おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ロスト・イン・トランスレーション

2023-06-09 08:38:10 | 映画
「ロスト・イン・トランスレーション」 2003年 アメリカ / 日本


監督 ソフィア・コッポラ
出演 ビル・マーレイ スカーレット・ヨハンソン ジョヴァンニ・リビシ
   アンナ・ファリス マシュー南 田所豊 林文浩 竹下明子
   HIROMIX 藤原ヒロシ 桃生亜希子

ストーリー
ハリウッド俳優のボブ・ハリスは、ウィスキーのコマーシャル撮影のために来日する。
彼は滞在先である東京のホテルに到着すると、日本人スタッフから手厚い歓迎を受けるが、異国にいる不安や戸惑いも感じ始めていた。
さらに、息子の誕生日の不在を責める妻からのFAXが届き、時差ボケと共に気分が滅入ってしまう。
ボブは東京のホテルに到着した翌朝、エレベーターで若いアメリカ人女性、シャーロットと乗り合わせた。
彼女はフォトグラファーの夫ジョンの仕事に同行してきた若妻で、新婚にもかかわらず多忙な夫にかまってもらえず、孤独を感じていた。
ホテルで何度か顔を合わせたボブとシャーロット。
2人はやがて言葉を交わすようになり、いつしか互いの気持ちを分かち合うようになるのだった。
シャーロットの友人のパーティに誘われ、夜の街へと出掛けたボブは、カタコトの英語を話す若者たちとの会話を楽しみ、カラオケでマイクを握るシャーロットに魅入る。
二人は東京に来て初めて開放的な気分を感じた。
ボブはCM撮影が終了したが、急遽舞い込んだテレビ出演の話を承諾し、滞在を延ばすことになった。
その間、シャーロットとランチを共にし、ホテルの部屋で古い映画を観て時を過ごし、絆を深めていった。
だがボブの帰国の時が訪れる。
その日の朝、二人は渋谷の街中で初めてキスを交わし、そのまま別れるのだった。


寸評
コメディ・タッチなのは頭の中で理解できるのだが、クスリと笑わせるであろう内容が日本人である僕にはスンナリ入ってこない。
発音的にLとRの区別がつかない日本人娼婦を描かれてもピンとこないのだ。
CMの撮影中に日本人監督が日本語で長々と指示を出すのだが、通訳は気を利かしてひと言しか訳さない。
ボブは日本人が何を言っているか理解できないのだが、普通のアメリカ人観客も同様なのに日本人である僕は当然ながら理解できてしまっている。
ビル・マーレイとスカーレット・ヨハンソンのカラオケを延々聴かされても何か乗り切れないものがある。
外国人にとっては新鮮な日本の風景や日本人の行動が、我々日本人にとっては別にどうってことない。
でも、ボブのビル・マーレイがトレーニングマシンに翻弄される演技には笑わされるし、英語が分からない鮨屋の店員をからかうとか、しゃぶしゃぶ料理店を自分で料理させるひどい店だなどと言っているのは笑わされるのだが、そのしゃぶしゃぶを食べるシーンがないのでアメリカ人は理解できただろうか。

ボブとシャーロットが異国で抱える孤独感や疎外感を感じる場面は度々に登場するのだが、そのシーンになるとこの映画はがぜん輝きを増してくる。
彼らにとって見知らぬ東京の街を巧みに背景に使って、2人のどうしようもない思いを余すところなく伝える。
特にゆらゆらと揺らめくような映像が印象的だ。
ボブは結婚25年でそろそろ結婚生活に倦怠感も出てきている。
シャーロットは結婚2年目だが、時間を共有できないすれ違い生活が生じてきているようだ。
サントリーのコマーシャル撮影で来日しているボブのギャラは200万ドルというから大物スターだ。
しかしその表情は疲れ切っている。
何に疲れ切っているのか?
仕事もその原因だろうが、家庭生活にも疲れているのだろう。
国際電話で妻と話す内容は退屈なものである。
シャーロットは多忙な夫に置いてけぼりを食っている。
二人に共通している感情は、何か自分の思いとちょっと違う結婚生活だ。
二人は心を通わせるが一線を越えることはない。
無言のうちにお互いを慰め合うプラトニックなものである。
結婚した以上、その伴侶と生活を、家庭を、維持していかねばならない。
彼等は今の気持ちを抱えながらも元の生活に戻っていく。
僕にはスカーレット・ヨハンソンの疲れた感じが印象的だった。

不思議なことに一番印象に残ったのは「マシューTV」のマシューをやった藤井隆の演技だ。
僕は藤井隆のキャラを知っているから、突然の場面挿入も違和感がなかったけれど、アメリカ人にはどう映ったのだろう。
日本にも変なニュースキャスターがいるものだとでも思っただろうか。


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2 コメント

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この映画は好きですね。 (風早真希)
2023-06-09 11:49:51
私の好きな映画の1本「ロスト・イン・トランスレーション」のレビューをされていますので、コメントしたいと思います。

日本を舞台にした映画として、「ラスト・サムライ」や「キル・ビル」が記憶に新しいが、ソフィア・コッポラ監督の「ロスト・イン・トランスレーション」もその一つだが、ただし、描き方はかなり違いますね。

舞台は現代の東京。CM撮影のため来日したハリウッド俳優(ビル・マーレイ)は、写真家の夫について来た若妻(スカーレット・ヨハンソン)と滞在中のホテルで出会う。

言葉や文化の違い、家族とのすれ違いから、眠れぬ夜を過ごす二人。
同じ境遇にある者同士は、自然と打ち解けあっていく。

映画は、監督のソフィア・コッポラ自身の体験や印象がもとになっているという。
新宿の高層ホテル、渋谷のネオンと雑踏、カラオケボックスにしゃぶしゃぶ。

「ラスト・サムライ」の武士道や、「キル・ビル」のコミック・オタク文化とは異なる、誰もが良く知る、"今の東京"がそこにある。

都合のいいことしか伝えない通訳。
騒々しいテレビのバラエティー番組。
意思の疎通が出来ないことから生じるズレに、我々観る者は笑ってしまうが、日本語のセリフに字幕がなかったというアメリカより、日本人の方が楽しめるのではないかと思う。

一方で、眼鏡をかけた背の低いサラリーマン、名刺交換の際のお辞儀、取ってつけたような京都のイメージなど、相変わらずのステレオタイプの日本の描写も-------。

だが、ソフィア・コッポラ監督は、異文化の中に放り出された外国人の目に見える風景として、敢えてそれらを、意図的に描いたようなふしがありますね。

都会の孤独、ふつふつと湧き上がってくる不安は、そんな景色と相対して浮き立ってくるのであり、珍奇な東京を描くのが目的ではないだろう。

現代人が抱える"孤独と不安"の比喩としての東京。
この巨大な無国籍都市の中で寄り添う、二つの魂。

繊細さと切なさが、都会に生きる、私を含む多くの人々の心に染みてくると思う。
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お父さんも (館長)
2023-06-10 09:05:59
お父さんのフランシス・フォード・コッポラは好きな監督の一人ですが、娘さんのソフィア・コッポラもなかなかの者だと思います。
お父さんを超えるかも・・・。
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