湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

雫の詩パート5

2016-02-29 07:22:40 | オリジナル
共通テーマ「雫」でNが書いた詩を投稿します。

友だち

私のなかに
雫がひとつぶあって
揺らいでいる
雫のなかには 去っていく友だち
うしろ姿が見える
みな茶色い髪の毛が薄くなり
手には皺
でも 旅行に行けるのは今のうち
今年も皆で行こうよと言われた。
選んだのは真冬の永平寺

でも、ほんのちょっとのことで いさかいをして
やめます、と皆にメールを出した
そのとたん
胸のなかにしずくが生まれて
三人の後ろ姿が映っている
いちばん後ろの友だちのオレンジ色のリュック
わたしが親をなくしたときに
さり気なくこの町に集まってくれた高校の同級生たち

ひょんなことで いやだと思った
(ヒドイコト、イウノネ)
あたしは 行きたくない

相変わらず
将来の生き死にのことを考えているのだろう
わたしのように
夏のキリギリスみたいな生活はしていないから
確定申告や年金の話で盛り上がる
修理中の姫路城に行ったのよ
蔵王の一人旅のツアーに行ったのよ

久しぶりにメールを出した
 旅行良かったですか・・・
なかなか返事が来なくて
二十日ぶりにぽつりと
「五十肩が痛くてメールも打てません。早く春が来ないかな・・・」
わたしの雫が大きくなる
垂れそうに大きくなる
垂れたらもう、なみだだから
垂れないように 押えて
永遠に後ろ姿の友だちを写したまま、ぶらさげてある。
表情は見えなくて
うめづさんの茶髪と揺れるオレンジのリュックのみ見えていて
早朝、永平寺に行くところですか
そのままの姿で ぬれたまま 動かず
コメント
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