おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

キャプテン・フィリップス

2022-06-03 08:06:15 | 映画
「キャプテン・フィリップス」 2013年 アメリカ


監督 ポール・グリーングラス
出演 トム・ハンクス
   バーカッド・アブディ
   バーカッド・アブディラマン
   ファイサル・アメッド
   マハト・M・アリ
   マイケル・チャーナス

ストーリー
2009年3月28日、マークス海運に勤務するリチャード・フィリップス(トム・ハンクス)は、マークス・アラバマ号の船長としてオマーンからケニアへ援助物資を運搬するため、妻アンドレア(キャサリン・キーナー)や2人の子どもたちとともに暮らす米国バーモント州の自宅を出発。
到着したオマーンのサラーサ港では、ベテラン船長らしく手際よく出航準備を進めてゆく。
乗組員20名を乗せてマークス・アラバマ号は予定通りケニアのモンバサ港へ向けて出航するが、海賊の活動が激化する航路上で、2隻のモーターボートの追跡に気付いたフィリップスは警戒を指示。
ドバイの英国海運オペレーションとの交信を傍受した海賊も、一度は引き返した。
翌4月7日、再び追跡を始めた海賊がハシゴを使ってアラバマ号へ侵入。
大混乱の中、乗組員の大半は訓練通り機関室へ身を隠す。
海賊は4人で、英語が堪能なリーダー格のムセ(バルカド・アブディ )に、血気盛んなナジェ(ファイサル・アーメド )とエルミ(マハト・M・アリ)、そして、まだ少年の面影を残すビラル(バルカド・アブディラーマン)だった。
拘束されたフィリップスからの“金庫に保管した3万ドルの現金を提供する”という提案にムセは満足せず、ビラルとフィリップスを伴って他の乗組員を探し始める。
ガラス片を床にばら撒く、電源を止めるなどの時間稼ぎによって、機関室に隠れた乗組員たちが命を辛うじて繋ぎ止めると、やがて事態が急転し、隠れていた乗組員たちがムセの捕獲に成功した。
これにより、海賊たちは現金3万ドルを受け取ってアラバマ号の救命艇でソマリアへ向かうことを決断。
しかし、救命艇の発進直前、フィリップスが人質に取られてしまう。


寸評
日本の自衛隊も日本船舶の護衛を名目としてソマリア沖へ派遣されている。
海賊による襲撃が常態化し、航行する船舶の安全が国際的に問題となっているからで、国際貢献の名のもとに自衛隊が海外派遣されているのだ。
それほどソマリア沖の海賊行為は頻繁に行われているので、それを題材とした映画は歴史的な遺産として後年に残されておいてもいいのかもしれない。
その観点から言えば、なぜソマリアでは海賊が横行するのかの説明はなされていない。
海賊と言っても漁船に毛の生えたような足の速い小型船で接近して乗り移り、船員を脅迫して金品、あるいは船そのものを強奪したり、船員の人命と引き換えに身代金を要求すると言ったものだ。

ここでも武器を携えたソマリア人が2隻に分乗してマークス・アラバマ号を追ってくる。
海賊がどのようにして巨大な船舶を襲うのかが第一の見どころだ。
フィリップス船長の機転の利いた無線を傍受した一隻は離脱していくが、残った一隻は諦めずに追尾してくる。
何か武器があれば追っ払えそうな小型船だが、マークス・アラバマ号は民間船なので機関銃の様な武器は備えていなくて、対抗手段は人工波による防御と放水による撃退と、きわめて人道的なものである。
この攻防が結構見せる。

やがて海賊たちは乗船を果たすが、ここからが第二の見せ場となる。
船長は彼等に拘束されるが乗組員たちは機関室に隠れる。
船内の構造は船員たちの熟知している所で、機転を利かせて海賊たちに対抗していく。
トランシーバーで連絡を取り合いながら、危険を避け反撃を試みる様子がリアリティをもって描かれる。
活劇をメインに置いたフィクションならば、いきなり誰かが射殺されたり、海賊の誰かが船を自由に操縦したりするのだろうが、これは実話をもとにしているのでそうはならない。
米軍に攻撃されればひとたまりもない彼等は、船長たちが重要な人質であることが分かっている。
それでもこれはアメリカ映画なので、ソマリアの海賊は仲間を見捨て、怪我をしても助けない、人間的な思いやりが欠如している瘦せこけた野蛮人として描かれ、反対にフィリップスを演じるトム・ハンクスは、ソマリア人海賊に仲間の負傷者を手当てするよう促し、若い男には“君はいくつだ、16歳か、17歳か? こんなことをして、ここにいるには若すぎるな”と父親のような接し方をする。
正義のアメリカと、悪のソマリア海賊という図式で、このようなソマリア人を救うために世界の警察であるアメリカは戦っているのだと言いたげである。

第三幕となるのが乗組員を救うために海賊たちと一緒に救命艇に乗り移ったフィリップス船長の救出劇である。
海軍の出動に加えシールズの投入と米国は着々と手を打っていくのが映画的に描かれ、交渉のやり取りもなかなか真に迫っていて見応えがある。
救出されたフィリップス船長が恐怖と惨劇にワナワナと泣き崩れるのが真実味を出していて人間的だった。
後日談がテロップで示されるが、本国ではフィリップス船長が無謀に危険地帯に入って行ったとか、燃料を節約するためのコースを取ったために事件に巻き込まれたとする乗組員の証言もあるようである。


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