あしあとーⅡ

日々のあれこれ、綴ったものが自分の足跡に

 『ミュージカル・シラノ』

2009年06月16日 | 観劇日記
6/10 広島厚生年金会館

台本・作詞=レスリー・ブリカッス
作曲=フランク・ワイルドホーン
演出=山田和也
キャスト
鹿賀丈史=シラノ・ド・ベルジュラック
朝海ひかる=ロクサーヌ
中河内雅貴=クリスチャン・ド・ヌーヴィレット
戸井勝海=ル・ブレ
光枝明彦=ラグノー
鈴木綜馬=ド・ギッシュ伯爵


ストーリー(パンフレットより)
17世紀中頃のパリ。近衛騎士シラノ・ド・ベルジュラックは、生まれつき人並みはずれた大鼻の持ち主。文武ともに比類なき才人として名を馳せていたが、権力と虚栄を罵倒する辛辣な言葉は多くの敵を作り、貴族でありながら貧窮に甘んじていた。彼は従妹のロクサーヌを深く愛していたが、醜い容貌を恥じて打ち明けられず、かえってシラノと同じガスコン青年隊の美男クリスチャンとの恋の取り持ちを頼まれてしまう。シラノの仲介で2人は恋を語り合うようになるが、口下手なクリスチャンはシラノから教えられた通りに愛の言葉を語り、やがてロクサーヌはその言葉の美しさの方に惹かれていく。

ド・ギッシュ伯爵の謀略により、ガスコン青年隊は戦地へ赴く事になり、出征の前夜クリスチャンはロクサーヌと結婚した。戦場でも、シラノは秘かにクリスチャンの名前でロクサーヌ宛の恋文を毎日書き送り、感激した彼女が戦場にクリスチャンを訪ねて来たので、彼は初めてシラノの真実の心を知り彼女への愛を打ち明けるよう勧めたが、その後クリスチャンが戦死して、嘆き悲しむ彼女の姿を見ては、シラノは打ち明けかねたのだった。
それから15年後、クリスチャンを諦め切れないロクサーヌは、未だに尼僧院で祈りの日々を送っている。毎週訪ねて来るシラノと彼の思い出を語るのが唯一の楽しみであった。
ある日シラノは卑怯な反対者の不意打ちで頭に瀕死の傷を負い、傷を隠してロクサーヌを訪ね、昔クリスチャンの名で送った手紙の1節を夢見る様に暗誦した。ロクサーヌは初めてすべてを悟り、シラノの愛情に気づいたが、彼は苦しい息の下から、尚も否定するのだった。彼は最後まで世の権力と虚栄を罵りながら倒れ、彼女は息を引き取った彼の体にすがって泣き伏すのだった。

舞台が始まると大勢の人がいて早速歌が始まったのだが、その中から突然に戸井さんの歌声が聞こえてきた! 
えぇーーッ! どこに居るっ???・・・(爆笑)
最初から登場だった!そして最後までシラノを案じ支え続ける本当の友人ル・ブレとして殆どのシーンに登場していたのだがソロが少なくて残念だった。でも良く通る優しい歌声はやはり素晴らしい!
肩からマントを斜めに掛けお髭の顔にロングヘアーがよくお似合いだった。
ミュージカルを観ていつも思うことは最初に観たときは音楽に馴染みがないので物語に入り込めないもどかしさを感じてしまう。その後何度も観るうちに音楽を覚え、新たな感動に浸ることが多い。それでも印象的なシーンに歌われた曲とか心に留まる歌は有るものだけど、今回のシラノには飛びぬけて耳に残る音楽は少なかったように思う。強いて残ったといえば「我らガスコン」の歌かな(^_^)v

ロクサーヌから2人だけで話がしたいと言われ有頂天で待っていたのに打ち明けられたのは「クリスチャンが好き!取り持って欲しい!」・・・ショック!(笑)
もともとこのシラノというお芝居は喜劇&悲劇なので笑える場面がとても多いのだが、シラノ役の鹿賀さん、とっても上手にシラノの喜劇の部分を演じていたと思う。
大きな鼻のメイクも決して不自然ではなくかえってチャーミングに見えた時もあった。唯大きな付け鼻の所為なのか歌の歌詞が篭ってはっきりと聞き取れない部分が多かった。
それと私は鹿賀さんの喉にかかる歌声がどうしても好きなれないのだなぁ~。
そんなシラノに対する中河内クリスチャン、彼は広島出身だそうだが舞台でお目にかかるのは多分始めてだろうと思う。物語の設定どおりのハンサムでやや不器用で・・・(笑)クリスチャンそのまま。そんなクリスチャンとシラノとの出会いは、シラノが武勇伝を語るそのそばから「鼻・・・鼻・・・」とシラノが嫌がる鼻に話題を振る。
だが愛するロクサーヌに頼まれたシラノはクリスチャンにロクサーヌの思いを伝え力をあわせてロクサーヌの心を掴もうと歌うのだが・・・(笑)
♪~シラノ「この知識 この知性」
  クリスチャン「この美貌」
  シラノ「この剣とこの腕力」
  クリスチャン「この美貌」・・・これしか知らんのかい?と言うくらいこのフレーズを繰り返す(爆)
こんな具合にボキャブラリーが少ないと言うか頭が悪いと言うか・・・、その間の抜けたクリスチャンが中河内クンにそのまま重なった。申し訳ないm(_ _)m
でもいい笑顔で「この美貌」と繰り返す中河内クンがとっても可愛いよ。
そしてバルコニーの場面になる。
シラノの口移しの言葉で愛を囁きロクサーヌの心を捉えたのに、自分の言葉で喋りたいと言い始めた言葉・・・
クリスチャン「僕は君を愛している」
ロクサーヌ「知っているわ、それで・・・」
クリスチャン「僕は君を愛している」
ロクサーヌ「わかったわ、何時ものように美しい言葉で私を酔わせて・・・」
クリスチャン「僕は君を・・・、とっても愛している」  会場大爆笑、ロクサーヌは怒って部屋の奥に引っ込んでしまう。

だがシラノの力を借りてようやくクリスチャンはロクサーヌと抱き合いキスをする。
バルコニーの下でその気配を淋しく受け止めるシラノが哀れ!
ド・ギッシュ伯爵の策略によってガスコン隊は戦場へ赴く事になり、ロクサーヌはとっさの機転でクリスチャンと結婚式を挙げてしまう。
戦場へ行くクリスチャンのことを面倒見て欲しいとシラノに頼み込むロクサーヌ。

第2幕
戦場ではシラノがクリスチャンの名前でせっせとロクサーヌのところへ手紙を送り届けていた。
だが食べ物もなく兵士たちは飢えていた。
毎日届く愛の手紙に居ても立っても居られなくなったロクサーヌが食べ物を持って戦場へ駆けつける。この時の赤い服を着たロクサーヌがとっても美しい!
ロクサーヌの朝海ひかるさん、元宝塚・男役の方なので背が高い。そして声も男役の雰囲気を残した野太い声だからか、この戦場のシーンが一番ぴったり来た感じ(笑)
そこでクリスチャンが遂に真実に気付く。自分の名前で毎日手紙を書いていたシラノは、本当はロクサーヌのことを愛していたのではないか?
同時にロクサーヌも、もしかしたら自分ではなくシラノを愛しているではないかという疑い。
自分という姿を通して、ロクサーヌが本当に見ているのはシラノだったのだとクリスチャンは気付く。
クリスチャンはシラノに打ち明けろと説得するがそんなクリスチャンが戦死してしまう。

時は移りロクサーヌは修道院でクリスチャンの冥福を祈りながら時折訪れるシラノとクリスチャンの思い出話をするのが唯一の生きがい。
舞台には赤い落ち葉が一面に広がり時折空からもヒラヒラと舞い落ちる。照明に映えてとても美しい!
だがある日いつも定刻に訪れるシラノが遅刻して現れた。暴漢に襲われたシラノは頭に深い傷を負っていた。シラノはクリスチャンの最後の手紙を見せて欲しいとロクサーヌに頼む。
だが日も暮れて明かりもない中でシラノはその手紙を読み始める。ロクサーヌはやっと気が附いた。「私が愛していたのはその美しい言葉を話すお兄様・・・」
「クリスチャンのことを思って泣くとき、その涙の一粒だけでも、俺を想って泣いてくれ」 ついに英雄シラノに死が訪れた。

この広島公演が大楽だった「シラノ」・・・、広島出身の戸井さんと中河内さんへの応援拍手も多かったであろうと思った。何度も繰返されたカーテンコールでは最初からスタンディングオベイション、その終わりごろ鹿賀さんが再演あり!と口にした(^^)
次回観る時には少しは音楽が耳に残っているだろうか?