扇子と手拭い

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

懇切丁寧な師匠の指導

2015-06-02 08:19:56 | 落語
6年前に綴った落語日記のアーカイブ。ご笑覧ください。


▼師匠の目の前で「蛙茶番」
 「蛙茶番」を初めて聴いたのは寄席の桂小文治師匠だった。腹を抱えて笑った。その師匠が「蛙茶番」の通し稽古をつけてくれた。いくつかの場面を実際に演じて見せた。仕草が粋だ。上手い。本物の噺家の「すごさ」を目の当たりにした。

  落語塾で小文治師匠から教えてもらうのは今回が初めて。師匠の寄席がきっかけで挑戦した「蛙茶番」。その師匠の目の前で「蛙茶番」をやるので心なしか緊張した。仕上げのつもりで高座に上がる。目立ったトチリもなく最後まで話し終えた。

▼江戸っ子は「いい男」
 「3分ほどオーバーしましたね」と師匠。次いで、落語の中の「色男」という言葉は大阪弁で、江戸っ子は色男とは言わず「いい男」と言うと指摘された。小僧の定吉は子供だから歩く動作は、袖の袂の端を握って前後に振ると「子供らしく」見えると師匠。

 または、胸元で両手を丸めるようにすることで、子供らしさを表現する。一方、建具屋の半次。袂に手を突っ込んで左右を軽くユラユラさせると粋に見え、成人したおとなの歩きになる、と注意された。

▼尻っばしょりの仕草
 チョイトばかり伝法な半次が、見せ場で威勢よくクルッと尻っばしょりをする。ここで大事なのが手。尻っばしょりをしたのだから、持ち上げた着物を手でつまんでいないとズリ落ちてしまう、というのだ。こんな細かな所までは気付かなかった。

 まくり上げた着物の裾端を左手で掴み、右手には手拭いを握って輪を描き、見得を切る。歌舞伎でやるあの仕草である。粋な表現で江戸っ子、半次のひょうきんぶりを際立たせようというわけだ。

▼声の表現で距離感
 また、半次が岡惚れしている小間物屋のひとり娘、ミーちゃんが芝居を観に来ると聞き、チョイトお湯屋に行って「いい男」に、という場面。呼びに来た小僧が「半さーん、何してんのー。早くしないとミーちゃん、帰っちゃうよ」と声掛けするところ。

 ここは、大きな声で叫ばないで少し甲高い小声で呼びかける。そうすることで距離感が出てくる、と教えてくれた。番台のそばから銭湯の洗い場に向かって小僧の定吉が、半次に声掛けする場面である。

▼懇切丁寧な指導
 小文治師匠はこのほかにも場面ごとに、いちいち自分で演じて見せて、事細かに稽古を付けてくれた。こんなに懇切丁寧な指導はほかにはない。桂小文治師匠は平成20年度に芸術祭優秀賞を受賞した噺家だ。

 そんな大物からじかに稽古をつけていただけるのはありがたい。実際に目の前で見せてくれると、あたしにはよく分かる。充実した稽古だった。  (2010年1月30日記)  以下次号に続く。

コメントを投稿