おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

恋におちて

2021-02-08 07:59:16 | 映画
「恋におちて」 1984年 アメリカ


監督 ウール・グロスバード
出演 ロバート・デ・ニーロ
   メリル・ストリープ
   ハーヴェイ・カイテル
   ダイアン・ウィースト
   ジェーン・カツマレク
   ジョージ・マーティン

ストーリー
ニューヨーク郊外のウエストチェスターから通勤者たちを乗せた満員の列車に、モリー・ギルモアがアーズレイ駅から乗り合わせていた。
もう1人、フランク・ラフティスが、ダブス・フェリー駅から乗った。
モリーはグラフィック・アーチストで、重病に瀕している父のジョンを看病するために、マンハッタンに通っていた。
夫のブライアンは医者として成功していたが、モリーとの夫婦生活は順調とはいえない。
一方、フランクは建築技師で、妻のアンと息子たちに対して変わらぬ愛情を捧げていた。
通勤電車が、グランド・セントラル駅に到着し、フランクもモリーも、それぞれの目的を終えると、クリスマス・プレゼントを買うために有名なリゾート書店に足を向けた。
買物を終えた二人は身体がぶつかり、買物包を床にまき散らしてしまった。
お互いの包みを拾って、笑いながら別れた二人だったが、家に帰って包みを開いて、それが相手のものであることに気づいた。
モリーとフランクは、通勤電車の中で偶然に再会し、クリスマスの時のヘマを互いに笑う二人。
その夜、ウエストチェスターへ帰る通勤列車の中で、フランクはモリーを探し回り、ようやく彼女を見つけ、これからは、いつも同じ列車に乗ろうと提案した。
翌日も朝の列車で乗り合わせた二人は、ランチもいっしょに食べることになった。
それからも二人はデートを重ねたが、あくまで精神的なもので、お互いの身の上話しなどが中心であった。
やがて、二人の想いは、だんだん抑えきれないものになっていった。
フランクはテキサス州のヒューストンに1年間出張する仕事を依頼され迷っていた。
そんな中、フランクは友人のアパートにモリーを誘ったが、二人は体を重ねることができない・・・。


寸評
おしゃれで上品なニューヨーカーの生活ぶりを生かしながら、それでいて青春時代の恋のような切ない感覚を思い起こさせる雰囲気の中で、ロバート・デ・ニーロ、メリル・ストリープの演技が実に自然なムードで展開するロマンチックな大人の恋愛作品である。
駅でモーリーと出会う機会をうかがうフランクの様子や、着ていく服をあれこれと迷うモリーの姿など細かい描写を積み重ねることによって、ゆっくりと次第に大きくなっていく二人の感情をうまく表現していた。

ある程度の期間が過ぎると夫婦の間にも溝が出来てくる。
家庭を壊すまでの不満ではないが、そこには結婚した当初の初々しい気持ちが失せている。
フランクは友人が愛がなくなったとの理由で離婚するらしいことを妻に話すと、妻のアンは今更愛なんてといったような返事を返しているから、家庭の平穏は夫婦間の愛を感じさせなくしているのだろう。
いわゆる倦怠期がやって来ていたのかもしれない。
そんな時にふとしたことで知り合った二人は新鮮なものを感じ、気が合う相手を発見した気分になる。
お互いに家庭を持っているので、当初は心が安らぐ相手と出会ったというような感覚だったのだろうが、それが恋心に代わっていくと、年齢などは関係ない。
二人はまるで若いカップルの様なときめきを見せる。
あくまでもプラトニックな関係を続ける様子が微笑ましいし、青春の時とは違う感情が湧いてくる。
その感情は若い観客には分からないものだと思う。

デートを重ねる二人の様子の変化を、フランクの妻もモリーの夫も気づく。
妻のアンに問い詰められたフランクは、肉体関係はなかったことを打ち明けるが、アンはその方が悪いと告げる。
アンにしてみれば浮気心の肉体関係より、気持ちでつながっている方が許せないのである。
モリーの夫で医師のブライアンは何とかモリーを引き止めようとする。
それぞれの伴侶が知った時にとる態度の男女の違いが出ていてなかなかの心理分析だと感じた。
モリーがブライアンを振り切って飛び出していき、フランクがモリーへかけた電話にブライアンが出る。
このあたりからはメロドラマとしての盛り上がりを見せていく。
フランクとモリーがすぐさまメデタシメデタシとなっては一昔も、二昔もまえのメロドラマで、ここはそうならないのがいいし、この時代のメロドラマであると思う。
例の場所が出てきて、ああこれはここで出会って・・・と思って見ていたらもう一工夫あった。
二人は元気でいたことを伝え合うが、今の境遇を語ることをしない。
どこまでも抑えた二人なのだ。
多分二人はお互いに今の立場を知ることになるのだろう。
そこからの展開を想像させるような余韻を残して終わったのは上手い描き方で、恋愛映画はその雰囲気を映画館の外まで味わいながら出ていきたいものだから、その意味でもいいエンディングだった。
ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープという決して美形ではない二人のサビの効いた演技が素晴らしかった。
「FALLING IN LOVE」というタイトルもいいし、名優二人があっての映画だった。
中年の恋は家庭が絡んでいるだけに切ない。


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