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永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(407)

2009年06月06日 | Weblog
09.6/6   407回

三十四帖【若菜上(わかな上)の巻】 その(16)

 朱雀院はご病気を堪えつつ、この御裳著を終えられて三日後に、御剃髪なさいました。僧形にお変りになられたお姿に、女御更衣の方々もどうしてよいか分からぬほど、泣き惑っております。尚侍の君(朧月夜)はその時まで院のお側にぴたりと付き添っておられました。

「山の座主よりはじめて、御いむことの阿闇梨三人侍ひて、法服などたてまつる程、この世を別れ給ふ御作法、いみじく悲し。」
――比叡山の天台座主をはじめ、受戒の為の僧三人がお側について、院に法服などをお着せするご出家の儀式はひどく悲しい――

 何日か後、源氏は、朱雀院が少しご気分がよろしい時に参上なさって、僧形のお姿に涙し、しみじみと昔の御物語などなさって、さて、

「御心の中にも、さすがにゆかしき御有様なれば、思し過ぐし難くて」
――やはり、内心では矢張り女三宮のご様子に心が惹かれますので、黙っておられず――

 「恐れながら、私も老い先短くて途中でお世話できなくなりはしないかと、不安で、そのことだけがお気の毒ですが……やはり、私が心の底からお世話申しあげましょう。」と、お引受けになったのでした。とは申し上げて来ましたものの、その後源氏は紫の上にどう切り出して良いものか、きまり悪く思い悩まれるのでした。

 紫の上も、

「かかる御定めなど、かねてもほの聞き給ひけれど、さしもあらじ、前斎院にも懇ろに聞こえ給ふやうなりしかど、わざとも思しとげずなりにしを、など思して、然る事もやある、とも問ひ聞こえ給はず」
――女三宮を源氏にという評儀は前にもちらっとお聞きになっておられましたが、そんなことはあるまい、前にも朝顔の斎院を熱心にお求めになったようでしたが、特に思いを遂げる事もなく、終わってしまったこともありましたので――

 と、そのような事実を、源氏にお聞きになるようなこともなさらず、何気ない様子で振舞っていらっしゃるのでした。

ではまた。


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