あるニヒリストの思考

日々の思いを綴る

人間は、皆、ストーカーになる可能性がある。(自我その154)

2019-07-10 17:58:14 | 思想
恋人のいる人、結婚している人は、破局・破綻すれば、皆、ストーカーになる可能性ある。相手が別れを告げれば、自分がストーカーになり、自分が別れを告げれば、相手がストーカーになる可能性がある。なぜならば、既に、カップルという個人的な愛を媒とした恋愛関係の構造体が成立し、二人は、恋人という自我を持って行動していたからである。既に、夫婦という社会的にも認められた愛を媒とした婚姻関係の構造体が成立し、二人は、夫・妻という自我を持って行動していたからである。また、実際にデートなどしていなくても、自分の思い込みだけで、相手とカップルという構造体を形成していると思い込んでいれば、相手がこちらに対して拒否反応を示し、破局したと思えば、やはり、ストーカーになる可能性がある。なぜならば、自分の心の中では、既に、カップルという個人的な愛を媒とした恋愛関係の構造体が成立し、恋人という自我を持って行動していたからである。人間は、観念の動物だから、片思いであっても、カップルという構造体を形成することができるのである。さて、破局・破綻の苦悩とは、一般に、相手の愛を失うことから来る苦悩だと解釈されているが、実際は、相手の愛を失うと同時に、カップルという構造体が破壊され、自らの恋人という自我を失うことになるから、苦悩し、相手の愛を失うと同時に、夫婦という構造体が破壊され、自らの夫もしくは自らの妻という自我を失うことになるから、苦悩するのである。だから、カップルという構造体を形成していない片思い、すなわち、一般的な片思いは、相手がこちらに対して拒否反応を示せば、失恋の苦悩はあるが、カップルという構造体の破壊は無く、暫くすれば、立ち直り、次の恋に向かうことができるのである。それでは、構造体とは、何か。それは、人間の組織・集合体である。それでは、自我とは、何か。自我とは、構造体における、自分のポジションを自分として認めて行動するあり方である。人間は、いついかなる時でも、常に、ある構造体に所属し、ある自我を持って行動している。構造体に所属していない行動は存在しない。自我を持たない行動も存在しない。構造体と自我の関係について、具体的に言えば、次のようになる。家族という構造体では、父・母・息子・娘などの自我があり、夫婦という構造体では、夫・妻の自我があり、学校という構造体では、校長・教諭・生徒などの自我があり、会社という構造体では、社長・課長・社員などの自我があり、店という構造体では、店長・店員・客などの自我があり、電車という構造体では、運転手・車掌・客などの自我があり、仲間という構造体では、友人という自我があり、カップルという構造体では恋人という自我があるのである。だから、恋愛関係が破局すれば、カップルという構造体が破壊され、恋人という自我を失い、愛の喜びの場を失うから苦悩するのである。婚姻関係が破綻すれば、夫婦という構造体が破壊され、夫もしくは妻という自我を失い、愛の喜びの場を失うから苦悩するのである。愛の喜びは、自分が相手を愛するだけでは得られず、自分が相手から愛されて、初めて、得ることができる。セックスの快楽は、相手も快楽を得ているという喜びなのである。「人は愛する人に愛されたい」のである。つまり、恋愛関係の破局の苦悩、夫婦関係の破綻の苦悩とは、自分が相手のことを愛しているのに、相手は自分を愛していず、愛の喜びを味わえなくなったことから来る苦悩なのである。さて、恋人から別れを告げられ、カップルという構造体が破壊され、恋人という自我を失った男性は、どのような気持ちになり、どのように行動するだろうか。恋人から別れを告げられ、カップルという構造体が破壊され、恋人という自我を失った女性は、どのような気持ちになり、どのように行動するだろうか。妻から別れを告げられ、夫婦という構造体が破壊され、夫という自我を失った男性は、どのような気持ちになり、どのように行動するだろうか。夫から別れを告げられ、夫婦という構造体が破壊され、妻という自我を失った女性は、どのような気持ちになり、どのように行動するだろうか。いずれも、愛の場を失い、愛の喜びを得られなくなったから、同じような気持ちを抱き、同じように行動する。誰しも、「今まで、ありがとう。」などとは言わない。そのような気持ちには決してならない。それほど、大きく、深層心理の心が傷つけられたのである。なぜという思いと今まで尽くしてきたのにという思いで、相手の不実を責める思いが募る。実際に、多くの者は、理由を尋ねたり、相手の不実を責めたり、時には、詫びたりして、相手の気持ちを取り戻し、恋愛関係・夫婦関係を維持しようとするが、ほとんどの場合、相手の気持ちは変わらない。すると、別れを告げられた人は、辛い気持ちから逃れようとして、表層心理が(意志で)、相手を嫌い、恨み、軽蔑しようとする。つまり、相手を下位に見ることによって、恋愛・婚姻の対象者から外そうとするのである。女性は、たいていの人が、この方法が功を奏し、表層心理(意志)の思いが深層心理(感情)に浸透し、早晩、相手への恋愛感情が消えてしまう。しかし、男性は、女性に比べて、深層心理(感情)が強く、表層心理が(意志で)相手を嫌い恨み軽蔑しようとしても、それが深層心理に浸透せず、なかなか相手を忘れることができない。中には、全く忘れることができない者がいる。むしろ、相手との距離を縮め、つきまとうことによって擬似恋愛をして、失恋の苦しみから逃れようとする者まで現れる。ストーカーの誕生である。しかし、ストーカーは、相手がこの付きまといを嫌がり、自分を軽蔑していることを知り、もう相手の心が戻ってくることが無いとわかった時、深層心理は、この苦しみをもたらしたのは相手だ、この苦しみから逃れるには相手を抹殺するしか無いと考え、凶行に及ぶのである。もちろん、ストーカーの男性の表層心理(理性にもは、凶行に及べば、自分の身が破滅することはわかっている。だから、表層心理(理性)は深層心理(感情)を抑圧しようとする。しかし、深層心理(感情)が強ければ、表層心理(理性)の抑圧は功は奏さない。そして、凶行が実行されるのである。彼は、彼女が生きている間は、カップルという構造体・夫婦という構造体が破壊され、恋人・夫という自我を失わされたという屈辱感から逃れることができない辛さ、彼女をまだ愛しているのにもう二度と愛の場に立てず愛の喜びを味わうことができないという絶望感から来る苦しさから、彼女をこの世から抹殺しようと思い立ったのである。しかし、決して、彼は異常心理の持ち主ではない。彼の苦悩は男性失恋者共通の苦悩である。彼のように実行する人が少数なだけなのである。たいていの男性は、表層心理(意志・理性)が深層心理(感情)を、ある場面で、抑圧できただけなのである。しかし、思い(深層心理)はストーカーと同じである。そして、稀れではあるが、女性にもストーカーが存在し、それは、男性ストーカーと同じ思いをし、同じような行動を取る者が存在する。つまり、男性も、女性も、恋人のいる人、結婚している人、片思いをしている人は、皆、ストーカーになる可能性があるのである。


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