おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

焼肉ドラゴン

2023-05-04 07:03:22 | 映画
「や」行になります。
「や」の前2回は以下の通りでした。
2020/5/27「やくざの墓場 くちなしの花」「屋根の上のバイオリン弾き」「山猫」「山の郵便配達」「闇の子供たち」「やわらかい生活」「やわらかい手」「ヤング・ゼネレーション」
2021/12/19「約束」「約束の旅路」「山の音」


「焼肉ドラゴン」 2018年 日本


監督 鄭義信
出演 真木よう子 井上真央 大泉洋  桜庭ななみ キム・サンホ
   イ・ジョンウン 大谷亮平 ハン・ドンギュ イム・ヒチョル
   大江晋平 宇野祥平 根岸季衣
 
ストーリー
高度経済成長期の真っ只中、大阪で万国博覧会が開催される直前。
関西の地方都市の一角で、小さな焼肉店「焼肉ドラゴン」を営む龍吉(キム・サンホ)と妻・英順(イ・ジョンウン)は、静花(真木よう子)、梨花(井上真央)、美花(桜庭ななみ)の三姉妹、一人息子の時生(大江晋平)と共に暮らしている。
第二次世界大戦で左腕を失った龍吉は、故郷の済州島を追われて来日した英順と再婚し、ここで小さな焼肉店“焼肉ドラゴン”を開業し、4人の子どもたちを育てるために身を粉にして働いてきたのだった。
店内は、李哲男(大泉洋)と梨花の結婚を巡って騒ぎたてるなど、常連客たちでいつも大賑わいだ。
辛い過去は決して消えないが、毎日懸命に働き、家族はいつも明るく、些細なことで泣いたり笑ったりの日々。
「たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる……」それが龍吉のいつもの口癖だ。
そんな中、中学生になった末っ子の時生は学校でイジメに遭い心を閉ざしてしまう。
一方、次女の梨花は哲男と結婚したが、夫の哲男が幼なじみでもある長女・静花への恋心を今も捨てきれずにいることに苛立ちを募らせていく。
強い絆で結ばれた「焼肉ドラゴン」にも、次第に時代の波が押し寄せてくる・・・。


寸評
在日コリアンたちのドラマだが、同時に時代や民族を超えて困難や悲しみに直面する多くの人々への激励のドラマでもある。
それは龍吉の言う「明日はきっとええ日になる。たとえ昨日がどんなでも」に集約されている。
大阪人の僕は、大阪が舞台ということだけで興味が湧いた。
在日コリアンは生野地区に多く住まわれているが、ドラマの舞台は飛行場が近いから豊中地区だろう。
豊中からうどん汁を運んでくるシーンもあるし、かつて中村地区に不法占拠集落があった事実も後押しする。
大阪を舞台にすると何となく違和感が残る関西弁が話されるが、本作ではすんなり耳に入って来て、親しみやすかったことも良かったと思う。

導入部で哲男と梨花の大喧嘩が描かれるが、ここでは井上真央が頑張っていてこの映画の雰囲気を一気に感じさせてくれた。
井上真央は地味な女優だが、その影の薄さで妙な雰囲気を出すことが出来るいい女優さんだ。
梨花だけが韓国語を話せないのは、日本で育ったことで韓国語を必要としていなかったのだろう。
英順が韓国人学校に時生を転校させようとするのに対して、龍吉は頑として応じない。
日本で生きていくしかないという彼の強い決意の表れなのだが、梨花が日本語しか話せないことはそれを補完していたように思う。

在日コリアンが経験してきた歴史をドラマの背景として織り込みながらも、それをユーモアを交えて描いているので堅苦しい社会派映画とはならず、切実な話が続いた後に小ネタで笑いをとったりするので喜劇映画かとさえ思ってしまう。
哲男が静花に心の内をぶちまけるシーンは、なまじの恋愛映画よりも感動的だし、美花の不倫相手に対して、龍吉が自らの過去を語るシーンも胸を打ち、シリアスドラマとしての感動も描かれているのは好感が持てる。

僕は彼等の苦労を知らない。
戦争に翻ろうされた人々もいるだろう。
光州事件から逃れて日本にやって来た人々もいるだろう。
龍吉は戦争の犠牲者、英順は済州島の4.3事件の生き残りだ。
僕は戦争も、虐殺も経験していない。
それは幸せなことだと思う。
三姉妹たちはそれぞれ別の国へ旅立つ。
一人は北朝鮮へ、一人は韓国へ、一人は日本に残る。
朝鮮半島と日本の関係は、描かれた差別と共に未だに微妙だ。
離れていても家族としてつながっていると龍吉は叫ぶが、どうしても三姉妹の行く末を想像してしまう。
両親を演じた2人の韓国俳優、三姉妹を演じた真木よう子、井上真央、桜庭ななみなどの役者たちが支えた作品でもあった。


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2 コメント

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芝居に比べれば (指田文夫)
2023-05-11 21:23:36
近年の新国立劇場では、最高の作品だったと思え、それに比べると映画にすると感動は薄かった。
芝居では、泣きましたが、そこまではいかなかったと思う。
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そうだったのか (館長)
2023-05-12 07:07:38
舞台劇だったんですね。
知りませんでした。
大阪が舞台だったので見ました。
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