おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

プレイス・イン・ザ・ハート

2021-11-09 06:46:29 | 映画
「プレイス・イン・ザ・ハート」 1984年 アメリカ


監督 ロバート・ベントン
出演 サリー・フィールド
   リンゼイ・クローズ
   エド・ハリス
   ダニー・グローヴァー
   ジョン・マルコヴィッチ
   エイミー・マディガン

ストーリー
1935年、テキサス州ワクサハチの朝、エドナ・スポルディングは、先ほど送り出した保安官の夫ロイスが死体となって戻って来たのを知って、あまりのショックに口がきけなかった。
銀行の預金残高は116ドル、借金3681ドル、とりあえず数カ月後に銀行に返さなければならない返済分が240ドル、エドナにできることといえば子供の世話と家事だけだ。
美容院を経営している姉のマーガレットも親身に心配してくれるが、金銭面では無力だった。
葬儀が済むと銀行は、この家を売り借金をゼロにして、子供を親戚に預けて働いたらと勧める。
しかし、夫のにおいが染みたこの家と2人の子供フランクとポッサンなしに生きていくことはできない。
数日後、流れ者の黒人モーゼスがやってきて仕事をくれと申し出たが、断わった。
その夜、保安官に連れられたモーゼスが再びエレナの家にやってきた。
スポルディング家の銀器を盗んだので逮捕されたのだが、エレナはウソの口実でモーゼスを助けてやった。
その日から、彼は一家には欠かせぬ働き手として綿畑を耕した。
同じ頃、銀行員は厄介払いするように、眼の不自由な彼の弟ウイルを下宿人として押しつけてきた。
テキサス特有の大竜巻が小さな町の建物をあらかた破壊し、スポルディング家にも甚大な被害をもたらした。
姉の夫ウエインと親友の妻ビオラとの情事も、この大竜巻によって終りを告げた。
10月が近づき綿の収穫の時期になり、収穫一番のりに対する100ドルの賞金を得るために、エドナとモーゼスはもとより、フランク、ポッサム、マーガレットまで畑に出て綿つみに精出した。


寸評
冷静に見ると疑問点も所々にあるけれど、突然夫を亡くした専業主婦であったエドナの奮闘ぶりが心を打つ。
エドナは専業主婦だったので世間知らずだし、手に職があるわけでもないので途方に暮れるのだが、かなり広い農場を有している。
夫は保安官でそのために射殺されてしまうのだが、しかし一家は農場を有していたのだから夫は専業の保安官ではなかったのではないか。
そうだとすれば当然エレナは農業を手伝っていたはずで、農業に関して全くの素人ではなかったと思われるのだが、農業で生計を立てようとは思っていない。
それなら農地を売却する手もあったと思うが、彼女は家も農地も維持し続ける。
モーゼスは一家の銀食器(スプーン)を盗むのだが、それがスポルディング家のものとなぜ分かったのだろう。
そんな疑問もわいてきたのだが、それを吹っ飛ばすエドナ=サリー・フィールドの頑張りである。

彼女はなにも持ち合わせていないが、人を思いやる気持ち、人を愛する気持ちを備えている。
一見、気弱な性格からそうしてしまうのではないかと思ったりもするが、やがてそれは彼女の本質的なものであることが伝わってくる。
黒人のモーゼスが突然訪ねてくるが、彼女は無下に断ることが出来ない。
姉のマーガレットは冷たく追い返そうとしているのに、彼女は食事を与えてやっている。
弱みがあるとはいえ、銀行家が厄介者のウィルを押し付けた時も結局は下宿を了解している。
モーゼスもウィルも歓迎する相手ではなかったが、受け入れた以上は彼等を家族同様に扱う優しさを持っている。
ありきたりと言えばそれまでだが、部外者だった彼らが一家に溶け込んでいく様子は上手く描かれている。
彼らがエドナに積極的な協力をするようになる経緯が無駄なく描かれていた。

同時進行的にマーガレットの夫と、親友の奥さんの不倫が描かれるが、このエピソードの挿入目的は何だったのだろう。
物語の本筋からは完全に外れているため、不倫話になるとスポルディング一家の物語が緩慢になってしまっているのは否めない。
不倫話はカットしても良さそうなものだけど、田舎町の狭いコミュニティの中の物語として広がりを持たせたかったのだろうか。
KKKという白人至上主義の男たちが登場し、見ている僕たちは彼等を嫌悪するが、彼らを糾弾するような場面は描かれていない。
モーゼスは敗者の如く去っていくのだが、それで良かったのかなあ。
それでも盲目のウィルに代表されるような、誰もが潜在的に持っているであろう良心を監督のロバート・ベントンは上手く引き出していた。
幼い息子のフランクが母親にダンスを申し込む場面などはアメリカを感じさせるし、最後の教会シーンは幻想的でよかった。
モーゼスや死んだ夫、また、夫を撃った少年までもが、分け隔てなく町民と共に教会の礼拝に参加しているのだが、それはエドナの心の中だったのだろう。


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