おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ダイヤルMを廻せ!

2021-05-15 10:36:57 | 映画
「ダイヤルMを廻せ!」 1954年 アメリカ


監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 レイ・ミランド
   グレイス・ケリー
   ロバート・カミングス
   アンソニー・ドーソン
   ジョン・ウィリアムズ
   パトリック・アレン

ストーリー
ロンドンの住宅地にあるアパート。
その1階に部屋を借りているトニーとマーゴのウエンディス夫妻は、表面平穏な生活を送っているように見えたが、夫婦の気持ちは全く離ればなれで、マーゴはアメリカのテレビ作家マーク・ホリデイと不倫な恋におちており、それを恨むトニーは、ひそかに妻の謀殺を企てていた。
トニーはもとウィンブルドンのテニスのチャンピオンで、金持ち娘のマーゴはその名声にあこがれて彼と結婚したのだが、トニーが選手を引退してからは、彼への愛情が次第にさめていったのである。
トニーは大学時代の友人でやくざな暮らしをしているレスゲートに妻の殺人を依頼した。
計画は綿密で、トニーはマークと一緒に夜のパーティーに出かけてアリバイをつくり、レスゲートにアパートへしのびこませる。
約束の時間にトニーはアパートへ電話をかけ、マーゴが電話に出たとき、かくれていたレスゲートが後ろから絞殺するというてはずだった。
しかし、実際には絞められたマーゴが必死にもがいて鋏でレスゲートを刺殺してしまった。
トニーは、マーゴがマークとの不倫をレスゲートにゆすられていたので彼を殺したという印象を警察に与え、マーゴを罪におとし入れた。
マーゴは死刑を宣告され、処刑の前日までトニーの陰謀は発覚しそうにもなかったのだが・・・。


寸評
「ダイヤルMを廻せ!」はミステリー作品だが犯人探しではなく、犯人は最初から分かっているので、興味は犯人がどのようなアリバイ作りを行い、またどのような言い逃れをするかに注がれていく。
冒頭でトニーとマーゴの夫妻がキスを交わし、マーゴが新聞でマークが豪華客船でやって来る記事を目にする。
次のシーンでマーゴとマークがキスを交わしているのを描き、三人の関係が端的に示される。
次の場面でトニーがレスゲートにマーゴの殺人依頼をするのだが、冒頭に比べるとこのシーンは長い。
殺人を引き受ける必然性を観客に納得させなければならないのだからこの長さは当然だ。
トニーはレスゲートの身辺を細部にわたって調べ上げており、成功報酬のことも有ってレスゲートは殺人という大罪を犯さざるを得なくなってしまう。
同時にトニーと言う男が用意周到で頭のよい男であることが示されて、後半へのイメージ作りに成功している。
ミステリー映画らしく、冷静沈着な男が立てた計画が、ちょっとしたことから計画が狂い始める展開も心得たもので、ほころびはトニーの時計が止まっていて、レスゲートと約束した時刻に電話を出来なかったことから始まる。
そして犯行の実行に当たって、レスゲートは打ち合わせとは違う行動をとってしまうのだが、その行動はうっかりしてしまうと見逃がしてしまうようなもので、その事が重要な決め手となってくる描き方もなかなかいい。
見所は切れ者の警部が登場してきて、この殺人事件の疑問点を次々に指摘し、それをトニーが取り繕って疑問を晴らしていくやり取りだ。
賊は窓から入ってきたことにしていたが、警部はドアから入ったのだと指摘する。
その理由は極めて明快で、警部の切れ者感が伝わって来て、トニーとの対決が俄然面白くなってくる。
凶器となるハサミがそこにある理由も納得するし、文字通り事件の鍵となる入り口のキーの扱いが見事だ。
その為の伏線として。トニーのコートと警部のコートが似通っていることがさりげなく描かれている。
似ているのはコートだけではない。
トニーがマーゴの鍵をバッグに戻すシーンなど、鍵にまつわるエピソードはこの作品の中で輝いている。

主人公の一人であるマーゴを演じているのがグレイス・ケリーなので悪女には見えない。
夫婦間は冷え切っているはずだが、そんな雰囲気は感じられない。
マーゴは浮気しているのだから責められる要素のある女性の筈だが、観客は彼女に肩入れしてしまう。
結局彼女は死刑の判決を受けるのだが、この事件で死刑になるのは納得できないものがある。
正当防衛だって主張できたはずだし、そしてなにより観客にはグレース・ケリーが冤罪で死刑になるはずがないとの思いは当初からあるわけで、最後の興味はどのようにしてグレース・ケリーが救われるのかになる。
それも期待を裏切らない描き方で納得はできるが、グレース・ケリーの気品は取り乱すことを拒絶させてしまっているなと感じる。
殺してしまった後の動揺、夫が殺人を企てていたことを知った時の愕然とした気持ちに対する彼女の振る舞いには驚愕と言う言葉が当てはまらないものに感じる。
警察の現場検証があるのに、夫に言われたからと言って着替えずに寝ていられるものだろうか。
加害者であるマーゴへの事情聴取は当然あるわけで、夫の代弁で済むずがない。
探せばツッコミどころはあるのだが、最後の終わり方などはシャレたものでスッキリ感がありこの映画らしい終わり方となっている。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿