おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

まぶだち

2021-12-02 07:59:31 | 映画
「まぶだち」 2000年 日本


監督 古厩智之
出演 沖津和 高橋涼輔 中島裕太 清水幹生
   光石研 矢代朝子 阿久根裕子

ストーリー
長野県の小さな町に暮らす中学2年生の神津サダトモ(沖津和)、仁村テツヤ(高橋涼輔)、野村周二(中島裕太)は、“人間グラフ”と名付けた評価表をつけている厳格な担任教師・小林(清水幹生)から、毎日、人間にも満たないクズと言われている悪ガキ3人組である。
ある日、集団で万引きしたことがバレて、親たちは呼び出されて子供たちを叱りつけるが、サダトモの父親(光石研)は廊下に出ただけで何も言わない。
彼らは、小林から各自400字詰め原稿用紙30枚の反省文を書くように命じられる。
夜、何も言わなかったサダトモの父親は「今からお前を殴る」と言ってサダトモを殴った。
くやしさが湧いてきたサダトモは“僕は玉ネギ”と題した反省文を書いたところ、小林から思わぬ評価を受けて文化祭の意見文発表会でそれを読む栄誉を与えられてしまい、テツヤの反省文も小林に認められる。
サダトモとテツヤはクズ組から優秀組への昇格を告げられるが、小林に反感を抱くサダトモは「クズでいいです」と小林に言い放ち、反省文を川へ捨ててしまった。
一方、反省文の書けない周二は、他の方法で小林に認められようとするが途中でへこたれてしまう。
何もかもうまくいかなくて思い悩んだ末、彼はサダトモとテツヤの目の前で川へ飛び込んだ。
小林は周二は自分で飛び込んだのではないかと問いただすが、サダトモは足を滑らせたとウソをつく。
周二の捜索は夜を徹して行われたが、とうとう彼の遺体はあがらなかった。
周二の死に直面し、自分たちの行動を見つめ直すサダトモとテツヤ。
それから、ふたりは一緒に遊ばなくなった。


寸評
美しい里山の風景、そして何よりも少年たちのなりきりぶりに次第に引き込まれていく。
彼らの追いつめられていっているような状況が切実に伝わってきて、観ていて息苦しさも感じてしまう。
サダトモは夢想家なのかもしれない。
一日の出来事を作文にしないといけないようだが、テツヤと周二はサダトモに適当な話を作ってもらっている。
周二には姉さんからお母さんに電話がかかってきたことにしようと状況を語りだすが、そこで周二がどう思ったかが大事なんだよと、まるで国語の先生のようなことを言う。
サダトモはそういう感受性をもった子なのだが素直に表すことができない、言わば反抗期の少年に思える。
三人の中ではリーダー格だが、先生に対しては他の二人よりも反抗的である。
担任の小林先生が実にユニークな先生で、今だと教育委員会が吹っ飛んできそうな教育方針だ。
クラスの生徒を、優良、クズ、不良に分けていて、それぞれのゾーンに名前を張り出している。
平気でビンタしているし、その鉄拳によって顔を腫らしている生徒もいるぐらいだ。
指導している言葉も乱暴なものだが、言っていることは無茶苦茶なように見えて的を得たものだ。
体罰も平気で反省文を書かなかった一人は2時間で20キロを走ることを選びぶっ倒れる。
周二は水をいっぱい入れたバケツを両手に持ってグランドに立つことを選んだが、途中で力が尽きて落としてしまい、その後どうなったかは周二の顔を見ればわかる。

彼らは高圧的な指導に反感を持っているのだろう、ひいては大人たちの正論にも反撥しているのかもしれない。
サダトモから逃れたい子は、ピアノの練習があるからと嘘をついて離れていく。
ずるそうに見えるその態度には、そうするしかないという納得するものがある。
大人たちの言う正論は子供たちも真似ていて、文化祭の意見文発表では大抵の者が先生に媚びを売ったり、ありきたりの主張をしている。
僕も中学の弁論大会では、自己反省などと言うタイトルで適当なことを言っていたなあと思い起こした。
そのような欺瞞を小林は糾弾して生徒たちに語っている。
テレビでよくやる単純な熱血先生ではない、この先生のキャラクターは面白い。
小林先生は周二の死をどうとらえていたのだろう。
自殺を疑っていたようだが、そうだとすれば自分の責任をどの程度感じていたのだろう。
このことによって彼の教育方針が変わったとは思えない。
サダトモはサダトモなりに周二の名誉を守ったのだろう。
この年代で自分のやることを見出している子は少ないと思う。
テツヤはやることが見つかったと言う。
それは見つかっていない周二を探すことだったが、サダトモは別の物を探すと言って、それから二人は一緒に遊ぶことはなくなった。
そのようにしてまぶだち(親友)だった者が別々の道を歩み始めるのだろう。
そして、大人になった彼らはこんなに立派になりましたという結末ではない。
ある者は普通に働いていて、ある者は死んでしまっているという厳しい現実を描いている。
それにしても子供たちの自然体のセリフと芝居は見事だったなあ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿