原案=辻則彦 『男たちの宝塚~夢を追った研究生の半世紀』より
脚本=中島淳彦
演出=鈴木裕美
出演
竹内重雄(たけうちしげお)=葛山信吾
星野丈治(ほしのじょうじ)=吉野圭吾
上原金蔵(うえはらきんぞう)=柳家花緑
大田川剛(おおたがわつよし)=三宅弘城
長谷川好弥(はせがわよしや)=佐藤重幸
竹田幹夫(たけだみきお)=須賀貴匡
山田浩二(やまだこうじ)=猪野学
君原佳枝(きみはらよしえ)=初風諄
池田和也(いけだかずや)=山路和弘
おかしくて、切なくて、でもとっても楽しい期待を裏切らない舞台でした!
舞台が始まる前の客席には、昭和20年頃に流行ったのであろうと思われる歌がずーっとスピーカーから流れている。
やがて舞台が始まると一人の男が登場する。上原金蔵(柳家花緑)だ。続いて玉音放送が流れそして舞台には正面の高いところに扇型の板に「清く正しく美しく」と書かれたがらんとした部屋、ここは宝塚の稽古場、そこへ池田(山路和弘)が入ってきて上原に君が小林先生に宝塚男子部をと言ったおかげで男子部の創設が決ったという。
上原がピアノを弾きだす・・・、花緑さん、とってもお上手なんだ! なんだかスゴイ芸達者な方(笑)
募集に応じて集まった男子部員達の中にはおよそ宝塚の雰囲気には似つかわしくない者もいる(^-^)例えば山田浩二(猪野学)はまるでやくざのような振る舞いや言葉遣いだし大田川剛(三宅弘城)は宝塚オーケストラのメンバーだったというが、とても不器用に見える。長谷川(佐藤)は旅役者の息子、そしてお人よしの竹内は電気屋だったとか(笑) 皆終戦までにはそれぞれに色んな事情を抱えていた、例えば人間魚雷回転とか、特攻隊員だったとか、長崎で原爆のきのこ雲を見たとか・・・。この宝塚男子部員達が何度も何度も丁寧なお辞儀をする場面が出てくる。この丁寧なお辞儀の事を「最敬礼」というのだが皆さんはこのことばをご存知だろうか?
腰を90度以上に前へ屈めて礼をする最高の敬意を表する礼の事である。例えば天皇陛下の前に出た時とか・・・、戦時中を知っている者にしか判らない言葉かも(笑)
この男子部へ入ると月給2,000円が支給されると言うが入団を希望したのはそれだけではなく夢が欲しかったのだろうと思う。それぞれが自分が抱いた夢に向かって稽古を始める。
男子部ももう1年を迎えようとしていた頃、ダンスのレッスンシーンがご披露された、 が、これが中々いけますのよ~(*^o^*) 最初の頃の棒が突っ立っているのかと思われたダンスがかなり様になってきていた! 皆さん、随分練習されたんだろうなぁ~と思いながら観ていた。
長谷川(佐藤重幸)人気劇団チームナックスのメンバーである佐藤さんも演技は確かだし裸になると決してムキムキではないけど、筋肉がとても綺麗についていてお腹の筋肉の割れはスゴイ!
そんな中にあって一際目立つのが星野丈治(吉野圭吾)だ! 彼だけは劇団の方からお願いしてきたプロのダンサーで、皆の指導に当たらせる為に雇い入れてきた人物、登場するやいなや見事なステップをご披露する! 吉野さん、やっぱり素敵~! これが観たくてね~(笑)
男子部に又入団してきた武田(須賀貴匡)はどうやら山田と知り合いらしい。山田がたいそう慌てて訳の判らぬ事を口走りながら部屋に引き込む(笑) 武田は母は戦災で亡くなり父は南方で行方不明だと語る。
この武田は闇市の愚連隊を名乗っていた山田浩二とは昔馴染みで山田の親が日本舞踊をやっていた事をばらしてしまい・・・(笑)やくざのような荒っぽい言葉で皆にいちいち食ってかかる山田を演じる猪野学さん、下着になると褌でレッスンをする(爆)この人が何で宝塚へ入団してくるの?と言った雰囲気で客席は大笑い!
そして池田が入ってきて良い知らせと悪い知らせが有るという。皆の希望によって悪い知らせが伝えられるのだがそれは男子部の中に宝塚の生徒に恋文を出したものがいるらしい。そして良い知らせは男子部から2名が公演に出られると言う話だった。選ばれたのは上原と長谷川・・・、星野は上層部は何を考えているのだと荒れ狂う。が、この話も恋文の犯人が突き止められる事が条件!言われる。リーダーの上原は部屋で寝ないで待っているから告白に来て欲しいと部屋にこもる。だが深夜になっても誰も来ない。
だが池田が最初に言ったようにこの男子部創設には多くの反対が有った。第一宝塚の生徒たちが大反対だったのだ。その為に偽手紙事件が起きた訳で犯人はどうやら宝塚の生徒のようだ。 そして良い方の話の詳細がわかる。配役は馬の足・・・(笑)
時が経ちショックを受けた馬の足だったがもう何公演かをこなしている様で舞台では長谷川が馬の足の練習を指導している。
やがて手紙の真相は後から入ってきた武田幹夫によって明らかにされるがこの武田を演じる須賀貴匡さんは私は初めてだったが爽やか系の中々のイケメンで歌もお上手(笑)
巷では天才少女歌手美空ひばりが誕生し歌声が流れているところで一幕が終わる。
二幕になるとかなり時間が経過しているようだが男子部は相変わらず大劇場へのデビューもなく皆悶々として懐疑的になり始めている。大田川が時折変な咳をしていて皆が病院へ行くように薦めるが大田川は聞かないでいたがとうとう竹内が付き添って病院へ行った。診断は肺結核、片方の肺が無いのだと言う。
そんな時宝塚男女合同公演の話が飛び込んできた。台本もある。その台詞を練習する為君原のおばちゃんまで借り出される。ここでダンスのシーンがあるのだが初風さんと吉野さんが二人で踊るシーンがツボだった(^^)/^
大田川が病院を抜け出して宝塚の練習場へ姿を現しそこへ池田がやってくる。「宝塚男子部の解散が決った・・・」
やがて池田が最後通告をする。男子部解散!
しかし・・・、舞台はここからが凄かった~!(笑)
中央からキラキラと電機の付いた、しかし宝塚の大階段とは比べ物にならないほどのちっちゃな階段がせり出してくる(笑) そして宝塚男子部員全員が燕尾服にステッキを持って登場し素晴らしいダンスのご披露だ。初風さんが時間稼ぎに舞台の袖で歌っている間に次は背中に羽根飾りを付け宝塚用語で言うシャンシャンを持って再登場・・・、私は全員の素晴らしいダンスを見ていて自然に涙が流れていた。吉野さんを除けば凡そダンスには縁の無いような方ばかりなのに、ここまで踊れるようになる為の練習と、宝塚男子部員のこれまでの夢と苦労が重なって見えたのだ。そう、夢だったのだ!夢を見て練習をつんだ8年間が散った瞬間・・・、笑いながら見ていたけど、とっても切なかった!
私はどうしてもこのレビューのシーンがもう一度観たかった! 広島公演はたったの1日だけなんだよ~(涙)
終演後すぐにDVDの申し込みをしたけど私と同じ思いの方が多くいらしたようだ。
役者さんについて
竹内役の葛山信吾さんはパンフレットやチラシではトップに来ていたのだ彼が主役だろうと思っていたのだが(笑)個性の強い面々の中に埋もれて意外に印象が薄かった。彼の舞台をはじめて観たのは「アンナ・カレーニナ」だったが、おとぼけのお笑いキャラがとっても上手だったのに驚いたが今回も同じ鈴木裕美さんの演出という事で、同じような役柄だった。彼は損をしたと思う(笑)
落語家の柳家花緑さんが、こんな舞台に出てくるとは思わなかった(笑) 本業の落語の方の活躍はよく知らないけど、TVで色んな番組によく出ていて、考え方がとても柔軟な人だとは思っていたけど・・・。この舞台ではある意味彼が主役だよ! 男子部創設のきっかけを作り部員から親しみを込めて大将と呼ばれ生真面目にリーダー役を務める上原のキャラがなぜか花緑さんに重なった(笑)ご本人はダンスの経験があるかどうかは知らないけどお兄さん(かな?)の小林十一さんがバレーダンサーだものね。
初風諄さんは男子部の面倒を見る賄いのおばちゃん君原佳枝役をとても味のある演技で見せている。実際でも、舞台の中でも昔取った杵柄という訳で歌を聴かせているけどまだまだ音程も確かだし、女役を引き受けて言う台詞もダンスも良かった! でもエリザベートのゾフィ以来だけど、お年を取られたかなぁ~? 少し背中が前かがみになられたような・・・。
それともこの役になりきっていたからか?
だがなんといってもこの舞台の主役はやっぱり吉野さんだよ!(^O^)/ 舞台へ出てきただけでパーーッと華やかな雰囲気を醸し出す。パンフを読むと宝塚の印象に残っている舞台は「エリザベート」だそうだ(笑)以前にトートをやりたいと言っていたけど、何時か吉野さんのトートで「エリザベート」観たいなと思う。
笑って泣いて大満足の舞台だった!DVDが早く来ればいいなぁ~!