて唐突に
  出てきて証拠自体が微細なものであることなどを挙げているほか、司法、警察への
  取材の蓄積や経験から、死刑は「確実」な件のみ執行をするという法務省の
  慣習を考えると、同時期に省および検察内部でDNA鑑定への信憑性が
  問題化していた足利事件が、確定死刑囚の事件ひいては死刑制度への論争に
  波及するのを恐れ、執行に踏み切ったという見方をしている。
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コメント
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