わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸81(ゲルト・クナッパー)

2012-03-28 22:00:57 | 現代陶芸と工芸家達
西ドイツに生まれ、現在茨城県久慈郡大子町(だいごまち)に、窯を築き国内外で高い評価を受けている

陶芸家に、ゲルト・クナッパー氏がいます。

1) ゲルト・クナッパー : 1943年(昭和18) ~

  ① 経歴

   ) 西ドイツ・ヴッパーターに生まれます。当地の美術学校で、デッサンや陶器を学びます。

     17歳の時、ヨーロッパや米国、インド、東南アジアなど世界各地へ、シッチハイクの旅に

     出ます。日本へ来るまで6年を費やしています。 目的はそれぞれの国々の古い歴史や、

     文化遺産を自分の目で確かめる事と、彼は述べています。

   ) 1966年 船でニューヨークから横浜へ渡ります。(その間、船で働いていた様です。)

     ニュウヨークの知人を通し、名古屋の教師を紹介され、更に加藤唐九郎を知る事になります。

     唐九郎の縁で、瀬戸の鈴木清々に師事する事に成ります。

     その後も、本国に帰国したり、英国に渡たりしています。

  ) 英国で、バーナード・リーチから紹介状を貰い、再来日し、益子の島岡達三氏の指導を

     受ける事になります。益子では塚本製陶所で修行を重ね、1969年に、益子で自分の重油窯を

     築き、独立します。

  ) 1971年 第一回日本工芸展(毎日新聞社創刊百年記念)の、一般公募部門の第一部(伝統の

     陶技による作家の一品製作で、使途を有しているもの)で、「デコラティヴプレート」が

     優秀作品賞の文部大臣賞を受賞します。この受賞により、彼は一躍名を馳せます。

   注:、「デコラティヴプレート」は径が56cm、高さ14cmの平鉢で、見込みには、備前焼風の

     牡丹餅と呼ばれる、丸い抜け文様が見られます。自然釉の様に見える窯変も、人工的に長石と

     灰と塩を調合したものを、振り掛けたそうです。

  ) 1972年 現代日本陶芸アメリカ・カナダ巡回展に出品し、同年西独で個展を四回開きます。

    又、伝統工芸新作展で「縄文式花器」が入選を果たします。

    その後も、中日国際陶芸展、西独大作家展(於英国)、イタリア国際陶芸展、 ミュンヘン国際工芸

    博覧会などに、出品を重ね、海外でも活躍しています。

    尚、国内外の美術館、公共施設等で作品がコレクションされています。

  ) 1975年 茨城県大子町(袋田の瀧に近い場所)に移住します。空家であった豪壮な古民家の屋敷を

     改装します。ここに窯を築き、前の持ち主の太郎坂家の名を取り、太郎坂窯と名付けます。

     以降この地を根拠として、作家活動を続けます。

 ②  ゲルト・クナパー氏の陶芸

   彼の作品は、現代生活における、インテリアとして使われる事を前提にした物です。

   作風としては、渦巻き文や同心円状に深く彫り込んだ文様や、皿や壺に蝋抜き技法による作品や、

   板作りによる花瓶などの他、磁器の作品にも挑戦しています。

  ) 彫込文の作品

    厚めに轆轤挽きした作品に、彫刻刀などを用いて、同心円文や、放射状文を深く彫り込んだ

    作品です。縄文土器を思い出させる、ダイナミックな作品です。

    「灰釉菊文皿」(1979)、「灰釉青海波文変形鉢」(1982)、「灰釉青海波文大飾皿」(1982)、

    「灰釉青海波文削文花瓶」(1981)、「白磁青海波削文花瓶」(1981) 等の作品があります。

  ) 蝋抜きの作品

    素焼きした作品に蝋を塗り、釉を弾かせ部分的に施釉しない方法です。

    渦巻き文や波紋などのシンプルな文様が多いです。

    「灰釉渦巻文大飾皿」(1975)、「灰釉波模様一輪挿」(1978)、)、「灰釉波文変形花瓶」(1981)

    「板作波文三角花瓶」(1982)などの作品があります。

  ) 灰釉、灰被焼締

     灰被は、人工的に行っています。松灰を「ふのりと水」に溶いて素焼きに塗る方法と、

     「ふのり」を作品に塗ってから、松灰を降り掛ける方法を取っています。

     彼は。プロパンガス窯と、南朝鮮風の登窯、塩釉用の窯を持ち、ガス窯か登窯で焼成しています。

  ) コバルト釉を用いた作品

    彼の作品は、灰釉を基本にし、色釉として酸化コバルトを0.2%混ぜた青色を呈するコバルト釉を

    作品に筋(線)状に流し掛けて文様を付けています。

    「コバルト流掛釉変形花瓶」(1980)、「灰釉・コバルト釉・鉄釉流掛水指」(1982)などの

    作品があります。

  )  彼の作品は、洋の東西の文化が融合させ、その調和の良さが見所となっています。

    近年は、陶芸の枠を超えて、ブロンズなどのオブジェにも進出しているそうです。

  ・  尚、2010年 開窯40周年記念 ゲルト・クナッパー作陶展が、水戸京成百貨店アートギャラリー

     1・2で開催されました。

次回(辻協氏)に続きます。
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