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永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(460)

2009年07月29日 | Weblog
09.7/29   460回

三十五帖【若菜下(わかな下)の巻】 その(14)

 源氏は四十七歳になりました。
朱雀院の五十の御賀は、まず、宮中から盛大にお始めになるということで、日程がぶつからない様にすこし日を置いて、六条院では二月十日頃にと決めました。
楽人、舞人が六条院に参上して、奏楽の催しが絶え間なくおこなわれております。

 源氏は女三宮におっしゃいます。

「この対に常にゆかしくする御琴の音、いかでこの人々の筝・琵琶の音も併せて、女楽こころみさせむ。ただ今の上手どもこそ、さらにこのわたりの人々の御心しらひどもにまさらね」
――紫の上がいつもお聴きになりたいとおっしゃている、あなたの琴の音に、何とかして女房たちの筝や琵琶を合わせて、女楽をさせてみたいものですね――

「……そのかみより、またこの頃の若き人々の、ざれよしめき過ぐすに、はた浅くなりにたるべし。琴はた、まして、さらにまねぶ人なくなりにたりとか。この御琴の音ばかりだに、伝へたる人をさをさあらじ」
――昔よりこのかた、若い人たちが洒落て気取って弾くなど、大分浅はかになっているようです。七弦の琴はなおさら、今は習う人がなくなったということですよ。あなたの琴の音程度にも、お弾きになる人はそうそういないでしょう――

 女三宮は、無邪気に微笑まれて、源氏に褒められたことを嬉しくお思いになります。そのご様子は、

「二十一、二ばかりになり給へど、なほいといみじく片なりにける、きびはなる心地して、細くあえかにうつくしくのみ見え給ふ」
――お歳は二十一、二歳におなりですが、やはりまだ成熟したところのないあどけなさで、細くたおたおとして、ただただ愛らしくばかりお見えになります――

源氏は、

「院にも見え奉り給はで年経ぬるを、ねびまさり給ひにけりと御覧ずばかり、用意加へて見え奉り給へ」
――朱雀院には長らくお会いしていなかったのですから、今度の対面の折には、立派に成人なさったとお喜びになられますように、万事お気をお配りになってお目通りなさるのですよ――

 と、お教えになります。なるほど、このような親代わりの御後見がなければ、子供っぽさばかりが目につくことであろうと、お付きの人々、女房たちもお見上げになるのでした。

◆心しらひ=心配り、配慮

◆きびは(なる心地)=きびは=幼くて弱々しいさま

ではまた。

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