おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ミシシッピー・バーニング

2021-12-03 09:52:18 | 映画
「ま」が終わり、「み」になります。
前回は2020/4/25の「ミクロの決死圏」から2020/5/4「ミリオンダラー・ベイビー」まででした。
少し追加で掲載します。

「ミシシッピー・バーニング」 1988年 アメリカ


監督 アラン・パーカー
出演 ジーン・ハックマン
   ウィレム・デフォー
   ブラッド・ドゥーリフ
   フランシス・マクドーマンド
   R・リー・アーメイ
   ゲイラード・サーテイン

ストーリー
全米にフリーダム・サマー(自由の夏)が吹き荒れる1964年6月、ミシシッピー州ジュサップの町で起きた3人の公民権運動家の失踪事件を重要視するFBIは、2人の腕きき捜査官を現地に派遣した。
元郡保安官でたたきあげのルパート・アンダーソンとハーバード大出のエリート、アラン・ウォード、この全てに対照的で時には対立さえする2人に対し、町の人々は非協力なだけでなく敵意さえも明らさまにする。
そして少しでも彼らに協力的な態度を見せた人々は、何者かに家を焼かれたり、リンチにあい、再び口を重く閉ざすのだった。
焦立つウォードに対しアンダーソンは、保安官スタッキーとその助手ペルの仲間たちが事件に関わっているという確信を抱き、ペルの妻を訪ねる。
アンダーソンは、夫とこの町に嫌悪している彼女から事件の糸口を探ることができるのではと感じていたが、その間にもフリーダム・サマーの行進に参加した黒人青年が瀕死の重傷を負うリンチをうけ、またある黒人の家が焼き打ちにあった。
だがこの現場を目撃した1人の少年の証言から、3人の容疑者が裁判にかけられるが、結果は不平等を極め判決は無罪同然、その直後、町のあちこちで焼き打ち行為が起き、目撃証言をした少年の家も焼かれ、彼の父親はリンチにあい木に吊るされる。
この事件をきっかけに、アンダーソンはペルの妻から彼が失踪事件に関わっていること、そして彼ら3人の遺体が埋められた場所などを聞き出すが、彼女はそのことを知ったペルにめった打ちにされ重傷を負う。
怒りに燃える彼等はプロの脅し屋を雇い、陰で糸を引く町長を痛めつけて口を割らせるという手段にでる。
ついに事件の核心は姿を見せたが、しかしそれで全てが終わったわけではない。


寸評
人種問題はアメリカ映画に於けるテーマの一つだと思うが、ここで描かれた黒人差別はいかに日常的でいかに非道極まっていたのかであり、それをすさまじい描写で見せつけている。
テーマ的に重くて暗い映画ながら、サスペンス劇としても格調をそなえた作品となっている。
冒頭で白人二人と黒人一人が乗る車が何者かに付け狙われ、追いかけてきた車の一台は警察車両だったにもかかわらず射殺される。
衝撃的なシーンから始まり、捜査にやってきたFBI捜査官にかかわった黒人がひどい目にあわされ、彼らの家が焼き討ちされる様子がこれでもかと描かれ続ける。
どうしてアメリカではこれほどの黒人差別が生じてしまったのだろう。
奴隷制度の名残りが今も残っているのだろうか。
保安官の妻が言うように、小さい頃から差別はあっていいのだと教え込まれたら信じてしまうだろうということで、黒人奴隷が多かった地域では差別のあることに疑いを持たない人たちの社会が出来上がっていたのだろう。
舞台となっているミシシッピーの田舎町は正にそのような所だ。

第二次大戦前にアメリカのジョセフィン・ベーカーという黒人ダンサーがフランスに渡って人気を博したのだが、彼女は差別のないフランスに感激したらしい。
レストランで同席していたアメリカ人女性がそのジョセフィン・ベーカーを見て、私たちの国ではあのような人は台所にいるものだから追い出して欲しいと支配人に言ったところ、その支配人はアメリカ人女性に出て行ってもらったという体験をしたそうである。
フランスとアメリカの黒人に対する認識の違いを表すエピソードだ。

FBIから二人の捜査官が送られてくるのだが、この二人をジーン・ハックマンとウィレム・デフォーが演じていて、コンビ作品の定石通り性格と捜査方法が違う二人の描写が面白い。
教科書通りのような捜査を行うエリートのアランに対し、ジーン・ハックマンのルパートは南部出身であることもあって、関係を作り上げて情報を得ていく。
対比上ジーン・ハックマンが非常に魅力的に見える。
その彼がある時点から凶暴になり、非合法的な捜査を展開するようになる。
その様子はこの映画を深刻なものから楽しいものにしている。
事情を知りながら見て見ぬふりをしていた市長を脅迫して証言を取る。
気の弱そうなレスターに芝居をうって洗いざらい白状させる。
アランが渋々認めたルパート流の捜査方法が映画を一気に盛り上げる。
殺人に加担したものがそれぞれ禁固刑を受けるが、彼らは服役を終えた時に差別主義を改めていたのだろうか。
また町の人たちは差別意識を改めたのだろうか。
相変わらず人種差別は残り続けたのではないかと思わせる。
「1964年、忘れまじ」と刻まれた墓標が崩れかけていることが、その事を暗に示していたように思う。
アメリカの恥部を真正面からとらえた秀作である。


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