おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
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続・忍びの者

2024-05-31 07:09:02 | 映画
第一作「忍びの者」はバックナンバーから2022-08-19をご覧ください。

「続・忍びの者」 1963年 日本


監督 山本薩夫
出演 市川雷蔵 藤村志保 城健三朗 山村聰
   東野英治郎 坪内ミキ子 永井智雄 石黒達也
   須賀不二男 松本錦四郎 山本圭 伊達三郎

ストーリー
一時は平和な生活を得た五右衛門(市川雷蔵)とマキ(藤村志保)も、信長(城健三朗)の執拗な忍者狩りに追いつめられ愛児を火中に失った。
かくて復讐の鬼と化した五右衛門は信長暗殺の期をうかがうべく、マキと共に彼女の兄・勘助(浜田雄史)のいる紀州の雑賀に身をかくし、土地の郷士鈴木孫一(石黒達也)を頭とする反信長の雑賀党に参加し忍者復活を宣言した。
そこに服部半蔵(伊達三郎)が家康(永井智雄)の使者として来て、信長を倒すには秀吉(東野英治郎)に追い越されて焦っている明智光秀(山村聡)を利用することを教えた。
忍者五右衛門はただちに光秀に近づき、裏面工作に力を尽して光秀を家康饗応の役目から失脚させ、ついにその怒を爆発させた。
かくて光秀は信長を本能寺に襲撃し、五右衛門は信長を燃えさかる火中に虐殺した。
信長の死により天下の形勢は一変、中国地方より取って返した秀吉は、またたく間に光秀を攻略、ついで長い間の禍のもとである雑賀党を全滅すべく兵をさしむけた。
さすがの雑賀党も授軍を求めに出た五右衛門一人を残して全員討死、妻マキも銃をにぎって息絶えていた。
やり場のない怒りをかかえた五右衛門の所にまたも半蔵が現われ、家康からの引出物と称して秀吉の住む聚楽第の見取図を置いて行った。
これを手にした忍者五右衛門は、巧みに聚楽第に忍び込んだが、さすがの五右衛門も廊下の鴬張りには気が付かず秀吉暗殺の目的をはたさずに捕えられてしまった。
秀吉は彼を見せしめのためと称して、三条川原において釜煎りの極刑に処した。
一人の忍者が天下を動かす時代はすぎた。
陰で笑うのは家康であった。


寸評
百地三太夫が死んだ前作のラストシーンを引き継ぐような形で物語が描かれ始めるし、スタッフが前作と同様だからさしずめ石川五右衛門を主人公とする「忍びの者」後編といった内容である。
前作を引き継いでいるが娯楽性は数段と高まっている。
主な配役は市川雷蔵の五右衛門、藤村志保の妻マキ、城健三朗の信長は前作通りで、新しく登場するのが伊達三郎の服部半蔵、山村聡の明智光秀、東野英治郎の羽柴秀吉、永井智雄の徳川家康、山本圭の森蘭丸、石黒達也の鈴木孫一など歴史ファンでなくても名前ぐらいは知っている人物が登場し、恵林寺において焼死した快川紹喜和尚が描かれたり、光秀の八上城攻防戦における母親の処刑が語られるなど、史実の一部が真偽はともかくとして描かれていて興味を引くことなどがそう感じさせているのだろう。
もっとも松山城攻め場面では重要人物の黒田官兵衛は登場していないし、光秀の側近として登場しているのは島左近ではなかった。

坪内ミキ子の女間者タマメを森蘭丸に絡ませ、服部半蔵から明智光秀が信長に反感を抱いていることを知らされた五右衛門が、光秀の敵対感情を煽り立てて本能寺の変を起させ、五右衛門が信長を虐殺したという新解釈を施している。
しかも五右衛門が信長を虐げる場面では腕を切り落とし、足を切り落とすという残酷さである。
五右衛門の無念さ、復讐心を掻き立てるためのものなのだろうが、いささかグロテスクである。
前作が忍者の人間的苦悩と過酷な世界を映像化していたが、この続編は戦国武将たちの権謀術策の一面を描いた戦国裏面史を描いている。
その筆頭は徳川家康で、自分では手を下さず目的を達成していく。
服部半蔵が言っているように、それこそが忍者にとっての最高の技で、家康こそが真の忍者であるという構図を生み出している。
家康は「一人の忍者が天下を動かす時代はもう過ぎた。信長公がふかし、秀吉殿がついた天下餅が余の前に並べられる日を待つんだ」とうそぶいている。

服部半蔵から「女忍者は女であることを武器にして戦い、決して相手に惚れてはいけない」と諭されていたタマメが森蘭丸を色仕掛けで手中に入れながら、本能寺の変では蘭丸を慕っていたような描き方である。
タマメは使命との間で苦しんだはずだが、変節が突然すぎて浮いたような描き方だ。
妻マキとの平穏な生活を望んでいた五右衛門だが、結局彼は権力者のかけひきに翻弄されていく。
その悲劇性がもっと前面出ていたら違った作品になっていたと思うが、前作同様そのようなメッセージ性を描くことをむしろ意図的に排除していたように感じる。
山本薩夫監督としては完全娯楽作に挑戦していたのかもしれない。
スタッフ表示で「監督 山本薩夫」と出るのは当然ながら、横に小さく鍋井敏宏と出たのはどういうわけだろう。
助監督として表示しても良さそうなものだが、鍋井敏宏氏がどのような役割を担っていたのか気になった。
前作は嬉々としてマキのもとへ帰る五右衛門の姿で終わったが、本作では釜ゆでの刑に向かう五右衛門の姿で終わっているのもラストとして対をなしているのだと思う。


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