おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ミッドナイト・イン・パリ

2020-05-02 10:34:53 | 映画
「ミッドナイト・イン・パリ」 2011年 スペイン / アメリカ


監督 ウディ・アレン
出演 キャシー・ベイツ
   エイドリアン・ブロディ
   カーラ・ブルーニ
   マリオン・コティヤール
   レイチェル・マクアダムス
   マイケル・シーン
   
ストーリー
ハリウッドの売れっ子脚本家ギル(オーウェン・ウィルソン)は、婚約者イネズ(レイチェル・マクアダムス)とともに愛するパリを訪れたが、ワンパターンの娯楽映画のシナリオ執筆に虚しさを覚えているギルは、作家への転身を夢見て、ノスタルジー・ショップで働く男を主人公にした処女小説に挑戦中の身であった。
パリへの移住を夢見ていたが、お嬢様育ちで現実主義者のイネズは、安定したリッチな生活を譲らない。
そんな2人の前に、イネズの男友達で博学のポール(マイケル・シーン)が登場。
イネズと水入らずでパリを満喫しようとしていたギルにとって、彼は邪魔者でしかなかった。
一人で真夜中のパリを歩いていたギルは、道に迷って物思いにふけっていると時計台が午前0時の鐘を鳴らし、旧式の黄色いプジョーがやって来て、その車に乗り込んだギルは、社交クラブで開かれているパーティに参加。
そこで出会ったのはスコット・フィッツジェラルド夫妻(トム・ヒドルストン、アリソン・ピル)に、ピアノを弾くコール・ポーター(イヴ・エック)で、パーティの主催者はジャン・コクトーだった。
1920年代のパリに迷い込んだギルは翌晩、ヘミングウェイに連れられてガートルード・スタイン(キャシー・ベイツ)のサロンを訪問。
そこでガートルードと絵画論を戦わせていたパブロ・ピカソ(マルシャル・ディ・フォンソ・ボー)の愛人アドリアナ(マリオン・コティヤール)と出会い、互いに好意を抱く。
真夜中のパリをアドリアナと2人で散歩し、夢のようなひと時に浸るのだったが・・・。


寸評
映し出されるパリの街の様々な様子を眺めているだけで、ながれる音楽を聴いているだけで、登場する人物に思いをはせるだけで楽しくなってくる作品だ。
しかしながら話は単純で、いつの時代も昔は良かったと過去にあこがれ、現実は大変でもそれに向かい合って行かないといけないというテーマに向かって、過去の多くの芸術家達が登場するだけの話。
そのテーマを二重のタイムスリップでさりげなく描いたところが成功の要因だったと思う。
これがなければ単純なラブコメディで終わっていただろう。
ラストでお互いを名乗り合うシーンでは、ふとピーター・イエーツの「ジョンとメリー」を思い起こした。

時代を飾った百花繚乱の天才たちとのおしゃれでアナーキーな会話は、ユーモアと遊び心が満載で楽しめる。
主人公のギルは、コンプレックスを抱えたインテリでアレンの分身キャラと思われるが、彼を救うのはさらにインテリぶってるポールの存在で、実際に聞いたピカソとガートルード・スタインの会話をもとにポールをやり込めるくだりが知ったかぶりする薄っぺらなインテリを糾弾していて面白い。
1920年代に迷い込んだギルは最初にピアノを弾きながら歌うコール・ポーターと出会い、彼の音楽がもとでパリ女性と知り合いになるくだりが自然でいい。

それにしても多くの芸術家たちがそこかしこに登場してくる。
知識不足の僕は初めて聞く名の人もいて、この作品で見識を広めることとなった。
コール・ポーターは米国の作曲家・作詞家らしいが、案外とパリの街に似合う音楽を書いていると思った。
フィッツジェラルドは「華麗なるギャッツビー」の原作者として知っているだけで、その偉大さは知らなかった。
ガートルード・スタインというオバサンは米国の著作家、詩人、美術収集家ということで、実際にパリで画家や詩人たちが集うサロンを開いていたらしい。
道理でマチスの絵を買う場面や、ピカソとの絵画談義があったわけだ。
ジューナ・バーンズに至ってはその作品すら知らない。
ルイス・ブニュエルと現れるマン・レイは著名な画家、彫刻家、写真家らしい。

タイムスリップ物語の常として、その後を知る主人公が過去の人間にとる行動もさりげなく描かれる。
ギルが蚤の市で発見したアドリアの手記を訳してもらい、気を引くためのイヤリングを手配するくだりも可笑しいし、ブニュエルに映画のヒントを残すのもくすぐられる。
ブニュエルはダリと共に「アンダルシアの犬」を撮り、シュールレアリスト達に称賛された監督である。
僕は「小間使の日記」「昼顔」でその作品に感銘を受けた。
二重のタイムスリップでロートレック、ゴーギャン、ドガが登場するのも楽しいし、いつの時代にも天才はいるものだと思うと同時に、才能のない平凡な僕は彼等の交流を羨ましく感じた。

ギルでなくてもパリはいいと思わせるし、夜のパリがあのような雰囲気なら、僕は旅行で訪れたとしても一睡もしないでさまようだろう。
余談だが、美術館のガイド役をやったカーラ・ブルーニはフランスの元大統領サルコジ氏夫人である。


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