湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

「芽」の詩パート6

2015-03-13 01:35:51 | オリジナル
芽をテーマにした競作詩、早くも6作目です。今日はAの作品です。

君が芽生えたせいで

生まれた時から晩年だった
全てに失望し退屈していた
物と心のあらゆる貧しさを見た
破滅するために努力してきた
自暴自棄の後悔に向けた航海だった

ある日
君の命を受け取るために両手を差し出した
開いた掌から蛾が飛び立った
美しい鱗粉が眩い君にかかり
その輝きに
唐突に未来を幻視した
君が芽生えたせいで
わたしはおかしくなったのだ
それ以来ずっと木の芽どき
多幸感が続くのは狂っている証拠

実は君と逢う前に逝こうとしていたんだよ
「死なずにいてくれてよかったよ
あなたが好きだから」
君はさらっと言った
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