おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ミッション

2020-05-01 08:44:25 | 映画
「ミッション」 1986年 イギリス


監督 ローランド・ジョフィ
出演 ロバート・デ・ニーロ
   ジェレミー・アイアンズ
   レイ・マカナリー
   エイダン・クイン
   シェリー・ルンギ
   リーアム・ニーソン
   
ストーリー
南米内陸奥地のインディオたちに神の教えをもたらそうとするイエズス会の神父ジュリアンが十字架にかけられ無残な亡骸となり、彼のかわりガブリエル(ジェレミー・アイアンズ)が布教にきた。
武器を手にしたグァラニー族の小さな村に迎えられたガブリエルは、そこで、庸兵にして奴隷商人であるロドリゴ・メンドーサ(ロバート・デ・ニーロ)の存在を知って落胆する。
アスンシオンの街では知らぬ者がいないこの男は、平和な村に奴隷狩りという魔の手をのばしていた。
総督にインディオを売りさばいてアスンシオに戻ったメンドーサは、愛人カルロ(チェリー・ランギ)から、フィリッポ(エイダン・クイン)との愛を取ると告白されショックを受ける。
ガブリエル神父は、メンドーサが実の弟であるフィリッポを嫉妬に狂って殺したことを知った。
弟殺しで独房に入ったメンドーサを連れ出したのはガブリエルだった。
数年後、滝の上にサン・カルロス教会が建ち、枢機卿アルタミラノ(レイ・マカナリー)が到着した。
イエズス会の神父を集めた会でも、私腹を肥やすことしか眼中にない偽政者たちに、見習い神父として控えていたメンドーサは怒りを爆発させた。
メンドーサの怒りをアルタミラノに説明するガブリエル。
奴隷に関することはポルトガルとスペインとイエズス会の政治にも影響があるのだ。
両国ともイエズス会の勢力増大を恐れ国内のイエズス会士追放をもくろんでいた。


寸評
イエズス会と言えば戦国時代末期に日本で布教活動を始めたフランシスコ・ザビエルや日本史を著したルイス・フロイスを思い浮かべるが、布教活動の実態はよく知らない。
僕は地元の寺の檀家であり、当然そうあるものとして所属している宗派に疑問を持ったことがない。
感じるに、日本人はどこかに宗教アレルギーがあり、布教という行為を理解しようとしないし、よくわからないでいるのではないかと思う。

グァラニー族はイグアスの滝の上で自然に逆らわずに生きている部族である。
南米に植民地を求めるポルトガルやスペインは文明という名のもとに自然を開拓して征服範囲を広げる国家だ。
部族と国家の対決だけならば単純図式だが、作品は二律背反する更なる二者を登場させて、作品に深みを生み出している。
その二者とは同じ欧米人でありながら立場を変える、平和の人であり続けるガブリエル神父と、戦いの人としての道を選ぶロドリゴ・メンドーサである。
それらの間に位置するのがグァラニー族らと宣教師達が作り上げた理想郷である‘ミッション’なのだ。
‘ミッション’とは布教本部のことのようだが、ここにおける‘ミッション’はユートピアと言っていい。

ロドリゴはグァラニー族を捕らえては奴隷として売り飛ばしている奴隷商人だった。
グァラニー族の前に現れたロドリゴは、彼等にとって憎んでも憎み切れない相手のはずだ。
ところが彼等は、ロドリゴが泣き叫ぶ姿を見て滑稽に思い許してしまう。
グァラニー族は生まれながらにしてキリストの心を持った種族なのかもしれない。
ロドリゴは弟殺しというもう一つの顔を持つ。
彼はガブリエル神父とグァラニー族に出会ったことで、廃人同様の姿から聖職者に生まれ変わる。
そして最後には聖職者でありながら欧米人と闘う傭兵と化す複雑な男であるのだが、それをロバート・デ・ニーロがさすがと言える演技で見せる。

アルタミラノ枢機卿が法王宛てに「今や貴方の神父達は死に、私は生き残りました。しかし、本当に死んだのは私であって、生きているのは彼らなのです。何故なら世の常がそうあるように、死者の精神は生きる者達の記憶の中に生き残るものだからです」 と述べたとしても、僕は宗教も含めた世の中の欺瞞を感ぜずにはいられなかた。
国家は覇権を争い、イエズス会も神ではなく教会の存続のみを考えている。
繰り広げられる議論は、都合のいい詭弁ばかりだ。
挙句の果てには、虐殺は必要悪だったのだと悪びれたところがない。
国家は国民という個人を本当に守ってくれるのだろうか。
死後の世界を語る宗教家は本当に個人の幸せを願ってくれているのだろうか。
どうも権力の保持、既得権益の防衛のために活動しているように思えてならない。
さて映画、脳裏に残るのはイグアスの滝。
滝の岸壁をよじ登るシーンを初め、イグアスの滝が登場する場面になると俄然面白くなる。
イグアスの滝を背景にしているから僕は鑑賞に堪えられたのだと思う作品だ。


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