おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
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続・座頭市物語

2024-05-30 07:03:35 | 映画
第一作「座頭市物語」はバックナンバーから2019-06-25をご覧ください。

「続・座頭市物語」 1962年 日本


監督 森一生
出演 勝新太郎 水谷良重 万里昌代 城健三朗
   中村豊 澤村宗之助 柳永二郎 伊達三郎

ストーリー
下総、取手川の渡しでやくざ達があんまの市(勝新太郎)を川へ突き落そうとした。
瞬間、勘造(水原浩一)が顔を斬られ、向こう岸に着くと仲間たちに介抱される羽目に。
驚愕した仲間の森助(伊達三郎)らは市を探し回り、裸で寝ていた彼を見つけ彼を取り囲んだ。
が、突然、片腕の浪人与四郎(城健三朗)が邪魔に入り、あっという間に彼らを切り伏せ、やがて現れた弟分の男(中村豊)と一緒に渡世人たちの財布を奪うとその場を去っていった。
二人の間には何か曰くがありそうだ。
座頭市は大名黒田越前守(春本富士夫)のもみ治療の帰途、家中の侍に襲われた。
狂っている殿様の秘密を封ずるためだったが、居合斬りの名人座頭市は一瞬三人を斬り捨てた。
市はある飯屋でお節(水谷良重)という遊女と知り合った。
黒田藩に市の始末を頼まれた関の勘兵衛(沢村宗之助)はその子分たちを走らせ、お節の家を襲わせたが市の敵ではなかった。
そしてお節の世話で舟をやとい水路笹川へ向った。
飯岡助五郎(柳永二郎)の鉄火場で、かつて座頭市と相思相愛だったおたね(万里昌代)が、飯岡一家がお尋ね者の与四郎召捕りと市を斬る策略を知った。
彼女は市が来ているという浄勝寺へ駈けつけた。
そこには以前笹川と飯岡の喧嘩で平手造酒を斬った市が回向をつとめていた。
勘兵衛一家は市を取り巻き斬りかかったが、ついに勘兵衛一人になってしまった。
それを見た与四郎は市に向かって抜刀した。
彼は市の実兄であり、市の女お千代を奪ったことがあった。


寸評
続編らしく前作からの登場人物として万里昌代のおたね、柳永二郎の飯岡助五郎が登場するが、前作では登場していないながらも本作では重要な人物であるはずのお千代は姿を現さない。
お千代は市が惚れていた女性だったようだが、市が盲目となったことで市の兄である与四郎へ心変わりをしたらしく、それを知った市が怒りのあまり与四郎の片腕を切り落としたことが判明する。
そのお千代は与四郎が片腕となったことで彼を見捨てたようで、市が惚れたにしては随分と薄情な女だ。
お千代は会話に出てくるだけで姿を表さないし、兄弟の確執が描かれていないので与四郎の市に対する恨みの感情もイマイチ伝わってこないものがある。
与四郎と市は兄弟なのだが、演じている城健三朗と勝新太郎も実の兄弟であることが興味の一つとなっている。

前半は片腕の浪人与四郎が登場し、黒田藩とのいざこざが描かれる中で遊女お節との絡みが描かれる。
このお節は市と与四郎に関係のあるお千代にそっくりの顔立ちということだが、肝心のお千代が登場していないので、二人が彼女の面影をお節に見出す感情は伝わってこない。
このことを含めて、与四郎と市の確執を上手く描けていないことが本作の欠点だったと思う。
お節の水谷良重をもう少し上手く使えたような気がする。

後半では、前作で市が斬った平手造酒の供養に向かった笹川での騒動が描かれる。
前作で市は寺小姓に平手造酒の供養を頼み1年後に帰ってくることを告げていたので、それを受け継いでいる。
市は前作のことも有って飯岡助五郎の家に立ち寄ると、そこには与四郎がいて彼が極悪非道のお尋ね者であることがわかったことで飯岡助五郎から追い出され、ここに市と与四郎に飯岡助五郎と勘兵衛連合軍の三つ巴の構図が完成する。

勘兵衛とその子分は市を狙って浄勝寺へ向かうが、市の方では彼を慕うおたねが勘兵衛たちの到着を知らせたこともあって、迎え撃つ準備は出来ていた。
子分たちは全員がやられてしまい勘兵衛だけが残ったところで与四郎がやってきて市と対決となる。
市が与四郎に深手を負わせたが、そこへ助五郎の手勢と役人たちがやってくると、市は与四郎を助けて一緒に川に飛び込み逃亡する。
このシーンは冒頭でやくざ達ともめた時に市が川に飛び込んで逃げた場面が伏線となっている。
二人は浄勝寺の小坊主とおたねにかくまわれるが、与四郎は手当の甲斐なく死んでしまう。
確執を超えた兄弟の愛情がほとばしる場面だが、もう一押し欲しかったような気がする。
例によって飯岡助五郎が市への悪態をつきながら勘兵衛とやってくるところへ市が待ち受けている。
「天保水滸伝」では悪役にされている飯岡助五郎だが、実際の彼は評価される部分もあって、何よりも侠客の一人でありながら天寿を全うし病没しているとのことであるが、ここでは市によって斬り殺されている。
このラストシーンは本作を語るうえで外せない。
市は与四郎が兄であることを語り、助五郎、勘兵衛と対峙する。
一撃で飯岡助五郎を斬るストップモーションで終わるラストはこの作品の評価を上げている。
シリーズはこの後カラー作品となっていき、大映のドル箱シリーズとなった。


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