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無謀にも大ネタに挑戦

2015-06-01 22:14:57 | 落語
6年前に綴った落語日記のアーカイブ。ご笑覧ください。


▼無謀は承知で挑戦
 落語塾13期が始まった。今回は受講生の半数近くが入れ替わった。あたしが選んだ演目は「大工調べ」。大ネタだ。まともにやれば4、50分たっぷりかかる大作。そんな大ネタに落語初心者が挑戦するのは無謀である。そんなことは百も承知でチャレンジした。

 落語塾での持ち時間は15分と決まっている。短かい「大工調べ」はないか、と探し当てたのが故三代目春風亭柳好の「大工調べ」。約18分だからマクラを縮めれば、なんとか15分以内に収まる。

▼堪忍袋の緒が切れた
 「大工調べ」の聴きどころは後半部だ。堪忍袋の緒が切れた大工の棟梁が、因業大家に啖呵をきるところ。ここをトトーンと粋にやらないと話にならない。とは言うものの、職人気質の小気味いい啖呵を演じるとなると、これがなかなか難しい。

 しかし、自分で「大工調べ」を選んだのだからやるしかない。柳好の音源を繰り返し聴き、噺をすべてノートに書き写した。「おう、与太郎、・・・どうしたいお袋?」で始まる粋な江戸口調。耳で聴いているだけで、面倒見のいい鯔背(いなせ)な棟梁の姿が目に浮かぶ。

▼スッと席立つ隣席の客
 次は口に出して喋りながら憶える番だ。落語塾に稽古に行く当日も、バスや地下鉄の中で反復練習。1人でブツブツ呟いていると、隣の中年女性がスッと席を立った。毎度のことだから慣れっこになった。

 久しぶりに会う落語塾の仲間が、「今度は何をやるの」と質問。「大工調べだよ」と言うと、異口同音に「あんな大ネタやんのかい」と驚いた。さらに「あれは大変だよ。セリフが難しい」と仲間。「分かっている」と思いながらも、だんだん自信が揺らぎ出した。

▼自信のなさから躊躇
 師匠から名前を呼ばれて高座に向かう数秒の間に、「きょうはヤメとけ」と別のあたしが「待った」をかけた。途端に、口から出たのは別の演目。「大工調べ」をしっかりと憶えていない自信のなさが一瞬、躊躇させた。こんなことではダメだ。挑戦すると決めたのだから「大工調べ」を投げ出すようなことはしない。

塾の初級で「牛ほめ」を覚えた。前回の中級1回目で「粗忽長屋」を習得した。中級2回目の今回は欲張って「蛙茶番」と「大工調べ」の2つを必ず憶える。
(2010年1月23日記)  以下次号に続く。

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