永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(862)

2010年12月05日 | Weblog
2010.12/5  862

十六帖 【総角(あげまき)の巻】 その(39)

 一方、大君は、

「知らざりしさまをも、さはさはとはえ諦め給はで、ことわりに心ぐるしく思ひきこえ給ふ」
――(このような成り行きを)ご自分は全く知らなかった事情として、きちんと釈明なさることもできずにいらっしゃいます――

「人々も、『いかに侍りしことにか』など、御けしき見奉れど、おぼしほれたるやうにて、たのもし人のおはすれば、あやしきわざかな、と思ひ合へり。御文もひきときて見せ奉り給へど、さらに起きあがり給はねば、『いと久しくなりぬ』と御使わびけり」
――侍女たちも「いったいどうしたことでしょう」と姫君たちのご様子をうかがっておりますが、大君が、ぼおっとなさっていらっしゃるので、妙なこともあるものと、思い合っております。大君が匂宮の御文を開いて中の君にお見せになりますが、中の君はいっこうに起き上がろうともなさらない。使いの者は「ひどく手間取ることよ」とじりじりしています――

 匂宮の御文の中の歌、

「世のつねに思ひやすらむ露ふかき道のささ原わけて来つるも」
――ありふれた恋心とでもお思いなのでしょうか。露深い山道の笹原を分けて通いましたのに――

「書き馴れ給へる墨つきなどの、ことさらにえんなるも、大方につけて見給ひしは、をかしう覚えしを、うしろめたう物思はしくて、われさかし人にてきこえむも、いとつつましければ、まめやかに、あるべきやうを、いみじくせめて、書かせ奉り給ふ」
――(匂宮の)書き馴れた御筆つきなどが、今日はまた格別にあでやかなので、ただのご交際としてご覧になった時は、趣深く思われましたのに、今は中の君のことが気懸りで、ご自分が利口者ぶって代筆申し上げますのもひどく遠慮されますので、こうした折のお返事の仕方などをお教えして、厭がる中の君を急きたててお書かせになりました――

 匂宮はお忍びのお出かけを他人に気どられまいと思っておられましたのに、使いの殿上童が仰山な禄(ろく)を貰ってきましたのを、不愉快に思われて、それはきっとあの弁の君の仕業だといまいましく思っておいでになります――

では12/7に。


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