おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

団地

2019-10-25 11:41:48 | 映画
「団地」 2015年 日本


監督 阪本順治
出演 藤山直美 岸部一徳 大楠道代
   石橋蓮司 斎藤工 冨浦智嗣
   竹内都子 濱田マリ 原田麻由
   滝裕可里 宅間孝行 小笠原弘晃
   三浦誠己 麿赤兒

ストーリー
山下ヒナ子(藤山直美)は、夫の清治(岸部一徳)と共に団地で暮らしている。
2年前に一人息子の直哉(中山卓也)を交通事故で亡くした夫妻は、老舗の漢方薬局を閉店し、半年前に団地へ引っ越してきたのである。
ヒナ子はスーパーマーケットでレジ係を務めており、清治は団地の裏の林での植物観察を日課としている。
真城(斎藤工)が山下夫妻の住む302号室を訪ねてきた。
最も効能があるのは山下夫妻の生薬だという真城には、特別に生薬を提供することになる。
以後、宅配便の男(冨浦智嗣)が定期的に302号室へ集荷に訪れる。
行徳君子(大楠道代)は清治に、次の自治会会長選挙では清治を推薦するつもりだと伝える。
最初は断ろうとする清治であったが、日が経つにつれて、次第に乗り気となってゆく。
しかし、投開票の結果、君子の夫の正三(石橋蓮司)が大差で自治会会長に再選される。
後日、清治は、君子が清治の人望のなさを団地の住民と語っている現場に居合わせる。
その言葉に傷ついた清治は、自分は死んだことにしてほしいとヒナ子に告げて、床下に閉じこもってしまう。
団地の住民たちのあいだでは、清治はヒナ子に殺されたのではないかという噂が広まった。
真城が再び302号室を訪ねてきて、同郷の者たち約5,000人分の生薬を2週間後に用意してほしいと、山下夫妻に依頼し、その報酬として真城は直哉に会わせることを約束する。
山下夫妻と同じく初めての子供を亡くしている真城は、ワイシャツの前をはだけて、自分が地球人ではないことを明かし、直哉のへその緒を持って行けば、直哉に会うことができるのだという。
山下夫妻らが出発への準備を進める中、君子と正三が清治の生死を確かめるために302号室を訪れた。


寸評
阪本順治監督と主演の藤山直美のコンビとくれば傑作「顔」を思い出す。
「団地」というタイトルから何となく映画の雰囲気を想像したのだが全く違ったものになっていた。
言ってしまえば、これは坂本順治版「未知との遭遇」だ。
吉本新喜劇を髣髴させる会話による喜劇でもある。
兎に角、二組の夫婦が面白い。
藤山直美と岸部一徳の団地に引っ越してきた夫婦と、石橋蓮司と大楠道代の自治会長夫婦が実に面白いのだが、見ているうちに大阪人である僕には受けたのだが、はたして他府県の人にはこのバタ臭い笑いが通じるのだろうかと不安がよぎった。
おまけにどこかの国から来たと思われる斎藤工の発する「ごぶさたでした」を「ごぶがりでした」と言ったりする勘違い言葉は吉本新喜劇そのものである。
ウケルのかなあ~、この笑い…

山下夫婦は交通事故で息子を亡くしているらしいことが分かり、夫婦の過去の傷をめぐる人間ドラマかと思ったところでアッサリと期待を裏切られてしまう。
清治が会長選挙で仁徳がないという主婦たちの陰口を聞いてしまい、むくれて床下に隠れてしまうのである。
そこから清治が失踪したのではないか、清治はすでに殺されているのではないか、死体は室内のどこかに隠されているのではないかなどという噂が飛び交うようになっていく。
おしゃべり好きな団地の主婦に限ったことではない。
人は噂話が好きなのだ。
そして一度広まり始めた噂が噂を呼び、まるで見てきたかのような真実として独り歩きを始めてしまう。
そんな面白さ、怖さが現実社会にもあって、この団地においても例外ではない。
ヒナ子のドンくささも加味されて、この間の騒動がこれでもかと面白おかしく展開され堪能できる。

雰囲気が変わるのは斎藤工演じる真城さんの正体が明らかになってからである。
映画館の観客は圧倒的に年配の方が多かったし、70歳を超えると思われる方も大勢いた。
それは藤山直美と言う役者のせいでもあるし、団地というタイトルのせいでもあったのだと思うが、果たしてこの展開を受け入れることが出来たのだろうかと疑問に思った。
いや案外と映画ファンが多くて、この展開から「未知との遭遇」をイメージした方がほとんどだったのかもしれない。
そう、まさにここからは「未知との遭遇」だった。
人は、もし自分があの時代に戻れるならという思いは持っているのではないだろうか。
あの時代に戻れたなら、やり残したことをやってみたいという思いである。
それは勉強であったり、何かへの挑戦であったり、恋い焦がれた人への告白だったりするかもしれない。
山下夫婦にとっては、時空を超えて戻りたかった時代はあの頃だったのだと思わせるラストは唐突だったがジーンときた。
これは夫婦の再生物語でもあったのだろう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿