おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

若者たち

2023-06-18 07:17:52 | 映画
若者たちシリーズ3部作です。

「若者たち」 1967年 日本


監督 森川時久
出演 田中邦衛 橋本功 佐藤オリエ 山本圭 松山省二
   南美江 小川真由美 井川比佐志 石立鉄男 大塚道子
   栗原小巻 大滝秀治 江守徹

ストーリー
太郎、次郎、三郎、オリエ、末吉の佐藤きょうだいは早くから両親を失い、建築現場の作業員である長男の太郎が、弟妹たちの面倒を見てきた。
ある日、雑用一切を背負わされてきた高校生のオリエが、堪え切れずに家出してしまったことからいろいろな問題が露呈してきた。
末吉の大学受験問題、食費の分担金のこと、運転手次郎の事故等々、それらは、長い間、堅く団結してきたきょうだいの間を、気まずくさせるほど、現実的な問題だった。
オリエはしばらく友だちのアパートに身を寄せたが、勤め先が倒産して行商をやっているマチ子を見て、生活のきびしさを知った。
そんな時、オリエは原爆孤児の戸坂と知り合い、次第に惹かれて行った。
一方、太郎は会社とある事故の処理をめぐって対立し、学歴を持たぬ下積み労務者の悲運を痛感していた。
大学生の三郎は授業料値上げ反対の学園闘争の中で、学友の河田靖子や小川の、積極的な生き方に共鳴するものを覚えるのだった。
ある日、次郎は行商中のマチ子と会い彼女を励ましたのだが、数日後、そのマチ子が信頼してすべてを許した争議団の指導者に裏切られ、酒場の女給になっているのをみた次郎は説得して再び働く仲間に引き戻した。
また、生活の厳しさを知ったオリエは、家に戻ってくると、自分も兄たちと同じように働きに出ると主張した。
やがて大学の入学試験が始まったが、末吉は不合格の憂き目にあい、大学へ行く気はないと言って、学歴の社会的価値を知る太郎に叱られ、喧嘩になった。
また、オリエも、兄たちの反対を受けながらも、戸坂と結婚したい旨、自分の決心を述べた。


寸評
1966年にテレビドラマとして放送され同名の主題歌もヒットして徐々に視聴率も獲得していった作品の映画化で、両親を亡くした5人兄弟が、友情・恋愛・確執などを繰り返しながらたくましく生きていく様はテレビと同様である。
僕もこのテレビドラマを見ていたが、良質のドラマにもかかわらず、在日朝鮮人問題を描いた回が北朝鮮人の亡命事件が起きて中止となりドラマは打ち切られた。
映画はテレビドラマの再現と言った感じで、僕は労映主宰の名画鑑賞会でこの作品を見たような気がする。
労働組合映画協議会、略して労映は戦後の労働運動の隆盛を背景に製作・上映活動を展開していた組織だが、この頃には映画製作は行っていなかったかもしれない。
本作で描かれている内容は労映が上映しそうな内容である。

日本はまだ経済発展途上だったので当時の世相が反映されている。
登場人物はみんな貧しくてお金の話がついて回っている。
佐藤家は両親が亡くなっており、長男の田中邦衛と二男の橋本功が一家を支えてきた。
特に田中邦衛は自分が兄弟を育てたと自負しており、その意識が彼の支えでもある。
当然家庭は苦しく、大学生である三男の山本圭もアルバイトで稼いだ中から食費を出している。
唯一の女性である佐藤オリエが家事を見ているが、彼女も兄弟げんかから家を出て友人と一緒に暮らすようになり、転がり込んだ友人の夏圭子も会社が破たんして商品の日用雑貨を売り歩いている。
彼女は毎日の生活に追われ、中学時代の優しさが消えて同室の友人にもつらく当たるようになってしまっている。
労働者たちは昼休みにバレーボールに興じたり、コーラスを楽しんだりしているが、みんな裕福ではない。
江守徹の家は親父さんが死んで工場は火の車だが、形見を持ち去ろうとする人に囲まれながらも、江守徹は従業員たちと共に苦労して見ようと三郎に告げる。
描かれている内容は辛い話ばかりである。
しかしそのどれもが深く掘り下げて描かれておらず、貧乏人物語の上辺をなぞったような感じになっているので、映画作品としてみると中途半端でテレビドラマの延長のような気がする。

夏圭子は結婚相手に騙され水商売に落ちていくが、橋本功の次郎に励まされて食品工場で働くようになる。
希望を見せているのだろうが、彼女に好意を寄せていた次郎との関係は置いてけぼりだ。
佐藤オリエは片足が不自由で被爆者である石立鉄男の戸坂と愛し合うが、戸坂はオリエのもとを去ってしまう。
それでもオリエは戸坂を探し出し彼の元へ行こうとするが結末は不明のままで終わっている。
建築現場労働者の田中邦衛は、下請け会社の管理職である井川比佐志の妹である小川真由美との結婚を決意するが、最後のところで学歴社会、育ちなどを持ち出されて縁談は破談となる。
小川真由美の言い分はもっともに思えるところもあり、破談というより太郎は彼女に捨てられたような格好だ。
学歴の重さを知った太郎は、その為に末っ子の大学進学に異常な執念を見せる。
学歴社会への批判だが、太郎が言ったように理屈ではなくその後の日本は正に学歴社会となった。
暗い話ばかりが続いてきたが最後になってわずかな希望を見せて映画は終わるが、本作の中途半端な描き方は当初から続編の製作が計画されていたからかもしれない。
佐藤オリエは役名を本名で登場し、そのまま芸名にした。


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2 コメント

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このシリーズは (指田 文夫)
2023-07-10 09:25:55
私は、このシリーズが嫌いでした。
民青的だからです。
ただ、脚本の山内久も、監督の森川時久も共産党ではないところが不思議です。
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民青的というより (館長)
2023-07-11 06:38:13
民青的というより、これはもう完全に民青ですよ。
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