おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

最強のふたり

2023-11-07 07:42:58 | 映画
「さ」行です。

「最強のふたり」 2011年 フランス


監督 エリック・トレダノ / オリヴィエ・ナカシュ                          
出演 フランソワ・クリュゼ オマール・シー
   アンヌ・ル・ニ オドレイ・フルーロ
   クロティルド・モレ グレゴア・オスターマン                           

ストーリー
ひとりは、スラム街出身で無職の黒人青年ドリス。
もうひとりは、パリの邸に住む大富豪フィリップ。
何もかもが正反対のふたりが、パラグライダーの事故で首から下が麻痺したフィリップの介護者選びの面接で出会った。
他人の同情にウンザリしていたフィリップは、不採用の証明書でもらえる失業手当が目当てというフザケたドリスを採用する。
その日から相入れないふたつの世界の衝突が始まった。
クラシックとソウル、高級スーツとスウェット、文学的な会話と下ネタ──だが、ふたりとも偽善を憎み本音で生きる姿勢は同じだった。
互いを受け入れ始めたふたりの毎日は、ワクワクする冒険に変わり、ユーモアに富んだ最強の友情が生まれていく。
フィリップを車の荷台に乗せるのを「馬みたいだ」と嫌がって助手席に座らせたり、早朝に発作を起こした彼を街へ連れ出して落ち着くまで何時間も付き合ったり、意外にもドリスには自然な思いやりや優しさがあった。
だが別れは突然やってくる。
家族のことを真剣に思うドリスを見たフィリップは、「やめにしよう。これは君の一生の仕事じゃない」と提案する。
翌朝、名残を惜しむ邸の人々に、陽気に別れを告げるドリス。
ドリスは自分の人生を始めるが、フィリップは再び孤独に陥っていた。
そしてドリスは突然真夜中に呼び出される。
いったいフィリップに何があったのか……。


寸評
非常にまとまった映画だ。
説明シーンを省いてテンポの良い流れを生み出している。
重くなりそうな内容をユーモアと小気味よい会話で飽きさせない。

組合せの違いによる面白さの構成はよくある手で、この作品も例にもれず金持ちと貧乏人、音楽に対する好みの相違、高尚人間と下品な奴、白人と黒人、健常者と身障者と正反対の人物像が描かれている。
最後にモデルとなった二人が映し出されて、ドリスを黒人の設定に変えたんだと知るが、これが黒人=スラム育ちの貧乏人というイメージ強化のために為されたのならチト差別的ではないかと思うのだが、ここは対比の一環として人種の違いを盛り込んだのだと理解しておこう。

ドリスが四肢が全く不自由なフィリップに平気で受話器を渡そうとしたことを捕えて、「彼は私に同情していない、そこがいい」という場面が有るが、身障者を普通の人間として扱うことが一番良いのだと知らされて心に留まった。
さらに、自分は四肢が不自由なので自殺することが出来ないと言うくだりが有るが、友人がかつて養護学校の教員として勤めていた時のエピソードを思い出した。
それは身障者が漏らした言葉なのだが「自分は生きていても仕方がないのでナイフを胸に差して死のうと思ったのだが、力が弱くて死ぬことが出来なかった。その時、自分は生きていくしかないのだということが分かって、二度と自殺を考えずに生きていくことにした」と言うすごく印象に残る経験談を聞かせてもらったのだ。
現実は壮絶なものなのだということなのだが、この映画ではそれすら悲壮感漂うものではなく、どこまでも明るい話なのだ。

ドリスがちょっかいを出す女性のエピソードや、フィリップの娘の恋愛エピソードなど、ドリスを取り巻くエピソードの数々も、あくまで副産物らしくさりげなく描いているところも、この映画に小気味よいテンポを生み出していたのだろう。
開始早々のシーンがラストにつながり、そして感動のフィナーレを迎えると言うのも、常套手段と言えばそれまでなのだが、これまたピタリと決まる手際の良さで、最後までこの失策の無さを維持した演出が冴えた作品だった。


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